ジュリアン・O、浸蝕。そして青の浸蝕 ...for Julian Onderdonk /a;...for oedipus rex #030
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください
(承前)
それ。所謂、形態的には完璧な男根の、割れた孔の向こうには子宮が存在していた。陰嚢はそもそもない。それが、奇妙に見慣れられない鋭利な洗練を、目に新鮮に感じさせていた。そしてややふくよかな、走って邪魔にならない程度の胸のふくらみ。かつ、腕の、または腹と脇、足の張り詰めた、しかし瘠せた鞭のしなりのような
好き?ぼくを
無謀にも、愛は
筋肉の、
男の子として
そう。…どう?いつでも
いたいたしい
好き?ぼくを
放置して仕舞う、と
男の
ね?女の子として
わたしたちを、…ね?
肉体。腰骨は、ずぶとく強靭で女のそれではあり得ない。かつて、所謂男性性器からの毎月の出血と鈍痛に、異常を知ってついに取り乱し始めた思春期の春雨を、
すくなくとも
破裂!
ねぇ
両親。彼を
少女としては
し、たかの
生き延びていい?
彼女を?
知られなかっ
爆破的鼓動
ねぇ
つれこまれた
存在。いきいきと
を、見せたかの
おれは、…どう?
大学病院、精密検査ののち医師たちは、採取した排卵の卵子に、受精発芽の可能性のない空虚を見た。いわゆる両性具有。または、両性俱無。皮肉?アンドロギュヌス症候群と名づけられ、その前例のない異端を医者、…のみならず研究者たちは剥いた白目の驚嘆に歓迎した。親元にあった高校時代まで、春雨は身体検査という名の新種観察の好奇の目にさらされ、だからやがて、それらの目をのみくらませ、彼等からのみ失踪しおおせて仕舞うまで、肉体は
動揺?いいえ
傷みは、いま
その
沈黙。覚醒じみた
も。ええ、あるかな?
内側の詳細をまで剥き出しにされつづけているしかなかった。真魚以外の、
愛を
すべては春雨に
きみには
孤立の風景をのみ
赤裸々なまでに
見せた。純潔を
愛を
守る意志もないまま、医療研究者たちのゴム手袋以外、春雨の肌にふれるものはなかった。また、求めもしなかった。その、特有の体臭。濡れた、雨に撃たれた子犬の柔毛を思わせる匂いを四方に
ざわめくにも似せ
く、
息吹きだよ。これは
めざましく
われわれは
くさっ
いぶ、…生きていた。きみは
撒き散らしながら。あるいは、真魚とふれあった思春期は、つねに自虐と自己破壊の欲望をしのばせているかに春雨自身には疑われていた。かならずしも、と、春雨は正確な時間など決めていなかったはずの
来て、…ふたり
いま?
予定時間超過を、その
あとで。だから
あした?
朝、いたぶりの
ふたりの朝の
また?
よろこびを、かくす気もないまなざしに
おはようのキスに
なに?
ふたり、交互に
充分…ね?飽きたら
なんで?
