小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■53



以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。

ご了承の上お読み進めください。

又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、

特にそれらを特に顕彰しようとする意図も在ません。





櫻、三月の雪

…散文。及び立原道造の詩の引用


三部作

《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ

或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ


Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης

ゾロアスター



笑い声。

まだ、誰も

ごく微弱音の、笑い声を閉ざされた眼差しの向う、わずかな下の方に

まだ誰も

ユエンがかすかな笑い声を一瞬だけ響かせた気がした時に、彼女は一気に

まだ誰も見たことの無い風景を見ようよ

私のTシャツをはだけて、光。

皇道回復ハ

まだ誰も

不意に見あげた窓越しの陽光が眼にふれて、私のまぶたは

人類史上ノ革命也

まだ誰も

瞬いた。

純粋皇道主義回帰ハ

見たことの無い風景を

その眼差し、綾子の眼差しは

人類未曾有ノ

まだ誰も

見い出す。私は、…触感。

最終革命ニシテ

誰も見たことの無い風景を見ようよ

膣腔の中に否定し難く感じられていた、和章のそれの触感を、もはや

最終的覚醒也

まだ

罵る気さえもなかった。

嘲笑うような信吾の声が、眼差しの上の方の、何処か頭の先で聴こえて、散々信吾が打ちのめした頬と顎に鮮烈な痛みが目醒めて已まない。

不意に自宅に訪れた信吾たちの強姦。まさか、と、自分の身体がそんな事件を経験するとは考えたことも無かった、まるで、生まれて初めて見い出す光景の中のなげだされた様な質感を、眼差しが見い出す風景の総ては見い出して、痛み。

と。…

どうしてあれほど私を殴り、蹴り飛ばして打ちのめしたくせに、彼は

其処に在るそれ

私を真っ先に抱こうとしないのだろうと、それは

それは

声。

それは

頭の中に響いた、綾子が自分の為にだけ響かせた彼の

それは

声。

痛み

叫ぶ。

それが

ユイ、シェン、と。

痛みであるなら、それは

その名前を呼んだ私の母親は、私にただ、

痛み

歎く眼差しを抱け送った。彼女を力の限りに殴った後で、

已まない痛みの

北京。

中に

父親が蒸発した後の、その、父親が残した狭くはない庭に繁っていたのは

目醒めて居たのは

梅の樹木。その

痛み

美しい少年の立ち居振る舞いの総てが、私を憎悪させていたのは事実だった。何を持ってしても、赦せないと。

必要ない

やさしく

想う。私は、

容赦など

ごぜんの風がふいてきみの

彼の総てが、と。その一瞬を以て、彼の総てを

破壊の時の到来の時には

髪の毛がいつか

認識して仕舞うのは不可能だということに気付いた。

清雪は。

泰隆が自分の口を塞いで、そして曝け出された肛門には泰隆の其れの触感がある。

純ニシテ純

むしろ、音響。

誠ニシテ誠

触感とは言い難い、その、詰りは容赦もない轟音。不意に彼が

殉死ノ自刃トハ只至誠ノ窮也

自分を強姦して仕舞うとは想わなかった。十一歳の私は、彼が、と、清雪はおのゝきを知った。

恐怖、と、そう呼ばれる、或は明確なのかもしれない感情乃至感覚が発生する前の、要するに何重にもかさなりあったおのゝきの総てを一気に根拠も無く赦して仕舞うかのような無造作な塊。

私は、頭の中だけに鳴り響き続ける自分の絶叫の連鎖の無際限な響き居合いの文字どおり無際限さに、清雪が感じ取っていたのは内面の無限。

…好き

それは、時間も空間も無視して、それ等とは違う場所に

カスミソウって、なんか

好き放題に、それとしてだけ

好き、と

孤立している。

綾子が何かを謀みながら笑った時

身動きさえ出来なかった。深夜、寝室に忍び込んだ泰隆の眼差しが捉えて居た風景。

巨大で、部厚い留保もない孤立を曝すしかない、そのあまりにも美しい

血痕

パパ、…と

空の青。

ハイビスカスの花弁にさえ

パパ。——そう、ユエンが

見あげられた映像。

流れ落ちた

これ見よがしな幸福をその眼差しに

なんて…と。

それ、——血

曝した

泰隆は

私の…

想っていた。その、…なんて、

乱れ交う

と。

翳りと光の

十歳にも満たない泰隆は、なんて

無数の氾濫

美しいのだろう。あまりにも。

羽撃く

無慈悲なまでに…と。

私の見い出した

美しい。

其処で、好き放題に

もはや、――絶望的な迄に。

わななきながら

彼は身動きさえ出来なかった。もはや、その光景を見た時には、私はその時目の前に拡がっていた青空の青、そして、これから彼みずからが何をしでかそうとしているのかつぶさに知って居る泰隆の瞳。

親切だが、まったく取り付く島も無い冷たい伯父さん。あなたは、私にまともな言葉一つも掛けなかった、…他の誰かが居ない時には、と。

木の枝の向うに

私は、殴られもしないままに彼に従いながら

青い空の奥に

服従し、声さえ立てられない儘、

未来よ

…怖いの?

希望よ

僕、

あこがれよ

怖がってるの?

私のちひさい翼をつつめ

と。

大きな

いま、——彼の局所的な暴力、腸内のひだにだけ加えられる容赦もない、…なぜ、

大きな

と。

真昼に

なぜ、彼はそのたった一度しか私を強姦し無かったくせに、その時に限って、私を強姦したのだろう?






Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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