詩的言語の技法、第４巻；八木重吉≪空とひかり≫を主題とする無旋律の音声のための変奏 -04

　　　わたしたちは　；contrapunctus à 4；03

　　　いいんだ。しずかな

　　　　　　空よ

　　　　ひかりよ

　　　　　とけてゆく！歯が

　　　微細な、微動を

　　　　　　ひかりよ

　　　　空よ

　　　　　え？…ええ、まるで

　　　全身に、きみは

　　　　　　そ、…おっ

　　　　空にひかりを

　　　　　やわらかな崩壊

　　　耐えがたくしても

　　　空よ

　　　　　　飛散

　　　　思うに、ぼくらは

　　　　　哄笑を、…風たち

　　　ひかりよ

　　　　　　鼻孔さえ、ね？いま

　　　　繊細なのだね？お互いを

　　　　　空よ

　　　きざみ込まれた

　　　　　　肛門を擬態しはじめさえして

　　　　ほふ。…ん？ほふりあってさえ飽きないほどには

　　　　　ひかりよ

　　　空よ

　　　ひかりたちなら

　　　　　　ひかりよ。ひか、

　　　　いまも、ほら

　　　　　空よ。ら、

　　　陥没していっ

　　　　　　空を

　　　　われわれは網膜を

　　　　　自滅させられた

　　　空よ

　　　　　　ほふ、…ええ。ほふった気だね？

　　　　ぬりつぶしている

　　　　　ひかりよ

　　　ひかりよ

　　　空よ

　　　　ら！

　　　ひかりよ

　　　だから、…え？きざみつけられた　；sonata à 4；03

　　　空よ

　　　ひかりよ

　　　いいだろう？もう

　　　自虐をやめよ。その

　　　　白熱してゆく

　　　色彩を

　　　　発光のなかに

　　　さえを、も

　　　　われを忘れたのだ

　　　あざやかなその崩壊を

　　　見て

　　　　崩壊させて仕舞うのだか

　　　見て

　　　　ら。…自壊させて仕舞っ

　　　見て

　　　空よ

　　　　確信してたん、…そう

　　　　　そうだ。この無条件の美

　　　ひかりよ

　　　　ぼくたちはみんな

　　　　　空よ

　　　訴えを

　　　　幸福だったと

　　　　　ひかりよ

　　　わたしはあなたに放つのだ

　　　ええ、

　　　　責めさいなまれたわれわれは

　　　ええ、

　　　　空よ

　　　ええ、

　　　　ひかりよ

　　　え？…もう

　　　　ほほ笑みはじめさえしたのだ

　　　いいだろう？

　　　が、

　　　空よ

　　　　　　残酷な、だから

　　　　あっ

　　　　　いいね？われわれは

　　　ひかりよ

　　　　　　語りあっ。あっ。…いようよ。さっき

　　　　あっ

　　　　　ふかいねむりに

　　　空よ

　　　ええ、

　　　　ひかりよ

　　　そう

　　　空よ

　　　　　　かなしくさえないんだから

　　　　毛孔を。われわれが

　　　　　あっ

　　　ひかりよ

　　　　　　ら！空よ

　　　　すべて開口し

　　　　　あっ

　　　あなたに放たれた、この

　　　　　　かっ、…りよ

　　　　息を吸い込めば！

　　　　　あっ

　　　あっ

　　　歓喜を。すべては

　　　　　　あっ

　　　　あっ

　　　　　あっ

　　　ひか、

　　　　　　らっ

　　　　あっ

　　　　　あっ

　　　空よ

　　　　　　ん？

　　　　あっ

　　　　　あっ

　　　わたしに返した

　　　空。あれらさえもが　；canon à 4 #04

　　　　どれ？

　　　空は。朝には

　　　　あれらでさえもが

　　　　　自壊であろうか？いわば

　　　ね？わたしでさえ

　　　　　　あれらですらもが

　　　　空は。朝には

　　　　　恒星。その核融合とは

　　　そう。やめて仕舞うのだか

　　　ら

　　　まばたきをさえ

　　　　　　空は。朝には

　　　　あれらであっ

　　　　　蜜蜂が、ゆるやかな

　　　ね？ね？ね？だから

　　　　　　朝であってすら

　　　　あっ

