ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi;流波 rūpa -321 //いいですか?耳を/ふさいでも。ないし/聞こえないふり、とか?//05





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





樹々。もう、昨日のうちに、小田智和。…客。智和にはメールした。おいで、と。返信。いっぱい、いっぱい、傷ついちゃったね。絵文字。もう、

   いっぱい

      ちがうよ。ぼくも

         いつか

だいじょうぶ。

   傷ついて

      つよい子じゃないよ

         たとえ

絵文字おれが

   でも、取り返せない

      きみが

         ふたり

絵文字ジュージュを絵文字

   ものなどなくて

      くれたんだ。ぼくの

         べつべつの

守ってあげる絵文字

   そう信じて、ぼくたち

      つよさを

         みち

絵文字絵文字すき、

   生きてゆくんだね

      だから、ふたりは

         みつけても

と。かならずしも男としてというわけではなくて、

   すき

      きす

         すきす

赤裸々に好き、と。樹々は文字を見て、未来を思った。前日の

   鋤

      鱚

         鋤。酢

午後11時。3日。6時すぎ。周囲を見ずに駅に入った。怖かった。見るのが。周囲を。高明。彼が、たとえばナイフを持って突っ立っている?その可能性。それ。あり得ないそれが仮りにそこに事実だったとして、そんなものを樹々はいまさら見たくなかった。だから、なにも見なかった。謂く、

   こじあけなければならない

   未来は。だから

   無理やり奪わなくてはなら、ない

   明日は。だから

太陽がまだ、冷え切らないうちに。

   こじあけなければ

      昂揚。それが

    冷淡なまでに

     信じて。わたし

   未来は。だから

      焦燥にも似、唐突に

    冷酷に。そして

     自分を、さ。わたし

   無理やり奪わなくては

      やや、かたむいてわたしを

    慎重に。いまは

     できるよね?わたし

   明日は。だから

水葉。「マジ、」と、「つんだ。おれ」高明。「あいつ、マジ、」クソ、と。そう言いかけた高明に水葉は「は?」つぶやく。「高明、…は?」

   声。なぜ?

      疾患じみた

「なに?」

「つんだってお前、あの小娘、さ。そういうさ、あんた的な重要人物だったわけ?どう?あんた的に。実際」

   うわずった。いま

      きみという存在

「でも、」

「は?カス?…あいついなくなったら、あんたひとりじゃなにもできない?マジ、滓?クソだね。マジ」…樹々、と。高明。そっとベッド、腰を駆けながら、水葉に「どこ?」ささやいた。「…です、か?あいつ」

「知らねぇよ」哄笑。

   笑い飛ばせよ

      究極の

         はじめようぜ。さあ

水葉。「自己責任じゃん。

   なんでもないさ

      失意

         はしりだすのさっ

…あんたの」この期に及んでジェラシーですか?思った。高明は。歯がゆい。水葉が。その愚劣が。また、愚劣をさらすしかめっ面のみにくさが。鏡見ろ、おばさん。思わずつぶやきそうな自分に高明は笑いそうになった。謂く、

   陰謀。女たち

   はりめぐらし

   陥穽を、自分も

   落ち込んでしまい


   陰謀。女たち

    息を吐き、吐くその

   はりめぐらし

    息のように

   陥穽を、自分も

    嘘を。喉。そこに

   落ち込んでしまい

太陽がいま、あんたの虫歯のくっさい孔で背伸びをしたよ。

   陰謀。女たち

      知ればいい。あなたは

    まばたき、まばたく

     殺さないでください

   はりめぐらし

      あなたみずからの

    その微動のままに

     わたしを。駄目に

   陥穽を、自分も

      あまりの穢さを

    媚態を。猶も

     しないで。これ以上、

   落ち込んでしまい

シャワー。水葉が。むしゃぶりついて、高明が水葉を抱いたあと、…おしっこ。水葉。ふと、シャワーに。身をもたげ、漏れそう。と、水葉。笑み。ほら、と。軽蔑。ふいの。高明は、

