小説《紫色のブルレスケ》イ短調のプレリュード、モーリス・ラヴェル。連作/オイディプス…世界の果ての恋愛小説⑩
紫色のブルレスケ
…散文
Burlesque màu tím
《イ短調のプレリュード》、モーリス・ラヴェル。連作
Prelude in A mainor, 1913, Joseph-Maurice Ravel
Οἰδίπους ἐπὶ Κολωνῷ
雨が降った。
まどろみのなかに、眼を閉じたまま、それでも雨が降っていることをすでに知っていたのは、その音がずっと聞こえつづけていたからだった。
耳を澄ますまでもなく、空間に、その空間的な事実をは裏切って、ふれられるほどの至近距離に響いた雑然とするばかりのそれらの音を聴いていた。
息を吐く。寝醒めの皮膚が汗ばんでいることをは知っている。降る雨がすべてのものにふれていた。広い部屋の窓際に置かれたベッドのうえに身を横たえたままに、耳はその窓の向こう、庭のあらゆる物に打ち付けるざわめきたった、かすかでやさしい物音を聴くしかない。
明け方の、微細な冷気を含んだ、大気の温度、背の下のシーツの、あるいはじかに触れるショートパンツの、それらさまざまな温度に、皮膚が倦んだ。
傍らのベッドに、自分そっくりの大柄な体躯のダットはいない。父親。彼がどこかに明け方早く出て行くのはいつものことだった。フエはまだ起こしにこない。ハンは炊事場でお湯を沸かしているに違いない。
雨に濡れなければならない。仕事はない。膨大な時間だけが残されているので、いずれにしてもどこかで何かをしてやり過ごさなければならない。雨の中で。
旧正月、テト、tết、それに至るまでの数ヶ月間、いつでもダナン市の大気は雨を知る。ぬれる。あらゆるものが。時間は、雨が降っている時間と、雨が堕ちはしなかった時間とを経験するにすぎない。
眼を開くと、部屋の、ただたかい天井の薄い緑色のペンキが剥げかかった、その淡い色彩が朝の白んだ光線に色彩を曝す。
ひとりで息遣い、重く、冷気の中にさえかすかに汗ばんだ皮膚に、執拗な鈍重さが感じられた。朝の通過儀礼にすぎないにぶい吐き気が、喉の奥に巣食った。
18歳のアンは立ち上がってシャワーを浴びた。
部屋の外に出ると、ふたつの居間にスーツを着たフエがいて、ソファに埋もれるように座って妹の Hồng ホンを膝に抱いていた。ホンは14歳だったから、その華奢とはいえ十分に大人びた身体におしつぶされながら、彼女を無理やり抱きかかえたフエに眼をそらさないではいられない、心の隙間に入り込むような、かすかな倒錯が感じられた。フエは美しかった。
いつものように。物心付いたときから、いつでもそうであったように、目の前のそれを美しいと断言しなければならなくなる、そんな留保ない強制を、アンに押し付けた。その何気ない仕草のひとつふたつさえもが。
人一人だけ出入りできる程度にしか開けられていないシャッターを、アンはいっぱいに開ききって、アンはその皮膚を掻き毟るような騒音を、聴いた。
雨よ。
フエが言った。
Em...
