ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi;流波 rūpa -334 //微光。び。/微光。/微光。び。/微光。//01





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





   び。…え?

   微。び、みょう、な

   え?…び

   微光。…が、

3月。シ‐ユは、その

   生きている

9日。息を、

   まだ

ユイ‐シュエン。吐いた。

   わたしも

シ‐ユ。彼より

   きみは?

低い。わずかに、その背。だからその

   生きている

      なぜ?

頭。そのささやかな

   まだ

      あなたは、ぼくを

うえ。嘆息。ふいに。

   わたしも

      拒絶したのだろう?

歎き。

   きみは?

      なぜ?

シ‐ユ。

   生きてい

      支えあう、よう、に

         なぜ?

鬱。執拗な。

   ま

      生きていない、…か?

         あな。…え?ぼくを

鬱。どうしようもない、

   わたっ

      より添う、よう、に

         拒絶したのだろう?

鬱。分厚い、しかし、

   き、

      生きてかない、…か?

      なぜ?

稀薄な。シ‐ユ。ユイ‐シュエンはタトゥーだらけの黒い日本人を殺してからもう、シ‐ユにはふれることができない。だから、鬱。執拗な鬱。どうしようもない、

   こわれたの?

稀薄な、しかも

   こわれそう、なの?

強靭な被膜。その向こうに。笑う、

   こわ

と。シ‐ユは耳うちした。ユイ‐シュエンに。笑う。そのひびき。ユイ‐シュエンはそれはひたいのうえのノイズとしか聞いていない。そう思っている。シ‐ユは。もう、

   見て。猶も

      いいよ。ぼくを

すでに。

   見て。猶も

      赦さなくても

ささやくまえに。

   微光。見て

   見なかったと同じ

   明晰な強度に

   微光。見て

リ‐キョウ。彼、…彼女?は、その家屋。庭に、ユイ‐シュエンをあきらめて近づいてくるシ‐ユを見上げた。なにも刺戟のない島だった。しかし中国本土には近い。とはいえ、

   祖国よ!

      踏もうよ。ほら

リ‐キョウにもドン兄妹にもイャォ・シュ‐アにとっても、そこは

   なつかしい

      砂地のうえを

他人の住む他人の

   祖国よ!

      蚯蚓が這うよ

土地にすぎない。すこしの感傷さえない。なにも、わずかにも感情をもたらさない。もっとも、

   じゃ、じゃ、

恥知らずのジャップたち。リ‐キョウの

   ジャ、ジャ、

祖国の原住民たちがかれらをあくまで中国人と呼ぼうとも。とまれ、リ‐キョウにとってリ‐キョウはあくまでも中国人だった。「だめだよ」ささやいた。

   その、ふいの

リ‐キョウ。

   あたたかな息吹きは

シ‐ユに。「ユイ‐シュエンは、」故意の、うかがう「もう、」微笑。「だめだよ」

「だめじゃ、」と、「ない」ふとつぶやく笑い顔のシ‐ユに、リ‐キョウはそっと笑みを返した。その、

   終わりだよ

      始まらなかった

不用意な笑みに

   ぼくらは

      未来さえもが

あくまでもさぐりを入れながら。

   なにもあとに残さなかったか、に

    微光。見て

   去ったんだ

    明晰な強度に

   雨は。雨が

    微光。見て

   去ったんだ

イャォ‐シュア。かならずしも、島の生活に不自由はしていない。また、ふるい日本家屋は新鮮で、しかもなぜかなつかしい。なぜだろう?他のいまどきのジャップたち同様に、こんなふるびた日本家屋に住んだ経験などあるはずもなかったのに。イャォ‐シュアは

   ほら。木材が

慎重に汗を

   ひからびいている

流した。行為がおわったあとのいつものように。その潔癖を、傷つきやすいリ‐キョウがひそかに厭うていることにも気づいている。いつも、

   わたしは

      微光

眼が泳ぐ。だから、

   穢い?

      ぼくらにも

まるで自分が洗い流されるべき汚物として扱われている、と?14歳。ふたりで、たしかに汚物のように生きていた。汚物と呼ばれて生きてきた。その言葉自体をは、同年のジャップたちがただ

   くさっ

      わたしは

         見て。ほら

匂わせるのみだったとしても。ときに

   あぶなくない?

      穢い?

