小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■47
以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。
ご了承の上お読み進めください。
又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、
特にそれらを特に顕彰しようとする意図も在ません。
櫻、三月の雪
…散文。及び立原道造の詩の引用
三部作
《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ
或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ
Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης
ゾロアスター
容赦ない慈愛を曝しながら。
…引き裂けちゃうかな?
「頑張る。」
潤が、限界いっぱいにまで大口を開いて、ユイ=雨の押し広げた其処に唇を、ふれて仕舞う寸前にまで近附けて、やがて、頸を上下させ始めるを、私たちは赤裸々な安らぎの中に、見詰めていた。
時に、ほんのちいさな、鼻に乱れた笑いのかゝった息音しか聴こえない。
「どう?」
んー…
「でっかい?」
「だいじょうぶ?」
「裂けちゃいそう?」
「いいから。」
「裂けちゃっていいから。」
「だから、ね…」
「■かせてよ。」
「まじ、もうちょっと。」
「先っぽのほう、いいかも。」
「やばい。…だいじょうぶ?」
「壊れそうじゃない?涎、」
「お前、だゞ漏れ。」
「…馬鹿?」
「お前、…」
「やばい。…笑っちゃう、」
「もう。」
「やばい。」
「■きそう。」
「いい?」
「■くっ」と。
云った瞬間に、ユイ=雨は、背をのけぞらせながら声を立てて、笑い崩れた。不意に、片手に押さえつけた潤の頭部を、其処にある筈の彼の性器の根元にまで押し附けて、自分のその部分の皮膚には決してふれさせない儘の、ぎりぎりの距離に、
「やばい。」
ユイ=雨は、笑い声に好き放題に空間を震わせながら、…馬鹿すぎてやばい。喚き散らす。想い出す。その瞬間に、私は、――私たちは、出産のために、潤が居無くなった彼女の部屋の中で、さんざんユイ=雨と戯れた後でも、私の身体には疲労の影さえ残らない。なぜなら、と。
お気をつけ下さい
そんなことは当たり前に過ぎない。実際、
明日
行為など行われてなど居無いのだから。ただ、
関東地方にメタンの雨が降るでしょう
肌を寄せ合って、じゃれあうだけの。つけるのを忘れていたエアコンのせいで、室内には夏の午前の熱気が混濁して、汗ばんだ肌に感じられる汗の触感が自分の分泌されたのか、撫で附けられただけの他人の分泌したそれなのか、もはや、それさえわかりはしない。
それは
いずれにしても皮膚はただ、それ等を他人のものとしてだけ認知して、
かうばしい
想い出す。
さびしい
「俺、
光のまんなかに
嫌いじゃないんだよ。」
それはひとつの花の名であつた
清い雪は云った。
それは
囁きかけるように。
あの昼に
不意に、
かうばしい
振り返った彼の言葉の唐突さに、その
さびしい
あまりにも簡単で、平明に過ぎない日本語は、初めて
僕はなんにも
耳にした聴きなれない
僕はなんにも知つてはゐなかつた
異国語のようにしか聴こえない。…え?
青空に
「何?」
かうばしい
聴き取れなかった事実を
さびしい
素直に
光のまんなかに
眼差しに曝すしかなかった私の呆気に取られた表情を、私をただ、
僕は
赦してあげる、
僕はあなたの口にする言葉をおぼえた
と。
なかしみではなかつた
そうつぶやこうとした一瞬を、
かうばしい
固まらせたまま放置した、その
さびしい
清い雪は愚鈍なものに見い出していたのだろうか?
光の
…吐息。
まんなかに
の、…ような。
それはひとつの
そんな
それはひとつの花の名であつた
笑い声を咽喉に立てたユイ=雨が、結局は私を愛しているのだという実感が、どうしてもつかめなかった。
彼の、留保無く女性的な体の総てが、誇らしげに只、彼の容赦ない女性をだけ曝す。…まるで、と。いつも。
きみは
もう
そう想う、まるで、俺たちの行為は
うつくしいきみは
泣かないで
いつでも、始まったときから終わるまでも、結局は
ただ
もう
行為が終わった後の戯れを、無際限に
ぼくをおののかせる為にだけ
笑わないで
繰り返して居るような気がする、
ぼくのめのまえに
もう
と、私は
棲息していたのだった
そこに居無いで
「嫌いだって想ってるでしょ?」
十四歳の清い雪。
「潤さんのこととか。」
多感な少年。
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