ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi;流波 rūpa -336 //微光。び。/微光。/微光。び。/微光。//03





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





やがて、

   ここにも

シュ‐アとリ‐キョウ。ふたりが

   そこにも

汗を流しに、と、

   あそこにも

笑い顔。もう、完全に打ち解けているその、

   野生の蝶を

      見つめて

声。奥に

   仮構せよ。すばやく、

      横顔を。きみの

消えたあと、

   ほら、羽根を

      見つめて

笑い声。

   もがれたそれは

      後頭部やや

ふたり。土木とか?

   養殖の蝶たち

      ななめうえを、き

椿。…って、「ここのひと?」

「やってた。一応引き取ってもらって。おれ。育ててもら、…から、だからやっぱ、基本、恩、あるけど」

「虐められたりとかそういうんでは、なかったんだ」

「曖昧だよね。最終的に。そこは」椿は「線引き?」そして「おれが、…さ」笑った。「20歳で、…16のとき家出したんだけど。ここ。彼等、好きくなくて。逃げて。で、20歳のとき、一回帰って来て、そん時は、」

   困難だよね

「関係修繕?」

   ぼくたちは

「てか、一回パクられたじゃん。おれ。そんとき。ま、彼等、ここ帰ってきたときは逃げちゃってたね。夜逃げ的な?たぶん。…臓器売られてばらばらになってたりして」

「笑うしかねぇ」穆は、笑みにゆるんだ椿の顔に従うしかない。ややあって「おれも所詮、」椿。「さ。…家出少年じゃん?だから高明とか?前の、あいつ。ああいうの見るの、放っとけねぇの。」ふいに、「あれ、」椿は顔のゆるみをそのままに、眼をだけ伏せ、翳らせ、そして、穆を「すっげぇ、さ」返り見た。その「…迷惑かけたな。お前に、」声。赤裸々なその

   やさしくしないで

      ありがと

歎き。穆の

   泣いてしまうよ

      いてくれて

耳。眼。椿の

   かなしくないのに

      きみが

歎き。それが穆をいきなりに「いや」と、刺す。「…べつに」穆。彼は故意に笑い声をたててやった。そこに、その「でも」椿に。「女の方はよかったな…」素直な、唐突な「あの子、」なにかやさしい感情が穆に、刺さったままの椿の歎きの気配の周辺に、「いま、」にじむ。よう、な、その「元気してっかな?」拡散。穆はふと、まばたいた。二度。

   ぶって。打って

    あ。あかうあ。あ

   殴って。壊して

    あけひろげ、口を

   だいなしにして

    あ。あうかあ。あ

   生きていることを後悔さ微光。び


   やめて。自分を

   微光。び。微光

   傷つけないで

   微光。び。微光

「ユイ‐シュエンは?」椿。とまどうシュ‐ア。彼に。奥に消える直前のシュ‐ア。そしてリ‐キョウ。シュ‐アは、あくまでも、椿たちが眼の前にいるそのせいだけで、いま、

   きれいですか?

      可憐。かつ、しかも

         沸騰している

椿どころではない。リ‐キョウが

   わたしたちは

      清楚。かつ、しかも

         わなな

あまりに傷んでいるから。その「シ‐ユと?」羞恥に。「…なに?」

「ユイ‐シュエン。いま、どこ?」

   海に?

      かがやきの

「海、見に行った」

   海に?

      氾濫だった

「シ‐ユと?」…あの子は、と。シュ‐ア。ささやく。「もう、」伏し目。「駄目だよ」須臾の。「なんで?」唐突に、穆。問い。シュ‐ア。彼はだからいちど穆を見た。そしてふたたび椿に戻した。そして椿に、ためらいの一秒のあとで笑ってみせた。「泣いちゃう」

