ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi;流波 rūpa -204 //ふ。ふっ。ふみ/ふむ。む。踏ま、ふみ/踏み、かけてふと。…傷み?//08





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





登校拒否。ほんの数日の登校拒、3回目。その。…を、終わらせて璃々が出席してきたとき、雨。21日。雨。返り見て、

   洗え!おれを

高明。ななめ

   たましいを!すすげ

背後。すぐそこに、

   洗え!雨よ、

雨。窓。外はただ、一限目と、雨。二限目の間。壁際の高明はむこう、教室の中から廊下を通る璃々の腰から上を見かけた。不登校の発作。そのたび担当教諭と面談をした。璃々。その帰り?または単に、トイレに行っていただけ?あるいは廊下で変態しかけて?やつれ。目立った。璃々。横顔よりむしろ腕にきざした、いわば気配に。事実、極端に璃々は

   こわれてゆくんだ

      やさしさを。まだ

瘦せはじめていた。窓から

   ぼくたちは。みんな

      あたえられずに

顔を出し、

   色彩をなくして

      きみが。きみにさえ

高明。璃々を呼んだ。なんのためらもなく立ち止まって、

   え?

璃々。後ろ姿を、

   ええ

なにも、好ましく

   え?

見た。翳りなど。なにも、振り返った。鬱の色など。なにも、瘦せすぎ、なにも、病んでさえなにも、見えた頬に璃々はそして、素直に笑った。なにも。そこに、「なに?」

   もう、なにも

      あ。いま

         手遅れだったさ

「ひさしぶりじゃん。来たの?」

   話すべきことは

      ひだりうしろで

         だから泣くんさ

「ぜんぜん、…金曜日は、」

   なにも。もう

      だれ?笑ったの

         きみが好きださ

「いつ?」

   もう、きみも

      ほら、ね?

         だから泣くん

「いたよ」と、ふいの「わたし」まえぶれのない登校だった。朝、一限目を半ば過ぎ、校門に璃々の姿を見たとき窓際の生徒は思わず口にひそひそ話をはじめたくらいだったから。咎めなかった。教師は。あえて特別あつかいも、ただ確認し、目。そして全生徒にかるく集中をうながして、

   かたむきましたよ

月曜日。

   目。ほら、目

朝礼。各教室の。6年担当の教諭はみんな、すでに璃々の現状について通告し、それぞれに協力を要請していた。職員会議で話し合われたままに。すなわち、

   人間だろ?

      やさしいこころが

璃々は学校に

   お前ら。もしくは

      あふれだすから

来たがっていない。こんどのは

   線虫か?

      だれもが素直に

すこし時間が

   蛆虫か?

      涙しま、マジ?

かかりそうだ。いつ来られるようになるかわからない。璃々も両親も努力している。みんなも、仲がいい子は声をかけるように、と。考えて見れば、結果、実質土曜日だけ休んだにすぎない。高明は思わず、声を立てて「で、」と、笑っていた。その「お前、」素直過ぎる笑みの「どこ行くの?」自然に。高明に、「秘密だよ」璃々。そうつぶやき、そして

   なぜ?まるで

      なに?わたし

         見たまえ、な

ふざけて舌を

   つくりもののように

      こんなにかわいく

         素顔だよ。これ

出すや否やたわむれの

   だから、まるで

      笑っているよ

         素顔だったさ。こ

駆け足に

   にせものじみて

      なに?きみも

         見たまえ、な

璃々。尻を跳ねあげた。謂く、

   絶望。わたしの

   右手に、たしかに

   絶望。わたしを

   咬みちぎるかに

見ろよ。爪のななめ上方に開口してゆく孔。死者たちを。だからそっとまなざしに

   絶望。わたしの

      老いさらばえた。もう

    知ってる。たぶん

     匂った。髪の毛が、匂

   右手に、たしかに

      吐く、息。は、

    百年後には、わたし

     他人のものみたく

   絶望。わたしを

      その気配さえも

    しあわせでいる、かな?

