小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■12



以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。

ご了承の上お読み進めください。

又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、

それらを特に顕彰しようとする意図は在りません。





櫻、三月の雪

…散文。及び立原道造の詩の引用


三部作

《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ

或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ


Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης

ゾロアスター 



瞬く。

私は、彼女、ユエン、というその女、レ、ティ、ミー、ユエン、…Lê Thị Mỹ Duyên。ベトナム人の彼女のその姿を、今、生まれて初めて見い出す、そんな錯覚に捉われて、不意に、唇に例えば…あ。

と、…そうした短い音声を口走ってしまいそうになって、確かに。なんども彼女を見て来たには違いなくとも、いま、ここで、此の瞬間に彼女を見い出すのは確かに、初めてではあるに違いない。私は自分が、私の母親と同じような、あるいは全く違う、いずれにしても狂気と、そう…分裂症。分類されるべき…統合失調症。症状に犯されはじめて仕舞った…軽度の鬱併発?兆しをさえ感じ、ひとり…ころころと名前の変るその診断名。おののきながらも、自分のその在り獲ないおののきを嘲笑っていた。

私の精神は、健康だった。

ベトナム、ダナン市、その

母親

中部の町の、ユエンの実家に

いくつもの

私たちは棲み着いていた。とはいえ

カラフルな錠剤を口に含む母親

私たち以外には、

死んで仕舞えばいいのに、と

そこに

そうすればむしろ楽になれるだろうに、と

棲息するものなど、ほとんど

隙があれば、不意に

いないに等しい。彼女の

自殺衝動に襲われる彼女を

母親はすでに死んでいて弟は

周囲の家族たちは止めてやる以外の

サイゴンに働きに出て、そして父親は

すべを持たない。彼女の

何処かに遊びに行っていて、家には

狂った眼差しは、その瞬間

めったに

顕かに、彼女固有の論理と

寄り付かない。観光都市の

倫理と

中心部からはずれた

正当性の元に

クアン・ナム省の近くの雑多な

いまここで正に彼女自身の

区画。時に

速やかな死を

聞えるのは、

破壊を

鳴き声、何羽も

消滅を

隣のうちに放し飼いにされている鶏が

望んでいるというのに?…人権?

立てる鳴き声と

尊厳?…あるいは

わななく飛べない翼

それらそのものが、発作的に

その

歯軋りを始めて、んー…

飛び立つ羽撃きを擬態した

音響。いくつもの

濁音のついた「ん」を執拗に

かさなり合うそれら、

鼻からのばしてやがては、眼にふれる

ずさんな工事がその

物のすべてを呪詛し

劣化しきった古い建物を、まるで

哄笑する彼女から

廃墟じみてみせて

彼女固有の尊厳と、権利そのものを

すくなくとも私には

奪って仕舞って居る気がした。…叫び

まともな住居とは想えない。ユエンは

声。叫ぶ

寝ていた。未だに

声。…怒号、終に、濁音つきの

目覚めないままに、私にだけ

長い「ん」は

彼女の

それら獣じみた轟音に一瞬だけ堕し

無防備な寝姿を見せていた。二人しかいないあまりにも粗雑な空間の中に、中華風の紋様を飾った鉄の格子のはまった窓が、カーテン越しの朝、6時の日差しを投げかけて、清冽な、と。そう云って仕舞えばいいのだろうか?

凛とした冷ややかさを何処かで、あくまでも空虚に感じさせながら、空間の中はそれでも亜熱帯の、すでに熱気を孕み始めた空気の温度で、肌にじかにさわっていた。

私の上半身は裸だった。顕かな劣化が、皮膚には曝されて居る気がした。私は四十を何歳も越えていた。こんな、無残な年齢にまで生き延びるとは、自分でも想わなかった。老いさらばえる前に砕け散りたいと、そう想うまでもなく、十代の私は自分がそのうち、綺麗に壊れて、死んでしまうことを確信していた。あるいは、確信以前に、未だに実現されて居ないだけの事実に過ぎなかった。まさか、と。十代の





