ジュリアン・O、浸蝕。そして青の浸蝕 ...for Julian Onderdonk /a;...for oedipus rex #023
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください
(承前)
猶も
見出すために、なにかを
かわいい?
見飽きない。
まなざしは、…なにを?しかも
かわいらしい?
添い寝した
あるのだろうか?
かわ
じぶんのせいで、カーテンごしの朝の微光が真魚を翳らして仕舞うおもえば理不尽な模様を
波紋
ら
綺羅めき
見ていた。前日、…な
の、
らら
にじみあう
もう…なぜ?
ように
ら
虹?背後には
引退の
微光の
らら
綺羅めき
秒読みに入った波紋は出勤のまえに真魚と月を見ようとした。聖蹟桜ヶ丘の戸建て。春雨と、織部真魚との同棲生活。そこに、いつか入り浸った壬生波紋をふくめた三人の住まいは
ちょっと、さ
樹木
多摩川沿い、庭にさえ
せまっくるしい
葉
出れば、おおきな空を
いい。い、
葉々
いつでも
いいん、…だけど。さっ
草花
見せる。宮之下公園横に借りた、そこは基本的には画家、堀田春雨のアトリエだった。春雨…ハルメ。彼女はふつう、一階すべてを占拠した仕事場で油彩に
ポーズって謂うのは
え?
ね、…目
まみれ、真魚と
さ。…わかる?
え?
なんか、なつかしい
波紋は
嗜虐だから、画家の。いわば
え?
目。…だね
抽象画家の不可解な注文で不可解にねじった四肢に、一糸まとわない肌を提供する以外の時間、2階のじぶんたちの部屋にいた。その階には全部で3室。のこりふたつはほぼ使われなかった。だから春雨と諍いになった例外的な一日に真魚がそこであえてしばらく泣くために籠り、出てくれば決まって掃除を始める、…細部。家屋の
いたい?
微細な
なかに見につきはじめた
いたくない?
だからわたしを
いたるところの
いたい?
傷つける
埃。あらためて
いたくない?
微光
それらがただきわだちがいたまましいまでに気になるからだ。そんな、それだけのからっぽの部屋がひとつ。もうひとつ、東かどの日当たりのわるい部屋はものおきに。家主の春雨はまるで間借り人のようにふたりのベッドルームに入り浸る。なにをするにも、春雨に真魚はそこにいて気にならず、真魚に
おれたち、さ
笑っちゃう。なんか、
信頼しあっ
春雨は
ね?…なんか
笑えない?なんで
いや、
そこにいるのが
兄弟的な?
こんなふうにしか生きられなかっ
そういうんじゃな
当然だった。それは
さ。…ちがう?
笑うしかなくな
ま、いわば空気感
そこに波紋をふくめてもなにも変わらない。だから、想えば胎児の受胎の刹那にさえ、おなじキングサイズのベッドの端で、春雨はふたりを見守っていた。肱をついて横たわる笑みを、昏がりにふたりにあたえて。息をひそめもないそんな顔などどちらも返り見ず、だから
笑み
なんで?
記憶になく、しかも、
微光に
やさしすぎるよ
いつ
震動
なんで?
思いを馳せてもすぐさまふたりは、
笑み
わかりあえたね?
春雨が、かならずそうに決まっていると知る。いつでも、真魚に苛立つときでさえ春雨は綺麗な
上質な?
技巧的な?
精密な?
微笑をうかべた。友人と謂うには近すぎる、しかも友人と謂う以上に越えられはせず、その可能性さえ感じさせない距離感に、真魚。彼女のみならず波紋さえ、もう、なんら
なに、食べる?
日々の
ええ、まさに
かならずしも
なに、食べ
騒音に
そう。やや軽微な
違和は
な
日々は
過失?…の、よう
ない。いつか惹かれあった波紋と真魚との最初のふれあい。波紋は馴れないなまなましい女の肉体に、真魚は嫌悪されるべきあからさまな男の肉体に、最初の一度目。たしかにかすかに戸惑いはした。ただ、あくまでもかるく。それだけだった。たとえ、実質はじめての波紋と真魚とを手助けする春雨に、春雨固有の、かくす意図もない情熱が
ノイズ。または
翳った。ん?その
あまりに
背景音
虹彩が。…その
赤裸々であっても。
と、しての息吹き
ん?鮮明な一瞬に
そもそも、波紋のあいまいな懊悩。あじけない既視感とすさまじい新鮮さ。もっと辛辣な欲望をじぶんの肉に、存在に、精神にそそがれることに波紋はすでに慣れきっていた。未成年。墜ち延びるかに辿り着いた歌舞伎町で、他にすべがなく15歳からはじめた、だから違法のホスト。去年の年末に20歳になったいま、群がる必死の、または否応なく必死になってゆく女たちの、どれだけの切迫を見てきたかは知れない。波紋は、事実女たちには耐えがたく煽情的だった。たとえ煽情する本人が、あくまでも醒めきっていたとしても。女たちの、日常的な必死さの異様は、もちろん
女たち。あれら
俊敏な…そう
ね、だれ?
波紋。彼は、じぶんの
追い詰められた
失意。…そう
きみの
仕掛けたせいでもあると
女たち
傾斜した
ね?
知る。あえて、
恍惚を知るあれら
逡巡。…そう
眸のひと
それに罪を感じようとはしない。女たちはいつでも、あからさまな犠牲者に他ならない須臾にさえ波紋に、加害者の気配をのみ見せた。とまれ、最初の
こわれてゆく
逃走。ええ、
夜、19歳には
なに?…この
蝶が!蝶たちが!
