小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■40



以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。

ご了承の上お読み進めください。

又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、

特にそれらを特に顕彰しようとする意図も在ません。





櫻、三月の雪

…散文。及び立原道造の詩の引用


三部作

《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ

或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ


Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης

ゾロアスター



一瞬だけ後れて、怒号のような





10.ふるえて已まない僕たちの日々の風はいま



轟音。

慌てふためき、興奮を素直に曝した私たちの押し広げられた赤裸々な唇が立てた、それら、声。

無残で

音声。

どうしようもなく

音。

――迷惑だよね

…それら。

或る少女が云った。…なぜ、学校?

つらなる、それらの

他でやってよ迷惑だから

つらなり。想い出す。いつでも見い出していた風景。物心ついた時から?

ほら

その前から、常に、…ほら。

ぼくが血を流す

血まみれの男には性別さえもが定かでは無い。彼、その、地平線だけを素直に曝した原野に、あくまでも

…知って居る

どこまでも

私の見い出した

此の原野に

中央に突起した一本だけの

どこまでも遠く

中央など無い事など

樹木が、そして、

遥かに拡がるその

振り向けばそこには

男は

懐かしい風景に涙するのか?

どこまで同じ

その

終には

原野

繁茂した枝と葉に抱かれて無様な形態を何かに捧げる。

知って居る。私はすでに、自分が夢を見ている事など意識して仕舞っていたし、私は

…夢

瞬きもせずにその

いくつもの夢

男の死体、あるいは、生きていはしないその肉体の残骸を見い出しながら、

…夢

見詰めていたわけではなく。

遥かに遠い、私の夢

かならずしも、

…夢

見詰め、

の、ようなあなた

凝視していたわけでもなく、樹木の枝に引っかかって野晒しの、自分の、あるいは他人のものまで含めた血に染まった肉体の崩壊にまばらに鳥たちが集まって、彼らの生々しい餌をついばむのを眼差しにふれさせるのだった。

僕は

晴れ渡った原野の空に

聴くのだ。そして

色彩はなく、それは光、

それら

色彩を消滅させた逆光の

残酷で

原始的で

繊細で

生き生きとした

瀟洒で

光の照射。

小さく、あまりにも

見あげようともしない私の眼差しはその

小さく儚い生命を繫ぐ小鳥たちの群れの羽撃き、…ほら

男の破壊され

血染めの嘴

崩壊した肉体の残骸を再び見い出していたのだった。

光は

何度も

僕を包んでいたのだった

繰り返し見い出されたその死体に、もはやまともな形態など残存せず、そもそももとからまともな形態などではなかった。頭部は顕かにいびつで、ただ赤裸々にその形態の異形を曝して、あまりにも醜悪な胴体に、でたらめに張り付き、伸びた四肢には生き物としての尊厳さえ予めない。彼は

光は

美しい。

僕を

私はその男がただ、煽情的なまでに、匂い立つほどに美しいことを知って居る。血に塗れ、肉体の残骸になってさえ、あざやかな認識として、あるいは、血と嘴に穢されたいわば汚物になってさえも尚、彼は

…ささやいて

一つの造型として

あなたの

美しい。…ね?

あなただけの

と、つぶやく。

むしろさゝやかな

男の美しい唇。

愛の言葉

やわらかく、あくまでも肉の厚みを感じさせないままに、何処かしらで

しづかな歌よゆるやかにおまへは

俺が見ない振りをして居るうちに

どこから来てどこへ

何故か荒々しく

私を過ぎて

ささくれ立った、不意に加えられる暴力の可能性を感じさせる。必ずしもそれは完璧な安堵など与えずに、いずれにせよ君は壊されるんだよ、と。

いつか、不意に、僕は君を振り向き様に壊して仕舞うに違いない。そんな兆しをかすかに、且つ

暴力は

そして傷を負った

鮮明に

いつでも

ダイヤモンドが

明かして、とは言え、何も明確な

美しかった

砕け散る時

言葉をは発さない。

私のその唇が見詰められているのには気付いていた。…知りたい?――と。そう短くその言葉を云い棄てたとき、清雪は声を立てて笑った。

むしろ邪気も無く。

「死ぬなとは云わない。…俺だって、いっぱい自殺した奴見てきたし。」清雪にそう語りかけながら「けどね、」私は「此れだけは云っておく。お前が」自分が清雪に自死を想いとどまらせようとして居ることに「自殺したって、取り立てて」気附くいた。

必ずしも、私に彼の行動や決断を制限し況してや訓育をほどこす、そんな義務も権利もそもそもの関係性自体なにも無いことを、自分で認識しておきながら。

「お前が何かを出来たわけじゃない。」私には「自殺なんて、」…違和感だけが在った。「本質的に無駄死にだよ。自分含めて何も救わず、何も解決して無い。むしろクーデターでも起こしたら?極右皇道派なんだろ?戦陣訓なんか引用してたよな。…革命でもしちゃう?…盛り上がるよ。いまどき、そんな事やったら。…やってみたらいいじゃん。独りで国会議事堂乗り込んで腹でも切っちゃえよ。」

「それも考えないことも無かった。でも、必ずしも政治青年って訳じゃないし、政治なんかで自分を穢したく無い。世界の政治的全実権を掌握するか、一瞬だけの誰も見たことの無い、且つ誰も二度とふたたび見ることの出来無い或る固有の美しさを見るか、どちらかひとつを実現させてやるって云われたら、人類恒久平和の実現も逆に人類抹殺の夢もなにもほうったらかして、美しい一瞬の美しさのほうを選ぶ。迷うことなく。…雅びやかって、そういう事でしょ。」…ね。

み、や、び、…と、笑いを堪えながらもう一度呟いた、清雪のやわらかすぎる発音は、みゃ…あ、み、——と。

まるで発音が下手糞な異国人に耳元で囁かれたように、そして、ユエンが振り向き見た。

シャワールームから、素肌を曝した儘、体を拭きながら開け放たれた、シャッターから差し込んだ日差しに斜めに「どっちにしても、實行動さえ起せばお前の訳のわかんない右翼気取りのツイッターのさ、言論?そんなもんの無意味さと無力さと無効さがよくわかるよ。なにをもって世の中って動いてんの?その場限りのしょうもない情緒の連鎖で動いてるわけ。そもそも(——「まさに、その」と、)天皇自体が(「Twitterだのなんだのが解放する…)それを(…偽造する?謂わば劇場的体験として、…)望んでないはずでしょ。のみならず(そんな情緒の群れ、))宮内庁でも(…ね、——と清雪は表情も無く)なんでもね。」

「天皇を神格化するなら、天皇の神格化を策謀している奴のほうが逆賊になる。忠義に個人意志なんてあってはならない。個人として神格化を意志してる時点で、すでに天皇というコマを個人的に利用し、自分の下に貶めてる以外のなにものでもない。忠義の志士なんて本質的に全部そう言うものだよ。幕末の志士だろうがいくつかの戦前皇軍事件の謀叛将校たちだろうが律儀に御為に玉砕した所謂英霊たちであろうが。」

「…じゃ、なんで。」…滅びたいんだよ。

清雪は云って、そして、ややあって、もう一度微笑みなおした。「…た、く。」

と。

「た、…い、…くは、…た、いとは、想わない。滅びたい?滅びをを求める?――まさか。もともとすでに滅びかけだよ。なにもかも。ニュートンの林檎状態で当たり前に必然的にね。だったら、あざやかに滅びて仕舞いたい。」






Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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