カミーユ・C、留保なき絶望とその絶望的なまでの強度 ...for Jean-Baptiste Camille Corot /a;...for oedipus rex #100



以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



(承前)

茫然と、醒めながら失神したかに。叫喚。聞き慣れた周囲の。と、そしてふたりは娘をつれて自宅に「わたし」

   俊敏に?

逃げ込んだ。「きらい。…海が」

   あ

      死ねばいい?

         ねっ

「なんで?」

   あ

      生きていい?

         ねっ

「だって、きらい。だって」

   あ

      自虐すればいい?

         ねっ

「海、きれいだよ」

   あ

      咬み切ればいん

         ねっ

「匂うから」

   あ

      舌を?

         ねっ

沙羅ゝ。画像通話などではなくて、

   わらった顔、…ね?

実際に見た

   かわいいよ

ひさしぶりの

   海。海。海

   みっ…なに?

   色は。その


   海。海。海

    わらっ

   みっ…なに?

    らった、ら

   見えないね、もう


   海。色彩は

    かわいいよ

     海?これは

   らっ。海。綺羅らの

    らっ

     海?…もう

   厖大。綺羅めきの


   海。その色は

      海。海。海

    らったら

     なにも見たくな

   らっ。綺羅めくだけの

      みっ…なに?

    かわ

     わたしは、ええ

   見えな…ん?だれにも


画像通話などではなくて、実際に見たひさしぶりの沙羅ゝはたしかにあきらかにひとめ異質なまなざしをさらしてそこにいた。思い詰め、

   赤裸々

思い詰め切ったあげくにいきなり笑いだして仕舞った、

   綺羅ら

   赤裸々

      なぜ?こうまでも

でも?

   綺羅ら

      わたしだけが

そんな、不穏で不遜な目。嗜虐。おもわず壊して仕舞いたい欲望をそそり、

   赤裸々

      なぜ?こんなにも

         わたしのせいだ

そして

   綺羅ら

      わたしだけが

         莫迦で、そして

確信させる。後悔などしないだろう、と。まちがいなく、この眼の前の少女を、破壊しきって仕舞ってその破綻の残骸を見止めてすらじぶんは「不思議。…ね、」一切、「なんで?」と。「沙羅ゝ、なんで」

   花。花。花

      色彩。まさに

「なんですか?」

   ブーゲンビリア

      匂いたち

「さ。うちの、さ。花。オッケーなの?」

   な!…花

      色彩。ひたすら

「って、」…なに?

   ブーゲンビリア

      香りたち

「ブーゲンビリア」と、

   え?

微笑。沙羅ゝはあどけなく…ママと

   きみはうつくしい

パパのうちなんだよ?ここは、

   女の子

…ね?だから沙羅ゝはぜんぜん平気。だ、

   え?

よ?と、そんな答えを期待したわけではない。しかし沙羅ゝに「だって」真魚はほほ笑みかける。「あれ」

   ブーゲンビリ

      しあわせそうですね

「なに?」

   あ!喰えますか?

      しかも

「あれって、ぜんぜん」

   ブーゲンビリ

      たのしそうですね?

「だって、こんなに」

   あ!薬効あんの?

      しかも

「匂わないから」

   ブーゲンビリ

      うれしそうですね?

「咲き誇ってるよ」と、言いかけて真魚はことばを飲んだ。その理由を真魚は思い附けない。だから、

   散れ!

ブーゲンビリア。年中無休の

   散れ!

花ざかりをさらしつづける

   好き。その

      死

赤むらさきに、無造作に

   花は、匂いたつかに

      大気の

埋もれた東側の

   あざやかに、しかし

      微動している

昏い

   鼻にはなんら

      さなかの、死

庭に。波紋は、

   無垢…ん?

      大気の

そして意味不明な

   だったから

      減速してゆく

むずがりにじぶんをもてあそぶ真魚を「ぜったい、」その真魚。あくまでも真摯な

   波紋。はっ

目。だから、

   波紋。はっ

ただ、波紋はわらって茶化して…の、仕舞うしか「…男の、ね?」なかった。「人って、ね?ほら。男って基本わかい子のほうが好きなんだよ。みんな」

「かもね」

   目じりに

「でも、わたしはまだ綺麗だよ」

「だね」

   さ、微光。その

「だって、でも明日はわからないじゃない」

「そう?」

   微動に

「ぼろぼろになってくんだもん。そうじゃん、だれだって」

「って、」

   さ、微光。その

「いま、わかい子だって」

「なにが言いたいの?」…馬鹿。と、そしてかがみこむと、真魚は波紋の頬をつねった。まだ衣類に真魚は袖をとおさない。もう、波紋の目にはそれがうつくしいのかそうでないのかさえわからない。見慣れたと言えばそう。目になじんだと言えばそう。飽きたと言えばそうで、親しみ切ったと言えばそうだった。つねられながら、波紋は真魚の

   寄り添って

      と、温度

ほほに

   って。ぼくたちは

      にじんでゆくん

手を

   ここまで来たね?

      なじんでゆくん

あてた。やや、

   寄り添って

      と、温度

かさつく部分が

   って。ぼくたちは

      慣れてゆくん

ある。くすりゆびの

   ここまで来れたね?

      消えてくん

つけ根あたり。体調不良?軽度の。夢。起き抜け、たわむれあいのなかからふたり、いつか本当に本気になって、もとめあったいまさらの朝の息遣いのかさなりあいに波紋は醒めながら夢を見るかに、

   なに?

やや自虐的に

   なぜ?

見出されたままの映像をもてそんでいた。いつも、

   ふたり、もう

      ええ

         自重に潰れた

真魚を抱く時

   永遠をだけ

      え?

         酸素がひとつぶ

そうであるまま、

   知っていたから

      ええ

         炸裂

出血。両目から、血をながしたじぶんを波紋は見ている。だから、もう何年も前に、沙羅ゝがまだ腹にまるまって真魚の一部かつ異物におさまり得ていた時期の、ふいうちのじぶん自身との

   夢。そう

      おう

邂逅。

   だれもが、もう

      そう

見る。

   ね?見たのだから、

      もう

ひらかれた

   夢を。そう

      おう

口蓋。だから、じぶんの。波紋は波紋に出逢った。真魚も真魚に出逢った。雅孝も、庸子もそうだった。そして、そのすさまじい無縁に言葉を

   冷え切った

なくした。波紋に、

   発熱。その

かかわり得ない彼岸の彼方が、此岸、直接に顔面にはりついていた。仮面のように?…しかも素顔が。見た。波紋は、見えた。波紋が指をすでにすべて咬みちぎり、ちぎり取って仕舞っていたのを。だから、たぶん彼は、…なぜ?ふれ得るものがないように。ふれ得る可能性が滅ぼされるために。すべての指を。また、見た。彼、

   見て!

見えた。波紋がゆびを、アイスピックのような凶器に刺しつらぬき、やがて俊敏に岩場で踵を削ったのを。歩み

   生きたんだ!

      突風

さ迷い出し得ないように?

   情熱を以て

      あどけない、そして

もう、

   生きたんだ!

      微臭に、ふと

どこへも

   失禁にまみれて

      噎せ返っ

ふらつて行ったりできはしなにように?故に、腫れあがった足で、ようやく波紋は立ったのだった。ただ、うつむき頭を抱えるためだけに。知っている。波紋は、そして気づくだろう。もうじぶんには自殺する手立てもないと。











Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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