   奪うように

      あくまでも。あなたは

女たち。しょせん

   奪い取るように

      うららかな

おれに発情するしかない

   奪うように

      あくまでも。翳りを

クソども。女たち。侮蔑。思えば水葉を抱いてやったのは初めてだった。水葉。中を洗い流した。反響。壁。壁。シャワー。反響。赦す気はなかった。押しかかられればとりあえずは受けてやるしかすべはない。身体能力ないし特性上の差異。…殴られたくなかったら。かつ女として莫迦じゃないなら。つまり智慧があれば。莫迦男の莫迦の始末はより狂暴な莫迦男の莫迦の凶暴になぶらせればいい。どうせ、

   ちがうって

      あえて。花翳りに

死んでも生きても

   莫迦

      すこやかな

莫迦は莫迦にすぎず、しょせん男は

   病んでな

      あえて。目醒めを

莫迦でしかないから。洗う。いとおしい。椿が。彼は強い。そして潔い。抱かれたい。キスされたい。好き、と。思わずこころに純粋なせつなさを知った。謂く、

   好き?かも。ね

   ややまともな、さ

   あんたとか、ね

   好き?かも。ね

つまり我々は飼いならされた家畜にすぎない、と。主なき家畜。そんな唐突な認識のひらめき。

   好き?かも。ね

      くっさい、さ。その

    かれら。準備していた。最高の

     早くね?ってか

   ややまともな、さ

      存在感。以外に

    無難な笑顔を。かれら

     芸がない感じ。やや

   あんたとか、ね

      きらい。では、なかったよ最初から

    壊す以外に能のない、か

     遅くね?…動き、さ

   好き?かも。ね

シャワー。水葉。まだ、高明。そこに、ベッドに転がされたままの水葉の携帯におもわずむかしを思い出した。しあわせだった。楠。そして、数人の友達。その、それらひとりひとり。やがて厖大に群れはじめ、どこへ?かれらはどこに行ったのか?あまりにも遠くに来たと、思った。…なぜ?高明は。

   終わりだぜ。だって

   思い出いろに

   染まってみたり?

   終わりだぜ。すでに

振り返るな。わたしは解き放たれた野獣であった。…のだ、から。凡庸に朽ちる彼等から離れて。

   終わりだぜ。だって

      悔恨?…まあ、ね

    なつかしいんだ。もう

     怒り、さ。むしろ

   思い出いろに

      クソだから、さ

    ほら。泣き叫ぶ

     違和感。だからただ残酷でしかない

   染まってみたり?

      おれも、どいつも

    波も。しずかな

     この世界ってのに、さ

   終わりだぜ。すでに

シャワー。水葉。体をふきながら、

   ここちいい?

      まあまあ

水葉。寝室に、唐突な激怒。そこに。あるいは意図的な?激怒。ひと眼、高明。彼。ひとりだけさっさと服を着、しかもシャワーも浴びずにベッド、ひとのまくらに顔をうずめている男。彼。もはや後頭部にまで、その

   ここちいい?

      ぼちぼち

タトゥー。彼。死ね。つぶやく。クソ。水葉。聞き取らない。高明は。その言葉を。ただ音声をだけ…の、きざし、を?だけ耳に聞き知った。なに?返り見た。高明。寝起き?と。水葉。彼は、

   ここちいい?

      そこそこ

二度寝しかけていたに違いなかった。ベッドのふち。水葉は「ね、」蹴っ飛ばし、傷み。「ね、」かかと。もっとも「ねねねってばさねっ」水葉は「タコくん、さ」その傷みにはまだ気づかない。「くっそダコちん、さ」

「おれ?」

「タコちんあんたもさっさととんづらっちゃえばよくね?タコ」

「逃げんの?」

「あんた、さ」失笑。水葉。「頭んなかマジ虫飼ってんねやばっ」もう一度、そのベッドのふちを

   いてっ

      ほどほど

水葉は

   ここちいい?

