ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi；流波 rūpa -234 //なに？夏の/花。なに？花。たとえば/朝顔はかたむいた//13

以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。

郁実。自宅。午後一時。郁実。昼食後、沢井郁実は

　　　抱擁。ほら

綾子をうしろから

　　　これは抱擁

抱いてやった。娘が、リビング。そこで唐突に立ち止まったから。窓。その直前。雨。撥ねる。ガラス。雨。外出は、濡れながらでなければできないだろう。たとえ傘をさしたところで、すくなくともかかととくるぶしとふくらはぎには散ってしまうのだろう。雨水が、散ってしまうのだろう。撥ねる。雨水が、ガラス。散ってし、雨。その

　　　体内に、きざし

　　　　　　震動

綾子があまりに、

　　　きざしつづけた

　　　　　　こまやかな

もの思わしげで、しかも

　　　ただ、執拗な

　　　　　　震動

その心。あるいは鮮明な失語的状態。須臾の。あくまでも持続的な須臾の。その

　　　ふるえるよ。ほら

　　　　　　霞む。翳りが

　　　　　　　　　存在しない

綾子があまりにいとおしく、なぜ？

　　　ふるえたよ。ほら

　　　　　　霞む。翳りが

　　　　　　　　　恐怖など

いきなり立ち上がって郁実はうしろから羽交い絞め？

　　　ふるえていたよ。ほら

　　　　　　霞む。翳りが

　　　　　　　　　抱擁。その

では、なくて、慎重に、

　　　ふる

　　　　　　霞む。翳りが

　　　　　　　　　ただなかにあっては

そっと。しかも、そっと、慎重に、…なに？と。やがてゆっくりとやさしく、髪の毛の匂いを鼻に花にも感じさせて、振り向き。その、

　　　匂うよ

そこ、

　　　匂うよ

その時に、綾子。振り向き。笑んだ。綾子は、母親のために、「だいじょうぶだよ」言った。郁実は、「なに？」

　　　ふまれたまま、あなたの

　　　　　　つぶれる。翳りが

「どこにも、いかないよ。綾は」

　　　影は、あなたに、

　　　　　　ふれないで。わたしに

「知ってる」郁実は、抱きしめた腕に、娘の次第の性徴を思った。…自分もそうだったから。思った。自分も、たしかにすさまじく不安定だったから。「駄目だよ」

「ん？」

　　　ふれて。わたしに

　　　　　　前例のない

　　　　　　　　　安定的

「もう、駄目」

「わかってる」

　　　ふれていて。わたしは

　　　　　　唐突な息吹き

　　　　　　　　　固体的

「泣いちゃ、駄目だよ」郁実はそして、頬の涙をゆびですくって綾子の息をくちびるに感じた。綾子は泣きじゃくる郁実をそこにただ、もてあましていた。謂く、

　　　壊れはしないだろう

　　　　　　吐く。喉

　　　　もう、とっくに

　　　　　ひびきあう。それら

　　　わたしは。ただ

　　　　　　きみが？ぼく。…が？

　　　　壊れているから、とか？

　　　　　音たち。さまざまな雨の音たち

　　　あなただけ。まだ

　　　　　　割れた息を

　　　　そういうんじゃなくて

　　　　　ひたすらに、もう

　　　壊れはしないだろう

　　　壊れてはいないだろう

　　　　　　えづく。の、だ。前歯

　　　　強靭なのだ

　　　　　くだけてゆくよ

　　　わたしは。ただ

　　　　　　きみが？が？ぼく？

　　　　わたしは。むしろ

　　　　　飛び散ってしまうんだ、よ。ほら

　　　あなただけ。まだ

　　　　　　しめっ。しめっ。めっ。た息で

　　　　だれよりも。だから

　　　　　降りそそぐよ。またもや

　　　壊れてはいしないだろう

　　　壊れはしなかっただろう

　　　　　　停滞。目じり、に。も、

　　　　いままでにさえも

　　　　　ひびきあう。それら

　　　わたしは。ただ

　　　　　　が？が、きみが？ぼ

　　　　一度も、ただ

　　　　　音たちだ。雨に、雨の音たちだ

　　　あなただけ。まだ

　　　　　　無視された息に

　　　　一瞬でさえ、さえ、さえ、も

　　　　　赤裸々に。もう

　　　壊れはしなかっただろう

八木夭子。午前十時。笑う。ビラ・ローザ。「帰れば？ママ、」

　　　ゆれて、あやうい

北向きの窓を、

　　　ニュー・トリノ

背に。その「心配してんじゃん」声。あきらかに唐突な発話。に、原田英雄はふいの失語を喉。に、感じ、…やだ。「帰っても、あそこ」

「なんで？」…なに？と、沈黙。あくまでも英雄。その喉は。「弟、うざいから」

　　　かまってちゃんなんだっ

　　　　　　睫毛。その

「なに？」

　　　あいつ、すっげぇ

　　　　　　毛先さえ、きみは

「あいつ、やんちゃすぎ。ほんき、うざって。…から、じゃん。かくまってほしい。まじ」

「なんで？」笑った。夭子は。突然、感じた。英雄は。自分がうわついた幸福に咬みつかれたのを。口走った言葉。それらは、すでに

　　　電子雲の

現実の感覚を

　　　雨が、

帯びた。「そんなに、悪いの？」夭子。英雄は、夭子の問いが具体的になってゆくのを恐れた。だから、あからさまに、故意に英雄は笑い声を立て、「…って、さ。」夭子。その「でも、」いきなりの

