ジュリアン・O、浸蝕。そして青の浸蝕 ...for Julian Onderdonk /a;...for oedipus rex #026
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください
(承前)
かたわら、やや背後。春雨の、あいまいに投げた翳りに半身を染めて、真魚はうまれてはじめて自分が素直に女で在った事実を知らされた感覚に
名前は?
あ
はっ。波紋
むせた。
偽名?
あ、あ、あ、
波紋。はっ
「時間じゃない?」
本名は?
あ
波紋。おれ
と、
やめて。それ
あ、あ、あ、
波紋。うまれて
ふと、
冗談?…って
あ
死ぬまでおれは
思い出したような気配をよそおい、
まじだ。…ってか
あ、あ、あ、
波紋。はっ
ささやいた
いい、名前。だね
あ
波紋?
彼を真魚はからだをすこしすくめたままに見上げるのだが、その、まるで少女じみた不用意な須臾さえ波紋に真魚は「…って、」いとおしい。「春雨?」
おしつけがま
好き
愛するって、さ
「9時からって」
し。…そう
きみが
ひとを。時々
「波紋の?」
しい、くらい
ぼくは
重すぎるよね?
「もう、」と。結局、真魚は波紋に一睡をさえあたえなかった。この一週間、…微笑。「あいつ、あの絵のことしか考えてない」9時にはアトリエに降りて、春雨に素肌とポーズを与えてやらなければならない。春雨。あの、男でもなければ女でもなくて、とはいえたしかにいわば両性具有の共存をせめぎ合わせるらしい特有のまなざしを波紋はいまさら
ん?
思い出す。真魚は
きょうは、ちょっと
惜しみながら、あえて
違うね?…きみの
引きとめるでもない。どうせ、
匂い
ふたりでともに降りてゆくのだった。もちろん、いつもどおり波紋は階段に手をとり、手をひく一秒一秒の細心の慎重に真魚に幸福をきざさせるに違いない。守られるほどでもない須臾にさえ、守られないではいられないのだという事実の圧倒的な
いいん
息が。ふと
快感。さらに、
だね?わたしは
歯と歯の隙間に
やがて
信じても
滞留。…を、
春雨の前で、
現実を
おっ。その須臾
肌をさらす波紋の、もうすみずみまで知られ尽くした肉体は、真魚をも昂揚させないではおかない。真魚から、波紋が奪われる一秒もない。春雨と共有しながら、しかし独占を春雨に赦さないじぶん固有の独占の事実に真魚は矛盾を感じ、奇妙な、あり得ない僥倖に思えていつでも
ごめんね
まどう。
わたしだけが
ホスト引退の
しあわせで、
秒読みを刻んでいた波紋は、もうすぐいやでも真魚の独占になる。歌舞伎町の店で波紋が知り合った
ごめんね
きみに出逢うそのためだけに!
男性客。波紋は、
わたしこそが
うまっ
キャバクラの女に
しあわせで、
うまっ
連れて来られたマイクロ・ソフトの日本法人のお偉いさんらしい奴とだけ言った。引き合わされても40代とは思えなかったその、波紋独立計画への
あれ?…すごっ
だいじょうぶ
もっと
出資者。
すっごく、…ね?
そう。あなたは
素直に
来生瓜生という
すてきな
いいん、…そのままで
笑って、ね?いいん
冗談じみた名の
女性だね?あなたの
いいんだ、と。ぼくは
もっと
男は
奧さん
ね?そう思うよ
素直に
いまや、波紋の鞏固な親友にまでなりおおせていた。仮に、東京パラダイス計画と名づけられた≪ショー・レストラン≫は、六本木の芋洗いに押さえた物件で6月にはオープンする予定だった。そこでは、いわゆる身体障碍者が、夜間は障害なくしてありえない彼等だけに赦されたショーをやる。見世物と謂う批判は受けるに違いない。逆に謂えば、身体的特性を武器にした独自性とも謂える。昼間は彼等が、それぞれの着想にもとづき、各種デザイン、ネット経由の物販、コンサル等、それぞれの能力の赦す仕事の限りを自由にこなす。発案は波紋だった。瓜生は賛同した。将来の話と、計画がまだ具体化しないうちに、真魚の妊娠が発覚した。もう、波紋は夜の仕事などする気にはなれなかった。そうと決まれば、瓜生の行動は俊敏だった。波紋が舌をまくほどに、瓜生はあざやかに具体化してゆく。ネットでつのった
おれは、さ
ね?