均等に責め立てて飽きない。室内には、油ぎった香気が不可解に、無機物の腐敗を感じさせる臭気としてあふれかえっている。いつでも。充満。真魚は、その
慣れしたしんっ
あるいは
しんっ
ここちよく感じられもするのが常だった匂いに、やがて腹部が重くなりはじめる頃、唐突に嫌悪を…もう。皮下の脂肪に火をつけられて仕舞ったかの。赦し難く感じはじめ、ついには耐えがたく苦しむことになりはするのだが、
あっ
あっ
あっ
まばゆさ。いま、レースの
あっ
あっ
あっ
網目により添う綺羅めきと翳りのあわさのかすかすぎる蠢動に、
ひかりよ。ひか
まぶたは
もっと
ふたつとも
やさしく、
まばたいて仕舞う。と、
ひっ
想起。真那と真樹は、もう学校に
ひかりよ。ひか
そっと、ふ。ふかく
行ったころだろうか、
もっ
呼吸を。ふ。ふかく
と。ふとした、唐突な
やさしく、ひ
目を閉じないで。ふ
喪失感。3月5日。ひょっとしたらもう春休みだろうか。まだだろうか。もうすぐだろうか。とっくにだろうか。いらだち。やがて、そのいきなりの
どうして?いまも
生起。母親なら
わたしたちって
当然
ぼろぼろだよ、
熟知しているべき高校の日程の感覚も、最初から
ね。なんでなん
真魚には完璧に欠けている。せいぜい小学校くらいまでだったろうか。実には、大学進学の直前、真那も真樹も稀れな邂逅しかない真魚をなど思い出す暇もなく日々の、卒業間際の心の未熟な動揺にいそがしかった。それぞれに過剰な期待、
いまだ、水滴の
違うよ
希望、
ひとつぶの落下を
おれは、さ。生まれて
また、
知らない、その
いちどもおれは
失望、はやすぎる
みなも
さ。叫ばなかっ
絶望、絶叫じみた
みなもの
おれはいちども
惜別、不用意な
清楚さのように
さ。ささやきをさえ
喪失感、その他。「脱いで」こともなげに
わたしは、むしろ
え?漏らしはしな
春雨がささやき、その声に波紋は振り返り見る。と、無言。春雨。笑みに、意図もなくいたぶる。だから気安く誘うかの嗜虐の気軽さ。なにも訴えのない空虚の空疎を以て。波紋の、
はっ
ふとわななかせた微笑に春雨は「真魚に」
ひか
お願い。もっと
肉体は
笑った。「それとも、彼女に
ひ
赤裸々に
孤立。深刻な
脱がしてほしい?」ひかり。ななめに
ひか
ふれ、
かっ
ふりそそぐというほどではないまま、しかし
ひか
事実として赤裸々にふりそそぐ
かっ
ひかりの温度に、波紋。彼はその肉体をさらした。恥ずかしいとはもう思わない。矜持もなく、うつくしいことを良く知ったものの、ほのかで自然で押しつけがましさのない、と、
ひかりたち
あからさまな
いき
同時に押しつけ、かつ容赦ない見下しもいまさらない、と、
いっ。もっと、も
倦怠寸前の
生きています
同時に軽蔑以外を知らない、しかも、ただ、
やさしく、もっ
ここちよさ
まっ
見られる事実にあわい、
あ
ええ。ふと
あさい、
跳ねた
息を飲んで、あっ。そして
執拗な昂揚だけが
あ
全力で、きみは
波紋。じぶん固有の風景として
ひかり。その
ほほ笑め
すでに
それら、らっ。粒子が
ふと。ええ
あった。画家に描かれるということ。それには波紋も真魚も馴れきれはせず、波紋はただ昂揚と謂うしかない感情の沈滞に、と、そうと以外に名づけようもなかった事実にこそ目舞いかけてみる。春雨の、いま
赤裸々な色彩と謂うものは
ああ
再構築
のめり込んでいるのは
存在しない。すべて
なんという
破壊し
ミケランジェロの、あの
すでに色彩は
うつくしさなの
分解し、猶も一種の
最後の審判をモティーフにした
赤裸々だったか
で、…ら。え?…しょう
愛を以て
抽象。聖バルトロメオからはじめた。そのミケランジェロにだけ、モデルはなかった。駆使された複数の種類のタッチ。基本、俊敏さのけばけばしい極彩色。それらはひょっとしたら春雨自身による春雨だったのかもしれないと波紋は、ひとり
そう、ときに
翳る日。その
思っていた。同性愛者たちの
いいんだね?ぼくらは
雲に、すさまじい
群像は、それぞれ
自虐さえしても
光暈を、…そう
ふたりづつの抱擁として、半分以上を仕上げた。ひとりづつ波紋がモデルをつとめた。春雨は抱擁に、あやうい距離と違和を与えて引き裂く。その朝にまでいたる数日、波紋が取らされていたのは、船上のカローンのそれだった。あの、プルートーに寄り添う黄泉の舟渡し。より強烈に
衰えが見えない?