　　　嫉妬。なぜか

　　　　　　ないよ

愁い。…ね？

　　　あなたの眉に

　　　　　　べつに、関係。彼と

ささやきを英雄は

　　　その気配にさえ

　　　　　　ないよ

聞いた。「好き？わたしが、

　　　嫉妬。なぜか

　　　　　　べつに、会話。彼と

好き？」無言。英雄は、それを鮮明にYES、と。自分はいま、そう答えたと、笑み。傲慢な昂揚が、笑み。夭子。その口のまわりにだけ。夭子。「じゃ、」と、冴えた虹彩に

　　　いつでもただ

　　　　　　傷みに似る

　　　　　　　　　だだっ

英雄は

　　　わたしだけが

　　　　　　歓喜。そして

　　　　　　　　　だだっこ。こ

見蕩れた。「守れる？好きなひととの、約束。どう？守れる？」おなじく、

　　　いつでもただ

　　　　　　歓喜に似る

　　　　　　　　　だだっ

無言を。「帰って」

　　　わたしだけが

　　　　　　傷み。そして

「予約、あるんですか？」

　　　醜いのだった

　　　　　　なに？だから、

「帰って。もう、」手首を「時間だから」つかみ、…触感。あくまでも

　　　ぬ、

男。手のひらに。立たせ、そして

　　　ぬらっ

英雄の衣服を胸に抱かせて、懐疑。動揺。…ま、英雄。「…待って」

　　　行かないで

　　　　　　待って

「帰って」背を押し、ドアを開け、夭子は

　　　行かないで

　　　　　　ここにい

廊下に突き出した。カメラ。知ったことじゃない。「ね？」笑った。そこに夭子は、「思い出しさえしないでほしい。もう、わたしのこと、一切。一秒も。片時も。絶対。マジで。約束」施錠。

　　　ってか、

内側から。

　　　日本語

声。外側から、

　　　話せてた？

殴打。そこで、あわてて衣服を着始めたノイズ。ドアにぶつかる頭。ノイズ。声。あせり。殴打。間歇的持続。ノイズ。唐突に

　　　だれ？

　　　　　　怯えないで

ひそめられた、

　　　そこに

　　　　　　わたしがここに

声。思った。夭子は、

　　　通りがかった他人

　　　　　　いまも、ここ

いま、と。わたしはあなたが見ている風景をまるで自分が見ているそれであるかのように鮮明に共有している、と。耳。その、

　　　ほら

鮮明すぎる

　　　ほら、ね？

響きのせいで。そして

　　　ほら

思わず夭子は泣いた。キッチン・スペースに逃げた。英雄の立てるノイズが周囲を気にしながら、それでも猶も執拗に誠実だった。シンクにまだ洗わないコップを、そのどちらが英雄の使ったそれと、なんら明確もないままふたつともにいじらしく、夭子。ただ、そこに容赦なく自分をさえも愛おしんでいた。謂く、

　　　そうなんだ、と

　　　わたしはこんなに

　　　そうなんだ、と

　　　笑え、こんなに

ありますか？どこに、顔は。わたしの、

　　　そうなんだ、と

　　　　　　云ってほしかった？

　　　　きみには最初の

　　　　　飛沫。ゆび

　　　わたしはこんなに

　　　　　　せめて、泣きじゃくり

　　　　わたしに最後の

　　　　　ゆびさきに

　　　そうなんだ、と

　　　　　　眼の前で、きみの

　　　　と。と、でも？

　　　　　飛沫。ゆび

　　　わたしはここで

　　　そうなんだ、と

　　　わたしはこんなに

　　　そうなんだ、と

　　　はしゃげ、こんなに

ありましたか？いつ、顔は。わたしの

　　　そうなんだ、と

　　　　　　名づけ得ず

　　　　奇妙なまでの、だから

　　　　　飛沫。散り

　　　わたしはこんなに

　　　　　　名づけられず、だから

　　　　空疎、とでも？

　　　　　散りかってい

　　　そうなんだ、と

　　　　　　存在する意味をも持ち得なかったもの、と

　　　　そう呼ぶべき、…なに？

　　　　　飛沫。散り

　　　わたしはここで

　　　そうなんだ、と

　　　わたしはこんなに

　　　そうなんだ、と

　　　たのしめ、こんなに

あたえなければならないだろう。わたしは、顔を。わたしに、…え？

　　　そうなんだ、と

　　　　　　感傷にすぎない

　　　　とまれ、にもかかわらず

　　　　　飛沫。綺羅らに

　　　わたしはこんなに

　　　　　　この、燃えるような。この

　　　　かならずしも。あえて？

　　　　　綺羅めきだって

　　　そうなんだ、と

　　　　　　悔恨など。そして

　　　　切実なばかりの感情は

　　　　　飛沫。綺羅らに

　　　わたしはここで

　　　そうなんだ、と

　　　　　　喪失感。もう

　　　　悲しみ、み。は、やがて

　　　　　飛沫。刺す

　　　わたしはこんなに

　　　　　　わめきたいんだった。むしろ

　　　　真摯なものになるのだろうか？

　　　　　刺し、し、つらぬき

　　　鮮明だったんだ、と

　　　　　　泣き叫びたいんだった

　　　　現実そのままに

　　　　　飛沫。刺す

　　　赤裸々。こんなに