「ユイ‐シュエン?」椿。「あいつ?いま、」シュ‐ア。と、「…も?まだ?」穆。思わずだれにともなく問いかけ、しかもその眼が右上のほうに泳いだ。シュ‐アは

   かなしいよ

見あげた。ふいに

   血が。体液が

かなしげな眼になった。椿は

   細胞が。ぼくは

見逃さない。事実、シュ‐アはかなしかった。ユイ‐シュエンが、というよりもむしろ、ただそばに寄り添う「惚れてからね」シ‐ユが。椿。…って、さ。「そう考えると、あの小僧、最終的にどこまでもクソだよね」笑う。なすすべもなくて、「…壬生の小僧」そこに椿は。リ‐キョウはふと、われに返った眼で妙に落ち着いた、彼のまなざしに穆を見た。2秒。やがて、椿をも。

   微光。び。微光

   び。び、ぃいっ

   微光。び。微光

   び。び、ぃいっ

玄関を入る寸前に、椿。…なんか、と、さ。ふいに穆を返り見て、「くさくない?ここ」

「そう?」

   屠殺場です

      氾濫を、ふいの

「なんか、鷄かなんか屠殺した感じ」

「彼等がってこと?」

   屠殺場です

      記憶が、ふいに

「するか?奴ら。はやいはなしがただの日本人だぜ。いまどきの。鷄の頸とか、刎ねられそうもなくね?」笑う。「たくましくねぇもん」椿。穆。耳に聞こえている。嬌声、と、

   い、い、い、

      …あ

         屠殺場です

すでに。聞こえていた

   き。い、い、

      …あっ

         屠殺場です

それ。それがあくまでも

   い、い、い、

      …あ

         屠殺場です

媚びとサービス精神にあふれた過剰な、あえぎ声だということは。だから、シュ‐ア。まるで律儀な女の子のように。リ‐キョウにはそんな事はできない。真面目くさって腰を振っているに違いない。ただシュ‐アのよろこびのためだけに。そう思って、穆はふたりの変わり者たちをいとおしく思った。

   び。び、ぃいっ

   やめて。自分を

   傷つけないで

   び。び、ぃいっ


   なにも可能性を感じられなかったか、に

    微光。見て

   去ったんだ

    微光。見て

   雨は。雨が

    微光。見て

   去ったんだ


   微光。び。微光

   やめて。自分を

   傷つけないぃいっ

   び。び。微光

シュ‐ア。風呂場は、

   鳥になろう

      鶼鶼。…をっ

ふたり。外にある。

   両性具有の

      蠻蠻。…をっ

リ‐キョウ。だから、

   比翼の鳥に

      鶼鶼。…をっ

シュ‐ア。ふたりはその肌をさらしたままに外に出る。かたわら、だれにともなくリ‐キョウがその局部をかくそうとする。だれに?と、いま、シュ‐ア。鳥しか見ないのに。微笑。その鳥さえも、あくまでも充足しきっ、…いないのに。微笑。シュ‐ア。鳥さえも、と、あたまのうえには。完璧な幸福。シュ‐ア。自分への、リ‐キョウ。彼の過剰苛烈な過保護が、シュ‐アは莫迦馬鹿しくかつ大好きだった。

   微光。見て

    去ったんだ

   微光。見て

    雨。…見て

   微光。見て

    去ったんだ

   微光。見て

ま、と。椿。眼の前で、「おれは、さ」リ‐キョウがそっと「水葉を、さ」シュ‐アにうしろからしがみついたとき、「しあわせにするぜ」それを見つけて、笑んでやりあがら。「ついでに、お前も」

「ついで?」穆。その

   ななめに、やや

      流砂

笑い声を振り向いて、椿。

   傾いて、そこ

      流砂のように

その「ついでじゃん?」

   微光は、そっと

      流砂

耳に。「おまえには、さ」

「まじ?ついでなの?おれ」

「和之がいるじゃん」穆は笑う。これみよがしに。かならずしも共感もないまま、顔を上げたリ‐キョウがシュ‐アの頭のむこうでその顔をあげた。穆に笑みかけた。

   びっ。見て

   びい。み

   微光。み

   微光。見て


   去ったんだ

   雨は。…見て

   雨が。…見て

   去ったんだ


   微光。見て

   微光。み

   びい。み

   びっ。見て

もう、シ‐ユ。語り掛ける言葉は

   流砂のように

      去った。消え

ない。ユイ‐シュエンに。そう

   流砂のように

      去っ、消えた

思った。シ‐ユは。ユイ‐シュエンをうしろにのせて、山間の道にバイクを走らせながら。右手には海が。ユイ‐シュエンはせめてそれを見ているのだろうか?