振り返った眼差しの先に、
Mưa rơi
そしてホンは身を折り曲げてフエの身体にしがみつき、頬をフエの首筋にうずめた。
あなたのものじゃない。
Không phải là của Anh
甘えっ子のホンはいつでも、アンを捉える眼差しの中に、そうつぶやく。フエにまとわり付くときには。タオやフンにまとわりつくときときも、ダットに、ハンに、そして自分にまとわり付くと気も、眼差しが捉えただれかにかならずつぶやく。
Không phải là của anh
無言のままに。
フエの眼差しに、悲しいほどに追い詰められた気配があった。雨の中に
あなたのものじゃない
ホンを学校に連れて行って、町の中心部の
Không phải là của chị
彼女の会社に、ぬれながら出勤しなければならない容赦のない事実に?いつでも、と、アンは想った。フエは追い詰められた眼差しで、なにもかにもを見い出す。
自分の腕の中に、からだを完全に脱力させて仕舞って、その肌の温度をじかに曝しながら倦んだ眼差しをむけるときにも、いつもの夜の、十二時を回ったその昏い光線の中に曝す。その、追い詰めらた眼差し。
とりたててなにも話しかけないままに、裏庭にバイクを出すと、大気の湿気が一気に、アンの肌にふれた。フエが廻してくれた金で、大型免許は取った。旅行会社のドライバーにでも納まるつもりだった。都市は急激に開発がされて、ほとんど原形をとどめないままに、商業施設をいたることころに濫立し始めていた。
外国人が増えた。橋も増えた。ハン川には、ほんの数年前まで、一本の細い橋しか掛けられていなかったのに、いまやいくつもの橋が建設されていた。必要以上の広さを持った主幹道路が町を分断し、川沿いの土地を持っている人間たちは、それを売りさばくかそこにホテルを建設するかした。
フエやダットたちと、フンやハーやタンや、その結婚相手の男たちとの関係は完全に破綻していた。土地の売却問題と、その所有権の分配についての係争のために。
問題を血なまぐさくさせないままに済んでいるのは、ただ、所有者のハンがなにも言い出さないからにすぎない。売るとも、売らないとも何も。分配するとも、分配しないとも何も。急騰していくばかりの土地の値段が、いずれにしてもいつか日常を破壊させて仕舞うことはもはやだれの目にも明白だった。あるいは、すでに破壊されてさえいた。フエは、もはやハーやフンと口を聴くことさえ出来なかった。フンが、フエをあばずれの詐欺師だと吹聴して歩いていることは知っていた。
あるいは、それは事実だった。自分を愛してもいないのに、そして、その正統な権限さえなにもありはしないのに、フエは自分にすべてを与えたのだから。アンを、まるで支配者のように拘束して仕舞ったのは、ひとえにフエの責任だった。フエが、自分のすべてを奪って、自分のものにして、食い散らして仕舞った実感が、アンにはあった。それは、否定できない事実だった。
雨は、ほんの穏かなものにすぎなかった。
Mưa...
雨よ、と
Em
もういちどフエがつぶやく。声に、歎いて縋るような色彩がある。
...không
いや…アンはつぶやき、
Không sao
合羽も着ないで全身を雨に曝し、そのままバイクを走らせていくアンを、フエは見送った。腕の中に、首筋にホンの息遣いがふれた。チャンは還ってこない。ずっと、病院に入院しているから。自分で、自分の両目を抉り取って仕舞ったチャンは。17歳のチャンは、Mai マイ、その四歳下の、ヴァンが生んだ妹がその日の朝、自分の寝室に入り込んで自分をゆすり起こしたのに、不機嫌なままに目醒めた。どうしたの、と、問いかけもしないまま見つめたその眼差しの先に、同じように、なにも言葉など発しはしないマイの眼差しが、何の表情もなく自分を見つめ続けているのにチャンは戸惑う。こんなはずではない、という無意味な実感があった。なにかが間違っている気がした。
