ユキマヒチル、燦濫 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi // ほ。舞い散る。…ほ/ほ、ほ、ほ、ほ、/ほ。舞い散る。…ほ/ほ、ほ、ほ、ほ、//散文と詩；04

以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。

女。その

　　　ほうら、ほ

女。ヒロム、

　　　咬みちぎれ

と。沢田宇夢。

　　　花を

28歳。こどもの頃から大人たちはその漢字をウムと誤読した発音の直後、あやしむのだった。みずから喉に、喉に鮮明な発声を。倦み、その

　　　海？

　　　　　　すすりあげろ

通例に倦み、かつ

　　　好き？

　　　　　　ほうら、ほ

飽き、さらには

　　　海？

　　　　　　しゃぶりつくせ

諦めた。宇田川町のHMV、その駅側の出口から出たとき、宇夢。彼女はだから予兆に襲われていた気がした。なんの？わからない。階段を、

　　　どうしたの？

　　　　　　なぜ？

　　　　　　　　　苦悩。で、あった

おり切った下に

　　　きみは、そこ

　　　　　　なに？

　　　　　　　　　こころに。…え？

立っていた少年が、…なぜ？

　　　唐突に、ふと

　　　　　　なに？

　　　　　　　　　こころを。…え？

宇夢。が、背後にしたビルを

　　　かなしいの？

　　　　　　なぜ？

　　　　　　　　　絶望。で、あった

見あげていた。想わない。とりたててうつくしいとも、なんとも。美醜。その感性が言語中枢をくすぐりはじめるあやうい寸前に、すでに、宇夢は少年に

　　　その存在が。その

　　　　　　やめて

恋をしていた。骨髄を

　　　いたぶったのは

　　　　　　やめて

いきなり素手でひっ掻かれたすみやかと、そして躊躇ないあざやかさを以て。未成年。

　　　そう。きみは

　　　　　　加害者だ

　　　　　　　　　なすりつけろ

少年。まだ

　　　あやういのだ、から

　　　　　　被害者だ

　　　　　　　　　ほうら、ほ

体はできあがってもいない。そんないじましい趣味はない。恋愛対象では、…と。あり得るはずも、と、違う。…と。想ったときには少年は宇夢にほほ笑みかけていた。そして

　　　見えた。だから

　　　　　　選ばれた？

手を

　　　見た。だから

　　　　　　選ばれてた？

振った。違う、…と。わたしに？まさか。わたしはきみをすこしも知らない。と、風、が。と、吹き抜けたように宇夢のかたわらを通りぬけ、まなざし。返り見、その人。すれ違い、追い越す、早足の

　　　だれ？

　　　　　　やさしい吐息に

　　　　　　　　　略奪したのだ

女。母親？

　　　奪ったのは

　　　　　　癒された、と

　　　　　　　　　返せ

おばさん？

　　　わたしから、

　　　　　　感覚。そんな

　　　　　　　　　簒奪されたのだ

だれ？30手前らしい女。彼女は少年の、ためらいもない至近に立ち止まり、微笑。その

　　　ゆゆゆ。ゆ

　　　　　　そんなふうに、も

ほほ笑みを

　　　かわゆ。ゆ

　　　　　　こんなふうに、も

一身に浴びる恩寵を誇るかに…綾子さん、と。見せた。少年。声。ひたすらあまやかな、あまやかされすぎた嘘のような声。の、ふるえ。かすかな。まばたく。かすかに。…もう、宇夢は。「遅いよ。もう、さ。めっちゃくちゃ」

　　　ぼくたちは

　　　　　　組曲。チェロの

　　　　　　　　　かかと。で、

「だ、」

　　　笑いの。稀薄な

　　　　　　ヨハン・セバスチャン

　　　　　　　　　かるく、く

「待った」

　　　笑い声にも

　　　　　　ふとっちょの

　　　　　　　　　コンクリ、を

「って。だってさ、カード。なんか最初、さ。切れなくって、」

　　　まみれていられる

　　　　　　好き？

　　　　　　　　　蹴る。り、

「現金だよ。

　　　あるよね？

　　　　　　と、…なに？この

　　　　　　　　　いいじゃん。なんか

ふつう、

　　　現金くらい

　　　　　　感じ。色褪せた、

　　　　　　　　　も。かわいいか、も

こんな店、…」それら、声。言葉。言語は意味をむすばない。宇夢の耳には、あまりにいたいけなく、あまりに無邪気で、だからあまりにいたましすぎた苦悩を、宇夢は神経に咬みつかせていた。一瞬の夢、と。その少年がじぶんにほほ笑みかけたのだ、と。その、