         微光

善良な大人たち。その、

   くさっ

      わたしは

         見て。猶も

親し気で慎重な気づかいをさらす眼。その眼。暴力。眼。イャォちゃんは、

   見ないで

ね?穢くないよ。リーちゃんも、

   せせら笑わないで

ね?くさくないよ。中国人も、

   見な

ね?人間だよ。その、あまりにもやさしいさやしさの暴力。やさしささえ暴力にすぎないなら、いっそわたしたちはすべて

   ちょっと、不幸で

      いいよ。生きていて

         救済のなさに

諦めのうちに

   穢くないよ

      安全な、やや

         求めるべき、かな

滅びてしまえばいい、

   不吉なだけ。ちょっと

      遠くで。いいよ

         救済を。ぼくらは

と。ときに歎いたイャォ‐シュアをユイ‐シュエンは詩人と呼んで、そして

   ぽえ、ぽ、ぽ、

      去った

笑った。イャォ‐シュアは

   ぽえまー。だから、さっ

      去ったん、だ

笑うユイ‐シュエンが

   ぽえ、ぽ、ぽ、

      去っ

好きだった。昏いユイ‐シュエンも嫌いではない。決して。ただ、もてあます。虐めという行為。その必然がわかった、と、そんな気がした。衝動。ユイ‐シュエンを、ときに虐めぬきたい。あるいは、ジャップたちと同じように?彼等がしたと同じように、またはそれ以上に?ジャップの穢い眼が移った気がして、イャォ‐シュアは

   逃げて

      抱きしめて。そして

         なにも、な

自分が怖くなる。わたしは、

   ぼくから、

      叱ってほしい

         な。…え?なにも

と。違う。中国人ではないが、中国人だ、と。だからやさしい年増の女たち同様に、イャォ‐シュアは殊更に昏いユイ‐シュエンにやさしくした。

   なにもあとに残さ、さ、さ

      え、なく。記憶しな、さ

    見て。せめて

     不安なほど、むしろ

   なにもあ、あ、あ

      し。しないくらいに。鮮明に。な

    見たものの色さえ

     なにも、も。確実に

   なに。に。に。あとに残さな

      なにも。謎めきさ、さ、え?

    せめて。見て

     把握し得ないくらいに

   去ったんだ

穆介。その

   微光。ほら

9日。彼にとっては、

   見て。微

3月。穆。はじめてだった。日本海を見ることも、また、だから隠岐に来ることも。海土町。その港。椿がそこで生まれたことなら知っている。その実家。すでに廃屋になっているそこが、いまあのチャイニーズたちに与えられているという事実も。その訪問。様子見、と、そういう名目の?…帰郷。なぜ?椿。タクシーに乗り込んだ。車内はなぜかコロンの安い匂いがした。やや酸い。穆はすでに、船の中でふと会話が途絶えた須臾に、結婚、と。もう、その祝いは伝えた。おめでと。かたわら。かしげたななめに直視しする椿に、水葉。やがて、5月に式を。ふたりは。予定。しあわせの予約。ささやきと、微笑。そのときに椿は一瞬、

   微光。ほら

      どこ?あの

なにを言われたのか

   見て。微光

      雨は、いま

わからない顔をし、…って、椿。「知ってた?」笑む。椿が。素直に。そして俊敏に。追いつかなかった。むしろ、穆自身が椿のためにほほ笑んでやる、その顔面の「だれに、」準備が。「おまえ、だれに聞いたの?」

「駒田くん」…あいつ、と。哄笑。「口、かっるいからな」椿。「かるすぎ」あさい、「ヘリウムよりかるい」不快のない哄笑。「まだだよ。入籍は」

   ヘリウムって、さ

      微光。ほら

         どこ?あの

「式が5月だから?」

「というか、それはあくまでもどうでもよくて」

   かるいんだっけ?

      見て。微光

         雨は、いま

「でも女的には、それなりに派手にやりたいんじゃなくて?」

「あいつは、むしろ地味婚派」ふと、かるく椿のまなざしが翳るのを「…いや。じゃくて、」穆は「逆に、」見ていた。「おれは、さ」

「派手婚派だ」

   見せて。きみの

「じゃないけど。男の責任的な?やっぱ、女のために、さ。考えたら、それなり、」

「でも、」

   しあわせ一色の

「したくない?」

「むこう、あくまで地味婚派なんでしょ?」

   はにかみ笑顔

「…それ」笑った。椿はひとり、「そこよ。笑えない?結局だれのための」…さくら、「さ。結婚式なんだろね?」…を、さ。「さくら?」穆は「待ってる」眉を傾けた。…って、と、「なに?なんか、よくわかんない」

「おれも。おれこそ、意味わかね。女が、さ。なんか、さくら咲いたら、入籍しよって」

「なんで?」

「それ」椿。その「それが、さ」笑い声。「謎。おれにも」だから

   失笑で、ぼくは

      微光に、その

穆も、椿のために

   伝えてみた。愛を

      微光に、そこ

笑った。声を「なんか、」たてて。「思い入れでもあるとか?その季節に」穆はあえて、ふたりの両親または親族たちのことにはふれない。納得するものだろうか?知らない。なにも、椿も水葉も語らない詳細をは、かならずしも知っているわけではないが、とまれ。ふれることを遠慮させる気配には穆は敏感に気づく。あるいは過敏にすぎたかもしれない。いずれにせよ、5月になれば呼ばれるのは決まっているので、そこですべてはさらされる。そのときに、彼等の現実をしっかり受け止めてやればいい。そう穆は思った。ふと、話しつづける穆を「おれ、」と、「…さ。」断ち切って、「祈ってる」つぶやいた。椿が。真顔で、だから椿は穆を「なに?」見ていた。「おれ、さ。いままで、あんま、こういうの言わんかったけど。…じゃん?でも、さ。基本、…祈ってるよ。お前らが、いつか、さ。…なに?だから彼氏と。しあわせに?なる?…そういうこと。同性愛?

