小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■16



以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。

ご了承の上お読み進めください。

又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、

特にそれらを特に顕彰しようとする意図も在ません。





櫻、三月の雪

…散文。及び立原道造の詩の引用


三部作

《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ

或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ


Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης

ゾロアスター 


…なに?

と。…どうしたの?

そんな、なにもおかしい風景ではなく、なにも際立った所もなく、なにも狂っては居なくて、なにもかも、むしろ正確で、当たり障りもなく、清潔でさえある風景なのだ、と。百合の花を両手で掴んで、花粉をその唇から頬にかけての褐色の上になすりつけながら、花弁を食い千切って咀嚼する潤の佇まいは、何事も、わずかにでも訴えようとはしない。彼女の息吹きがただ、私たちにふれていた。

総てが、

…ほんと

ゆがんだ骨格が

…と。

よかった

彼女の骨格をひん曲げて

眼に映るもの総てが、当然の風景に他ならなかった。「…時々ね。」

と、そう云う

床の上に、肉の

「姉貴、…」

泰隆の声を私は

のた打ち回るような無様な

「ほんの、」

眼を閉じたままに

曲線を描いた。その

「もう、ほんの、だけど」

背後に聴いていた

女。総ての

「わめくんだよ。…もう」

義姉って、…ね?

皮膚は反対側にめくれ上がって

「なに?」

実際、クスリのせいだか

曝す。血と

「獣の雄たけび的な。」

出生のせいだか、なんか

神経系と、そして

「勘弁してくれって。…ね」

精神疾患とか、そういう

筋肉、あるいは筋

「想う。…さすがに」

何のせい知らないけど、…ね

それらの形成する複雑な色彩。思わず

「さっすがに、…ね。」

ぶっ壊れて、もう

笑ってしまいそうなほどに

「この俺だってさ。」

人間やめちゃったけど…そもそも

膨張した肺が背中らしき

「想うよ。…義姉想い人権主義者の此の、…」

清明さんと一緒に居たときからもう

ねじくれた複雑な細い部位を

「仕方ないよね。…もう」

そうだったんでしょ?…けどね

食い破って、派手に

「人間の形してるだけだから。…なんか」

けど

吸音を無造作に立てながら

「激しいらしい。損傷」

姉貴、もう一度会えてよかったね、って

それは呼吸。…彼女の

「脳自体の。…なんか」

想う。たぶん

引き裂かれた皮膚と血管が、なにか

「難しいことと言ってたよ。医者。」

もう、姉貴の目にはさ

理解できない紫色の肉の部位を必死に

「わかんないから。云われても。ともかく」

頭には

絡めとろうとして空間に

「一ヶ月?」

いま、誰がいて、誰が

好き放題に暴れていたが

「…半?…か?」

会いに来てくれてるんだか

垂れ流される

「二ヶ月足らずくらい」

たぶん、…ね

肛■らしき開口からの透明な粘液が

「発作起こすけど。いくら、」

理解出来てもいないと想うけど

しずかに

「薬剤飲ませてもね。…医者の」

でも、…

音も無くゆっくりと、ただ

「でも、…」

よかった。逢ってくれて

上方に上がっていった。それは

「お腹壊すのに…」

姉貴が、たぶん、本気で

付着した天井でそこもまた

「いっつも。花、食うと。」

本気で愛した、唯一の

自分の肉体の一部に違いないことを

「ひどいよ。もう」

人だと、俺、

確信して

「ここら中、排泄物塗れになっちゃう…」

「…関係ないよ。」清雪は、不意に、そう云った。…だって、さ。

「後片付けするの、全部俺じゃん?…絢子さんなんか、なんにも…」敢えて、というわけでもなく、清雪の言葉は、清雪含めた私たちすべてに、無視された。「何のかんの言って、姉弟だから、たまに連絡とってたんですよ。で、よく話してたよ。清明さんのこと。いろいろとさ。…だから、結構知ってる。…なに、バイって?…そういうの?…そういう…それ、とか。中国人の話しとか。でもね、必ずしも確信なんか無いけど。あくまで自分勝手な想い込みなんだけど。いいか悪いかはともかくとして、姉貴、たぶん、一生に一度の恋をしたんですよ」

軍人ハ

いつでも

…と、そう

質素ヲ旨トスベシ

私たちは、すでに

背後にささやく泰隆の、顕かに自分勝手な

軍人ハ

もうなにもかもが

感傷に過ぎない独白に

信義ヲ

取り返しようもなく壊れ始め

誘われたわけでもなく、私は、すでに、閉じた、自分の両眼から涙を

重ンズベシ

何もかもがもう

流していた。

軍人ハ

手遅れである事には

嗚咽を漏らすわけでもなく。ただ、

武勇ヲ

気付いていた。ユイ=雨も

涙だけを。

尚フヘシ

私も、そして

清雪が

軍人ハ

潤自身さえも

梳かしてやってるのかもしれない。潤の

礼儀ヲ正クス

時に、意味の判らない

長く、あまりにも

ヘシ

無意味な音響をあるいは

清潔な髪の毛は日差しのなかに光沢を放って、鼻に

凡生ヲ我国ニ受クルモノ誰カハ国ニ報ユルノ心

独り言を、私たちの眼差しの中に

塗れた彼女はむしろ、

大ニ世界ノ光華トナリヌベシ

容赦もなくあまりにも

初めて

我国ノ光ヲ輝サント思ヒ

明晰で無様な違和感とともに

見せたような、清楚を窮めたたたずまいを

嗚呼此ニ至リテ愈々益々

曝して仕舞う潤は

見せていた。私は

皇国ノ栄光ハ全世界ノ

想い出す。

栄光ニ他ナラズ

その、潤のたたずまいにではなくて、ややあって、振り返り見た清雪の、じっと母親に、見つめるでもなく眼差しを投げていた美しい少年の、受けた日差しに端整な顔のかたちを淡く翳らせた

見詰めないでください。その

時ニ

眼差しに、雪乃、

あまりにも

潔キ無駄死ハ

と、それが

やさしすぎるあなたの

魂ニ至上ノ美ノ清冽ヲ

私の

眼差しで。その

凜トシテ表現ス

母親の名前だった。

眼の

憩う。わたしは

如何ナル見返リモ望ミ得ヌガコ

あなたが囁きかけたその

ソニ報イノ無イ忠義ヲ通スノガ

微弱音の上に身を

真ノ忠義デアル以上凡テノ忠義

横たえて

ハ正ニ無駄死デ無ケレバナラヌ

ふたたび

もう、

随分も長い間忘れて仕舞っていた気がする。雪乃、と、その、私がとっくに忘れて仕舞っていたと想い込んでいた記憶の故に、清雪と、そんな名前が彼につけられて仕舞ったのだろうか。私の(――附けてやれよ。)不意の(お前が、…)想い付きによって。(…と。)…名前、如何するの?

そう聴いたのは私のほうだった。病院で産んだ自分の息子を、まるで、普通に生まれた普通のありふれた子供を抱くありふれた母親であるかのようにして、腕に抱いていた潤に、初めて見舞ってやった時に、






Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

0コメント

  • 1000 / 1000