ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi;流波 rūpa -199 //ふ。ふっ。ふみ/ふむ。む。踏ま、ふみ/踏み、かけてふと。…傷み?//03
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
水曜日。だから高明は朝、7時前に目を覚ました。フローリングに直された和室。敷かれたカーペット。ベッドから足をおろし、湿気。感じられた。湿気。なぜ?気のせいに違いなかった。空間。カーテンに覆われた、うす昏い。褪せた気配。しかも色彩は濃いままに。なぜ?うす昏い。すでにカーテンをひき開ける前には高明は耳に知っていた。雨、と。ひびき。雨。7月。その、
冷え切っていた
背筋に
26日。朝から
奇妙に、その
なぜ、いま
雨は一日中
腕に、肌
唐突な違和
降りつづいた。廊下を歩いた。板張り。シャワーを浴びた。髪。濡れたまま、リビングに行った。いまださらされていた。上半身は。いつもの流儀。リビングに入りかけたそこ、サッシュ。一面の広い光源に淡い白濁を見た。ひかり。翳りに、馴れた眼がやがて翳り。ひかりに、いや濃い色彩を窓のむこう、高明は見止めた。知った。目が、ようやく雨と。目そのものが。はじめて高明は、自分がすでに降雨の事実を知っていたことに
…えぐっ
静謐と。そう
…ええっ
気づいた。
…えぐっ
呼んでおき、
息吹く、それら
吐いた。
…ええっ
忘却。迅速な
色彩たちよ
息を。庭。雪の下のそこには紫陽花があった。秋子が増やした植栽だった。むらさき。淡く、だから花々は雨に濡れた。水滴が撥ねた。花がゆれた。…いつも、と、「早起き、」秋子。「…ね?」三十を半ば越えたにすぎない彼女。その声はうるおい、つややいで聞こえた。ひだりななめ後ろ。高明はそのテーブルを返り見た。ダイニング。ひとり窓を背に、秋子。座り、
…えぐっ
さわぎだす、それら
笑んでいた。自分で剥いた
…ええっ
色彩たちよ
林檎。口に運ぶ。秋子はことさらに高明を世話し、高明もよく秋子の世話に狎れていた。実質、高明をそだてたのは秋子だったと言って良い。その背にする窓は昏い。庭の樹木たち。それらが繁りあう葉翳りを投げこんで飽きないのだから。仕切られたキッチンを咥えるLD、そのL字の細くみじかいところ。食卓。あかるい、ひろい、リビングのソファにむしろ高明は背を投げた。座った。見やった。秋子の目が
雫。え?
目舞い。新鮮な
やめて
うるんだ。常時、
いま、唐突に
目舞い。わたしに
傷つけない
条件反射。いとし子へのやや
雫。え?
かげろうのように
わたしは
感情的すぎる執着。たとえ感情が具体性を持たないときでも。なにか言いかけ、高明は「ご飯?」秋子が打ち切った。「できてるよ。高明の大好きな、」
「高子さんは?」
「ママ?」と。秋子。虹彩。綺羅。それが流れたのを高明はただ嫌悪と見た。高子への。無能な母親。頭上。高明の。素通りしてゆく宛てのないまなざしに、高明は
まるで、あなたは
噎せ返りそう
目を細めかけた。その
だれも、いままで
雨。雨。ひびきに
須臾、「そこ」
憎まなかったかに
ぼくだけが、ここで
ささやく。秋子が、「そこ?」
「だから、」
「どこ?」…お庭よ。つぶやいた、聞き取れないほどの
声。を、え?
ひびきあう
…暴力だ
声。高明は
声。が、え?
反響し、しかも
音響は
急ぎ振り向いていた。ねじった頸に、いま、背にした窓。サッシュ。むこうにはたしかに雨。まなざしに、その存在を気配以外にはさらさないほどのやさしい、しかし
雨。を、え?
ひびきやまずに
…辛辣だ
雨。霞む
雨。が、え?
