ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi;流波 rūpa -194 //花かんざしに、花/花かんざしの、花。それを/咬もうとし、口蓋//04





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





ここ何日も、と。肌寒い。だれもがそう思っていた筈だった。鎌倉。由比が浜の近くでは、高子。だれもが。壬生高子。しかし、彼女はかならずしもそれが不愉快ではなかった。いまさらの、刺すに似た冷気が。暑がりというわけでもない。皮膚が、と、もう寒暖の好悪など放棄してしまっていたのだろうか。そんな錯覚にも、高子。ときに襲われ、23日。その3月。2003年。自分のうえ。のしかかり、肌に思うまま舌を這わす壬生高明。不器用。触感?肌ざわり?むしろ息づかいが。それをこそ赤裸々に肌は感じつづけていた。くすぐったく、こころもとないだけのたわむれ。後景にすぎない。舌は。その直接の肌ざわりは。しかし猶も、あくまでも鮮明に。なにか、どうしようもなく無慚な鮮度。だいなしにされている感覚。なにが?明晰に。褐色。肌。その、肌。もしもあかるくて、まなざしが色彩を捉えられたなら高明の、夜明け前。褐色。いま、ただ黒い翳りの鈍重なきわだちとして曖昧に、まなざしの下部、ほのめく翳り。最初の、破壊し、破綻をだけむさぼるかに想えた口づけの荒々しさ。それへの驚嘆からはじまって、焦燥する行為のすさんだ荒廃に傷む間中、わたしは、と。いちども眼を、と。閉じなかった、と、高子。すくなくとも自分ではそう思っていた。ひとり、つま先にとどきぞうなほど意識の遠い下のほうで。…もう、と。「いい?もう、」その…いいでしょ?ささやき。もう、と、声。はっきり耳は聞き取りながら、声。口蓋。停滞。アのかたち。ひらかれつづけていたまま、声。痙攣。間歇的で微細なそれ。に、こぼれだすことのなかった、なぜ?声。「もう、」声。「充分、」なぜ?たのしんだじゃない?声。褪せて、褪せゆくままいよいよ軽蔑にちかよる思い。違う、と。しかも、軽蔑は、と、しない。高子。その睫毛。ふるえつづけさせ、似ていた。あの南の島でもそうだった。既視感。それどころかあるいはほんとうに二度目の強姦。高明。彼を身ごもったとき正則は苦悩した。絶望とでもいうしかない奇妙に冴えた茫然に、ひらきなおってしまっている気がした高子よりむしろ。そして生まれてきた子。発育。成長。すくすく。ついに、肌。色彩。あざやかな褐色を見せはじめたとき、正則。彼はもう容赦ない自然さで軽蔑をだけ投げつけた。あるいは屈辱をさえ感じつつ?ミンダナオ?マニラ?忘れた。行く時には記憶していた。慥かに、雅秀に聞かされたその島名を。まちがいない。飛行機でも、空港でもなんどとなく口にし、耳にしたから。しかし帰って来るときには茫然。しずかな、情熱のない恍惚。に、似た、あくまでも稀薄すぎる茫然。しずかな、情熱のな、島の名。そのひびきの輪郭をさえ思い出せない。なん人?あの複数の、灼けた褐色の肌の男たち。かわるがわる、入れ替わり立ち代わり、愛を。赦しを。そして愛着と共感とを、高子。そのときも彼女は彼等のひとつひとつに感じつづけた。息づかい。息吹き。匂い。肌ざわり。声。殴打。拳。唾。ふともも。なかから垂れおちるそれにすらも。意識がきたした所詮混乱と錯誤。その発作的感情にすぎない。そう知る。知っている。もう、すでに愛、赦し、愛着、共感、それらのただなかに冴えていてさえ。淡い懐疑。ならば、懊悩。なに?本当の感情とは、なに?たしかに彼等に親密をこそ感じている事実が感情として事実存在するのをなぜ、感情の虚偽といちいち訂正しなければならないのか。なら、感情に於く事実とは?なに?虚構とは?なに?まばたく。高子。ひとりまばたき、まばたきつづけ、もう、と。いいでしょ?もう、と、高明。その12歳の。もう、彼。とっくに高明が終わってしまっていたことにも気づかず、脱力を、もう、と、「…充分、」弛緩。筋肉の、高子。…じゃない?と、「いい?」もう、「いい?」顎。彼の、まなざしが色彩を捉えられたなら高明の、