   無力だ

シ‐ユはそれさえも

   わたしは

不安だった。

   なあっ。は。は。なあっ

      なんですか?あれは

    見て。せめて

     脆さに擬態し

   なにも可能性を感じられなかったか

      遠く、しかも

    見たものの色さえ

     しかも、ひたすらに

   なあっ。は。は。なあっ

      儚さを装い

    せめて。見て

     あれ、なんでしょう?

   去ったんだ


   咬みちぎり、指

    なにを?見てる?な

   咀嚼する。冷酷な

    ささやき得さえ、もう

   空が。冷酷な

    な、見て。なにを?

   落ちてくる。きみに


   微光。び。微光

   降り、せりあがり

   さわぎ、ゆがみあい

   微光。び。微光

シ‐ユ。2時すぎ。午後。だから、ささやき。椿。「ユイ‐シュエン、…」と、「なに?」

「ぼくら、うらぎる」…って、椿。リ‐キョウと「だれ?」穆に入手させた魚を三枚に降ろしてやりながら、「お前らが、ユイ‐シュエンを?ユイ‐シュエンが、お前らを?」

「ユイ‐シュエン」

「あの子が?」椿。眉。険しく。その3秒。ふと、失笑。椿は、あまりにも深刻なシ‐ユに。とくに、その

   ひかりのなかで

      朝がいいな

         6年間だぜ?蟬

ひたいに。「いいよ」

   ぼくたちは

      あえて、夏の

         で、…1週間だけ

つぶやた。椿は、しかしはっきりと、微笑。まなざしをもう、手もとにもどして、「裏切られたら、さ。一緒に泥水すすろうぜ。泥のなかに、さ。咲く花もあるぜ。…わかる?」返り見た一瞬の椿に、言いかけた言葉をシ‐ユは飲み込んでしまった。もはや、

   なら、飛び立つ蟬は

      ひかりに

         滅びた

忘れた。言葉。なにを

   狂気だろうか?断末魔の

      ぼくたちは

         滅びた

じぶんが言いかけたのかをは。または、その須臾があった事実をさえも。笑った。シ‐ユが。と、「いね?」ささやいた。シ‐ユは。…い、椿。「いねって、」

   蓮、とか、さ

「米」

   蓮の、花

「稲?…ご飯の?」

「泥水」椿は数秒遅れ、そして声をたてて「あれ、」笑った。「花咲くんだっけ?咲くか。てかやべっ」と、その「もはや喰えんじゃん」椿が自分を笑ってくれた事実をシ‐ユはただ好ましく思う。シ‐ユは椿が好きだったから。謂く、

   微光。び。微光

   降り、せりあがり

   さわぎ、ゆがみあい

   微光。び。微光

日帰りでも良かった。事実、椿はユイ‐シュエンたちを案じていた、それだけの訪問だったから。かならずしもだれかが殊更に引き留めたわけでもない。椿。穆。そのどちらが強いて言いだしたわけでもない。ふたりは一晩だけ島に泊まった。明けた早朝に本土に帰った。シ‐ユはユイ‐シュエンをつれて、だから、

   かがやきだ

      あれは

海。いつものように。

   ほら

      なんですか?

海。見に、というより、ただ

   きらめきだ

      あれは

バイクを走らせるだけ。家の前を右に。いつものように。ユイ‐シュエンは馴れている。もう、

   海だよ

      好きだった

         見えるよ

後ろで、しがみつきも

   海だよ

      ぼくたちは

         見えたよ

しない。そもそもシ‐ユはスピード狂ではない。公道で、100キロ以上は出さないのがシ‐ユのモラルだった。ゆるい傾斜。両面に樹木。空は近い。だから、せりあがった

   海だよ

      見えるよ

地形。その

   海だよ

      見え

上のほう。唐突に右手に海が

   あそこには

見える。ひらける

   綺羅めきだけしか

視野。海、

   ないんだと思う

と。シ‐ユ。思う。海、と。むしろただそれだけ。後につづくなにもない。何度も海は茂みに

   海だよ

      見えた?