ひびきあう
視覚は
色彩。しかもおなじ色彩の際立ち。そこにうす紫の傘を差した後ろ姿があった。赤裸々。かくしようのない事実として。とっくに、一瞥にその紫は
ふるえ、て
色彩。それらは
見えていたはずだった。
ふるえかけ
あざやかに。いよいよ、いま
知った。
ふるえそうにも
色彩。それらは
高明。秋子の
ふるえ、て
ふかく。より濃く、より、…いま
まざし。その不穏の意味を。「お手入れ。」笑む。「…ほら、でもいま、もう」秋子だけ。「なんで?」断ち切る高明の不用意を、ややあって秋子は頬に、局所的にそっと笑いなおした。「なんでって、」
わたしたちは
微動
ふるえ、て
「この、」
見蕩れた。思わず
微細
こころさえ
「だって、」
知らず知らずに
微震
赦して。ぼくは
「雨の中?」
花。踏みつぶし
微弱
きみが好き
「でも、なんでも。雨でも晴れでも、生きてるものは生きてるんだもん」立ち上がった高明が「…でしょ?」あわいピンクのスウェットのままの高子を見つめ、縛った髪。しきりに右手に、右耳のうしろあたりを気にする挙動。笑いそうになる。高明。高子。母。まだ二十八だった。参観日、すくなくとも三十後半には差し掛かっている他人の母親たちの中で、
孤独だと?…誰もが
その花の
高子はいたましく
誰かが、…孤独だと?
シクラメン。名は
目立っていた。それを、まるで他人の不始末を見つけたように面白がる自分がときに高明は不快だった。サッシュの至近、そして高明は右の、人差し指の甲にガラスを叩く。鳴らす。高子。いちどめ。耳は
振り向いて
失笑
溶けちゃえよ
気づかない。
わたしがあなたを
大気が
灼熱の雨の
笑む。高明は。
見ているうちに
苦笑
その熱に
にどめ。肩。ふいにかたむく肩。気づかない。高子。その挙動に、わずかな不審がある。三度め。殊更におどろいて高子はいきなり振り返ち、…え?
え?いいの?
驚愕。で、さえ
と、どうしようもなく、…え?
え?やめて
雨の雫、さ、え
と、どうしようもない顔で…え?
え?生きて
おののき。で、さえ
と、不器用。あわてて笑みを作った高子をふと憐れんだ。高明のまなざし。そのそと。そこ。見えないそこで、自分の顔は完璧な無表情をさらしていたに違いなかった。目を逸らしかけた。高子の下手な、無理やりの笑みから。やめた。むしろ見つめた。嗜虐、と。あるいは。嗜虐をもてあそぶ陰惨な気配をまなざしは咬んだ。ゆれた。高子。虹彩が。およいだ。赦されなかった。見つめつづけるしかなかった。だから見つめ、笑みのぶさまをさらしつづけた。処罰。思った。そう高明は。ぼくは、
竹たちよ
ささっ
洗い流すよ
と、いま、
香るがいい
ささっ
雨たちが
高明。いたぶっている、
笹たちよ
ざざっ
すすいでしまうよ
と、あなたを。
匂うがいい
ざざっ
削ぐように
微笑。こまやかな雨。傘を透かしたむさらきにあやうく染まりかける高子。耳にはたしかに雨はひびき散らされていたに違いなかった。例外ない四方に。聞く、とおい眼の前のノイズを耳に、高明は、感染。思う。依存。その
竹。…が
抱きしめて
ふたつの言葉。
放った香りに
雨のなかで
高明。見つめる
笹。…が
キスして
目。高子。
窒息を、須臾
濡れたまま
無慚だった。高子は完全に居場所を喪失してしまっていた。…濡れるよ。ささやいた。高明は、しかし声。ガラスを飛び越えるべくもない
竹。…が
壊して
微音。くちびるの
須臾、窒息を
駄目にして
うごきのみに
竹。…が
だいなしになったら
轟音のなか、高子に
放った香りに
殺して。すぐに
謎をかけたにすぎないとは思いつきもしなかった。伸ばしたゆびさきに、高子。ふれた。その窓ガラスを。謂く、
竹。…が
香り、竹
竹。…が
しなり、竹
感じては、いま。感じてはいないのだろう、と。あなたが。気づいた。あなたは、と。あなたも。そこ。その肌。それは、そこ。そこに、肌。飛び散る雨の肌ざわりをさえ
竹。…が
期待を?なにを
香り、竹
わたしに、あなたの
竹。…が
心は、なにを
しなり、竹
竹。…が
香り、竹
竹。…が
しなり、竹
聞こえますか?あ。雨ですよ。いま、あ。雨ですよ。あなたの肌に、あ。雨ですよ。…わかる?