   ひかりを。せめて

      ね?…くれたんだ、

夜明け前。

   羞じ知らずなまでに

      ね?きみは、胸いっぱいの

褐色。いま、

   ひかりを。せめて

      ね?…傷みを。せつなく

ただ黒い翳りの鈍重なきわだちとしてのみ曖昧に、下部。まなざしの、そこ。ほのめく。うごめく。息づかう。翳り。最初の、破壊し、破綻をだけむさぼるかに想えた口づけの荒々しさ。それへの

   は、は、は、

      花。ブーゲンビリアの

         翳りにも

驚嘆からはじまって、焦燥する

   は、は、は、

      見た。夢を

         ハイビスカスは

行為のすさんだ荒廃に傷む間中、わたしは、

   は、は、は、

      花。ブーゲビリアの

         あざやかだろう

と。いちども眼を、と。閉じなかった、と、高子。すくなくとも自分ではそう思っていた。ひとり、つま先にとどきぞうなほど意識の遠い下のほうで。…もう、と。「いい?もう、」

   あ、と

      声もなく

その…いいでしょ?もう、

   あ、と

      無言でもな

ささやき。もう、と、声。はっきり耳は聞き取っていながら、声。口蓋。停滞。アのかたち。ひらかれつづけていたまま、声。痙攣。間歇的で微細な

   たわむれていよう

それ。に、

   夜があけるまで

こぼれだすことのなかった、

   たわむれていよう

なぜ?

   夜があけても

声。「もう、」声。「充分、」なぜ?たのしんだじゃない?声。褪せて、褪せゆくままいよいよ軽蔑にちかづく思い。違う、と。しかも、軽蔑は、しない、と。高子。その睫毛。ふるえつづかせ、似ていた。あの南の島でもそうだった。既視感。それどころかあるいはほんとうに二度目の

   教えてよ。せめて

      たわむれていよう

強姦。高明。彼を

   あなたを愛する

      夜があけるまで

身ごもったとき、正則は

   よりより方法を

      たわむれていよう

苦悩した。絶望とでも

   わたしに、そっと

      夜があけても

いうしかない奇妙に冴えた茫然に、ひらきなおってしまっている気がした高子よりむしろ。そして生まれてきた子。発育。成長。すくすく。ついに、肌。色彩。あざやかな褐色を見せはじめたとき、正則たちはもう容赦ない自然さで軽蔑をだけ投げつけた。あるいは、正則だけは孤立して屈辱をさえ感じつつ?ミンダナオ?

   ひかりだよ

マニラ?

   ひかりだよ

忘れた。行く時には記憶していた。慥かに、雅秀に聞かされたその島名を。まちがいない。飛行機でも、空港でもなんどとなく口にし、耳にもしたから。しかし

   ふるえである。花は

      夏。椿さえ

帰って来るときには

   ふるえたのだから

      むらさきの、その

茫然。しずかな、

   ふるえである。花とは

      椿さえ、その

情熱のない

   ふるえる以外に

      かくした棘に

恍惚。に、似た、あくまでも稀薄すぎる茫然。島の名。そのひびきの輪郭をさえ思い出せない。何人?あの複数の、灼けた褐色の肌の男たち。かわるがわる、

   あっ。あ

入れ替わり立ち代わり、

   あっ。あ

愛を。赦しを。そして愛着と共感とを、高子。そのときも彼女は彼等のひとつひとつに感じつづけた。息づかい。息吹き。匂い。肌ざわり。声。殴打。拳。唾。ふともも。なかから

   讃嘆しあおう、この

      おびえてる?