      それなり

蹴った。高明が、マットレスごと揺れた。やるじゃん。水葉。わたし、意外、蹴りいけてね?謂く、

   見たくないんだ。きみ

   きみを。その

   駄目になってく、きみ

   そのきみ。もう

莫迦馬鹿しいときには、ふと、じぶん自信が妙にせつなく、

   見てたくないんだ。きみ

    追放だよ。わたし

   きみを。その

    …の。この世界から

   駄目になってく、きみ

    あなたを、ね?排除

   そのきみ。もう

莫迦馬鹿しいときには、ふと、あかるくはしゃぐ自分さえうとましく、

   見てられたくないんだ。きみ

      圏外だから。永遠に、わたしは

    廃棄だよ。わたし

     だってね。違った

   きみを。その

      きみから。きみの

    …の。この世界から

     少し前まで、きみは、もっと

   駄目になってく、きみ

      圏外だから。機種変しても

    あなたを、ね?除外

     笑ってた。素直に

   そのきみ。もう

記憶している唯一の電話番号。つまりは楠の。しかも家電。小学生の時に、ともだちの電話番号、

   大人たち、は。笑顔を

      必死だね

みんな、

   こどもたちにふさわしい

      媚び?

いくつ、

   最高の笑顔、を。…と、

      努力してんね

おぼえてるかな?クソ教師。女。年増。30前。覚えさせられた、何年?その…四年?記憶の残存のただひとつ。セルシオのなか。高明。車の鍵は水葉が渡してくれた。まだエンジンを入れないそのままの運転席、高明は楠の家電をならした。3コール。切った。息を吸う。吐く。車を出した。湾岸道路、楠の家の方、つまりは、東京のほうに。ほんの1キロ未満。停車。2コール。切った。すぐさまに、ふたたび。もういちど。鳴らした。待った。もうコール数は数えない。…って、と、「もひもひ」だれ?思った。高明は、「いま、だれも、いないので、電話でいません」

   莫迦?

「妹さん?」いたっけ?

   下等?

と、「留守番?」高明。「じゃ、ありません。両親います」防犯用の噓ですか?

   莫迦?

      ばればれじゃん?

御宅、そういう

   下等?

      むしろただのタコ

ご教育ですか?笑った。意味なくねぇか?「おれ、」ボケ。「楠くんの友人。ともだち。わかる?日本語。わかる?いる?いない?」

「おにいちゃんですか?」なん歳だよ餓鬼。クッソ餓、高明。「…いないよね」

   莫迦?

      ぼくは、永遠に

         人類の90パーセントは

「いません」

   下等?

      報われないのだ

         ただのタコであ

「電話つながる?」やや間があった。と、おにいさんは、…少女。「ちょっと、」そして「待ってください」少女は楠の携帯番号を読み上げた。思うに、電話のちかくに彼女用のアドレス帳があるに違いない。高明は笑った。もういちど繰り返させた。と、いま、

   覚えろ

こいつん家行きゃ、

   記憶しろ

盗難しほうだいとうことですか?

   ほとばしったんだ

      戻ろうよ

軽蔑。楠の

   激情が。ふと、

      あの頃に

家族はただ愚鈍にすぎる。泣いた。おもわず、高明。鳴らした携帯。その楠。そのなつかしい楠。そのなつかしい、ひさしぶりの声。楠に、…おれ、さ。「ごめんね。なんか。おれ」

「いいよ。もう」

「おまえ、いきなりだったじゃん。いなくなったじゃん。基本、おれなんもできねぇじゃん。しかたなくね」

「いいよ。もう、ぜんぜん」と、そして鼻をすすりながら高明は楠に「もう、さ」ささやく。「死にてぇ。おれ。マジ」

「莫迦。そんな」

   わたしは、いま

      そうだよ

「しあわせに、さ。すこしだけ、おれ、いまより、マジ、ちょっとだけしあわせになりてぇっていう、さ」

「そういうの、云うんじゃねぇ。クッソ」

   怯えた。死という、わたしの

      おれらは

「けど、それだけなのに、さ。もう、マジ」

「死ぬなんて言うな」

   可能性を知り

      親友だったよ

「だれも信じてくれねぇ」言って、ついに耐えられず一方的に電話を切った。泣いた。泣きじゃくった。ハンドルに縋った。涙は熱く、あまりに真摯だった。世界はいまふるえ、わななくべきだった。通り過ぎた。何台も、車が。2台、これみよがしにクラクションをどけろう鳴らした。どけろうぜぇんだよタコ死ね、…と?高明。彼はひとりしゃくりあげながら

