平成末年のフット・ボール…ワールド・カップとサッカーを考える。①








2018年のフット・ボール…ワールド・カップとサッカーを考える。①








サッカー。


美しい、とか、芸術的、とか、そういう言葉と同時に、サッカーは戦争である、という血なまぐさい言葉も乱舞するスポーツ…らしき、もの、…である。


もっとも、この戦争、という比喩だけは、いくらなんでもいただけない。実際の戦争を考えると、それとこれとは比喩結合の対象でさえない。ちなみに、日本で初めてこの比喩を使ったのは、村上龍さんだった記憶がある(笑)。


前のワールド・カップのとき、ラグビーを真面目にやっていた若いこと一緒に見た。どこの試合だったか忘れた。

サッカー好きの僕は普通に盛り上がっていたが、彼は全然盛り上がらない。


若干不安になって、彼に聞いてみる。

「…楽しい?」

「…いやぁ…」


これって、スポーツなの?彼は言った。いったん言い始めると、とめどなくなる。こんなのスポーツじゃないよ。なんだよ、あのダイヴってやつ。あんなのラグビーでやったら自分のコーチにすでに怒られるレヴェルの反則だし、ファウル多すぎるし、文句言いながらぷらぷら歩いてばっかりだし、あんなのスポーツじゃないって。


「一回、ほんと、ラグビーみてくださいよ。こんなじゃないから」

…ぐうの音も言えない(笑)。

サッカー好きは普段意識しないが、サッカー、実は結構特殊なスポーツだ。









サッカー、基本、パスは通らない。


自分でやればよくわかる。ゴール周辺の密集地帯で、ここぞというときに、ぎりぎりのラインで出したパスなんか、普通通らない。


パス・サッカーと言うが、パスなんか通らないのが当たり前だから、あれは賞賛されるのである。

バルサだって、ボール支配率は60%くらい。

ようするに(単純にはいえないが)40%は失敗しているということだ。

失敗するのが当たり前。


シュート、基本的には決まらない。

走りながら、時には数人を超えてでっかいボールを蹴らなければならないのだ。シンを捉えることなんか、普通出来ない。

心理的なプレッシャーもあれば、過剰な興奮もある。

それる。

外れる。


第一、オフサイドと言うルールは、わざと点が入りにくいようにしてある、サッカーのもっとも重要なルールだ。


しかも、少々のファウルは許容される。

例えば、野球で、キャッチャーがバッターにわざと接触して妨害したら反則でしょ?

ランナーに対してショートやライトがぶつかって《けずる》行為をしたら一発退場でしょ?

でも、例えばメッシやクリスティアーノ・ロナウドがすごいのは、《けずり》にびくともしない《かわす》能力やフィジカルの強さを持っているからである。

だから、日本人選手の問題として、よくフィジカル問題が言われる。

単なる身体能力のことではない。いわば、喧嘩強さ、のことである。


点が入る瞬間は基本、10秒以下の動きによる。

起点―パス―侵入・突破―シュート。終わり。…例えば4対3のスコアだったとして、70秒。

つまり試合は、90分中、88分は膠着している、と言うことになる。


サッカー選手は、当たり前だが、ふてくされた顔をして、指示の出し合い・試合中の修正という名の文句をぐじゃぐじゃ言いながら、ぷらぷら歩く羽目になる。

じつは、こんなスポーツらしくないスポーツは他にない。


故に、ラグビーとか、大学や社会人で真面目にやっている人に、こんなのスポーツじゃないといわれれば、まさに苦笑するしかない。


サッカーが、そのファンによって、スポーツ以外の形容詞によって(美しい、とか、芸術、とか…)若干無理やりぎみに語られる事が多いのは、このためだ、という気もする。


いま、ベトナムに住んでいるが、サッカー人気はすごい。ほぼ100%。そして、あたりまえだが、サッカーを見て喜んでいる人の大半は、もちろんスポーツに縁もゆかりもない人たちである。


考えてみれば、僕だって、かならずしもスポーツ・ファンとは言えない。スポーツニュース、殆ど見ない。

見ても、別におもしろくはない。

学生時代にスポーツに打ち込んだ経験もない。

にも拘らず、趣味でサッカーをやるのは好きだ。


結局、スポーツとしての、そのあまりの特種性が、スポーツに縁もゆかりのない人さえ駆り立てている、とは、言えまいか。


…ワールド・カップ便乗記事かよと言われそうだが、やっぱりね。

書かずにはいられない。


個人的に、本日現在、推しはアイスランド(笑)。

素直に、すごいと想った。


希望的優勝予測は、メッシのアルゼンチン。本当に、10年越しで、最後に母国の英雄になってもらいたい。正直、難しいけどね。…


賭けをするなら、グラディオラ・ジンクスでイングランド。スペイン、ドイツの前例は固い(ホントかよ笑)


日本代表は、客観的に言うとスコアを出すと前回以下、と。しかし、ここまできたら応援するしかない。

…信じる。

負けても、文句言わない。

大体、いつの、どの大会でもそうなんだが、負けて当然だからね。FIFAランキング60位以下なんだからね。客観的に。…でしょ?


【追記】次の監督は、もっと冷静に選んで、もっとよく協会も監督とミーティングして欲しいです(笑)




2018.06.17

Seno-Le Ma




Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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