ジュリアン・O、浸蝕。そして青の浸蝕 ...for Julian Onderdonk /a;...for oedipus rex #025
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください
(承前)
教会の向かい、分譲マンションの6階のやや日当たりのわるい
ここ、さ
やさしい
ある意味、ね?
右隣りの、すこし
ママの実家
うるさい部屋で、
…なの
双子はしっかり育っていった。真魚が春雨のところにいると言えば、郁乃はことさらには案じない。知っているのだった。頼りがいのある春雨の、裏切りのない抱擁力を。娘をたくして心配などどこにあるだろう?中一。最初の妊娠。4月半ばに真魚は気づき、だから5月半ばには爪を執拗に咬みつづけるようになっていた13歳の娘の不穏。と、突然の嘔吐。異変を、母親が気づいて問い詰めて発覚した
なぜ?
好きですか?
受胎。ほんの
わたしなの?
晴れた日の
3ヶ月しか通わず、出産後も
どうして
虹の奇蹟は
産後ケアと育児をいいわけにもして、ほぼ不登校で卒業という名の放校処分を受けた真魚に、その残りの中学校時代のすべてをほぼ毎日通いつめた日々の故意に無邪気な談笑に春雨はついやして厭いはしなかった。真魚に親友と言えば春雨で、春雨にそれは真魚だった。中道研究所という、要するに磁気テープのメーカーの社員だった克美が、松陰館流道場をひらくひらないの煩雑な日々に迎えた受胎と
食べられる?
肉体。この
降れ
出産。苛立つ
夕方の
あまりにも脆弱な
あなたにだけ色のある
父親の翳りに
虹は。あざやかな
強靭を、そう
雨が
委縮し、のみならずあの恐ろしい大人の男の暴力、さらにふくらみつづけ、重量をましゆく腹部の感じさせた傷みのある感情の複雑に、あるいは反抗的にも見えた無口の真魚の動揺に、春雨。その少年、または少女はしかし、ひたすらほほ笑みを投げかけつづけた。20代なかば、かならずしも望んだわけでないまま海外市場での取引きさえはじまりかけていた春雨が、
だって、さ。わかる?
愛
アトリエ兼
罪ないんだもん
の、かならずしも
住居たる物件を
だって、さ。わかる?
存在しない
さがすのに真魚は当然
生まれていいん
愛
同行し、言い換えればそれはふたりの新居探しにちかかった。波紋とおなじくに、入り浸りのあげくのなしくずしの同棲をはじめる前から、双子がまだ腹にいるときも真魚はよろこんで、ふたりだけの空間に、油彩絵具とオイルの癖のある異臭のなか、しずかな春雨のまなざしの前に素肌をさらした。ホルモン分泌に、敏感になりすぎる嗅覚を時にもてあましながらも。最初はまだしも、なにが書かれているかはわかる程度の
具象が好き。ぼくは
な
知ってる?
具象だった。やがて
ディーベンコーンDiebenkornも
花
ほんとは、ね?
色彩と、色彩の
ぼくのピエトPietも
色彩に
ら、…さ。だから
きざす
花が好き。あの
な
ペインティング?…は
線分とは
花。ピエトの
花
すでに死んだ
より容赦ない
彼の、もはや
色彩の
そう思ってる。おれは
抽象に振れ、もはや
花でさえもない色彩の
な
ら、…さ。だか
圧倒的な
むごたらしいほど
色彩は
ね?おれは
違和のきわだち。それが
赤裸々な花
な
描くんだ。…絵を
真魚であるとは須臾にも凝視にも思えない。人のかたちではあり得ず、あるべき必然も感じさせず、ただ、見ればひとめで見る時々の、…具象。圧倒的現存。見る者の感情を乱射させずにはおかない…あえてくすぐる程度の強さで。だから、画家に見られたらしいもの
風景は
そう。…新鮮ですか?
の、息吹きの?
いつでも
そう。…煽情的ですか?
理解しようとすれば、その。ただただいたずらに難解なだけのタブローは真魚には誇りにも思え、むしろ生きて在ったあかしにさえ思え、かつ、真魚。そこにあきらかなじぶんの裸身を見、
なに?
見ている
これは
違和。見せ、
歓喜?わたしの
見せている
なに?
破廉恥。または
これは
若干の
傷み?わたしの
羞恥。見られ、
なに?
見られている事実への深刻な懐疑にも
これは
駆った。と、波紋。そのゆびさきが、唐突に真魚に鼻筋をすべり、
え?
