ジュリアン・O、浸蝕。そして青の浸蝕 ...for Julian Onderdonk /a;...for oedipus rex #029
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください
#02//匂い?匂う?ほ/ほ、/ほ、/ほ、ん?//
一階は、
ららっ
借りる時に、もう
きらら
回復不可能なまでに
らららっ
大幅な改装を加えたぶち抜きの、ひろすぎる
記憶
あ
空間だった。隠しきれずに
と、謂うほど
だから
残存した
明確ではあり得ない、しかし
絶句
いくつかの
記憶
思わず、
梁が、
え?
ええ、
ん
仕切られていたむかしをしのばせる。あの不動産。20代の、おそらくは新人女子。原口光琉という、読みにくい名前をヒカルって…失笑。じぶんで「これ、」
あーって
慎重なん
よくないですか?
みずから「ヒカルって
わーって
意外にこう見え
えー。なんかわたし
読めたりします?」名詞を
えーって
わた
ん?好きかも
差し出すその微笑は、たぶん先輩のだれかに吹き込まれた巧妙な自己アピール手段と知れた。まだこ馴れきらない。ぶち抜くことを条件に謂った、その直後の態度の急変にはもう、ふたりは物件探しの難航の行脚に見慣れすぎていた。有効な客であるという価値の喪失。3日後、たぶん事務所で書かされた客様カードの番号から、あわてた
あ、あ
微震。を、ね?
声の
あ。あ
微妙に、ね?
光琉が
あ、あ
微細。な、
春雨の
なに?
空気が
携帯を「おう、」鳴らした。「おうち、まだ。お探しだったりしません」ぜんぶ「…か?」と。おっしゃった条件、まる飲みOKです。春雨が声を、鼻にだけたてて笑った。知れた。上司か物件担当者か家主かが美術のマニアだったに違いないことが。と、勝手にそう察し、返り見た春雨にことの次第を聞かされた真魚はただ親友の誇らしさに笑んだ。契約にも工事にもいちいち立ち会った物件担当の男は、ひたすら
やっ。…いいとこ
ささ
匂いが、ね?
春雨に
です。ええ、意外に
ささやくかに
いや、水の
馴れなれしかった。あの、賃貸専門他社の
いいとこなん
さ、
土手のほう…ん?
新人営業の無知を見下しながら。せまくはない。とまれ、多摩の辺鄙なあたりではあっても東京が東京であるにはちがいない。所詮、たかが40坪もないのだが、中央やや奧にいきなりの階段、そして剥き出しの玄関扉といういびつさは、壁をひたすら何枚ものふたりの裸身の痕跡たる抽象タブローの立てかけられたさまに、圧迫されてはいるにしてもなにか、どうしようもない空虚を不穏に
もちよる
感情。微弱な
感じさせる。春雨は、
空虚に、その
音響。微細な
階段を
空虚ゆえに、この
温度。執拗な
降りきったアトリエに
いきものたちは
事象。微妙な
不在だった。さっきまでいた気配ものこさずに。真魚。さきに立ちどまって見渡す波紋に遅れ、不在の事実にようやく気づく。部屋。中央。ふたりたたずみ、いきなり家主の蒸発した孤立にさらされた錯覚に、…どこ?それぞれの…なぜ?双渺はまばたきを
消え去っ
一度だけ散らした。…絶滅?
きのうは
あ
風景は、この
と。
絶滅
あ
いつか、きみたちが
ふいうちの、
鉛の…ええ。雨が
あ
見たものだったね?
真魚。窓の、一応は土手と前面道路のやや遠いまなざしを遮断する透けたレースのカーテンを引き、サッシュをも明けて外に出れば、そこには人類がすべて失踪した不在に、取り残された世界とじぶんたちだけが棄ておかれているのだ、と。そんな気が
見えないでしょ?こうすれば
と、唐突に
見えちゃうよ
した。しかも、
大丈夫でしょ?だって
われわれをつらぬ
恥ずかしいじゃん
あり得ない
見えないよ。みんな、
ぬ、ぬく。この
だって、さ。見られたら
妄想と自虐する明晰をもまなざしは、
とおりすぎてくだけだか
歓喜を、…そう
見えちゃ
猶も
違う?…ら、
知れ。きみは
やっ…だめだよ
うしなわないままに。波紋。ふと、
はっ
彼は真魚に
波紋
感じた。匂い、と。甘く、腐敗しはじめた果物を思わせた異臭を、
は。はっ
真魚。ななめうしろに
波紋
存在している肉体の、
はっ
だからあてどないどこかに。妊娠の
肉体。それは
波紋
せい?わからない。
刃物の、ん。ように
はっ、
それが、
その、…え?傷みのように
波紋
ほんとうに
伝番しはじ…ええ。め
はっ、
真魚のものかの確証さえもなく、しかし臭気は
ぼくたちは
波紋
たしかに。また、そのあやうい異臭が不快とも、きわどい快感とも、ぎりぎりの心地よさともなにも、確定させない純粋な違和を投げ与えただけだったことが、…なに?ことさらに鼻孔を…なぜ?難解に…やめて。させていた。あくまでも無造作で不遜な異物の
きのう、紋白蝶を
傲慢。波紋には、
見かけましたか?