いずれにしてもいつでも無口で、嫌悪を焚きつけるヴァンのせいでチャンをいつか禁忌のようなものとして恐れ、決して近づこうとはしなくなったマイは、チャンの前ではいよいよ無口になるしかなかった。見つめ合った。チャンはなにも言わず、マイはなにも言わない。明確には、なにも考えられもしないままにチャンはその、華奢で、褐色の肌を曝した、眼の前に居場所をなくした小穢い少女を見つめた。だれもが、観音佛の生まれ変わりのフエに似ていると言った。僧侶の Lợi ロイにこの上なくも愛されて、ヴァンにも、クイにも、チャンの家族のものたちからも愛されて惜しまれないでいるフエは、いつでも自分勝手に乗り込んできてマイの姉であるかのように振舞ったし、そして、だれもがあの美しく清楚で理知的なフエとの類似を、マイに探した。探せば探すほどに、マイはフエに似ていた。何もかもが、その声の、透き通ったグラスとグラスをかすかに打ち合わせて鳴らしてみたような、そんな音声さえもが。不意に、泣き崩れるようにマイが表情を崩した。
チャンは、自分が残酷な虐待を今の今までマイにくだしつづけていた錯覚に苛まれた。身体に理不尽に下された苦痛に、終に耐えられなくなってその顔をだけ崩して仕舞ったような、チャンの傍らにひざまづいたけなげな舞は、背を、まるでいつもフエがそうするように、すっとのばしてかすかに顔をかたむけたままに、チャンの唇がいちどだけかすかに開いて、閉じた。マイはあきらかに救いを求めていた、チャンは、彼女が何をいいたのか、すでにわかっていた気がした。チャンはマイを立たせると、そのショート・パンツを脱がした。
指先にふれた。ふれたかったわけではなかった。ふれて仕舞っただけだった。触れた瞬間に、その自分のしでかした行為そのものを後悔した。チャンは声を立てて笑った。学校に行って、フエにあったとき、妹が生理になった、と耳打ちした。
それで?、と、問い返すフエに、それ以上は答えようがなく、事実、言いたいことはそれだけに過ぎず、そもそも、それを言いたかったわけでさえなかった。ただ、フエにくらいは伝えて仕舞わないでおけない、昏い悲しみのような、痛みに近い感情が、ちいさな、無数のひだを作っていた。チャンは首を振った。そして微笑んだ。ややあって、不意に、鼻でだけ笑い声を立てた。遅くない?フエが言った。あの子、何歳?チャンは、フエが、無作法なまでにまとわり付いて離れようとしないマイを、かならずしも良くは想っていないことなど知っていた。見れば、誰の目にも明らかだった。
事実、フエはマイが疎ましかった。マイの押し付けがましい、自分が愛されるべき存在であることを確信しきっている押し付けがましい愛情に、フエは見苦しい穢らしさをしか感じられなかった。フエの指先が、チャンのアオヤイの襟をなぜた。そっと、不意にふれて仕舞ったのとかわらない気配のうちに。それは明らかな愛撫だった。チャンは、横に座ったフエの匂いを嗅いだ。学校の木立。その下の白いベンチ。目の前を何人もの学生たちが通り過ぎ、立ち止まって話し込み、はしゃぎ、サッカーボールを蹴り、声が沸く。喚声のような、嬌声のような。渦をないして、連なりあわずに混濁し、もうすぐ、あと6分くらいで休憩時間は終る。午前中だけの学校の、午前の深い時間、木立の下に入ると、夏であってもすこしだけ、明らかに大気は温度を堕す。男の学生も、女の学生も、ときにすれ違いざまにふたりに眼差しを投げた。