ざわめきを
公募。さまざまの
可能性?無限の
ふれて
その町は
意味合いに、さまざまに
無限であるべき
そして、敏捷
いつでも
賛同した種々の
可能性を、…さ
このうえない速度で
なぜ?稀薄な
身体障碍者たちと
見たいん
つかんで
ざわめきを
面談すればするほどに、波紋は計画の成功をのみ「…じゃ、」確信した。「行く?」と、声。その、じぶんの声帯をふるわせた、だからじぶんの。真魚は、
声
ええ。肉体は
波紋に
声
かすかな、やや
立ち上がることを赦しているじぶんに
声
飢餓
気づく。すくなくとも、アトリエ内ではいつも一緒にいるとはいえ、肌をあわせ、ふれあっているのと、ほんの数センチでもなんらの接触もない乖離にあるのとでは、真魚には世界がまったく違う気がする。波紋はなにも答えず、たちあがってそっと手をさしだす。つかまれ、と。肌。かならずしもきつく抱きしめられていたわけではない曖昧な肌は、終わり。曖昧なふれあいの、しかし。それにさえ悲惨な孤立を感じて
おわり?
終焉
歎く。そんな
おわ、
終息
じぶんがおかしく
おわり?
終了
やや、唐突に笑んだ真魚のくちもとにふと、波紋は不用意なまでに留保ない充足をだけ見出して
ん?
安堵した。
そう。朝が ;contrapunctus à 4
ここ。この、
の、
の、
の。…ええ
もう。朝が
ええ。…え?
ここ。の、こ、…そう
えーと。ね?
わたしたちにさえも
え?…ええ、
朝だったのだ
が
が、
が。…ええ
そう。…どう?
ささやきは、ん
感じていますか
が、
そうでしょう?
耳に、ん?すこしも
あなたは、ね?たしかに
あ
ねぇ!
名残らずに、…ん
わたしたちの生存
が
きみは
あっ
あっ、
あっ。…ええ
どうして笑みに
が。うっ、う
ほほ笑みに、きみは
う。らっ、ら
ぼくにわらっていられるのかな?
ら。るっ、る
こんな、すばらしい
朝。朝に
きれいだよ。きっ
見ないでよ。だって
ら。りら
朝日のなかに
いっ。…じゃない?
窓越しの。…ほら
ら
ものしずか。そして
ね?きれいじゃな
陽光のほうが、さ
ら。ら、
あきらかな照射に
いっ
いっ、
いっ。…ええ
わたしたちは、そして ;antiphona
なに?これは
唐突に、ふと
ゆびさき。そう
理不尽な、…ええ
きみの。…そう
咬みつかれたりした
でしょう?あざやかに
もの、だ。これら
地味な色彩を
絶頂に?…幸福の
朝日にななめに
絶頂に?…これが
ふれあうままに
絶頂?…そう?
ふれあいかけて
こんなものなの?
なに?これは
かなしみに。留保なき
逡巡。そう
かな、わたしたちは、そして
ゆびさきの。…そう
唐突に、ふと
でしょう?せつなく
不明確な、…ええ
息遣うこの
さいなまれたりした
みぞおち。表皮に
もの、だ。これら
みぞおち。あわい
確定に?…幸福の
翳りに、綺羅ら
確定に?これが
綺羅めきがにじむ
確定?…そう?
なに?これは
信じがたくて。猶も
汗?そう
焦燥に。留保なき
わたしの?…そう
しょう、で。わたしたちは、そして
気づきがたいほど
唐突に、ふと
微細な触感
容赦ない、…ええ
なにを?あなたは
落ち入ったりした
朝の、この。触感に
もの、だ。これら
触感の、この。朝に
絶望に?…幸福の
なにを?あなたは
絶望に?…これは
感じただろう?
絶望。…そう
どう?
証明しがたい
なにを、あなたは
この、赤裸々な
思っただろう?
こだます絶望に、不当な
どう?
ん?…だから唐突な覚醒感を
おっ、
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