   うるっせっうぜぇんだよタコ死ね

      轟音こそが

         生きてるよ

電話番号を

   うるっせっうぜぇんだよタコ死ね

      おれの人生

         あきらめてないよ

登録した。電話帳。ふと、怒り。樹々。そして彼女の番号登録を消した。切り捨てた。もう顔も見たくなかった。存在を記憶ごと抹消してやりたかった。着歴をひとつひとつ消してゆき、最後。これで最後と目に知れる着歴を、しかし高明は消し切れなかった。迷った。苦しんだ。もはや細胞があえぐほどに。消した。そのときに、どうしようもない絶望と喪失が一気に高明を苛んだ。気づく。楠は折り返しをくれなかった。唐突に、一方的に切ったというのに。どうでもよかった。鳴ったところで最初から出る気などなかった。捨てられたのは事実だった。クソだった。とりあえず、高明は桜木町を目指すしかない。…なぜ?謂く、

   迷わない。おれ

   生きる。生き延びて

   前へ、未来へ

   止まらない。おれ

の。…頭上に、おれ、に。落ちた。星が、燃えるそのおれ、の。…頭上に、

   迷わない。おれ

      どうしたらいい?もし

    だれが、わたしを

     あまえたい。だれかの胸に、

   生きる。生き延びて

      苦しくて、つらくて、耐えられな、だから

    ほんとうのわたしに

     そんな、傷みに

   前へ、未来へ

      すがりつきたいとき

    戻してくれるのだろう?

     どうしたら?これから

   止まらない。おれ

水葉。いま、と、「逃げた。壬生くん」雅秀。その

   ダンス。しようよ

電話。ふと、そこに

   ダンス。し

雅秀はなにを謂われているのかわからない、そんな茫然を気配にさらし、…って、と、「あいつか」雅秀。「高明。

   嘘なんだ

わたし、

   すべては。わたしの、

悪くないからね」

   知ってた?

「どうして?説明して。わかりやすく」

   舌打ち

      雲よ。青空に、

「って、」

   故意に

      溶けてしま、…いま

「ちょっと、時間ない」

「どした?」問いかけながら、水葉。すでに雅秀のいまの所在を察した。宮島。椿が告げ口をしてくれた。もう何か月も前に、…あいつさ。「マーシー、」知ってる?「もう、お前に」知っ、「飽きたっぽい」哄笑。あけすけな。椿。「まっ」と、「いいか。」水葉。「とにかくさ、

   ダンス。しようよ

壬生くん。あれ、

   ダン

わたしのこと強姦したんだけど」

   見てよ。見、み

      舌打ち

         ぼろぼろです

「それで?」

   見てったら。見、み

      故意に

         見捨ててください

「で、」

   ダンス。しようよ

「なに?」

   ケツふって

「逃げた」

   ダンス。し

「山田に…わかるでしょ?彼に、それ、伝えて。そのまま。それそのまま、彼。あいつが」オッ、「処理する」と。ケー…つぶいて切られた携帯を、雅秀はテーブルに戻した。午前。とりたてて予定はない。本土にあがるにはまだ子供が幼すぎ、島を連れ歩くにも宮島。その中はもうどこかしらすべて連れまわしてしまった。予定などないほうがいい。高子と秋子が朝食を準備する。もはや日々は戯れにすぎない。いつまでも雅秀は正義の世話ならしていてやれる。粉ミルクっぽい、肌の匂いを

   芳香よ

      満たされるがいい

鼻をつけ、

   芳香よ

      満ちるがいい

吸った。その、やわらかな胸元のぶよぶよに。謂く、

   老い、老いてゆく

   きみを。やがては

   置いてゆく。老い

   きみがおとなになってゆくなら

微光がやさしくきみを照らせ。

   老い、老いてゆく

    澄ましていよう

   きみを。やがては

    耳を。波

   置いてゆく。老い

    聞こえてくるかも。波の

   きみがおとなになってゆくなら

微笑がやさしくきみをつつめ。

   老い、老いてゆく

      どんな風景を

    見つめていよう

     腕のなかに、そして

   きみを。やがては

      やがて、あなたが

    きみを。ほほ笑み

     胸に。生地ごしに

   置いてゆく。老い

      老い、老いて

    ふと、笑いかけるかも

     あたたかな重さを

   きみがおとなになってゆくなら









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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