デフォルメされた形態に
ミケランジェロの
ふりあげた腕は、
だって、あれ
好きなの?
衰え…飽き?が
10分程度で
おとなしすぎない?
これって、でも
さ。なんか
疲労を
かれとしては、
退屈じゃない?全体として
これみよがしな
訴え始める。波紋は、
…さ
なんか、おれは
衰え…飽き?が
皮下にきざしはじめる発汗じみた感覚の陰湿を厭い、
ん?
やっつけじゃん
夢。ときに、見た。スフィンクスの夢を。いまだに、…だからもっとこどもだったころにはもっともっと頻繁に、さらにだにあざやかに、どうしようもなく鮮烈に
かすめとるかに
色彩
はっ
見ていた気さえ
見て
世界に、ささげられたかの
波紋
する。華やいだ
からみつくかに
青
はっ
曠野だった。ことばの矛盾は、夢の事実にはいささかも矛盾を匂わせず、
ええ、
猶も
翳りが、そして
だまされている?
絶叫が
曠野。青い、かつて
密度
わた、…この
やがて
極上の紅が
微光が、そして
なに?…網膜は
悲鳴が
ふいに
密度
だまされている?
そして
一瞬で失神したかにも青い
気配が、そして
わた、…この
消滅したあと
花を、
青。そう
あ
すさまじい彼方まで
花々に赦された、それは
あざやか?
ひろげつづけてゆく
ただひとつの
や
曠野。
色彩
やつれた?
ブルボン?
青。そう
わ
あるいはそうかも知れない。実はみどりの、そこがゆたかな大地とは知れていた。草にしても、蔦にしても、葉々にしても。樹表も地表もすべて失神の青におおわれ、いたましい青の
え?
放埓。
青
取り返しがつかない、
え?
と。実感。まるで、浸蝕を以て侵犯する、そんなものしずかな狂暴を、青の色彩は遠目にすら明かしつづけた。すべては、やがてその色彩に青く飲まれて仕舞うにちがいなかった。ほんとうに、色彩がブルボンかどうかは足元を見ればいいだけだった。そこにも侵犯は進行していたはずだから。知っている、そんなことは。しかし、
見はしなかっ
青?
いちども波紋は
見えはしなかっ
やや、赤らん
それに
色彩以外には
ええ。まなざしは
猶も、それでも
触感?…じみた
感覚をさらし
見えなかっ…視覚とは
錯覚を残し
色彩の知覚で
錯乱をささやき
あるにすぎな
まばたきを、そう。強いて
なに?
色彩以外には
見え
青
まなざしは
える?…えっ
青
猶も、それでも
見て
青
それら無数の
触感?…じみた
青
感覚をさらし
青は、…どう?
錯覚を残し
気絶しかけた一瞬の
なに?
絶句
錯乱をささやき
な
なに?
ふれてあげよう
赤
そっと。ぜったいに
赤
壊さないように
赤
それら無数の
ふれてあげ…あっ。よう
見て
赤
そっと。ぜったいに
られ、らっ
赤は、…どう?
傷つけないように
る?…られら
激怒していた一瞬の
なに?
絶句
やさしいのだ
な
むらさきがかった
なに?
わたしは…ね?
ふれているから。ことわりもなく
赤?あるいは
くちびるに、え?お前の
どうですか?きみも
きみが、…さ
青。それら
咬みついているのは
やさしいです
すでに
あざやかな色彩たちがいっせいに
見ていたね?
か?
これら
あ、
見蕩れて仕舞っ
ん
わたしたちをも。また
残像をさえも
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