小説。——櫻、三月の雪…散文。及び立原道造の詩の引用 /《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ 或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948 ■10



以下、一部箇所に暴力的な描写が在ります。

ご了承の上お読み進めください。

又、歴史的記録として過去の政治スローガンの引用乃至模倣が使用されますが、

それらを特に顕彰しようとする意図は在りません。





櫻、三月の雪

…散文。及び立原道造の詩の引用


三部作

《‘In A Landscape’ ...John Cage,1948》Ⅱ

或る風景の中で。ジョン・ケージ、1948——Ⅱ


Zaraθuštra, Zartošt, Ζωροάστρης

ゾロアスター 



…愛し合ってるの。

ささやいたユイ=雨が、その、自の言葉が終らないうちに笑い始めて仕舞うのを、潤は赦した。…お前らってさ。

と。ユイ=雨の

「体だけの関係でしょ?」

如何にも女じみた女らしい女の咽喉が発した声は、耳に

「…違う?」

心地よい。潤の頬が、為すすべもなく微笑みのかたちに崩れて、彼女は、自分の心のうちをさえ語らない。おそらくは、彼女自身にさえも。ただ、

雨の轟音の中の

「■モだけどね。…俺ら」

紫陽花の花々は

さざ浪立つ、無際限なまでの

濡れながらも受粉しあうのだろうか?

「愛し合ってんの。…てか」

雨の中に飛ぶ

微細な

在り獲ない蝶をいつのまにか

「俺らの子供、代わりに産んでくれない?」

獲得して

心のふるえをそのままに彼女は放置する。眼差しの中で、潤の眼球が膨らむ。膨張し、そして押し広げられた口蓋が、もはや

それ

おぼえてゐた

かたちをなさない、嘗て

それは夢

をののきも

唇であった所の、その

知っていた。いつでも

振るえも

皮膚のふしだらな色彩を捻じ曲げて、

醒めながら見続ける、さまざまな

おぼえてゐた

のけぞり返った内臓が、

形態の夢

あれは見知らない

ぶよついた肥大化を曝した儘に

私の

をののきも

彼女の内臓からさかさまに、

眼差しの奥に、まるで

振るえも

まっすぐに、

眼差しの中に

おぼえてゐた

天井近くにまで

見い出されているかのように

あれは

ゆっくりと、

見い出される

見知らないものたちだ…

上っていくのを

をののきも

見たときに、私は

静寂が、その時に

顫るえも

既に気付いていた、私自身が、或は、その

私をただ

おぼえてゐた

細胞の群れ一つ一つが、

ひたすらに

あれは

彼ら固有の

支配していた。音響?

夕ぐれごとに

視座の、…眼球の

そんなものなどもとから存在してなど居ない、と

あれは

捉え獲ない、決して

一度も

見知らない

私の

決して

かがやいた方から

見い出すことの無い彼らの特異な

そんなもの

あれは

視野のなかで、

一度も

おぼえてゐた

叫び。

存在してなど居なかった。…音響?

をののきも

すでに、

なにもない。なにも

振るえも

空間そのものに私は

耳さえも無いのだから。或は

見知らない

溶解して、私は

脳さえもが存在などしないのだから

あれは

叫んでいた。私の

何も聞えない。なにも

かがやいた方から

肉体など

ただ

をののきも

もはや

完璧な完成度を誇るしかない静寂だけが

振るえも

存在しなかった。顕かに、

あらゆるものを貫いていた。私は

かがいたほうから吹いて来て

息づかい、固有の生存を

見い出す、わたしは

あれはもう

そこに

眼を閉じた、その暗やみの中にさえも

おぼえてゐた

無様に

…夢

をののきも

曝しながら、なにも。

何度も

見知らない

…と。

いくつも

顫るえも

認識されていた。私の

見い出され続ける

あれは

意識の中には?…そんなもの

夢。眼差しの向うに

見知らないものたちだ…

もはや何処にもありはしないのに。

ユイ=雨の

あれはもう

叫ぶ。

肛■からあふれ出た臓器にその身を

かがやいた方から

空間が、

喰い散らされていく

おぼえてゐた

叫ぶ。

その飛び散る血痕が

あれは

叫んでいた。

踊る

をののきも

空間が、耳を

重力を喪失した、自由な

見知らないものたちだ…

聾するがばかりの、

空間の

あれは

…と。

無際限な拡がりの中に

顫るえも

耳は

静寂

見知らないものたちだ…

そう耳打ちするに違いない。…あくまでも

音響など

夕ぐれごとに

ひそやかなささやき声で。…轟音。

存在などしなかった

おぼえてゐた

叫び声の無際限な連なりがいまや

一度も。視ていた

夕ぐれごとに

轟音となって、決して

私は、私の

かがやいた方から

焼き尽くされることの無い空間の

鼻の穴が、いつか

をののきも

その

極端に肥大化した私の臀部の

振るえも

総てを、いま、

崩壊した血まみれの形態を

おぼえてゐた

焼き尽くす。「…何人?」

飲みつくしていくのを

見知らない

ユイ=雨は、私の肩に後ろから顎を乗せて、…ま、「いいか。」云って、「お前が、…」…匂う。

「何人でも、…」…ま。

ユイ=雨の体臭。…ほら、

「…いっか。」

男だったら発情しなさいよ、と

「可愛いじゃん。…」

静かに女言葉で命じるような、そんな「…彼氏いる?」

体臭を好き放題に放って自覚も無いユイ=雨がそう云った瞬間に、潤は声を立てて笑ったが、…そう。

母親の

そ。

服用していた錠剤を戯れに

…そ、だね。

飲んだ十一歳のわたしは

「こいつが、彼氏だよね。」私の胸に、後ろから彼女は手を

その視野の

回す。いくつもの

極端な異形化に私の母親の

手。胸に廻される、いくつもの

頭の中には決して

手。基本的には、女たちの、その

私など存在していない居ないことを認識した

それら。歌舞伎町のホスト街、ホスト店舗に雇われて、私は忘れた頃に荒稼ぎをして、あとは惰性のままに無断で店を欠勤する。電話もメールも何も出ず、数週間か、一ヶ月か、二ヶ月近くか。とは言え、結局は、店も女も私が彼ら、彼女らの処へ戻ってやれば受け入れて仕舞うしかない。一度だけ見せしめに、オーナーホストの純哉に拳で殴られた。店の中、営業中に、一ヶ月近い無断欠勤開けに、不意に顔を出したときに。溢れ返った客の前で。午前二時。気まぐれに出勤してきた私の頬を、近寄りざまの純哉の拳が殴りつけて、騒然とする女たちのと、男たちの怒号じみた嬌声の中で、まともに人を殴ったこともない純哉の拳に出来ることは、唇の内側に切り傷をつけることしかない。…味。

滲んだ血の味。…何やってたんだよ、と。「お前、何やってんだんだよ。」そう云う「んー…」純哉に、…お前嘗めてんの?あらかじめ「…なんだろ?」用意してでもいたかのように「…自分探し?」そう云ったとき、「…かな?」傍らに添うていた夏輝という名のホストは、微笑んだ私から眼差しをそらしもしない儘に笑った。





Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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