風雅和歌集。眞名序及び假名序。原文。


風雅和歌集

風雅倭謌集。底本『廿一代集第八』是大正十四年八月二十五日印刷。同三十日發行。發行所太洋社。已上奧書。又國謌大觀戰前版及江戸期印本『二十一代集』等一部參照ス。

已下者所謂眞名序及假名序也。



風雅和歌集序

夫和歌者氣象充塞乾坤意想範圍宇宙渾沌未判其理自存人物旣生其製遂著風雲草木之起於機感也萬彙入雅興之端思慮哀樂之發於意趣也一心爲諷諭之本吟詠性情美刺政敎難波津之什者天子之德也聖人之風始被一朝淺香山之辭者采女之戯也賢者之化已及四方倩憶吾朝之元由自諧二南之餘裕者乎而世迄堯离[※左二字加酉偏]人趣浮華不知和歌之實義偏以爲好色之媒近代之弊至於益巧益密惟以綺麗彫刻爲事竊古語假艶詞修飾而成之還暗乎大本或以鄙俚庸俗之語直述拙意不知風體所在並以不足觀者也淳風質朴情理之本孰不據此而暗於態度而猥取之者非述作之意閑情巧辭華麗之美何以加旃而牽於興味而苟好之者失雅正之體又風采倣高古難兼含蓄之情句法欲精微易入細碎之失勤直則成怒張之氣妖艶亦有懦弱之病論其體裁不遑毛擧乃如文質互備意句共到者宜忌言得旨豈假筆舌盡乎總而謂之不達其本源者多溺彼末流焉只須染志於古風不可假歩於邪徑者耶三代集以後得其意者僅不過數輩其或有昇堂不入室况頃年以來哉歎息有餘爲救此頽風逈温元久故事適合風雅者鳩集而成編天下無可奔之言故博采遍訪自上古至當世集而綠之命曰風雅和歌集茲惟握圖自推運數脱蹤不爲神仙猶雖有萬機渉諮詢旣而得三漏多間暇刻復煙氣早收春馬徒逸華山之風霜刑不用秋荼空朽草野之露衆功已興庶績方熙雖片善而必擧傷一物之失所故嗟此道久癈俗流不分涇渭所以有此撰非偏採華詞麗藻兮壯一時之觀專欲擧正風雅訓兮遺千載之美者也于時貞和二年十一月九日槪立警策因記大綱云爾


やまと歌はあめつちいまたひらけさるよりそのことはりおのつからあり人のしわささたまりて後此道つゐにあらはれたり世をほめ時をそしる雲風につけて心さしをのふよろこひにあひうれへにむかふ花鳥をもてあそひて思ひをうこかすことはかすかにしてむねふかしまことに人の心をたたしつへし下ををしへ上をいさむすなはちまつりことのもとゝなる難波津の君にそへし歌はあめのしたの風をかけあさか山のうねめのたはふれはよものたみの心をやはらくやまとことの葉のあさはかなるににたれとも周雅のふかきみちひとしかるへしかるかゆへに代々のひしりのみかともこれをすて給はすめに見えぬ鬼神の心にもかよふは此歌なりしかるを世くたり道おとろへゆきしよりいたつらに色をこのむなかたちとなりて國をおさむるわさをしらすいはむや又ちかき世となりて四方のことわさすたれまことすくなくいつはりおほくなりにけれはひとへにかされるすかたたくみなる心はせをむねとしていにしへの風はのこらすある[・ひ(イ)]はふるきことはをぬすみいつはれるさまをつくろひなしてさらにそのもとにまとふ又心をさきとすとのみしりてひなひたるすかたたみたることのはにて思ひえたる心はかりをいひあらはすたゝしき心すなほなることはゝいにしへの道なりまことにこれをとるへしといへともことはりにまよひてしゐてまなはゝすなはちいやしきすかたとなりなん艶なる體たくみなる心優ならさるにあらすもし本意をわすれてみたりにこのまは此道ひとへにすたれぬへしかれもこれもたかひにまよひていにしへのみちにはあらすあるひはすかたたかゝらんとすれはその心たらす言葉こまやかなれはそのさまいやしえんなるはたはれすきつよきはなつかしからすすへてこれをいふにそのことはりしけき言のはにてのへつくしかたしむねをえてみつからさとりなんおほよそ出雲八雲の色に心さしをそめ和歌の浦波に名をかくる人々なかれての世にたえすしてをの〱思ひの露ひかりをみかきて玉をつらねことはの花匂ひをそへてにしきををるとのみ思ひあへるうちにまことの心をえて歌の道をしれる人は猶數すくなくなんありける難波の蘆のあしよしわけがたくかた糸のひき〱にのみあらそひあひてみたりかはしくなりにけりたれかこれをいたまさらんやたゝふるきすかたをしたひたゝしきみちをまなはゝをのつからそのさかひに入ぬへしそも〱むかしはあまつ日つきをうけてもゝしきのうちしけきことわさにまきれすくしゝをいまはちりのほかはこやの山しつかなるすまゐをしめなからなを天のしたよろつのまつりごとをきゝてつとにおき夜はにいぬるいとまなししかるを此比八の埏みたれしちりもおさまりて野かひのこまもとりつなかすよもの海あらかりし波もしつまりてふなわたしするみつき物たえすなりにけれはよろつの道のおとろへよものことわさのすたるゝを歎くこれによりて元久のむかしの跡を尋ねてふるきあたらしきことはめにつき心にかなふをえらひあつめてはたまきとせりなつけて風雅和歌集といふこれ色にそみなさけにひかれてめのまへの興をのみ思ふにあらすたゝしき風いにしへの道末の世にたえすして人のまとひをすくはんかためなり時に貞和二年十一月九日になんしるしをはりぬるこのたひかくえらひおきぬれは濱千とりひさしき跡をとゝめ浦の玉もみかけるひかりをのこしてあしはらやみたれぬかせ代々に吹つたへ敷嶋のたゝしき道をたつねん後のともからまよはぬしるへとならさらめかも








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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