カミーユ・C、留保なき絶望とその絶望的なまでの強度 ...for Jean-Baptiste Camille Corot /a;...for oedipus rex #098



以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



(承前)

それだけだっ

   あっ

た。安住の

   あっ

地。隠れ住まい。いいではないか、隠れるというおなじ状況に落ち入るのなら、せめて匂いたつ赤紫の色彩をふきこぼれさせたブーゲンビリアの

   あっ

翳りに

   と、あなたが

      温度差。ねぇ

隠れれば。逆説的に、

   好きだったバッハを

      日照と

遊ぶ金なら

   思い出したり

      ねぇ、翳りとの

充分以上すでに

   あっ

存在していた。結果的に、春雨がそのタブローと謂う厖大な遺産を放置したままだったから。いまさら遺体を引き取られて喜ぶはずもない、…春雨。彼が

   やさしい、ね

      ありがと

         信じられます?いまも

彼女が?嫌悪しきっていた片親は

   って、さ。あの子、やさ

      あんたたち…ほんと

         部屋。あの子の

タブローに

   以外になにも。…ね?そういう

      友達?

         ん。…あのころのまま

価値があるとは「あー、あれ」

   そんな子。…だっ

      見棄てないでいてくれて

         ま、埃りはかぶっ

知らず「あんたたちで処分して。…いっ」さ、「燃やしても、」さ、いいから。「売っ…」さ、「売れるの?なんにしても、」さ、「なにしても」さ、「いいから、…いくらかかるの?」…って、謂うのよ。「撤去に…」さ、「そんなの」如何なる「払う気ないから。こっちは」所有の根拠はなくとも、事実上抱え込んで仕舞えばだから垂涎の油彩群の所有権は真魚がにぎるしかなかった。いまは画商の

   いー、じゃ

      最高の世界だよ

沖津を媒介にして、

   いいじゃん。これ

      知らない?

10枚も売れば

   なに?

      わからない?この

すぐに億を

   いー、じゃ

      精緻さ。…視野の

越えた。沖津弘樹は1980年生まれ、もともとは

   さすがだ

      え?

         タッチの俊敏さ

ホストの先輩だった。大学院卒の

   さすがだ

      え?

         色彩配置の正確さ

変わり種の「おれ、さ」

「え?」ホスト。年齢的に「突然変異なの。…ね、」

   好きだろ?

      やめて

         生まれ故郷。…みたい

違法の「笑える?」

   おまえ、さ

      まだ

         な。だっ…ここちよくない?

波紋は、そんな

   おれのこと。実は

      吹きかけないで

         だって、この町…さ。なんかもう完璧に

変わり種にすぐさま「お前、

   めっちゃくちゃマジで

      あなたの

         ぜんぶ、ね?きちゃなくて

さ」なじんだ。「犯罪者っぽい

   惚れちゃっ

      明確な息吹きを

         ぜんぶ、ね?まがいもんで

目、してる」

「おれですか?」…いつかさ、と。

   さ、

      さっ

そして「人、ひとりくらい」やや

   さ、

      さっ

不遜な「殺しちゃうんじゃない?」あざけり?の、ような気配のある目にじぶんを見やった弘樹に、波紋。彼は数年前すでにひとをひとり手に懸けてしまっていた事実をは、かくしとおした。つまり、あの、それが真砂真咲だった男を。弘樹は、春雨の遺産を狡猾に小出しに現金化していきながら「美術ってさ、本質的に」

   愛していいよ

      あ

「でも、」

   きみも

      あっ

「銭・金の世界じゃん?所詮は、レオナルドも」

   わたしをも

      あ

「意外だったな。おれ、緋夕さんが」と、そのいつかの午後に「美術系に走るなんて」そう、ふたりの自然としてホスト時代の名で呼びながら、ふと、波紋は笑った。「基本、」弘樹。「おれは経済活動を尊敬してんの。それ以外、いま生きてる価値なんて付与されないだから、…人類に、だよ。人類たちの

   好きなの。基本

      ミケランジェロだよ

自己規定。経済的に

   無意味じゃん?ぜんぶ

      ダヴィデ。知らない?

非生産的なやつらはぜんぶ

   芸術?いっさい

      海外旅行して

無価値の

   存在価値が

      やり旅行。女の金で

ジャンクと見なしていい。

   実はないって謂う

      唖然と、さ

…ちがう?おれは、だから

   無駄じゃない?

      やっぱ圧倒さ、…され

人類のために

   好きだぜ。おれは

      てっ。あれ見て、さ

銭・金の意味しかない美術品、

   そう謂う

      ドラマ。すっげぇ

銭・金に変えて

   絶対的に

      無言の、一瞬?…か

アーティストたちに飯、

   必要とはされない

      だから二瞬先の

喰わしてやっ

   しかも、…錯覚

      わかる?権力転覆のドラマ

やってる」

「悪趣味自慢ですか?…なんかいきなり不快で無意味な」失笑。…おまえもそれで、と。「さ、」だから「飯、喰えてんじゃん?」二度目か三度目に波紋たちに逢いにダナン市に来た時に。いま、更に

   いまでも、そう

弘樹は

   うつくしい

真魚が管理する

   おまえは。…もう

蔦川葛の

   いたたまれないくらいには

贋作にも手を出していた。あの、すさまじい完成度のまがいものの

   ここ、さ

      いいよ。もう

群れ。かつて

   ここ。地下だから。すぐ

      好きにして、だって

波紋と瓜生の

   放置しとくと、すぐ

      わたしのものは、さ

失敗に一か月おくれて引退した郁乃の、もと

   くさくなっちゃ

      あんたのもんだから

エレクトーン教室だった元代々木桜苑マンションという物件の地下一階「もう」そこを「時代じゃないのよ。だって」

   俊敏に、かつて

      つっ

「エレクトーン?」

   ゆびさきは

      つった!

