ジュリアン・O、浸蝕。そして青の浸蝕 ...for Julian Onderdonk /b;...for oedipus rex #080



以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。



#02//覆っていたのだ。その/夢。夢に/両手は、まるで/縛られたかに//

見た。

   なにを?

      傷みであった!

見、

   感じれば?

      そうかな?

新幹線。通路側の

   なにを?

      せつなさであっ

座席から流れる風景を波紋は見やった。想えば、16歳の家出から、その行路を逆にたどったことは一度も

   忘れられはしな

なかった。だから

   ないはず、の。もう

あるいは、

   思い出せはし

見慣れない

   な、…風景

新鮮な、いかにも見飽きた日本の風景がつづく。その凡庸のなかに、じぶんがいちども入ったことはなく、また入る可能性もあると思えないと謂う事実の赤裸々に、

   遥かな、そう

      速度

風景。波紋は

   思えば、そう

      停滞にさえまなざしには見えていたのだが

事実上の拒絶を

   日々でした

      速度

感じた。そんな事実などなにもないままに、だから、うすい目舞いに似た

   あっ

      あっ

         あっ

感覚。

   ざわめきが

      かなしいの?

         ん。色づきのよい

夢。

   慥かに、耳には

      わたしよ、なつ

         夢。の、おっ。ような

家出の

   乱反射した気が

      なつかしいの?

         ん。感覚的焦燥

直接的な理由は

   あっ

      あっ

         あっ

夢だった。いま想えば取り憑かれていたか病んでいたかとしか思えない。すくなくとも、突発的な発作のようにして。雅孝が夢を、最初に見たのだった。波紋、12歳のとき。いかにも不安な、昏い、しかし映像として昏い須臾は一瞬たりともなく、しかしどうしようもなく昏い、

   昏く

      いつも、そう。回想は

ひれふすしかないくらいに昏い、

   ふかい、あまりにも

      まがいものであることを隠さず

ただ、

   昏く

      かつ、絶望的な

昏いだけの極彩色の

   するどい、あまりにも

      精緻を。その

夢。最近、と。「おれは、疲れてるみたいだよ」だから自嘲的な「だって、」失笑。彼が庸子にささやいていた朝。雅孝が、台所。シンクに両手をうごかす母親。その背中越しの髪に微妙にかくされた耳に

   聞け!

      微光の

         と、まばたきは

…もう、

   聞け!

      視覚的触感

         加速を、…そう

庸子。「やめてよ。そういうの」

   疲弊。…して、

      ちょっ

「鬱かな?なんのかんの言って」

   しきっていた、あの

      なんか、わたしも

「いやだ、そういう」

   風景。疲れを

      心配しちゃうじゃ

「学校も、さ」

   知らない微風が

      じゃな

「弱音?…やめて」顎をかたむけた返り見に、夫に笑いかけた庸子のあまりにみごとに邪気のない笑みのあどけなさに、波紋はそっと嫉妬を

   すこやかですよ

抱いた。同じ

   わたしは。そして

夢を、庸子が見て

   微笑も、きみの

さわいだのは波紋が

   あっ

      あっ

         あっ

15歳のときだった。じぶんの部屋で寝ていた、だからその、たぶん浅いねむりのいちばん浅みにうちあげられたとき?声に、…父。まぶたをひらいた波紋にはなんら、眠気は

   声。…んっ

      目覚め?やや

すこしも

   ぶ厚く、しかも

      唐突な。…いや

残っていなかった。

   微動?

      だれも、1秒も

おい、

   声。…んっ

      眠りに落ちなど

おい、

   にぶく、しかも

      しな

と。そして庸子、と。それぞれに、まるでふたりの男声のあやういかさなりあいにも聞かせ、壁のむこうで雅孝はひとり声をさわがせている。庸子の声は、息遣いもふくめ、なにもそこには聞こえなかった。波紋に、雅孝の懊悩のある声はあまりにも孤独で、

   不在!

      感じる?いま

         あ

孤立して、

   前触れもなかった

      わたしがあなたの

         ああ

かなしく聞こえた。必要は

   孤絶!

      汗をぬぐっ、

         あっ

なかった。足を

   拒絶し得な

      なかゆびの

         あ

しのばせる、そんな。だが、深夜にふたりの寝床にちかづく事実が、なぜか波紋に巧妙な猫の優雅にも似せた歩みを強いたのだっ

   秘密。みんなには

      いたっ

引き戸。そこを、ほんの

   秘密。わたしは

      舌。そのつけ根あたり

数センチだけ

   全能であると謂う

      ええ、曖昧な

閉め切っていなかった父母の部屋の

   秘密。…あなたは?