かくされ、また

   海だよ

      見えた?

遠くなり、近づき、あらわれ、道に削がれた岩面に隠され、やがてふたたびあらわれる。北分橋に通りかかったときに、シ‐ユはスピードを緩めた。いつものように。海風が強くなる。ユイ‐シュエンはべつに違和を感じない。いつも以上に速度がおとされ、その真ん中ちかく、ふとシ‐ユはバイクを止めた。車体を揺らした。降りろ、と。ユイ‐シュエンに抗う必然はない。だから、ややもたついて足をつく。高い。風。バイクも、…匂い。橋も。潮。その、匂い。そして

   なんですか?

ひびき。

   これは

風。または、

   なんですか?

波立ちの音さえ聞こえた気がした。その、ユイ‐シュエンの眼には。手摺に身をもたれかけたユイ‐シュエンをいきなり、肩。捉まれたそれ。シ‐ユ。ひっくり返されて、ユイ‐シュエンはシ‐ユに抱きしめられた。キス。やがて、シ‐ユの。一方的な。やがて、…シ‐ユ。または、すぐさま、…ユイ‐シュエン。そのくちびるはシ‐ユをもとめた。長くない。ほんのみじかい部類。唐突に自由にされて、ユイ‐シュエンはシ‐ユを見上げた。媚びをもって、シ‐ユを咎めた。そのまなざしだけで。と、シ‐ユは手摺に背中をもたれたユイ‐シュエンの、その鳩尾を上手に

   いまだよ

      なん、

押した。

   時は

      これは

右手で。やがて、

   いまだよ

      な、

地を離れたふくらはぎあたりをも一度。旋回。空が。おどろく間もない。空。つま先のむこう。なに?と。思わず眼を閉じた。衝撃。すさまじい、傷みさえあたえない巨大な衝撃。分厚い。しかも、発光。失神。気絶した。そう思った。ユイ‐シュエン。わたしはいま、と、もう意識もない。ふと、眼をひら

   なにもあとに残さなかったか、に

    微光。び

   去ったんだ

    明晰な、き

   雨は。雨

    微光。見て

   去っ

シ‐ユ。不在。眼の前に。だから、不在。ひとり。いまは、ただ、手摺り。…雨。と。シ‐ユ。その空になぜか、シ‐ユは確信した。今日は、やがてすぐさま豪雨になる、と。シ‐ユ。乾ききった樹木。アスファルト。すべてびしょ濡れになるに違いない。立ちつくす。シ‐ユは。その確信の

   そうなんだ

      え?

あまりのすさまじさに。海はただ、

   そうだったんだ

      え、え、

かがやく綺羅の白濁を曝した。

   なにもあとに残さなかったか、に

   去ったんだ

   雨は。雨

   去っ

12日。肉体。膨張。明け方の、

   去ったんだ

死屍。雨。打ち付けつづけた雨はやがて、

   去っ

海。雪に。午後ちかくに。雪。日本海。その、もう雪に、だから、

   去ったん

海。雪は、海に。沈まない。まだ。傷みをさらし、肉体。それは浴びた。雪を。すでにとっくに雪にかわった、その

   去っ

雪を。と、

   さっ、

醒めた。リ‐キョウは、思わずシ‐ユの体内にすべて放出した須臾に、しかも醒めながら見た須臾の夢。窓のそとに

   さ、

雪。ユイ‐シュエン。彼女をそっと、思い出してすぐに、…なぜ?忘れようとした。シ‐ユを不安がらさせたいとは思うはずもなかったから。謂く、

   やめて。自分を

   微光。び。微光

   傷つけないで

   微光。び。微光


   見なかったと同じ

   微光。見て

   明晰な強度に

   微光。見て


   微光。び。

   微光。

   微光。び。

   微光。








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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