「コンピューターでなんでもつくれるのにどうしていまさら所詮デジタル音源のむずかしい鍵盤楽器なんか弾きたがるのよ?」そのまま倉庫にし、郁乃にまた貸しされた真魚に、さらにまた貸しされた弘樹の監視カメラつき厳重管理のもと、大量の春雨と葛のタブローたちは保管されていた。「もう、」と、

   素敵だ

      ええ。絶望的な

ふいに、返り見ざまの

   ね?きみは

      まばたき

真魚が、…なに?「いま、

   素直に

      で、まばたきで、きみが

なにか」と、

   ね?きみは

      完膚なきまでに制圧したぼくは

唐突な「言った?」

   自虐している

      と、睫毛の翳りに

微笑。いまだベッドにあお向けた波紋に「やだ、…なっ」その「ね?」朝。「なに考えてた?」

「真魚のこと」

「嘘」なかば、本気にしかけた故意の歓喜にあえて笑み、真魚は、「わたし、ね?もう、」ささやく。「ぼろぼろだよね」

「なに?」

   微光。ふれあ

「なんかさ、」

   あっ

「体調わるいの?」

   ふれあっ

「おばあちゃんじゃん?もう。体ぜんたい、だから、これからも体、もっとぼろぼろになってくよ」

   微光。ふれあ

「そういう話し?」

   あっ

「じゃない?」

   ええ。赤裸々な

「で、」

   微光。ふれあ

「だから、」

「なに?」…波紋は、さ。真魚。やや鬱な気配と自分と、なにとも思い付き得ないなにかに辛辣な「ほかに、」みじかいあざりを「ね?」ささげた。「いいよ。女、ほかに、ね?つくって。…ね?いいよ。たとえば、さ。こっちの

   軽蔑の、ええ。対象

      無造作に

         可能である。われわれは

子、なんかやっぱ新鮮なんじゃない?」

   で、さえもな

      無邪気に

         たやすく。差別主義者であることが、

「おまえ、」あからさまな

   くさいんじゃない?と

      肌。熱帯に

「舌を、さ」波紋の

   ひそかに鼻を

      あまりにかたくなに守られた

あざり。「咬んで、

   澄ましさえした

      しろい肌。いわば

で、

   空港出口の

      定住しつづける異物たち

死んじゃうくせに」最初、渡越の半年近く、ふたりのまなざしはすべて無言の罵倒と軽蔑にまみれた。それぞれに、固有の視野に。見えるものすべてが低劣で、

   なんか、さ

      あったかだ!…ね

         なになに?

下品で、

   空気、さ

      ね

         バイク。ばっ

貧弱で、しかも

   埃っぽ

      あかるくって、…ね

         めっちゃくちゃ多くな

穢らしかった。赤裸々に咲いた、たとえばあざやかなブーゲンビリアの花々でさえ時に、この地に在ると謂う固有の悲惨を背負って

   見てる

見えた。実には

   いつまでも

落ちぶれ

   ぼくは、その

墜ち延びたじぶん自身への

   虹彩に

嫌悪、…または

   ぼくを。ね?

低劣の思い。失敗したものたちにすぎないと謂う

   見てる

断罪。貧弱で、所詮

   いつでも

穢らしさえあるという糾弾をそのまま

   きみは、この

見ていることには

   虹彩に

気づきながらも。この

   自虐?

      ほら。泣きたいほどに

         いま、さ。なんかうまれてはじめて

異国の、海辺の

   自嘲?

      うつくしい世界

         すなおに笑えてるって思えな

風景を愛する時間は

   どう?

      ほら。せつないほどに

         い?

須臾にもなく、馴れゆくままいつか不快な感情の不快はひからびていっ

   常態化?

いった。すべてどうでもよかった。もはや。封鎖され、出かけるすべもない都市のなか、あるいはふたり肌をかさねあうしか時間をやりすごす手立てがなくとも、もう

   あぶないんだっ

      なに?

あと

   よ。なんか

      なんの意味が

2年ばかりで50の

   すっごいん

      死に。まして

大台に乗りもする真魚が

   だっ。だよ、みんな

      生存に。まして

あらたな命を宿す可能性もなく、

   やばいんだっ

      人類そのものの

すべて、本質的な

   よ。いまは

      絶滅などに

無意味をさらした風景の中で、ふたりはひたすらいわゆる心と心をたわむれさせているしかない。精神、と。いまさらに巨大な倦怠のなかに、その

   精神、と

      きみは

         やや無邪気な笑みに

言葉の実在を波紋は

   いまさらに巨大な

      精神、と

         きみは

知らされた気さえ

   倦怠のなかに

      いまさらに巨大な

         精神、と

した。渡越最初の時期に、唯一あそんだ海。それさえ、都市封鎖のせいばかりではなくて、いまやふたりはほんの数分訪ねてみるだけの存在でしかない。













Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

0コメント

  • 1000 / 1000