清楚で、成績も優秀な、だれからも特別扱いされてしかるべき事を周囲も本人も自覚しているその褐色の華奢な少女が、彼女にそっくりなその親友と、ある美しく色づいた関係であることは、だれもがすでに知っていた。彼女たちの仕草の一つ一つが、明らかに人々にそれを悟らせて、それでも、それが禁忌や穢らしい倒錯で在り獲ることはなかった。なぜなら、それは、美しいフエと、美しいその分身の行為なのだから。だから、それは棘を孕んだ、為すすべもなく許されなければならない美しい心の高貴なふれあいなのだ。目の前を、けばけばしい紅色の色彩に極彩色の模様を撒き散らしたアオヤイを着た女教師が、足早に通り去って行った。チャンは、なぜフエの肌に、無数の引っ掻き傷が絶えないのか、その理由は知っている。アンが毎晩フエを穢して仕舞うからだ。その、しがみついて掻き毟り蹂躙して穢しはてる毎晩の暴力を、それでも受け止めてやるフエの献身を、チャンは哀れんだ。
眼差しにマイがふれた瞬間に憎しみが発生するから、チャンはマイをその視界に入れようとはしない。同じように憎みながらも、一応は彼女をその、何を見ても愛おしげな目で追ってみさえするフエとは、同じようには物理的にできない。逃げ出すように、学校から帰ると、フエの家に歩いて行く。アオヤイを着替えもせずに、カバンだけ部屋において出て行くチャンに、マイが背後から視線を投げた。
手に水を注いだコップを持ったままに、その、豊満な母親に似た胸元に押し付けるように。フエの家の庭にトゥイがいた。チャンはトゥイから眼をそらした。フエが言った。いつか、トゥイとチャンは同じだと。トゥイも、チャンも、わたしがしてあげたときに、同じような眼差しをする、と、その絶望的な、目に映るなにもかにもに絶望しているような眼差しは、まったく同じものだ。アンさえも。フエは、耳元に声を立てて笑った。
トゥイに対して悪意があるわけでも、嫌悪感が在るわけでもなかった。チャンは、トゥイを留保なく憎んだ。至近距離の頬に鼻をつけて、チャンはフエの匂いを嗅いだ。フエの体臭が、かならずしも心地の良いものではないことは知っている。むしろ、かすかな醗酵のある肉のような匂いがした。その、かすかに穢れを含んだ臭気を、ためらいながらチャンはいつも吸い込んだ。庭に、ブーゲンビリアが咲き乱れ、地面いっぱいに散っていた。タオがいた。庭の掃除をしながら直射日光に差されて、肥満したからだを、悪い膝を引きずるようにのたうたせながら、庭を横切った。チャンに笑顔をくれた。二つ目の居間に、アンがいた。アンはただ、世慣れないおびえた表情を曝して、挨拶もせずにチャンに小さくうなづいただけだった。
ソファにすわったアンは、上半身裸のままにショートパンツだけを穿いて、一瞬、恥じてからだを隠そうとした。獣じみた、その筋骨の隆起した大柄な体躯で、毎晩フエを苛んで仕舞うのに。そう想って、チャンは、その健康的でたくましい存在そのものを無残で見苦しいものに感じ、不意に、自分が彼を眼差しにとらえたままに、何の表情も曝してはいなかったことに気付いた。あきらかに、アンは戸惑っていた。シャワー・ルームから、ぬれた髪をそのまま曝しながら、フエがそのからだを顕した。ホンが、戯れるようにバスタオルを巻いて、フエの背後に抱きついたまま、嬌声を上げた。チャンに気づいた瞬間に、ホンは恥じらいと戸惑いに一瞬だけ硬直して、声を立てて笑った。確かに、フンは毎日、日中市場に働きに出ていたし、この、あまりにも広い家屋にそとから人の目が入り込むことはなかった。ここは、前庭もなくすぐに主幹道路にふれる、チャンのうちではなかった。チャンは、ためらいながらフエを見つめ、誘われるままにフエの寝室に入った。ホンはチャンにどこも似てはいなかった。フエはあきらかに父親似で、アンは母親似だった。父親と母親の面影をあわせて一緒くたにしたホンは、結局はフエにもアンにも似てはいなかった。
締め切らないドアの隙間から、かすかな風が入って、ドアはときにはためいた。フエは、まともにふき取ってはいないからだを曝しながらひざまづいて、12歳のホンのからだの水滴を、わざともみくちゃにして戯れ、ふたりの喚声をたてながら拭き取ってやった。ホンは白い。フエの弟に、そして父親のダットに似て、日の光にいままで一度も触れたことなどないかのように。褐色のフエが、その前にひざまづいたままそれを責めさいなんでもてあそぶように、ほしいがままに戯れた。