まだ、
ぼくがこわ
ええ。疾走
あやうく届いていなかった波紋を、真魚。彼女はむしろ癒そうとするかに抱いた。もう3人も子供を生んでいながら、真魚がいちどもされたことのないやさしさを、真魚はささやかな行為のすべてにみずからに具現化しようとし、
ね?
感じる?
ね?
…愛。
二本足で、前のめりに
え?…咆哮
愛?
歩行している
え?…と。唐突な
愛。…し、
見よ。あげは蝶
痙攣。…え?
あうとは、本来こういうものなのでしょう?事実としては若すぎる男に誘惑され、求められ、故に与え、体を、ぶざまかつ理不尽に折りまげるようにして下半身を投げ出しながらも、真魚。奪ったのだ、
ぶざまさ
いたい?
うばっ
と。彼女。その
肉体の
…あ
われわれはいつでも
意識もなく、いま、
いびつさ
いたい?
奪われあうから
真魚はたしかに与えられている、と。そう波紋は、肉体を。おれの。だから、波紋。
はっ
暗闇に
波紋
なにも見えない相手の
はっ。はっ、
気配と
ひろがる
息吹きと
波紋
実在。それらのすべてに喪失されたじぶんの不在らしきものを
は。はっ
波紋
感じた。奪い、犯し、壊すかのじぶんの肉体の行為に彼は、息を
おれを
完璧に
ちがうんだ。…ちがっ
あららげ、汗さえ
きみに
きみを
ほほ笑んでいて。そして
うすく、すでに
圧倒的に
おれは
しあわせでいて
滲ませながら真魚は、
ね?
感じ
…与えた?と。波紋。おれに、だったら、彼女は「わたしは、…」おれを?「ね、」
「なに?」
なめらかな
そうだね?われわれは
傷みが。…がっ
「ん、」
「男?女?」
つややかな
幸福でいるよ
ふと。…おっ
「やっぱ、」
「どっち?」笑む。もう、こぼれんばかりにと謂うべき微笑の、もっとも恥ずかしげのない実現。13歳年上の
きみよ!うつくしいも
あ
真魚。だから、
の。…そう、容赦なく
あ
じぶんに足して
きみよ!いとおしいも
あ
34と知る。…どうでもいい。真魚は波紋にまさに
愛を!
かけがえがない。きのうの
どこ?
どれ?
あれ?
月。あの
どこ?
どれ?
これ?
部分月蝕。大陸の、もっと西の向こうのほうでは赤い皆既月蝕が見られたらしい。だから、ダカールの一番西の、三角に尖った砂浜でなら、宏大な空の
昏い、あざやかなまでにくら
見て
小さな局部に
ら。昏い、それは
見あげれば
赤く
色彩であっ
雨つぶが
太った重い色彩の月が?パソコン。その、液晶画面に波紋と真魚はマドリードあたりのそれを見た。東京の午後6時前後は、月を雲がつつみこみ、ときには霧雨さえも降った。春雨は液晶画面にさえ赤い月を嫌った。なぜ?月そのものさえ
れ。きれー
なんか、さ
じゃん?…き
あんま、
もっと
と。
はげしいものを
好きじゃない
見ようよ
おれが「退屈じゃない?」
もっと
死んだら、さ
ね?「わたし」…さ。
めざましいものを
こんな、くっそ
どうやったって、「海。まっ昼間の」さ。
見ようよ
かったるいもんでも
赤い「あの、」さ。
もっと
見てや
だって実際くすんでる感じじゃん?
月なんか「好き。綺羅めきが、好き。見ても、見つめても、…って、見つめてるから、こそ?…そう。ずっと見ててもとらえきれな」
ざわめく
ひかりが、…ええ
音楽。
胸よ。この
不法侵入
バッハ。…と、それ以上
傷みとともに
口蓋に、…この
真魚は、好んでひびかせるi-podの独奏ピアノのそれを教えようとはしない。波紋には、とは謂えこころあたりはあった。小学校教師だった父親。壬生雅孝。あの、宮島の高台の借家。15歳の、しかし彼らへの憎しみなどまったくなかった家出に捨て去り、棄ておき、返り見ずにすごして仕舞ったあのふたり。クラシック好きだった母。庸子。彼女がいつか鳴らしていたことがある。極端にかすれ、舌のうごきの不自由じたいに訛るささやき声で、たとえば波紋に
ほら
無言の。だから
なにか、もう
聞こえない?とおくに
消え去っ
覚えてはいない言葉と
海が。波うつ
無言の。いまや
ほほ笑みとを投げあたえながら、
海が
ささやきを
音楽の捧げもの。…か、フーガの技法。もっとも、庸子はチェンバロの、けばけばしいほど表現豊かなひびきのほうを
聞こえる?
無言の。あくまでも
愛していたはずだ。あえて、
そう、
ええ。…え?
え?
え?
え?…そう
なんだろう?これら
しかっ、そう!
あいまいな
どう?しかも
違和感?…の、ような
あいからわず
やさしいのだ
そう、
わたしたちはそして
だ。…だっ、…いまも
ええ。…え?
あまりに完璧な朝を
わたしたちには
そう。猶も
朝には迎えつづ
陽光は。この
朝の。ただ
け、…て。しかも
やさしすぎて、この
そう、
繊細なだけの
ほほ笑みをさえも
陽光は、ん?微細に
ええ。…え?
日射しの束もが
こわばらせながら、…時に
傷めて仕舞うね?
そう。いまも
やさしさを、…ただ
わたしたちから
そう、…ん?
朝の。ただ
やさしいのだ
ささやかれるべき
ええ。…え?
鮮明なだけの
これら、たぶん、いま
無数のことばを
そう。それでも、…ね?
きみをも
だれにもやさしい陽光たちは
完璧に奪って
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