いつでもぼくらは
あ。愛
確認を?
え?
ふいうちの
あ。愛
かたちを。だから手ざわりをまでも。そこにあらためて知り、初めて知るかに知り、知っていまさらのおどろきに度胸をなくさえしながら慎重に、うわくちびるの尖端にまでゆびさきがたどりつくのを、
と、
いいよ
…微笑。
きみは
いま。いきなり
浮かべてあげるべき
微笑
涙したって
それ。ほほ笑み。真魚は、いま、ほほ笑みをささげていなかったじぶんの過失を感じた。にぶく、体内にひろがる微熱にも思わせて。いつも、唐突に春雨は
すでに
見える?
にごりの、え?なにもない
虹彩、ふかい
わたしたちは
ささやきもしない
かっ。…ええ
琥珀色。嗜虐の
明確に発熱
ぼくらは
え?翳りに
気配を赤裸々にきざす。契機。その、
俊敏?
それはだれにも、まちがいなく春雨にもわかってはいない。そしてなにも謂わずに見つめつづけ、一度そらされ、カンバスに走ってふたたび
敏捷?
視線。まなざしが、容赦なく肌にたちもどればその嗜虐の須臾はきれいにすべて消え失せているのだった。虹彩。眸のむこうに
どう?あなたの
微弱。かつ
拡がったはずの
まなざしのふれた
執拗な
風景を、真魚は
わたしは
恍惚。…じみた、
そのたびに共有したくも思う。真魚は、春雨にえがかれ続けてもはや完璧な共謀の雰囲気をだに感じていた。絵を買ってくれたひとに、と。「紹介されたんだよね」2年前の
情熱もなく、ただ
あげる。この
見て
6月。
冴えて冷静な
肉体を、きみに
見つめ、そして
明日、…と、「彼を、呼ぶんだ。その、そいつ」
「ここに?」
棄てられかけた
雨?その
「描いてって…さ。いや、客が、さ。だから」
「男の人?」
猫のように、と?
予告もない
「モデル?」ふくみわらい。「そう」と、なぜ?…ここに?あなたはわたしたちのいわば聖域じみた場所に、
または
知った。そう
ね?いま
身元も知れない男など
逃避。ここは
なんという、この
おもいっきり…さ
どうして
逃げ込んだ場所だ、と
わたしの
吹き出しちゃって
連れこんで
われわれが
ええ。傲慢
ね、いい?
平気なの?…とは、真魚はついにささやけないでいた。気づいている。春雨は、見ず知らずの男のアトリエへの侵入。あるいは侵犯?そう、すくなくとも真魚には思われているに違いなく、真魚を覆いかけたふいの鬱が、同居の近親に感染するかにすでに春雨にも共有さえされきって、
破壊?…いや
雨。やさしい
と、
いいえ。けっし
6月の
この、妙に他人の懊悩に素手で、しかもじぶんの表皮にふれて仕舞ったにひとしいあやうい
あ、
感覚。たしかに、
涙?
じぶんは
あ、
じぶんたちふたりの固有の禁忌を犯すのだと、春雨。みずからに理不尽な加虐を感じた。それは、かつすぐさま自虐にも思え、あるいは、深刻な自己破壊?…杞憂。所詮は。当日、駅前に迎えた彼。数枚の、けっして安くはない絵画に
そいつ、ね?
だけ。だ、…わたしの
ええ、彼。だって
身銭を切った
わたしの、ね
だけのもの、だ。…わたしは
すっごいかわいく
40過ぎの女に
いいひと、なんだ
だけ。だ、…わたしの
ええ、彼。わらってくれるの
おしつけられた男は、はやい午前の
やすみなの?
今日?
日射しの
だって、いまの時間て
やすんだの。おれ
下で見ればあきらかに、
今日?
すっぽかす、とも
あからさまに、
わたしのため?
そうとも謂うけど
あきれるくらいに16歳の、うつくしすぎる少年だった。嘘、
うつくしいものよ
と。
思うがままに
春雨。
思いのほかに
動揺のない、
残酷であれ
容赦ない
うつくしい男よ
動揺。20歳の美形ホスト?嘘。女たち。あんな武骨ないきものたちが、とおまきに息をふきかけただけで深刻な汚染に穢れ死んで仕舞う、…と。そんな、
凶暴に
吼えてごらん
嘘。だから
ほら
ら!
