ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi;流波 rūpa -218 //紫陽花。…の、だから/そのむら。ら、さきの/花はふみにじられるべきだと、そう//12
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
明けて、自分の部屋で目を覚ました時に、高明に強姦したという意識はなかった。あくまで高子に抵抗らしい抵抗がなかったから。それが、思い返すに貪欲な高子への軽蔑をだけ思わせ、リビング。…に、行くと、快活な秋子がいつもり、すこしだけ快活になって見えた高子と話し込んでいた。その内容に興味はない。…ごはんは?高明。彼が思わずそう問いかけると、「忘れてた!」笑った。その、やや快活な、そこ。高子が。顔を見合わせた。秋子と。そう高子の眼は見た。秋子はそっと、明るい顔に高明を見ていた。唇はなにも言葉をかけはしなかった。…知ってるんだ、と。高明はその一瞬の秋子にそう思った。過失、とさえ、
見られた?
見てた?
高明が
見られてた?
見た?
思いつくまもなく秋子は立ちあがり騒ぎ立てながら高子とふたりキッチンに消えた。
見て。爪に
ひかりが、ほら
爪に、ただ
やわらかな光沢
見て。ゆびさき
ひやんだ、ほら
ゆびさきに、いま
かすかにふるえる
そのかすかに、かすかな、かすなでさえない、微生物たち。かすかに。ふるえ、それら。ややうわむきに、猶も死者たちの翳りを追ったのか?微生物たちは
爪に、ただ
翳り。あしもと。に、
ささやきを、きみは
あ、と。なぜ?
光沢。やわらかな
翳り。やさしい、それ。が
わたしにささやきかけようと。しかも
つぶ。つぶやきそうに
ゆびさきに、いま
翳り。あしもと。に、
ためらいを、きみは
あ、と。いま
かすかなふるえ
見て。雨に
曖昧な雨に
つつましい雨に
見て。この雨に
妙本寺の西の小路に、山村宗士に呼び出された。なにが起こるのかは知っていた。その5月。
見て。雨に
吼えてやろうか?
19日。朝から
見て。この雨に
咬みついちゃうぞ
雨だった。学校で3年の宗士の、本人以外のだれもに舎弟と見なされていた橋本昌磨から呼び出されたとき、
見て。雨に、この
好きにして。…よ。そして
咆哮を。ふと
あ。あ。あ。…あ。
曖昧な雨に
思うがまま。…に。ほら
けだもののように
芳香を。ふと、…花?
つつましい雨に
家畜だ。…よ。わたしは
咆哮を。ふと
嗅いだ。と、…すこしも。
見て。この雨に
週末、彼等がつるみあう誰かの家でそんな話になったのだろうと思った。高明は。恐怖感はなかった。ただ、
ぼくは恐怖
濡れていた
眼の前に
赤裸々な恐怖
ひたいが
行き止まりが、唐突に
やさしくしてね、風
ほら、ゆらぐ
風。野蛮に、ね。かつ
見えた気もした。不可解な気持ちの、あくまで印象というべき曖昧を高明は持て余し、ひとり
行こうぜ。海に
ほほ笑みを
倦んでいた。昌磨は
沈もうぜ。海に
きみが
2年だった。謂われて見れば、そのうちそうなるしかなかった。中学で高明は目立った。容姿。薄すぎる眉をふくめて、高明の不穏なうくしさの不穏はひと目を惹かないではいられなかった。また、東京の壬生の、その捨て子的な雰囲気。話には尾鰭がつき、かつ、人の口に様々な解釈とその印象が
かがやけ!
生まれていた。さらに、
ぼくは星!
すでにただ常態に過ぎなくなっていた態度の不遜。唐突におちいる愁い。おちいるとしか云えない、唐突な快活の爆発。それら、高明の周囲にだけひと眼は
飛び降りろよ、と
わたしは沈黙
かさなって
舞いあがるかに、と
静寂。わたしは
すきまもなかった。女たちは、小学校とは違う知ったふうな眼で、高明をひたすらに意識した。不良グループ、と。秋子が入学前につかんだ情報を、誇って教えたその宗士たちが目ざとく声をかけたのは入学して、まだクラスの同級生の名前をも全部覚えきってもいない頃だった。校舎の翳り、沢田楠とともなったすれ違いに宗士が、声を
やばっ。いま
発汗
くさくない?