　　　夢はいつか

　　　　　　わたしを。きみは

それ。猶も、

　　　まえぶれもなく

　　　　　　なるよ。好き、に

鮮明で猶も

　　　見出されるものだ

　　　　　　きみを。わたしは

あざやかすぎた錯視じみ、ふたりを通り過ぎてしまった数十歩さきにまでも不可解な目舞いが

　　　き、

　　　　　　傷

　　　　　　　　　う？

おさまらない。謂く、

　　　ほら、これが、と

　　　傷だよ。なま傷だ

　　　わたしがふと

　　　傷むべき、傷。…と

　　　耳もとで。そう

　　　　傷みを。傷みに

　　　ささやかれたかに

　　　　むせか、…傷

　　　あなたはそこに

　　　　傷に、傷みを

　　　立ち去りあぐね

　　　あまい血を

　　　だから、あまい

　　　傷みを。傷みに

　　　むせかえるのだ

　　　ら、これが、ら

　　　　ささやいて

　　　傷だ。なま傷だ

　　　　さ。耳もとで。ささや

　　　よ。わたし。が

　　　　やさしく、ささ

　　　ふと傷むべき、…と

　　　耳もとで。そう

　　　　　　で。ない、ふりか

　　　　傷みを。傷みに

　　　　　ままで。その

　　　ささやかれたかに

　　　　　　ら。え、ら。ない

　　　　むせか、…傷

　　　　　ままで。その

　　　あなたはそこに

　　　　　　で。むしろ

　　　　傷に、傷みを

　　　　　ままで。その

　　　立ち去りあぐね

　　　あまい血を

　　　だから、あまい

　　　傷みを。傷みに

　　　むせかえるのだ

　　　ら、ら、ら。これ

　　　　　　ん？たぶん。彼は

　　　　ささやいて、いっ。て、

　　　　　守ってあげる。この

　　　傷。なまなましい

　　　　　　ずっと。ん？わたしに

　　　　耳もと。で、ささや

　　　　　生きにくいんじゃない？結構、さ

　　　よ。わたし。が

　　　　　　つくしてくれるよ

　　　　ややさ、ん？しくっ、さ

　　　　　抱きしめてあげる。この

　　　ふと。傷むべ。べ、…と

　　　耳もとで。そう

　　　ささやかれたかに

　　　あなたはそこに

　　　立ち去りあぐね

　　　耳もとで、…と

　　　　傷だよ。なま

　　　ささやかれたかに

　　　　傷。いま。わた

　　　そこ。きみが

　　　　しが。傷むべき、…え？

　　　と、…立ち去りあぐね

　　　耳もと。で、

　　　　　　屈辱が。あまやかな

　　　　傷だよ。なま傷

　　　　　飲み込む。わたしは

　　　ささやか、か。かに

　　　　　　なぜか、唐突に

　　　　わたしがいま

　　　　　慎重に、なぜか

　　　そこ。そ。で、

　　　　　　飲み込む。わたしを

　　　　傷むべき、傷

　　　　　屈辱その屈辱的なあまみを

　　　と、…立ち去りあぐ

それが宇夢の、

　　　する、ね？す

　　　　　　フルーツ。わ

はじめて見かけた14歳の

　　　いい、匂い。いっ

　　　　　　豊潤であるべ。べ

壬生高明だった。歩みを

　　　する、ね？す

　　　　　　きだ。フルー。わ

とめるべくもない宇夢が、そのままあやうくふれそうな至近。少年をとおりすぎた時、肌。褐色の、色めざましいその肌に、

　　　なにか、泣きながら

　　　　　　ええ。わたし

　　　　　　　　　泣きじゃ、じゃ、

鼻孔。

　　　糖分過剰なカフェイン入りの

　　　　　　翳りを、ええ

　　　　　　　　　あまく。カフェ

宇夢の。

　　　果肉を。口蓋いっぱいに

　　　　　　つまさきで、ええ

　　　　　　　　　フルーツ。わ

それが、

　　　突っ込まれた、

　　　　　　ええ。踏みちら

　　　　　　　　　あるべ。みずみずしく

彼の体臭をさぐった事実に宇夢はついに気づかなかった。その

　　　と。そんな、

　　　　　　なんという、な

５月。雨あがりの

　　　妙になまなましい

　　　　　　臭気。に、ちかい

一瞬だった。駅に

　　　いやらしい苦悩のある匂い

　　　　　　なんという、な

もうすぐ辿り着きそうな交差点で、宇夢はふたたびふりはじめたささやかな雨に髪をぬらした。

　　　雨は、お願い

　　　傷つけないで

　　　きみを。そして

　　　わたしをも。せめて

　　　雨は、雨

　　　　奇蹟的なこの

　　　傷つけないで

　　　　邂逅は、しかし

　　　きみを

　　　　あしたになったなら、ば。

　　　わたしをも。せめて

　　　ば。奇蹟的なこの

　　　　わたしを。…ね？

　　　邂逅は、しかし

　　　　傷つけな、…そう

　　　あしたになったなら、

　　　　あなたを。…ね？

　　　ば。奇蹟的なこの

　　　邂逅は、しかし

　　　奇蹟的なこの

　　　あしたになったなら、ば

　　　この。奇蹟的な

　　　雨は。あ、

　　　　　　うつくしい。あなたに

　　　　いわば、あしたに、わ

　　　　　やや不可解な、やや

　　　お願い。傷つけな

　　　　　　い。いいですか？わたしは

　　　　傷みに。喪失のそれ。…に、

　　　　　かなしみさえもが

　　　雨は。あ、

　　　　　　見蕩れて仕舞って

　　　　と。変わっているだろう、と

　　　　　胸騒ぎ。の、あやういわきで

　　　きみを。わたしを

　　　雨は。あ、

　　　　え？…あ。…え？

　　　いい？わたしは

　　　　え？…あ。

　　　見蕩れて仕舞って

　　　　え？…あ。…え？

　　　きみを。この、

　　　邂逅は、しかし

　　　　　　あ。あ。あ。…え？

　　　　雨は。あ、

　　　　　雨が。め、

　　　奇蹟的なこの

　　　　　　あ。…え？

　　　　お願い。傷つけな

　　　　　め。雨が

　　　あしたになったなら、ば

　　　　　　あ。あ。あ。…え？

　　　　雨は。あ、

　　　　　雨が。め、

　　　この。奇蹟的な

　　　雨は、お願い

　　　傷つけないで

　　　きみを

　　　わたしをも