   愛は、いつでも

      微光に、その

とか?

   力強くて

      微光に、そこ

そういう?…ただ、

   そして自由だ

      微光に、その

さ。愛?愛は、さ。しょせん愛じゃね?って、なに云ってんのかいまいち分かんないけど。結婚って、さ。子供つくるためだけなの?ちがくね?おれは、さ。愛って、愛。それ、すっげぇ

   力強く、そして

好き。愛。あくまで、

   清潔で、しかも

愛。おれ、愛。

   言葉。…せつない、

信じるぜ。あくまでも。ピュアな、

   言葉。それは

それだけ。ラブ・」と、「フォーエバー」ささやいて椿は笑って見せた。穆はふと眼をそらし、船の窓。そのむこうに海を見て、やがて見返した椿にただ、彼のためにだけにほほ笑んでやる。ありがと、と。そのくちびるに声もなく、つぶやきかけて。

   生きていてもいいですか?

    み。みひら。み

   ここにいてもいいですか?

    見ひらいた。眼を

   愛が、ぼくらを

    み。らひみ。み

   呼吸をしてもいいですか?

リ‐キョウは暇をもてあまし、その

   やわらかすぎ、…かな?

      いい、

午前9時。シュ‐アの

   ちょっと傷ん

      香り

髪を複雑に編んでやった。リ‐キョウのもう、武骨になりはじめた指先はそれでも器用に女の髪を編んでゆく。それがことさらにリ‐キョウののまなざしにゆびさきの器用に特異な華麗を見せ、あらためてまなざしは自分の女を知った。シュ‐アは

   香りと香りは

心地よい。あるいは、

   ふたりの真ん中

と。シュ‐ア。

   ふれあっていたの?

女たちが感じる日常的でささいな快感が、女らしくいま、おれの髪にきざしている、

   ここちよく

      やめて。きみは

と。シュ‐ア。とまどいもなく、

   やさしげで

      もう、じぶんを

なぜか、その

   ややせつなげで

      傷つけな

感覚がいとおしい。ふいに、かわいいリ‐キョウがまだシュ‐アのゆびには知らないでいた感覚をさきんじて共有してしまった、そんな気がして。

   微光。見て

    やめっ。え。もう

   見なかったと同じ

    微光。いっ。微光

   明晰な強度に

    お願い。え。もう

   微光。見て

穆。午後1時すぎ。あれが

   見て

      ひかりたちさえ

神社、と。

   見て

      気絶した

椿。耳元にささやいた瞬間には、椿のいわゆる実家がどれか、すぐにわかった。宇受賀命神社の鳥居の横のほう、と。椿はそうすでに穆に

   有名な、さ

      自虐的

         ひとしれず

教えていたから。

   神社あって、さ

      そう?きみは

         羞恥

田園風景。それいがいには

   それじゃないほうの

      自嘲的

         じぶんかってに

なにもない。それなりの

   クソしょっぼいほう

      なぜ?

         恥辱

距離を持つとはいえ、横のほうと言えばその2軒ならびしかない。椿は鳥居に辿り着く寸前でタクシーを止めさせた。運転手は愛想がわるかった。そこから歩いた。家屋のほうに。感じられない。ひとの気配は。チャイニーズたちは、

   ひかりたち

ほとぼりがさめるまで

   たわむれあって

潜伏という椿の

   意識さえなく

指示にあくまでも忠実なのだろうか。穆。そう思えば彼等がいたいけなく思えなくもない。こっちのほうは、と、「さ」椿。「あれ、分家のやつが住んでた。2軒ならんでるっしょ?あれ。むこうのほうが、おれん家」

「あいつら、」

   せめて、たのしく

      翳り。樹木

         それらさまざまな色彩が

「きったねぇけど」

「どっち?」

   無言の笑みを?

      樹木たち

         稀薄に、しかも

「広いよ。…知らね」椿は「あいつらは、」笑った。どっちかで、と、「勝手に好きにやってんじゃね?」笑い声。椿。その

   だね

      ためらいもない

ひびきの素直なあかるさの、

   だよね

      きみの微笑を

どうしようもない

   だね

      ためらいもなく

完璧さに翳りが入り込む余地はない。謂く、

   なにもためらいも感じなかったか、に

    やめっ。え。もう

   去ったんだ

    微光。いっ。微光

   雨は。雨が

    お願い。え。もう

   去ったんだ


   なにもためらいも感じなかったか、に

   去ったんだ

   雨は。雨が

   去ったんだ










Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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