かけたのだった。高明たちの
花、ふみそうになっ
思春期の発汗
くさくない?
態度の不遜を、その四人の先輩たちは嘲弄した。高明にも楠にももう分かっていた。憤るなりなんなり、それに対応すれば関係ができた。周囲のひとびと。教師を含む。もめればすぐに誰かが止める。結果、結ばれた関係を交遊関係に変質させてしまうのはたやすかった。宗士たち。その、かならずしも意識もない画策の周到はあきらかだった。楠がなにか言いかけたその傍らに、ふいに
なに?なに?
きみ。人知れず
高明が立ち止まった。その
なに?なに?
咲く。月下美人
気配に楠はいびつを感じた。だから、なにも云わないまま高明を見た。宗士たちを、高明は見ていた。やがて鼻で笑った。たっぷり時間をかけて眼を逸らし、そのまま歩きはじめた。楠は高明に従った。楠は知ってた。同じことが一度繰り返されていたことを。高明は知っていた。それが三度ということを。高明。彼は彼等とつるみたくなかった。だって、さ。「ださくない?あいつら」そう、楠に云って、その
ぼくに翼を
形骸だ…という、か
すべての少年たちはただ
本気の不快の真摯さを
大気圏さえ
瓦礫にひとしき
不愉快なまでの
ふと、楠は
ぶちぬけるくらいの
残骸だ…という、か
保守性のみをさらした
笑った。のちに妙本寺の小路、そのほぼどん詰まり、左手のアパートが崎田庸輔の母子家庭の住居だったということを高明も、楠も、知った。ひとりで来いと言われた。云われたとき、楠と一緒だった。その他、数人、まわりにいた。楠以外、宗士に従った。寺の敷地の樹木の翳りに誘導したのは昌磨だった。雨にぬれ、ぬれた土に時に
ぬらして
汚れた。高明は
みずみずしく
自分が、必ずしも喧嘩が上手ではないことを知った。宗士が呼びあつめたのは3、2、1の全学年から五人だった。うち、ただ3人ですでに高明の限界を越えた。拳と腕と足で充分傷めつけたあと、押し倒した高明を後ろ手に、木原巽が馬乗りになった。…弱くね?と、「こいつ、ちゃっちい」云って、巽は
味わったのだ
ぬかるみ、やや
笑った。巽は
芳醇な、土の
撥ね、やや
いちばん小柄だった。そのくせ、
野蛮な味覚
びちゃっ、と
柔道部で強い方だった。俊敏で、ひとつひとつの技の精度が高かった。宗士はついてきた楠には手をあげなかった。その狡猾を庸輔は思った。楠にときに
孤独、なんだ
いたいよ。ぼくが
話しかけながらの制裁は、いつか
孤独、わかる?
いたいよ。そばに
宗士たちに楠を近づかせて見せていた。高明にさえ。または楠の眼にも。楠は、
感じる。わたしは
知らないんだ
停滞
ただ、生返事に傘をさし、
孤立を。わたしの
きみは、まだ
滞留
制裁を見守った。あくまで、
あなたにも、親しく
空の青さも
沈滞
高明は
語りかけながら
風のいぶきも
待機。…した、かの
さわぎたてる5人の声に答えなかった。高明は抵抗をやめていた。諦めのはやさを、すぐれた合理性と高明は、自分で思った。仰向けにされて、高明は眼と口を閉じた。降る雨に侵入されるのがいやだった。宗士が巽に云って、写メを
画素数
撮らせた。ほんの
いくつ?
十数分で彼等は立ち去った。ゆっくり、そのまま脱力していた高明にちかづいて、楠。顔を傘に入れてやりあがら屈みこみ、楠。…ごめん。と、楠。「おれ、なにもできんかったわ」その楠ははじめて感情をさらした。感情をいま、押し殺しているという感情を。謂く、
なじって。ぼくを
きみは、その
そのくちびるは
なじって。しかも
すべて、ぜんぶ、すべて、…の。瞬間にさえも
なじって。な
そばにいる。たとえ
知ってる?あまりに
嫌悪していた。わたしは
きみは。き
雨が、やがて
不器用だったから。お前、不器…武器?
