小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■35
以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。
ご了承の上お読み進めください。
又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、
特にそれらを特に顕彰しようとする意図も在ません。
櫻、三月の雪
…散文。及び立原道造の詩の引用
三部作
《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ
或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ
Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης
ゾロアスター
「夢。」
…と
捉え
「…見るんだよ。」と
ユイ=雨は言って
…られ、…て?
囁く耳元の私の声を聴きながら、いつものリスト・カットに興じるお決まりの潤は、彼女が愛する男の腕の中で失血していく。
—―告白していい?
大日本者神国也
音もなく、…あるいは、その
と
天祖ハジメテ基ヲ拓キ
かすかな音響に依って満たされるにふさわしいサイズの中ならば、
潤は、…知ってた?
日神永ク統ヲ伝ヘ給フ
…大音響で?
と
我国ノミ此事在リ
流れ出す、それ。
私ね
異朝ニハ其類ナシ
血。
幸せになる為に生きてるんだよ
此故ニ神国ト云フ也
あくまでも他人の、嘗めていた。腕の中で、その
だってね
神代ニハ豊葦原千五百秋瑞穂ノ国ト云フ
いびつな捻じ曲げられた形態の曝した、頭部らしいそれの
わたし
天地開闢ノ初ヨリ此名在リ
中央部で、切り開かれた穴から突き出した、あまりにも
幸せになる為だけにね
又ハ大八州国ト云フ
部厚い舌のような器官で、潤は、その、自分の手首には
生まれたから
又ハ耶麻土ト云フ
一瞬の眼差しさえも落そうとはしない。
「救急車必要?」
うな垂れて、日当たりのいい壁際に立ちすくんだユイ=雨は、小窓の向うの風景を、見る事も無く眼差しだけ投げ棄てて、照らされる。
容赦なく
泣かないで
日差し。
美しいもの
もう
…に、照らし出された、その。
あざやかな
泣かないで
匂い立つような、美しく儚い、あまりにももろい夢のような造型。少年たちが、まぶたを閉じた想像の中で作り上げては、見開かれた一瞬の後ではもはや想いだせもしないような。
「…いらないでしょ。」
「ずっと、見てるの?」
…なに?
と、つぶやいて、振り返り見たユイ=雨の微笑んだまぶたは、おびただしい涙が濡らしていた。
のたうちまわって、それらはそれがふれ、存在しているそこをだけ好き放題に支配する。強烈な折檻。
「おれら、」…と「一緒だね。」
髪の毛を引っつかんで、引きずり回す。
そう云った私に、ユイ=雨は微笑んでくれたのだろうか?もとから微笑んでいた彼は、終にその答えを明かすすべを持たない。
壁に打ち付けられて一瞬ゆがんだ潤の
壊されるために生まれたものは
顔面。
より凄惨に救いようも無く壊されなければならないという
…血。
圧倒的な確信をその時
「なに食べる?」と、
私たちは
振り向き様の私が声をかけた一瞬に、潤はその日、いつもの、いま、自分がなにを云って居たのかわからないかのような、そんな眼差しを私に、ひとりでくれた。
花舞う午後に
家畜のような、と。
蝶々は揺れて
そんな想いが、私の頭の中によぎる前に、彼女の背後に居たユイ=雨は潤の髪の毛を引っつかんだ。
私は、ユイ=雨の行為を、完璧に理解し、容認していた。その、突発的な暗い憎悪を素直に曝したユイ=雨の眼差しを見い出した瞬間にはすでに、確かに、それが家畜のようだったからではなくて、理由など必要もなくあまりにも正確に、潤の物云わない眼差しがとった一瞬の行為は処罰されるべきだった。
潤は、その存在自体が
雨の中にも
穢かった。
風そよぎ
引っつかんだ髪の毛ごと、壁に潤を打ち付けるユイ=雨を、私はひたすらに容認し、承認していた。
否定しようも無く、それは理不尽な暴力だったに違いない。私は気附いていた。ユイ=雨自身がすでに、自分の下して居る暴力への鮮明な嫌悪に
それは赤
花の匂い
苛まれて居ることを。
時に白
ハイビスカスの
殴りつけられて、一瞬、空間に
花盛りの
私の死んだ肉体を
潤の眼差しが茫然とした、わずかな
或は紫
突き刺した樹木が繁茂させた
失心の瞬間を曝した。
紫を越えた紅蓮の
床に崩れ落ちた潤のわざとらしく、力なく、犠牲者じみて突き上げられた尻をユイ=雨は蹴り上げて、その、足元の床に唇を押し付けた穢れた汚物の咽喉に、ひずんだ音響を立てさせてやった。
それはせめてもの、汚物への恩寵に他ならなかった。それが、生きて在る事を誰もがせめても確認する為の。
ひとしきりの、やるきもなく緩慢な暴力が、単なる惰性のうちに繰り返されて、そして、為すすべもなく収束し、私を振り向き見たユイ=雨はただ、困惑した眼差しだけを曝していた。
総べては、いま、
鮮明に、夢のように
美しい
正当だ。…と。
いつか見た
花が
私はわずかな諦めもなく、ただ
夢のように
咲いています
確信していた。自分がそれを確信してある意識さえないままに。罪の意識など存在しようがなく、眼の前の家畜じみた、…と。私たちの眼差しが捉えたその、やわらかな湾曲を描いた豊かな臀部の持ち主が、やがて、言葉もなく立ち上がりかけて、しくじり、壁にもたれて、涙も流さずに泣いているような動きを、振るえ?…を、唇にだけつつましく曝したときに、次に彼女が何をしでかすのか、私たちは、知っていたはずだった。
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