雪舞散/亂聲……小説。5


以下、一部に暴力的な描写を含みます。

ご了承の上お読み進めください。




雪舞散/亂聲



哥もの迦多利

亂聲

——戀愛ってそういうそく面なくない?

片山ゆふ夏はじっ感のともなわない自ぶんのこと葉を莫迦な女のしったかぶりの詠嘆じみてみゝにきいていた。めのまえ床のうへに躬をなげだしたうつくしいゝきも乃の裸たいはあからさまに目になじみ視界もろともとけてきえてまじわってしまいそうでふれて仕舞えとこと葉もなく命じたて乍もかたやま夕かにふれてしまうことをためらわせつづけるのだった。羞恥いぜんのふかゝいな葛藤が片山ゆふかを倦ませのみたくもないシャンパンのボトルの口に唇をおしつけさせつゝけた。ふくんだ金いろのくちのなかにあわだっているはずの液たいをかがみこんだくちうつしに壬生にのませたときシャンパンの匂いよりに激しい少年の獸じみた惡臭がふたたびおんなの鼻をついた。をんなはわらってしまいそうになった。なぜこんなにも、と、少女の餘にもむ責任でたゝたゝ耽び的なゆめのうちにしかそん在しないはずのかたちをさらしながら容赦もなくふ快でしかない惡しゅうをあなたの肌はかきたてゝいられるのだろう乎と「みつめていい?」

壬ぶ髙あきの眼さしは色さいをかえないまゝに意図もなくはなにだけもれたわらいのと息をきく。「もう」と、

——みとれてるじゃん。俺に。…ずっと。

軈てはは手な笑い聲をたてたかた山ゆう夏の邪氣も無くひきつるほゝに軽蔑がにおわされたきがした。かならずしもふ快でもなかった。いずれにせよ「すごい、自信じゃない?」

それがその女のうつくしくこがれるしかないいきも乃へ能愛の表明のりゅう儀だったにはちがいなかった。「事じつでしょ」

——そうともいう

「だったら、」壬生は「ただの事實じゃない。」横たえた身をかすかにおこそうとして片山ゆふかのまなさしに制される。したがう可きかむしするべき乎一瞬のまよいい前の停滞におちいりそうになった瞬間には夕かのくちびるはかれのくちびるをふさいでいた。さしこまれた舌にかの女のこゆうのにをひがあるきがしてはだと肌がふれあわないすれすれにちかづきあっているだけだったというのに片山ゆふかの體おんがくうきをつたってすでに壬ぶにふれていた。じ分のたい温もおなじようにかの女のはだにふれあってしまっているのか結局のところじぶんのたいおんなどかんじられはしない壬ぶにはさだめられはしない。女とは二しゅう間まへにはじめてであった。店でかおをあわせたさい初から女は自分が壬ぶにおちたことを隱そうとはし無かった。…でもさ。と、女はいつか云った。「しかたなくない?すきになったら、もうそれでなすすべないじゃん」

——俺がおまえなんか完全にシカトしてても?

「なんかさ」

——そうなの?