愚劣だった。わたしは
そのくちは
ばすんっ、と。焔に変わばすんっ、と。っても
クソ餓鬼だから
卑劣だった。わたし自身が
なじって。な
ぼくからも、その
眼を、きみは
そらしつづけ、その
そのままきみは
すべて、ぜんぶ、すべて、…の。須臾にさえも
きみはその
いるよ。ここに、
知ってる?やられた
嫌悪していのだた。わたしは
眼を、いまも
きみが、やがて。わたしに
理由。その。お前
すべてを。ただ
そらしつづけ
唾きをしかける憤慨のときでも
だろ?目立ちすぎだから
見出していたそれ。それら、そこ。そこら、眼のうつるすべ
そのまま、
同級生の原口琉偉、…ルイ、と読む。彼をはじめとして、昌磨と3年の田原祥平にひとりづつ報復して回ったあたりでもう6月になっていた。噂は
雨だよ
ひろがった。いつか、
濡れるよ
眼。加害者を見る
紫陽花が
目。高明に。
やがて
周囲、見られた。高明は、ただ暴力的で容赦ない加害者と、宗士。彼はまだ、なにも手を下さなかった。弱い奴からやっていく、と、高明の臆病をけなしてまわった。高明も楠も、その噂にことさらに憤ってみせながら、実際にはそれほどでもなかった。あるいは事実、琉偉と祥平はふたりがかりで制裁したのだった。一面の真実さえ見てやれないほど、すくなくとも楠は愚かでなかった。謂く、
狂暴。ときに
野獣。じゃ
ねぇ。すっげぇ
繊細なムーブ
イノセント狂暴
謂く、
狂暴。ときに
きみを、…え?
家畜。留保なき歓喜。絶望を
しょせんは、なんか
野獣。じゃ
悲しめるとか?それ
他者にあたえるという容赦なき
遊びじゃん?餓鬼の
ねぇ。すっげぇ
違うから、おれら
陶酔。全能感。はがいじめの
たわむれじゃん?ぼくら
繊細なムーブ
ぜんっぜ、違うか
家畜。留保なき歓喜。絶望を
餓鬼は餓鬼だから
イノセント狂暴
壬生高子は、あるいはそれを
の、…なに?ふと
見てください
夢と、そう
耳に、息を
わたしを。たしかに
思おうとした。そしてその心をしかも
吹き込まれたか
生きていますか?
笑ってしまった。自分で、3月。あの
ざわめきよ
23日の
とけてしまえ
夜。か、
こころ。その
朝。24日の。ほんの
あやうい表面、
みじかい時間に、しかも
に。…に、
なんどか繰り返された性急な行為に、彼が初めてだったことを知った。あるいは、自分もほとんどそれに近かったことも知った。かならずしも、まともに愛されたことはなかった。高明とのそれも、まともは謂えなかった気がした。そのまま、高明が自分の部屋に、逃げるように戻って、その見えるもののほとんどない翳りの巨大ななかに、たしかに高明の影を見ていたのだと、だからいまだに、と、またはいまこそは、と、不在。高明の。
不在
かききえる。よう、…に
知った。
不在
かきけすす。よう、…に
そのまま、最後に四つん這いにさせられたまま、高子。身を丸めた。聞こえた気がした。鳥の声が。返り見れば、ドア。開け放たれたその向こう、外光は
そっと、ね
ほほ笑みを
沁み?
それでも
気づかないくらいに
なすりつけ
下着?
侵入しているのだった。困難。竹の茂みに、苛酷。阻害されながらも。微光。高子は肌に汗もながさず、部屋着を着ると、リビングに行った。ソファに
鳴った
風なのです
秋子の顔を見たときに、声は、
ささっ、と
それ。れら。それ、ら。ら
と。思った。物音は?