すねた表情を曝して、拭き取られたばかりの皮膚を、抱きついてぬれたフエの皮膚にぬらした。髪を洗ってやったのだとフエは言った。ベッドに横たわったチャンはアオヤイを乱して、枕に顔を半分うずめながら片目に、濡れたままの横向きのフエを見つめた。じゃれつくホンの腹部に口付け、フエはホンに戯れた。フエに似た、華奢な身体。マイが生理を迎えたことは、家族には言わなかった。自分と同じようになっていくのが、チャンには許せなかった。内気でひとりが好きなくせに、周囲にこびへつらわないではいられないマイのたたずまいのすべてが、できそこなった自分を見ているような気がした。マイが感じたに違いない、自分が感じると同じかも知れない腹部の鈍重な重さと苦痛が、自分の腹部に蘇る気がした。
狭い室内にむりやりいれられた扇風機のスイッチを回すと、旧式のかたつくノイズとともに、巻き上げられた蚊帳が白く、ふるえながらゆれた。フエの指先がホンのぬれて重くなったかみの毛を掻き上げて、フエは知っていた。もうすぐ、この子は死んで仕舞う。ハンもろとも。遁れようもない認識、そして、未来が見えるハン自身ならもっとあざやかに知っているに違いないので、フエはハンにも、ホンにも、アンにも、チャンにも、秘密にしていた。なにもない色彩の空間に、うすらべったい翳がぐちゃぐちゃに存在していた。言葉もなければ気配もないままに、それは存在していて、それ、ホン。ハンが立ちつくして、その翳を指さしていた。その拡がった翳を踏みつけて仕舞いながら。見たこともない、顔もからだもよじれた、溶かされたチーズのような男の翳。色彩のないハン。これ、と、色彩のない形態はただそれを指さして、フエは声を立てそうになった。いつか、視界に姿をは決して顕そうとはしない自分自身が、ホンを踏んづけて仕舞っていることには気付いていたから。みだらなまでに、ホンの翳は空間に拡がっていた。ふしだらに、ただ、無防備に拡がっていて、フエは眼をそらすことさえ出来なかった。どこを向いたとしても、眼差しがその、ハンとホンとを捉えて仕舞うに違いないことをは、すでに気付いて仕舞っていたから。あまりにも残酷な自分の、いま現在の宿命を呪った。あなたは私を殺して仕舞う、とハンは言った。それに、留保なく許しを与えたような、絶望的な色彩を眼差しに曝して。やさしいハン。佛様の生まれ変わりに違いないハン。想い出すまでもなく知っている。いつかのハンを殺して仕舞ったときの、その転生のときのなかのいつかにその首を締め付けた手の触感さえ、忘れることは出来ないのだった。ゆがんだ顔と身体が、でたらめに空いた穴からでたらめに、空間の低いとこに弧を描いて旋回した後、左の方に流れていく。
水平に。
流れるその速度など、もはや停止しているのと変わりはしない、どうしようもない遅さで、ゆっくりと。そっちの方にだけ、重力が、あるいは引力が存在していたかのように。そんなものなと、存在してなどいないのに。ただ、その鮮血の群れが勝手に信じて仕舞ったにすぎないのに。ホンが、彼女を学校に送っていくために帰ってきたハンに、庭先からあのか細い、弱々しい声で罵られたときに、あわてて飛び出して自分の部屋に駆け込んで、ホンは服を着る。フエは、自分を抱きしめたチャンの体温を感じた。
アオヤイ越しのそれは、執拗に、ふれたそのからだの内側から発熱しているように感じられて、フエはチャンが生きていることに気付く。たしかに、彼女は発熱しながら生きている。自分の体温と、汗と、生き物の体臭を撒き散らしながら、ふしだらさを窮めて空間にその存在を穿つ。ベッドにあお向けたフエの乱れた髪の毛の、乾かないままのかみの毛の匂いを嗅ぐ。しがみついて、皮膚に残った夥しい水滴のむれを、チャンは自分のアオヤイに移した。
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