「だれかを、さ」

——さっきから寧ろ存在自体無視してんだけど。

「すきになるって」

——そう。だったら

「ね、なんか」

それでもいい。と、かたやまゆふ夏の人目を引かないではいられないはでな容姿はどこにいてもけばけばしいほどにきわ立った。「関係ない。あんたのきもちなんか。」

「なんで?」たぶんもう、と、

どこからどうみても莫迦ゝゝしいほどに煽情的でいろけたつ女。

——安心して。

めをとじてフローリングに身をなげだせば夕夏の

——なにもしない。

さゝやき聲だけがみみにふれ「さわられるのもいやでしょ?」

おまえの、と。すきに

「そばにいられるのもいや」

すればいい。おまえの

「それでもかまわない。」

のぞむようにおまえを

「マゾっけある?」

ぶじょくして

「ね、わかる?」

けいべつして

「おまえがどうしようもなく」

きょぜつして

「愛ってさ。」

と、みぶは

「ばかだってこと?」

おまえの

「いわゆる、さ。愛。女と」

もとめるままに

「お前って…」

はずかしめて、と

「おとこが愛し合うこと。それってさ」

みぶは、なぜなら

「なんでそんなにばかなの?自分の事」

おれはやさしい

「なんなんだろうね?なにをもって」

こゝろのある

「興味も無い奴に」

蝶のようなもの

「さ」

「棄てて遣ろうって」

おまえにあこがれられて

「あいっていうんだろ?なにをしたら」

みつめられ

「穢してやろうって」

みとれられて

「どこに行きついたら」

おまえのこゝろののぞんだそのまゝに

「だってそんな悪意さえないんだぜ」

おまえの

「あいなの?」

こゝろを

「ばか?」

ひきさいて

「はだをかさねあう?」

こわしてあげる、と

「はっきりって」

みぶは

「じゃ、」

おまえはくず

「お前の気持ちも」

おまえはぶた

「プラトニックなこころだけの」

はずかしげもなく

「時間も」

くつじょくにまみれて

「きれいきれいな愛って偽り?」

のたうちまわるしかなく

「無駄」

ばかまるだしで

「求めあうのって」

みをくねらせて

「全部無駄。」

こいてわびてせつなげに

「むさぼりあうのって、でも」

たいえきをたれながれさせる

「かなしいよね。存在として」

あわれにきたない

「愛は愛じゃん」

うじむしのようなもの

「きづつけてもらえさえしない」

おまえはくそまみれの

「笑いそう。なんか」

えいえんにけがれた

「どうでもいい存在って」

すくいようのない

「なにをすれんばいいのかさえわからないのに唯それでもひたすら愛しだけしちゃうの。さかりのついた犬みたいに。あさから晩まで。ずっと、あんたのことだけ、愛しちゃうの。こうびするわけでもなくおしりおいかけまわしてときにはかみついたそぶりなんかしてきゃんきゃんないてわんわんほえたててみてにおいかいでくんくんくんくんぐるぐるまわってじゃれてみたされなくてせつなくてにゃあにゃあうるさい発情した猫みたく、心の中がじゅんすいにあんたが好きってなきさけんでばっかりいるの」霧雨がやがてすぐさま台風に代わるにちがいない叓はしっている。警報がでていた。よくある話だった。悠貴が入水したのも警報をすき放だいに人の口にさえまきちらした季節におくれた台風が千ばの山きわを倒壊させて十人足らずの人間たちをころしてしまったあげくにみごとなまでにはれあがった日の數日のゝちだった。此くにゝたいふうにそぎおとされない山のははなくぢ震にたたきつぶされない地のおもは抑そんざいしない。みつめてたいの。と、

——なんでかしらない。ずっとみてるの。わたし。

あなたを、わたし

——ひまなの?

ずっと、ね?

——こいしてるの。

聲もなくどこかで乾いた笑いのいきがやゝあっておもひだされたように夕かの鼻にたってみあげればまどのそとにはあるはずの有明の月は雲のみが見る

風のないに違いない上空は雲のかたちを停滞させた。

そのちいさな女には影というものがなかった。それがかくしようもなく女のかゝえこんだいやされえぬ翳りを壬ぶ髙あきに敎えた。十よん歳の壬ぶはいつかのさきの世にふれあった女のひとり山の端の銀杏の木に頸をつったあさまだきに死に殻をみいだしたその母なる女がとりみだしてわめき村中を走り回った記憶の夢の中におもわずにも涙をこぼしてめをさました日にあるいはその女を殺して仕舞ったのは自分には違いなかった。みやこにおこった戰のどさくさにひきさかれた同じはらの姉ではあったとしても女をおもいつめるまゝにほうちしたのはかれ自身の咎にほかならずせめてもひとたびくらいはかの女に思いをとげさせてやる可きだったかもしれなかった。すべらぎさえもふたりいるならだれにあいをくれてやろうが抑とがめられるすじあいではなくも思われたものゝやがて桔梗か原に降りそゝいだ弓のいくえにもくいこんだ無ぞう作なきずの吹き出すちが自分の命をうばうにしてもせめてそれまでのいくばくかの時間はかの女にもゆるされてしかるべきだはずの散る花になにをうれふや霞立このめもはるのさかりのひかりに








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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