嘘。ソクラテスさえ
えぐってごらん
絶望的なまでに
衆目に自慰をはじめるべき圧倒的な未成年ではないか。あの女、じぶんでは名を名乗らなかったあの、…だから最初の横1.5メートル強、縦3メートル弱の大ぶり5連作一気買いの売却後、偽名偽住所であったことはすぐに知れたのだ。金は払ったのだから、春雨の知った事ではない。絵の所在?知ったことか。略奪され、焼かれ、破棄されさえしてきたのがすべての価値ある絵画の
嘘だ。きみの
宿命だったではないか。
うつくしさは
女。
ぜんぶ。ぜん
年増。しかも
嘘なんっ…きみの
極端に清楚なたたずまいが、突然白目に微熱を…ね。孕ませ、お願い。描いて、と。
ね?
ほら。彼方には
やめっ…その
春雨。眼の前の
あたらしい世界
ね?
傷いん…沈黙が
画家を
切りひらきたくない?
炎上。留保なき
饒舌にさえも
嘲弄するかに、また同時に必死にすがりつくかにささやかれた、みじかい
ね?
どう?
音声。情熱の、
え?
不可解だった不可解さの意味がいまや完璧に
ね?
どう?
知れきった気がした。いわば、
え?
と。からみつく蛇の密集すべてを、ひとつひとつの棘の鋭利に突き刺して刺し殺し、その殺戮になんら感情的な微動だにもないままの
ね?
どう?
冷静。冷淡とは言い切れない静謐。凛とした、ふいうちの
花だ!
咀嚼したい?
わたしたちの
薔薇。
きみは!
鋭利に、しかも
落ち入る孤独を
思った。春雨は、おれは、と。描くだろう、彼を。このうつくしい
苛烈であれ
かなしいほどに
いきものを。
野蛮であ…この
無能な、こんな
じぶんの、
うつくしいお前は
社会不適合者
後頭部にみずからくちびるをおしつけささやき諭すかの、この、
あ
え?
ん、
…感覚。うつくしい、この少年を、わたしは。文字通り、もう狂おしいまでにのめりこんで。事実、
あなたはすでに
ら
そうだった。
あなた自身のうつくさにさえ
らら、
聖蹟リロードを突っ切て、
裏切られてたね?
うっ
アトリエに連れこんだあのとき、春雨は、施錠をといて出迎えた真魚の顔をさえ最初から記憶しない。見て、笑みをくれて猶も見なかったにひとしい。そのときばかりは真魚への気づかいもなにもないまま、春雨は少年をまなざしと絵筆にもてあそび、なぶり、いじめ、彼に見つめられる恍惚をさえ与え、また、じぶんは冴えた陶酔に醒めつづけた。真魚。愛していなかったなどと謂うつもりもない彼女をまえにしたときにさえ、稀れにもなかった新鮮な
そう。やや
情熱。その
自虐的で
あやうさ。ヴァージン・セッション特有の昂揚だけとは思えない。11歳だった真魚とのそれには、心づかいの余裕があった。つまり、基本、同性とされているとは謂えはじめて裸体をさらす少女の苛酷への。もっとも、幼すぎて、画家として画家になりおおせていない修行時代だったが故の過失だったろうか?対象への冷静は。われを忘れ、没頭の、みずからとの対話にならない叫びと怒号の応酬に忙しい春雨は
そう。やや
破壊せよ
気づかない。すでに、
自虐的で
おれ自身をも
そこ。はじめて見た少年の素肌に真魚が、細胞がとこけあうかにも魅了されはじめていた
そう、
事実には。
そう
見つめるのだ。…そう
われわれは、もう
奪ったかに。また
奪われたかに。そこ
そう、
すでにあなたに
見つめるのだ。…そう
見つめられながら
われわれは、もう
いたましい目に
奪ったかに。そこ
双渺に、やや
もう。…ね?
孤立。あなたという、…悲劇?を。辛辣に
すでに、まなざしが
見つめるのだ。…そう
厭いさえもした
放棄していて
われわれは、もう
目に、ことばのない
だから、あなたを
奪われたかに。そこ
瞳孔を、やや
そう、
ひろげはじめて
見つめるのだ。…そう
見つめつづけた
ね?見つめあいながら
われわれは、もう
われわ…そう
時が、いまや
いたましい目は
そう。やがて
傷めた。くちびるを
ひたいに崩壊して仕舞っていたから
懐疑を、…微細な
見るかな?…朝日を
もう、
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