     ふと、鼻。に、いま

   咬みちぎるかに


   苦しんでなど

   まだ、おさなすぎるから

   わかすぎるから

   悩んでな、すこしも


   絶望。わたしの

   爪に、すべてに

   絶望。わたしを

   ふくらますかに

見ろよ。爪のななめ上方に陥没してゆく孔。死者たちを。だからそっとまなざしが

   絶望。わたしの

      見えないんだ。もう

    知ってる。すべての

     匂っていた。髪の毛が、匂

   爪に、すべてに

      ただ、まぶしくて

    窓。すべて、ガラスが

     寄生されはじめていたかの…なぜ?ように

   絶望。わたしを

      なにも。わずかにも

    綺羅めく。白濁を

     ふと、わたし。に、いま

   ふくらますかに


   怒りにさえも

   似、ひたすらな

   歎きにも似た

   怒りをさえも


   なぜ?もう

   わたしの世界は

   昏い。わたしの

   世界。だけ、が


   なぜ?もう

   すでに、執拗な

   昏い。傷みを

   ひからびさせたまま

見つめあっている。なんらかかわりのないそれら、死者たち。無数の翳りら。そんな恥ずかしい孔とさえもただ、見つめあっている。なんら

   なぜ?もう

      なぜ?きみは

    息を、吸う。うっ

     わたしはここで

   わたしの世界は

      わたしの頭上に

    そして、ふたたび

     きみを、ななめに

   昏い。傷みを

      ながし、目線をながしたままで

    吐き、吸う、う。はぅ、

     まばたきもなく。わたしは

   ひからびさせたまま

高明にすっぽかされた日、その週をまるごと璃々は休んだ。教諭に依る通達はまだなかった。様子見。むしろ公言は避けられ、9月のおわりから10月頭。週をまたいだ2度めの不登校の最後の日。土曜日。帰り際。生徒に各教諭は璃々の現状をそれとなく告知した。つまり体調を崩している、と。だから心も弱くなっている、と。もっとも、最初の一週間の不在の半ばには、その

   か細い

      なんでだろう?

摂食障害と不登校は

   指。皮膚に

      わたしってばさ意外に

周知の事実だった。学校で顔をあわすたび、高明と璃々に

   ってばさ

      って、っててばさ

         ってばさ

変わりはなかった。いつもどおり。高明は基本柔和で、よく気がつき、時に不遜で突発的に暴力的。璃々はほがらかで、活発で、基本的に移り気すぎて集中力を欠いた。急激に脂肪を筋肉ごと削ぎ落としながらも。高明はまだ忘れていなかった。家出計画の誘いがあったことは。記憶していた。たしかに。か細い指。皮膚に透ける気がした璃々の骨。目につけば、またことさらに記憶を

   か細い

      わかる?心臓が

鮮明にした。言ってはいないようだった。璃々は、

   指。皮膚に

      元気だってばさ

だれにも。家庭は荒れて、すさみきっているに違いなかった。高明は

   ってばさ

      って、っててばさ

         ってばさ

そう勘ぐった。給食の時間、自分の教室で璃々は友達の残しかけたものさえ食べてやった。駄目じゃん、と、「好き嫌いは」表現。瘦せこけた璃々に、言語表現。なんか大人になったね。そう表現するのが常套句になっていた。おなじクラスの木村俊春が最初に使った表現だった。健康だった。璃々は。おかわりさえした。璃々が、…太れないだよね。ささやく。「食べても、食べても」

   どくどくって

      あかるい空には

「いいじゃん」

   血管が跳ね、ど

      鳥たちだけが

「良くないよ。えっちゃん、いいよね」右手。川口絵巳子の腹をつかみ、「めっちゃでぶでぶで」言って、璃々。笑った。絵巳子。口。派手な拒否の声を立ててやりながら、頸。突発的な笑い声を、かたむく頸。散らしつづけた。ふるえ。昼休みがあと十数分になって、

   虐めですよ!

登校した日の

   暴力ですよ!

日課に、璃々は校舎横、用具室とは反対側の外トイレに入った。ふるく、穢かった。むしろ、その方が良かった。床タイルとコンクリ壁面の汚れを舐めるように見た。臭気をひたすら吸い込んだ。指を奧まで喉に突っ込んだ。数度えづき、涙が滲み、血の味を粘膜の浅いどこかに点々と感じて、璃々は気が済むまで

   翳る。ほら

      失踪?

