秋篠月淸集卷四羈旅/藤原良經
秋篠月淸集[藤原良經/據國哥大觀戰前版]
秋篠月淸集四
羈旅部
たひのうたよみける中に
いかた淀む瀨ゝのいはまの波のおとにいくよなれたるうき寢なるらむ
へたてゆくみやこのやまのしらくもをいくへになるとたれにとはまし
くさむすふのはらのつゆのふかきかなたかあかしけるよはのまくらそ
つな手ひくたけのしたみちきりこめてふな路にまよふよとのかはきし
みつあをきふもとのいり江きりはれてやま路あきなるくものかけはし
しけりあふつたもかへてもあとそなきうつのやまへはみちほそくして
あけかたになるやしらつゆかすそひぬかりのいほりのあしのすたれに
ともなくてくさ葉にやとるあきのゝにほたるはかりや夜はのともしひ
ありあけのつきせさりけるなかめかないくうらつたひこゝろすましつ
へたてゆくゝもとなみとをいくへともしらぬとまりのゆめのかよひ路
あふひともなきゆめ路よりことつけてうつゝかなしきうつのやまこえ
なれにけりひと夜やとかすさとのあまのけさのわかれも袖しをれつゝ
きのふけふのにもやまにもむすひおくくさのまくらやつゆのふるさと
くにかはるさかひいくたひこえすきておほくのたみにおもなれぬらむ
なみまくらひと夜はかりになれそめてわかれもやらぬすまのうらひと
物へまかりけるに天の川原といふところをすき侍るとて
むかしきくあまのかはらにたつねきてあとなきみつをなかむはかりそ
公卿勅使に伊勢へくたりける道にて
あふさかのやまこえはてゝなかむれはかすみにつゝく志賀のうらなみ
はるかなるみかみのたけをめにかけていく瀨わたりぬやすのかはなみ
海路眺望
わするなよいまはのつきをかたみにてなみにわかるゝおきのともふね
海路秋
ゆくふねのあとのしらなみきえつきてうすきりのこるすまのあけほの
家の選哥合に秋旅
まつしまやあきかせさむきいそ寢かなあまのかる藻をひしきものにて
院の宇治の御會の五首秋旅
はしひめのわれをはまたぬさむしろによそのたひ寢のそてのあきかせ
院より八幡若宮にて哥合ありし六首の中羇中戀を
ふるさとをいのちあらはとまつらかたかへるひとをしゆふなみのそら
院の影供のついてに當座月前旅を
わすれしとちきりて出てしおもかけは見ゆらむものをふるさとのつき
院にて當座に旅のこゝろを
みやこひとそのことつてはとたえして
くもふみつたふ
やまのかけはし
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