3.輝いている。お前の裡に、それにも益して



私が、老いさらばえた私を見たら、嘲笑うのだろうか?それとも歎くだろうか?…醜い。

いずれにしても。

私はあまりにも、醜い、と、自己認識する私の周辺に、色眼を使い続ける女たちは、或は、私には狂っているとしか想えない。…と、

雨に

…花を

見詰めた。壁の

打たれた花々は、時に

全身を移せる姿見に映った、私の、その

頭を小刻みに垂らし

花を

眼科から内側の筋肉を

震わせながら、それでも

喰わせてるんだ

まだらな贅肉まであわせて総て

やさしい雨に打たれ続けたのだった

噴き出させた身体。その

咲き誇った

清雪は

血に塗れた、そしてもはや骨格さえ

熱帯の花、その

云った。彼

いびつに

ブーゲンビリアの花々は

その

或は、笑い出してしまうほかないほどに

紫色に近い

十五歳の

滑稽に

淡い紅の

清雪。三十を半ば以上越えた

変形させ、歪めさせた、もはや

色彩を曝す

私の眼差しには、あまりにも

二本足では立っていられない私は、頭部に

花々はただ

若すぎ

でたらめに開かせた幾つめかの

しずかに

幼すぎ、むしろ

肛■から

震えたのだった。その

無残なほどにやわらかな

突き出させた細い脚で、御影石の床に

花びらを擬態した

夭年の彼は

手を突き、ひん曲がった

紅葉の葉の真ん中に

花を、…

性器が口の中から、真っ二つに

ちいさく伸びて

ね?

割れた先端に、黄土色のべたついた体液を

喰わせてんだ

垂れながす。…見る。それ

空は白

答える

私が眼差しの中に見い出す、いくつかの

雲のおびただしいつらなりが

私は

風景の、その

空を

ややあって

一つ、…うつくしい。

白濁させて、私は

彼が、なにを云って居るのかわからないままに

老いさらばえたとして、私は確かに

知っていた

なにも理解できないままに

血まみれの、肉体の残骸。

振り向けば、背後には

…なに?

美しい。まだ、

焔。私を

だれに?

まるで汚物のような

背後から

何に?

三十代の半ばにしか見えないと、

焼き尽くして仕舞おうと謀んだ焔が

笑う

引き裂かれた咽喉から覗いた

放つ

清雪は、私の

人々は言った。美しい肌。…いまだに

温度。私には

必ずしも戸惑って居る訳でもない

脂肪だらけの筋肉の筋が

ふれることさえ出来もせずに

ただ

潤いを失わずに、確かに

ただ

自分を見つめている優しい眼差しを

脈打った。なんども

そこに燃え盛って居るしかすべのない無力なそれ

見詰め返しながら

こんな成熟の仕方があるなら、必ずしも

かすかに

脈打つそのたびに、いたるところから

この世界の終焉の

乾いた嘲笑をふくんだ

年齢を重ねることは無益なことではないと、そして

滅びの焔が

微笑を彼の

細い血の筋を噴き出させ

いつでも

想い詰めたようにやさしい

微笑みをつくった、目じりの

私の

頬に

黒ずんだ血。あるいは

背後の

…お母さん

こまやかな皺は、あからさまに

空間をだけ

頭、おかしいじゃん?

紅蓮を超えて、もはや

焼いていた。僕は

彼女…

ただ純粋な優しさだけをだけきざんで、それを

いつか、空に

狂ってるから

どす黒い紫色に近い血管が、

火を放とう。もはや

もう

眼にする人々に、ある種の安心と、

人間である事を

人間じゃないからね

膨張して皮膚を、

やめてしまった、君を

腐ってるから

癒しを

せめて

頭の中

食い破って、いたるところに

微笑ませるために

仏壇の菊を

与えるには違いない。そんなことは

滅ぼそう

…さ

はみ出して空中に

此の世界を。せめて

喰ってたの。…なんか

知ってる。事実して、私は

滅びる貴方に

穢いじゃん。だから

いびつな鼓動を曝した。

添い遂げさせて、その

最近、俺

…美しい。

責任をせめて償わせるために

百合の花、食わせてる

残酷なまでに。それは、今更のように茫然とでもするしかない風景だった。眼の前の、匂い立つ美しい男。何かを見詰めれば、即ち見詰められたものの眼差しの中で、それは抗い難い誘惑に合ったことを意味する。






Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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