嘔吐した。視覚、

   鳥たちだけが

      疾走

嗅覚に

   あかるい空では

      失踪?

あきらかな吐瀉物の汚さをことさらに想い、さらにも吐き、吐瀉物に繁殖し始めた汚染トイレの、汚物を舌に舐める

   ほら。これが

      ややかわいいかな?

自分さえ、あまりに

   わたしの狂気

      ややいたずらな、

明確に

   ほら。狂い

      やややばい?やや

想像しはじめた。謂く、

   苦しめない。わたしは

   だれも。わたし

   それ以外には

   だれも。そこに


   繁殖すらする

   蜘蛛たちのように

   翳りに逃げ込む

   なに?線虫かなにかかに

と、あれ?かなしみがいま、わたしをひとり取り残したまま走り去っていきました。…って、

   繁殖すらする

      いいよ。あなたは

    信じて。…ふしぎだ

     憐れみよりも

   蜘蛛たちのように

      壊すことしか、ね?

    べつに、ふし。ふし。ふし、ぎ。きみを

     もっとやさしい、もっ

   翳りに逃げる

      できないよ。たぶん

    だ。嫌いになっていないん、だ。

     赦しを、きみに

   線虫のように


   壊れそう?

    ひとりで、きみは

   そ、壊しそう?

    崩れさるがいい

   なの?壊れ

    ひとりで、ぼくは

   そ、壊れそう?


   苦しまない。わたしは

   なにも。夜中に

   それ以外には

   なにも。しかし


   増殖してゆく

   微生物たちのように

   数限りなく

   なに?この頭上だけに

と、あれ?かなしみがいま、わたしをひとり取り残したまま追い抜いていきました。…って、

   増殖してゆく

      いいよ。あなたは

    信じて。…ぜんっぜ、

     絶望よりも

   微生物たちのように。こまやかな

      俊敏に。だれよりも

    ぜんぜん、きみをぜんぜん。ぜんぜ

     もっと、も。すべがないもっ

   数限りなく

      ふれるすべてを傷めるのだろう?

    憎むことなど

     きみに。赦しを、

   なに?この頭上に


   壊れそう?

    ぼくが。ひとりで

   そ、壊しそう?

    口を、眼を覆い

   なの?壊れ

    ひとりで、きみが

   そ、壊れそう?


   ふりそそぎ、ただ

   苦しみ。執拗な

   涌きあがり、まだ

   恥辱たち。鮮明な

ねぇ。もう忘れて。わたしを忘れて。わたしをだけを、記憶から消して

   繁殖すらする

      ね、泣きそう?

    きみに、むしろきみにだけは

     知ってる、と

   蜘蛛たちのように

      必死に、すがりついて

    わたしこそが、…ね?

     そんな気が、あなたに

   増殖してゆく

      ね、叫びそう?

    憐憫を、きみに。きみにだ

     無理なんだよね?もう、さ

   微生物たちのように

顔をあげた。31日。晴れ。ひたすらな、晴れ。香月は教員室から受け持ちの教室に歩みながら、廊下の柱が投げた翳りをそっと踏み顔をあげた。31日。

   じゃ、ね

      なんだったの?

晴れ。ひたすらな、

   わたしは

      きみという

晴れ。香月は

   二度ときみには

      存在

教員室から受け持ちの教室に歩みながら、廊下の柱が投げた翳りをそっと

   ほほ笑みかけなど

      なんだったの?

踏みつ

   い。び、…て。て

   見なかったと同じ

   明晰な強度に

   微光。び、…て


   さようなら。ただ

   かならずしも、なにも

   惜しみはしないが

   さようなら。ただ

にじむ。わたし。の、その。爪。の、うえにも、…は?きみが落としたやわらかな翳りが。にじむ。

   さようなら。ただ

      愛された、かな?

    もしも、上手に、もっと

     涙が。ただ。涙が

   かならずしも、なにも

      もうすこし。ぼくは

    泣いたふり。わたしが

     流れおちるままに、と

   惜しみはしないが。かなら

      上手に、すこしは

    できたなら。あなたのように

     溺れた。わたしは

   さようなら。ただ










Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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