笹が
ただやわらかな
ベッドは、
ざらっ、と
風だったのです
軋みを?自分の喉をふくめ、すべてがこれ見よがしな轟音を撒き散らす、その
あ、あ、あ、
すか?え?な
訓練を
印象がそこに、
い、い、い、
に?なんで
声をだす、その
鮮明に
う、う、う、
すか?発狂で
鍛錬を
きざしたのだった。「おはよ」秋子は、こともなげに云った。バレてる、と。高子はそのあまりの普通に、そう直感した。はげしい声と息遣いと雑音の盛大な騒音に、秋子は同じ姿勢のままふと、目を細めたにちがいなかった。「…駄目じゃない」すでに、
わたし、あなたに
くさっ。なぜ?
高子は「ちゃんと、」自分の
かわいらしく、いま
くっ。瞬間の、く
喉の「寝ないと」その
笑っていますか?
生臭い臭くさっ
声をもう聞きつづけていた。…眠れれば、と。寝るわよ。くちびるが、そう
れれば、ね
るわ。お。よ。ね
つぶやいた気が
ねむ。むれ。ねね
るわ。ね。よ。お
した。だから
れれば、ね
るわ。お。ね。ね
高子は秋子のくちびるがひらきかける前に、「からだ、こわ
わ、
わっ
わ、
しちゃう」…大親父。高子は、…壬生秀則。思う。それとなく、その秋子の口からあの大親父の体調不良を聞いていた。気が気ではないのだった。だから、ほんとうは、秋子は。
疾走してゆく
懊悩なんだよ
いてもたってもいられないのだった。ほんとうは、
わたしたちの
焦燥なんだよ
と、そして
情熱たちよ
苦痛なん
いぶかる。どうするだろう?自分が、あの人の体調不良を、もう長持ちしないと、そんな報告を耳にしたなら。どうするのだろう?高子は、秋子の目じりに気づかない程度の憔悴を見ていたのだった。秋子は高子の不用意な至近の凝視に、はにかんだ。そのとき高子は、とっくにソファ、秋子のかたわらに身をなげだし、放逸にみえるほど四肢を伸ばしていた。けっして、秋子。高子が自分以外には見せないその、いわば、素だった。秋子は、ことばもなく
翳る。わたしは
倦んだ。以後、
あなたの、その
数週間、高明が
翳る。翳り、に
寝室に
翳る。わたしは
しのびこむことはなかった。日がたつにつれ、あるいはその日の夕方にはもう、高子は自分の恋心にそっと、気づきはじめた。たしかにそうだった。そうに違いなく、だったらそれはそうだった。秋子は唐突な、あたらしい気配のいぶきがその、会話中におちいる沈黙の端々に感じられるのを恐れた。なんであれ、あたらしい感情は、あたらしい発作をふたたび高子に与えるかもしれなかった。肌のつやを
こ
狂うがいいさ
よくした高子に、まなざしは
こわっ
狂おしく、さ
翳った。謂く、
壊れてゆくのを
見つづけてきた、と
そんな気さえも
狂った女。あの
やさしくかすみ、かすんでましろい、雨がいつかは、かすみ、やさしくかすんでましろい、ま。ふりそそぐのだから、
壊れてゆく
眼。だ。た、ない、ほどの
ほくろ。あなたの
かなしみが、ふと
見つづけてきた
眼。に、あざやかな
鼻梁中央に
唐突に、…なぜ?わたしに
そんな気が
沁み込んでゆく。眼。に、
ほくろ。ちいさな
きざしていたからだ。わたしにだけは
あの、狂いゆく女
怒号の前でも
罵声の前でも
いまであっても
あしたであっても
やさしくかすみ、かすんでましろい、雨がいつかは、ふりそそぐのだから、
沈黙の前でも
眼だたた、た。た。ない。ほどの
傷。あなたの
にくしみが、ふと
嬌声の前でも
眼。に、…ん?あざやかな
右瞼。に、やや
なんでなんでなん。鮮明にわたしに
かつてであっても
いたましさを眼。眼は、
目じりより、に。やや
わたしにだけはきざしていたのだった。から、だ。
あしたであっても
0コメント