竹。…が
怯えながらにでも
期待を?なにを
残念、だ。ね、ね、
香り、竹
つぶやきなさい。むしろ
わたしに、あなたの
存在。きみの。それそのもの
竹。…が
ひざまづき、つぶ
心は、なにを
残念。だよね、ね?
しなり、竹
聞こえてんの?あ。耳ねぇの。いま、あ。雨ですよ。あんたの肌。に、あ。雨ですよ。…わかりますか?
竹。…が
期待を?なにを
香り、竹
わたしに、あなたは
竹。…が
怯えながらにも
しなり、竹
葉漏れ
不安がりながらも
茎漏れ
わたしに、あなたは
枝漏れ
予期を?なにを
ななめに
ひかり、…が
さわぎ、ぎ
笹。…が
こすれ、れ
その翳り
もしくは
綺羅めきに
あなたは猶も取り残されていた
と。感じては、は。…え?いま、感じてはなやいで感じられたほどに、そこはいないのだろう、と。あなたに竹たちはいまめざましいほどの香りが。気づいた。あなたを、散らした。撒き散らした。あふれかえらせていたとは、と。あなたも。そこ。そのわたしはひとり、むしろ肌。それは、まるで鮮明な屈辱だったかのようにさえもそこ。そこに、肌。飛び感じていたのだった。なぜ?散る雨のただ、もう、ふいの肌ざわりをさえ
ひかり、…が
怖れながらにでも
願いを?なにを?
悲惨、だ、ね。いま
さわぎ、竹
見開くがいい
わたしに、あなたの
雨つぶ。きみ。散、ち
笹。…が
そこに目を。お。のけぞり
心は、なにを?
さらされたまま
こすれ、竹
その翳り
傷みながらにでも
その心。なにを
剥き出しになったまま
もしくは
裂け、…叫びながらにでも
ささげるべきか
雨つぶ。きみだけの周囲に
綺羅めきに
そこ。きみ。覆わずに、顔
知らせもしないで
悲惨、だ。ね?いま
あなたは
感じては、は。…え?いま。感じてはなやいで感じられたほどに、そこ死者たちはいないのだろう、と。あなたに竹たちはいまめざましいほどの香りそれら。無数の死者たちが。気付いた。あなたを、散らした。撒き散らした。あふれかえらせていたと饒舌な、猶も赤裸々な死者たちは、と。あなたも。そこ。そのわたしはひとり、むしろ死者たち。肌。それは、まるで鮮明な屈辱だったかのようにさえもそれら。無数の死者たち。そこ。そこに、肌。飛びか。いか。感じていたのだった。なぜ?饒舌な、猶も死者たち。赤裸々な散る雨のただ、もう、ふいの死者たち。肌ざわりをさえ
ひかり、…が
願いを?なにを?
さわぎ、竹
わたしに、あなたは
笹。…が
怖れながらも
こすれ、竹
その翳り
傷みながらも
もしくは
ささぐべきなにをも
綺羅めきに
知らせもしないで
あなたは
鳴る。笹が
鳴り、枝が
鳴る。笹が
鳴り、茎が
聞こえますか?だれ?声が、聞こだれ?声が、聞こえれ?声が
鳴る。笹が
しなった。わたしは
濡れる。窓ガラス
気づかないでおくね
鳴り、枝が
目を、だから
したたり、散り、撥ね
なにも、だから
鳴る。笹が
逸らしておくね
どこ?濡れたのは、辛辣に、…最も
しなった。頸が
鳴り、その茎が
聞こえますか?だれ?声が、聞こだれ?声が、聞こえれ?声が、聞こ、れ?だ。声が、聞こえだ。れ?声が、聞こえま
鳴る。笹が
まるでひとつのかすかな吐息そのものだったかのように
濡れ、窓ガラス
頸が、そこ
鳴り、枝が
とおりすぎる、一瞬
ここ?そこ?散り、撥ね
もたげられ、ふと
鳴る。笹が
その。顎が
どこ?濡れたのは、最も
のけぞるように
鳴り、その茎が
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