小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■49



以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。

ご了承の上お読み進めください。

又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、

特にそれらを特に顕彰しようとする意図も在ません。





櫻、三月の雪

…散文。及び立原道造の詩の引用


三部作

《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ

或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ


Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης

ゾロアスター



…知ってた?

不意に、私の背後に眼差しを投げた清い雪の頬に淡い翳りわなないて、「泰隆さんの秘密。…あの人、ほぼ毎晩潤さんと肉体関係持ってる。」

…慰み者だよ、と。

その瞬間に、何故か茫然としたような表情を曝した清雪の、最後の吐き捨てられた独白が、一体だれに向けて言った言葉だったのか、私はその正確な意味を探ろうとした。「…あたま、おかしくなった?」

と、私がそう耳打ちして、その耳たぶをかるく咬んでやるとユイ=雨はちいさな悲鳴をわざと立てて、あくまでも、その音響は心地よい。

私は

知ってる。それは、心地よい音響が

じっと眼差しが捉えて居る風景を見て居るのだが

私には不思議なくらいに

眼差しには姿を決して顕そうとし無いその

自分の咽喉を鳴らすことを求めたユイ=雨によって、繊細に謀まれた繊細な飽くまで意図された音声だったに過ぎないことには、すでに気附いていたものゝ「…俺ね。」

鳥たちのことには何の注意さえも払っては居無いのだった。むしろ

当たり前のことのようにだけ認識してそして

在りの儘の

と、…

異形の死滅した姿を曝す。咲き誇った

ハイビスカスの樹木の上に

突き刺さって、わななき騒ぐ

「裏切り者になりたいの。」

鳥たちに好き放題に

ついばまれるに

まかせ

私はすぐに、清雪の

流される

血が

「誰も彼もが、」

伝う

不意の沈黙の意味を了解した。

頬を

「嘘しかつかないから。」

嘴が

帰って来た泰隆が、ただ

あの

「俺も含めて、…だよ。」

いつかの

罪もなく笑いながら、…

残酷な

「お前も。」

嘴が

イテ…

抉り取って行った

「総ての中国人も、総ての」

眼球が開けた

テ…

眼窩の

「日本人も、インドネシアの」

空洞から

痛い。「お腹、こわしちゃってさ。」

ただ

「小さい島に住むだれかさんも、」

溢れた血を

絢子のせいかな?…と

頬に

「台湾の善良な独立主義者の過激派のおじいさんも」

伝わらせ

その

流し

「ブラジルの銃を持った犯罪者も」

たわいも無い泰隆の言葉に、清い雪は

私は見ていた

「文明社会未接触のアジアの小島の原住民も」

その

丁寧な眼差しをくれて

色彩

「ニューヨークのアパートメントの最上階で世界の中心を見下ろすお金持ちも、誰も」

紅の

…まじ?

濃い

「彼も。」

澄んだ…

大丈夫?

と、同時に

「言葉って、もう、」

顕かに

やさしさ。

色彩に澱んだ

「発された瞬間に総て」

それ

幸せ。

血の色彩

「嘘。」

私は見ていた

ただ

ずっと

「見ても居無い風景しか、そこに」

私の眼差しが

あたりさわりもない幸せ。

捉え続ける

「構築しない。倫理って、」

その

ありふれたやさしい気配こそが幸福の真の姿なのだと

どうしてなのだろう?

「なにって。」

にも拘らず、なぜ

そんなつぶやき、いきなり

私は、隠しようもない、紛れようも無い苦痛に

ひとりで塗れながら

「俺、想うんだけどね。」

それでも全身でただ恍惚を…喜び?

の、ような、…そんな。あざやかに

はっきりと、否定できもし無い、謂わば

耳元でされたような。

それぞれのちいさな歓喜の声のそれぞれに無数のそれぞれの

声の歓喜の連なりに、身も蓋もなく飲み込まれそうになりながら

鳥たち、――それら、姿をさえ顕さないその

「もっともエレガントな倫理形式は、手当たり次第の総てを裏切り続けることだ。なにもかも、そいつが手にふれる総て、手にふれなかった総てをさえも。」

「俺のことも裏切ってるの?」

「勿論、…ね。

安楽

外国語の勉強したことある?」

愉楽

「あるよ。」

安逸

「所詮日本の学校の英語でしょ?日本人、日本語しか

無慈悲なまでの

話せないじゃん。

安らかな

知性ってさ、なんだと思う?

覚醒

あれ、結局は

冴えた

言葉なんだよ。日本語の中にしか

絶望的なまでの

日本語における、

見い出す

知性って

私は

存在しない。失語症の人間の知性って

嘴の苦痛の様々な散乱の鳴り響く轟音のような

創造できる。完全な

無際限なまでの感覚

失語症。書けないとか話せないとかじゃなくて。完全に、

私は

言葉っていう感性、

見い出す

感覚?

風景

それ自体喪失した失語症って言うのが存在したとしようよ。絶対に、そこに

あざやか過ぎるほどの

知性って無い。なにかは在る。それは

——救済?

知性によって規定されえる知性なんかじゃない。樹木って、知性ないでしょ。DNAにもリオディ岸リボ核酸にもましてやジャンクDNAにも。でも、それ等の命じるままに発現って起るんでしょ。すくなくとも、発現を統治しようとはして居る。乃至、

まさか。こんな

結果的に統治して仕舞って居る。つまり、知的行為が

苦痛しか存在し無い風景が救済のそれで在っていいものか

行われて居る。…いずれにしても、日本語勉強するじゃん。私ハ、ユイシュエンです。その(——と、ユイ=雨は)瞬間、それ以外に一切の(わざと下手糞な)知性の無い(日本語発音を)自分が居るの。貴方ノ(むしろ其処に居無い誰かを嘲笑うようにして、

「——でも、さ。」

声を立てて笑うが、潤って、なんか、訛り在るよね?

囁くユイ=雨のやさしい音声を聴く。







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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