      いたっ

前、すれすれに耳を接近させる気さえない自然な立ちどまりにも、声はその声のすべてを仕切りのないあけすけさで波紋にふれる。鼓膜の、あまりにも当然な表面に。その

   爆発的轟音!

微動。あれた

   この

息。

   汚染されきっ、きっ、

庸子。

   驚くばかりの

叫ぶかに、庸子は息を

   世界よ

吸った。発し、声を。すぐさまに、また、声。吸引。と、

   きみに、そう

      あ。見えますか?これら

かすれ。

   いらだっている

      あ。赤裸々な無防備

庸子は、やや取り乱しかつやや声をひそめて見た夢のさまをささやいていた。同じ、と。「見たの。あなたが、いつも見るって言ってる、」

   あきらかだった!

      え?

         信じられな

「莫迦」

   あざやかだった!

      ええ

         いっ。強度で

「夢」は、

   あざといまでに

      え?

         え!襲い掛か

…と。

   あやうく

      ええ

         る、…鮮度

雅孝。「夢は夢だよ」あえて、意図的に笑ってみせる雅孝の声は言葉となっては庸子にはとどかない。動揺。とめどない顫動。それらが鼓膜の微動すべてを無きものにして仕舞う無力を波紋は気が遠くなりながら明確に、

   落ち着いて

      窒息

いたましいくらいに「わたしも」

   息を吐いたら

      に、似た

感じ取っていた。「見たの。

   バラ色の

      過呼吸

いま、…はっきり。あなたが

   香りがこぼれる

      に、似た

いつか、いつも夜明けに見たって、見るっていつか、そう言って、言ってたその夢」

   の、かも

      しゃくりあげ

「ただの夢だよ」

   ね?

      に、似た

「あの夢」波紋は、夢。夢で、母親の肉を喰っている。とくに、下腹部あたりを

   咀嚼

執拗に。

   ナイーブな

好き?

   咀嚼

と、卵巣が。

   ナイーブな

尻を、

   ノイズ

つきだしたまま父親のそれにあられもなくささげて仕舞っていたままに。

   あっ

      あっ

         あっ

破廉恥な、これみよがしな四つん這いにむりやりもたげた顎はじぶんの唾液と他人の体液にはずかしげもなく

   しゃしゃしゃっ

      いつでも、轟音は

         見て、この

濡れた。

   と

      繊細すぎて

         あばかれて仕舞っ

時をおかず、聞く耳にだけ

   じゃじゃじゃっ

      うつましいほどに

         風景

知っていた

   と

      はかなく、…ええ

         見て、この

夢を

   しゅしゅしゅっ

      炸裂するものだ

         放たれて仕舞っ

じぶんも

   あっ

      あっ

         あっ

見た時に家をでることを決意した。波紋は。愛するのみならず、尊敬さえする大切なふたりを、たとえ理不尽な誤ちにか須臾の発狂にかにあってでさえ、

   わたしはわたしは

      舐めて。冷えた

傷つけないで

   一個の狂人

      温度を、汗の

守り切るために。

   そう、


   覆っていたのだ。その ;antiphona

    痙攣を。やや

   夢。夢に

    汗が、なまぬるい…あっ

   両手が、そう。まるで

    と、…ん?拘束

   縛られたかに


   うしろ手に

    硬直。もはや

   縛られたかに

    なんの自由も赦されないま…え?ま、に

   汗?いや、例えようもない

    口は

   噴出。体液の


   覆われていたのだ。その

    流出!流出!

   夢。夢に

    流出!流出!

   ええ。声をあえて立ててないでいるために

    と、…あっ。沈黙

   いないのに?


   押し込むがいい。いまや

    だれも、だっ。まさか

   しゃっだっ!だっ!くりさえ

    聞き耳を立てら…ええ。ら、れる

   われわれは猶も

    自由なものなど

   静謐を、そう。咬むべき


   覆っていたのだ。その

    だ、と。だと。そう

   夢。夢に

    言いたいね?きみは

   口を、まるで

    と、…ん?圧迫

   押しつぶすかに


   巧妙に

    痙攣。そう

   粉砕しようとしていたかに

    いっさいの悲鳴を

   だれだ!わたしを

    あなたに赦しはしない情熱が

   のけぞり返らせて


   覆われていたのだ。その

    痙攣させさえしてい

   夢。夢に

    そう。あなたでしたか

   両手で、え?まるで

    と、…ええ。渾身の

   頸を折るかに


   彎曲。…ええ

    つかまれたひたいに

   のけぞら、ら、ら。せさえして

    そして、喉はもう

   ね?そんっ。そんなにも

    すべての音声

   好きにしたい?わたしを、


   声を奪われた

    ひら

   わたしは

    らら

   口蓋を

    ら、

   ひらく










Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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