　　　　　百合。その傾斜を

　　　けだるいのだね？

　　　　　　朝にあっ

　　　　あっ

　　　　　嫌悪するかの

　　　朝は、あなたは

　　　空。あれらでさえもが　；organum à 4 #04

　　　　　　けだるいの？…そう

　　　　微光のなかに

　　　　　え？気配でまで、そこ

　　　空は。朝には

　　　　　　われわれはいまも

　　　　なかに

　　　　　すてきでありすぎたきみは

　　　ね？わたしでさえ

　　　　　　え？辛辣に

　　　　すでに

　　　　　魅了したのだ

　　　そう。やめて仕舞うのだか

　　　ら

　　　まばたきをさえ

　　　　　　深刻に

　　　　すでに

　　　　　ため息のひびき。その

　　　ね？ね？ね？だから

　　　　　　燃えあがっている。いわば

　　　　なかに

　　　　　記憶にさえ、きみは

　　　けだるいのだね？

　　　　　　核融合？…自壊。はじまりのない

　　　　微光のなかに

　　　　　すてきすぎ、い

　　　朝は、あなたは

　　　空。あれらさえもが　；antiphona #04；01

　　　　屠殺？

　　　空は。朝には

　　　　いつか、あれら

　　　ね？わたしでさえ

　　　　屠殺されたかの

　　　この、わたしでさえ

　　　陰鬱な空を

　　　　そう。やめて！

　　　見慣れはじめたね？

　　　　そう。やめて仕舞うのだから

　　　まなざしが、視覚を

　　　　そう、俊敏な

　　　圧倒的な強度を以て

　　　まばたきをさえ

　　　　生きる資格、ぼくありますか？

　　　まばたきでさえ

　　　　獲得して以後

　　　まばたきにさえ

　　　　ひたすら、まなざしは

　　　きみでさえ

　　　見つめてきたから

　　　　ね？だから

　　　見飽きはじめたね？

　　　　けだるいのだね？

　　　覚醒？

　　　　朝は、あなたは

　　　いつか、あれら

　　　茫然と、窓を

　　　　いつしか、…そう

　　　見つめるがいいよ

　　　空。あれらでさえもが　；02

　　　　覚醒したかの

　　　空は。朝には

　　　　鮮烈な空を

　　　ね？一瞬でさえ

　　　　見慣れはじめたね？

　　　この、わたしにさえ

　　　まなざしが、視覚に

　　　　そう。やめて

　　　圧倒的な純度を以て

　　　　そう。やめて仕舞うのだから

　　　の、資格さえなかったんだ！おれは

　　　　そう、厳粛な

　　　目覚めて以降

　　　発光をさえ

　　　　ひたすら、まなざしは

　　　発光でさえ

　　　　騙されてきたから

　　　発光にさえ

　　　　たぶらかされつづ

　　　きみでさえ

　　　歓喜を？

　　　　ね？だから

　　　い、…傷む？あれら

　　　　けだるいのだね？

　　　絶叫したかの

　　　　朝は、あなたは

　　　冴え切った空を

　　　茫然と、窓を

　　　　そう。…ええ、

　　　見つめるがいいよ

　　　見慣れはじめたね？　；03

　　　　屠殺？

　　　まなざしが、視覚を

　　　　いつかあれら

　　　って！わたしを叱ってぶって壊してなぶっ

　　　　屠殺されたかの

　　　その圧倒的いかがわしさを以て

　　　目覚めよ！われわれよ

　　　　そう。やめて！

　　　ええ。…て、以来

　　　　そう。やめて仕舞うのだか

　　　ひたすら、まなざしは

　　　　そう、俊敏な

　　　自虐しつづけた

　　　まばたきをさえ

　　　　自壊しつづ

　　　まばたきでさえ

　　　　好き？星は

　　　まばたきにさえ

　　　　ほら

　　　きみでさえ

　　　好き？きらきら星

　　　　ね？だから

　　　き。らら。星、好き？

　　　　けだるいのだね？

　　　き。きき。星、好き？

　　　　朝は、あなたは

　　　き。らら！らら！…好き？

　　　茫然と、窓を

　　　　生きろ！

　　　見つめるがいいん

　　　ん？