紀貫之の和歌。貫之集8
紀貫之家集
已下據『歌仙歌集三』刊行年出版社校訂者等不明。
解題云如已下自撰の集ありしこと後拾遺集大鏡などにみえたれど今のは少なくとももとのまゝにはあらざるべし
貫之集第八
哀傷
あひしれるひとのうせたるによめる
ゆめとこそいふへかりけれよのなかにうつゝあるものとおもひける哉[古今]
きのとものりうせたるときによめる
あすしらぬいのちなれとも[我身とおもへとイ]くれぬまのけふはひとこそあはれなりけれ[古今]
山寺にゆくみちにてよめる
あさつゆのおくてのやまたかりそめにうきよのなかをおもひぬるかな[古今]
あるしうせたるいへに櫻[の梅のイ]はなをみてよめる
いろも馨もむかしのこさににほへともうゑけんひとのかけそこひしき[古今]
かはらの右大臣うせ給ひてのちにいたりてしほかまといふ所のさまのあれにたるをみてよめる
きみまさてけふりたえにししほかまのうらさひしくもみえわたるかな[古今]
そせいうせぬときゝてみつねかもとにおくる
いそのかみふるくすみこ[にイ]しきみなくてやまのかすみはたちゐわふらん
かへし
きみなくてふるのやまへのはるかすみいたつらにこそたちわたるらめ
とあるに又
きえにきと身こそきこえめ[ゆれイ]いそのかみふるきなうせぬきみにそありける
世のなかはかなき叓をみて
うけれともいけるはさてもあるものをしぬるのみこそかなしかりけれ
きのふまてあひみしひとのけふなきはやまのくもとそたなひきにける
いつみの大將うせたまひてのちにとなりなるひとのいへに人ゝいたりあひてとかくものかたりなとするついてにかのとののさくらのおもしろくさけるをこれかれあはれかりて哥よむついてに
きみましゝむかしはつゆかふるさとのはなみるから[ことイ]にそてのぬる[ひつイ]らん
かねすけの中將のめのうせにけるとしのはすのつこもりにいたりて物かたりするついてにむかしをこひしのふるあひたによめる
こふるまにとしのくれなはなきひとのわかれやいとゝとほくなりなん[後撰]
たいしらす
たちかへりかなしくもある哉わかれてはしるもしらぬもけふりなりけり
ふちころもおりきるいとはみつなれやぬれはまされと[まさりてイ]かわくよも[ときイ]なし[きイ]
東宮かくれたまへるころよめる
かすみたつやまへをきみによそへつゝはるのみやひとなほやたのまん
きみまさぬはるのみやにはさくらはななみたのあめにぬれつゝそふる
延長八年九月京極中納言諒闇のあひたにはゝのふくになりて
ひとへたにきるはかな[わひイ]しきふちころもかさぬるあきをおもひやらなん
とよみとさの國にあるあひたにおくられたる返し
ふちころもかさぬるおもひおもひやるこゝろはけふもおとら[やすまイ]さりけり
たいしらす
ほとゝきす[うくひすのイ]けさなくこゑにおとろけはきみをわかれしときにそありける
ゆめのことなりにしきみをゆめにたにいまはみるたにかたくもあるかな
おくつゆをわかれしきみとおもひつゝあさなあさなそこひしかりける
おやのおもひにはへりけるときよめる
ふちころもはつゝるいとはきみこふるなみたのたまのをとそなりける
かいせう[んイ]うせぬときゝてかのをひ在原のまきのふ[ふんイ]かもとにといひてあつたゝの中將のもとにおくる
あけくれて千とせあるものとおもひしをなほよのなかはゆめにさりける
ひとのことちとせゆくまはたかさこのまつとわれとやけふをくらさん
京極中納言うせ給ひてのゝちあはたにすみたまふところありけるそこにいたりて前栽に松竹なとあるをみてよめる
まつもみなたけもわかれをおもへはやなみたのしくれふるこゝちする
かけにとてたちかくるれはから衣ぬれぬあめふるまつのこゑ哉
おなし中納言うせたまへるとしのまたのとしのついたちの日かの中納言の御いへにたてまつりける
藤衣あたらしくたつ年なれは
ふりにしひとは[のイ]
なほやこひしき
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