春雨を案じる須臾もない。冷酷、
ええ。これら
いいよ。もっと
冷淡、
辛辣すぎた
無防備で、きみは
そうではなく、ただ
豪雨のなかに!
無防備に、きみは
春雨に無条件の信頼をのみ約束していた。あの俊敏な身のこなしの、みずから謂く超人的存在は。春雨が、だから無条件にふたりを愛した春雨が、ふたりに不都合なことなどわずかにもするはずがない。春雨とも、ふたりともたしかに肉体関係があるとは
こう?
けっして、おれは
もう。さ、
謂えた。波紋は、
どう?
男性でも、また
はずかしいくらい
いわば命令として
こう?
女性でもないと謂うわけじゃな
ねぇ、ささやきあわない?
羨望と憧憬と執着を強いる強烈さのあるうつくしさを撒き散らし、春雨はむしろ、背後から忍び寄る陥穽じみたうつくしさを
あ!ねぇ
ら。…らら
見せた。どちらにも
見て
らっ。綺羅
なんら、
あ!ほら
り、…いっ。そして
外貌、肉体への
大気が
りら。微細な
矜持がまったくないままに。制圧する魅力と、
翳りらがっ
搦めとる魅力が
翳りらがっ
ふたつ、ちかづけばふれあうしかなく、ふれあえばもつれるしかなく、もつれれば肉体と肉体は、からまりつづけて仕舞うほかなかった。奇妙な、決して射精には至ることのない昂揚を波紋は春雨との数十分に「やめて」と、もてあました。…ね?
速度
なめらかすぎた形態に
滅びよ。すべて
声。「おまえたち、
慎重な、われわれの
腕。みぎ腕の
なかに、り。ひかりの
なにさま?」
速度
傷み。…朝の、
自滅してみよ
背後。シャワーを浴びたばかりの春雨。不在がまるでふたりがついた下手な嘘でしかなかったかに、全裸。恥じらいもなくバスタオル一枚で髪をだけ「…もう、」拭きながら「さ。いい加減にしてくんない?」声を立てて笑う。とがめだての、一切欠落した虹彩のあかるさに春雨はひとり辛辣なあざけりを散らした。だから「いま、何時だと思ってる?」
きみ、ぼくに
お、
「…って、」
謎かけを?
お、
「言い訳すんなよ。答えて。いま、」春雨「何時?」たしかに波紋は、春雨を返り見るまえ、階段裏手に仕切られた浴室ドアがひらいて絞められたひびきの無造作を慥かに聞いていた。「遅刻じゃない?」
きみ、ぼくに
お、
愚劣だ!ついに
「そ?」
微笑を?いま
お、
朝さえ、この
「だって、ぼく。もう、待ちくたびれて、さ。シャワーも浴びて、さ。しかも、」その「髪だって洗っちゃった」股。体毛の
ぼくはね?
じゃ、
翳り。
違うから。男の子でも
じゃ、ね?
濃い。ぶらさげた男の、
女の子でも
ね、…なに?
萎えて垂れた
そう、だから
じゃ、
性器が実は、如何にしても
もっと、すばらしいもの。…
じゃ、ね?
男ではないことなら真魚はとっくに
かな?
ね、…なに?
知っている。じぶんの最初の出産がなんとか落ち着いた13歳に、唐突にほほ笑む春雨のふいうちに告白されていた。波紋も、最初の交歓の朝に。だから、
見て
春雨。まるでカウンターテノールじみた声で、春雨は
ふいうちの
見て
そっと、
雨のように
見て
打ち明けたのだった。いたわるか似せた、いたぶりを以て。
肉体は、つねに
見て
裏切りにすぎない
見て、…いっ
と?だから
見て
あえてすがすがしい
朝に。この
肉体は、つねに
見て
朝日すら、ここ
裏切りにすぎない
見、…いっ
地表にあっても
あまりにも、もう
見ていっ
裏切りなのだろう?
ね、
見えていま
めざましい不遜
肉体は、つねに
え?
まっ。…どう?
見て。しかも
裏切りにすぎない
ね、
すか?…ま、
そらさないで!その
そう、きみは。唐突に
ええ。まさに
うつくしい。肉体は
肉体は、つねに
目を。その
ほほ笑みを。ただ
裏切りのさなかに
裏切りにすぎない
双渺もすでに
ひたすらに
これ以上ないくらい
荒廃を、みずみずしい
肉体を裏切る
繊細に
赤裸々に、…だろ?
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