小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■38



以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。

ご了承の上お読み進めください。

又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、

特にそれらを特に顕彰しようとする意図も在ません。





櫻、三月の雪

…散文。及び立原道造の詩の引用


三部作

《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ

或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ


Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης

ゾロアスター

 


…ね?

「知ってる?」…秘密。

囁きかける。

「ひみつ」

画面越しに、私にだけ。…春。

夢を見た

校庭の桜の下で、立ち止まった綾子が足を止めた。

不意に自分で息を止めて

…痛い。

窒息しそうになる雪乃

つぶやく。

——母親の傍らで

私を見上げもせずに振り向き、眼差しを

その背中を平手に殴打して

グラウンドに投げ棄てた儘に、雑音。

唐突に呼吸することを想い出した

朝の、登校の、生徒の。

雪乃の

私を含めた、彼等の。

喘ぐような突然の息遣い

たまたま彼女の後ろを歩いていただけに過ぎない。

まるでいま

年下の女性とが綾子の脇を迂回した。

海中から始めて陸に上がって

花が散って、舞う。

酸素をじかに肺に押し込んで仕舞った

空間に。

新種の生き物で在るかのように

色彩。

…いつ

なにもごともなく、私も彼女の脇を通り過ぎかけたときに、…言葉。そんなもの、

いつ彼女は居無くなったのだろう

もはや必要もないほどに、彼女のかすかなおびえを、私は鮮明に

――いつ?

感じ取った

母親とその片方の肉親以外に、私に身寄りなど

綾子が何におびえていたのか、私にはわからなかった。そのすべはなく、必要もなかった。美しい花々の下で、地味な彼女の、人間の、地味な皮膚の色彩は、あまりにもみじめで、留保も無く汚らしく、風景の中の汚点に過ぎない。

同じように、…と。

貴方と違って、女たちが夢見た幻のように美しい私と同じように。髪を掻き揚げようとしたその、自分の腕、…噴き出す血。

紫色の。

花々の桜色。淡く、そして、儚くも、にも拘らず図太い樹木はそこに不動の存在を誇示して、言葉さえもなく、変形した皮膚が、でたらめにうろこのようにめくれ上がって、脈打つたびに筋肉は血を噴出すが、…高貴、と。

そう言う言葉を、あなたは知って居るか。

高貴。…穢されようのないもの。――知って居る。その、筋肉の筋の一つひとつの隙間からはみ出して繁茂した触手のような青緑の金属体が、それは私。

ざまざまな肉片を内側から滲ませ続け、高貴さとは、私だ。

そう、耳元でささやく、図に乗った不埒さを避難することなど、その美しさの前ではすでに、禁じられてさえ居た。

私は、そのとき、すでに綾子を見捨てていた。綾子が一々、中学の屋上から昼休みに飛び降りたのは、その次の日の昼休みだった。

いつ

夢みたものは

うもれる。

いつ、雪乃は居無くなったのか

ひとつの愛

あえて、その

十三歳の時まで間歇的に

ねがつたものは

肌。…褐色の

想い出したように、繰り返された

ひとつの幸福

いろづた色彩、その

雪乃による折檻の記憶

それらはすべて

息遣う肌

介護

ここにある

ユエン。「云えよ。」

不意に息を止める

声。…それが、…声。――云えよ。

彼女への

ハイビスカスの

何を?

記憶

極彩色の

「云えよ、…」と、信吾の声だ、と。

想い出そうとすれば想い出そうとするほどに

樹木で

鼻にかかった優しい声。…と。それ。

そこから先の雪乃の記憶が

姿を見せようとし無い

それが彼の声だと言うことには気付いていたが、…ほら。

無くなる

鳥たちに

「云っちゃえ。」

育ての親の、安藤雄一

ついばまれるのは

違和感があった。

雪乃の弟

それは

華奢な指と手のひらが掴んだ和章の後頭部、その顔を町の、公園の、公衆トイレの便器の間近に近づけて、哄笑とともにつぶやかれる声には、もっと陰惨な暴力性が溢れていてしかるべきだった。そんなに、女にやさしく囁き掛けるような、と。

想った瞬間に、信吾の眼差しが私を見上げた。和章への制裁。理由は、単に停学を喰らった信吾の、暇つぶしの制裁に過ぎない。…だったら。

学校やめてもいいですか。

云った、和章に、「…こいつ」担任教師は殴りかかったらしかった。「■んこ喰いたいですってさ。」

信吾の笑い声が立ち上がる前に、私は彼の手の甲ごと和章の後頭部をけりつけて、小便器に彼の額を押し付けた。信吾は声を立てて笑っていた。派手に、

一丁二丁しか離れていない安藤の家に

きたねっ

様々な声を、彼の

総てを了解済みで

いてっ

女じみたやさしげな

引き取られて行く私が

てー

純白の、と

彼の家に自ら

てっ

そう云ってやりたいほどに

荷物を持って出向き

から。きっ

白く透き通った

鳴らした呼び鈴に

てっ

肌。…を曝す

あ、——

たねっから

咽喉ぼとけの震えに、…声。

「来たの…」

私ははしゃいだ信吾の邪気もない声を聴いていたが、這わせた。

それら

舌を、わたしは

ドアを開けた博美

みたものは

そのやわらかい、

叔母の

ひとつの夢

微弱な息吹を立てる

乾いたやさしげな声

ねがつた

肌。…褐色の

「這入って」

それ。色彩。

「なにも、…」

幸福

舌がふれているものを

ね?

それらはすべて

決して

「気兼ねしないでいいから」

ひとつの

息遣う肌

上質に造った上品な

ここに

傷付けて仕舞わないように

微笑み。そっと

ねがつた

気遣いながら

やさしく寄り添おうと謀んだような

…ユエン。と、其の時、音響を聴いた。轟音、…と、して、むしろ耳の中には響いていた、彼の息づかい。ユイ=雨が、あくまでも囁き声の音量で

皇国革命計画其ノ二

わめき散らす…もう。

私には記憶がない

天皇携挙

声。…や

雪乃が何処へ行ったのか。安藤雄一が

天皇家並ビニ皇孫ノ血統須ク高天原ニ復帰戴クベシ

「だ、…」

私の生家を売却し、更地に戻したことだけは知って居る

神皇ノ肉体喩エ現世ノ血ニ塗レントモ血統ハ神聖ニシテ永遠也

からねもうや、だからねま、じおれも、おーや、も…ぉーやだからねまじで、おれ、もうやだからね。こういうの。まじ、むかつくんだけど。やりたくてやってると想ってんの?違うから。完璧違うからね、それ。やりたいわけねぇじゃん。こいういうの。おれ、好きじゃないから。求めてないから。バカにすんなよ。おれ、サドってねぇぞカス。ぶっ殺されたいの?…やだから。こういうの。こんなん、したい奴なんか普通居ないかねまじわかってんのこのくそのかすのはげまんこのぶたがさまじむかつくころすまじやるよば「…まじで、」

…と。






Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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