垂れおちる

   世界の美

      こわい?まだ

それ、…白濁。に、

   賛美しつづけよう、この

      おののいて、ふと

さえも。意識がきたした

   世界の可憐

      われを忘れた

所詮混乱と錯誤。その発作的感情にすぎない。そう知る。知っている。もう、すでに愛、赦し、愛着、共感、それらのただなかに冴えていてさえ。淡い懐疑。ならば、…懊悩。なに?本当の感情とは、なに?たしかに彼等に親密をこそ感じている事実が感情として事実存在するのをなぜ、感情の虚偽といちいち訂正しなければならないのか。なら、感情に於く事実とは?虚構とは?なに?まばたく。高子。ひとりまばたき、まばたきつづけ、もう、

   せめて、わたしに

      苦痛。または

         餓えるかに

と。いいでしょ?

   ふりそそぐがいい

      悲惨。あるいは

         求めるかに

もう、と、

   わたしにだけに

      苛烈。ときには

         渇くかに

高明。その

   ふりかかるがいい

      苦悩。しかも

         すがるかに

12歳の。もう。彼。とっくに高明が終わってしまっていたことにも気づかず、脱力。もう、と、「…充分、」弛緩。筋肉の、高子。…じゃない?

   きみのかなしみ

      はっ、は。吐く

と、「いい?」もう、

   ぼくに、くださ

      はっ、は。吐く

「いい?」顎。彼の、押し付けられたそこに高子はささやきつづけた。声。無言のそれで。謂く、

   たとえば、雨

   え?それ。恵みを?

   慈愛。たとえば

   え?それ。雨は

死者たちに。それらもんどりうって、しかももんどりうった死者たちが。が、

   たとえば、雨

      渇いていた。ただ

    ささげよう。きみに

     なにも。焦燥など

   雨。それ

      舌が。唐突に、やや

    きみにも、すべて

     なかったのだ。わたしに

   なにを?たとえば

      猶も、しかも、

    きみにすべてを

     もう、如何なる意味でも

   雨。それ

見ていた。わたしも、その夙夜にも

   たとえば、雨

   え?それ。破壊を?

   冷酷。たとえば

   え?それ。雨は

死者たちに。それらもんきみは、ぼくに、孤独をくれて。どりうって、しかももんどりうった死者たちが。が、

   たとえば、雨

      もはやただ焦げつくかに

    くれてやる。きみに

     なにも。怒りなど

   雨。それ

      喉が。ほら、赤裸々に

    きみにも、すべて

     軽蔑も。憎しみも。嫌悪も。わたしに

   なにを?たとえば

      あえて、しかも、あえ

    すべてをきみに

     もう、自分自身にさえ、も

   雨。それ

見ていた。あなたも、その夙夜にも

   葉は、…花、え?

   花は、…葉、え?

   葉。そして

   または、花。は、

死者たちに。それらもんぼくは、あるいはきみだけを愛してしまおうとその、やわらかな孤独のなかに、どりうって、しかももんどりうった死者たちが。が、

   それらは、そこで

      茎さえも。もう

    なにを、おっ

     を。かたむき、を

   葉は、…花。はっ

      根元から。その

    見ていたのだろう?

     いまや

   花は、…葉。はっ

      倒壊?を、…の、寸前を、とでも?

    なにを、おっ

     おぅ?ぬかるむだけだろう?そこにもその土は。土は

   それら。ら。は、

ください。傷みを、あなの傷みを、ぜんぶ、ことごとく、すべて教えて。わたしに、なにもかも。なにも。いまさらなにを?

   見るべき?なにを

   その雨。雨に

   大量の、まなざし

   かたむいてさえもしてしまいながらも

死者たちに。それらもんいいんだ。好きなように、ぼくを辱めてもどりうって、しかももんどりうった死者たちが。が、

   たとえば、雨

    語らなかったことを

   雨。恵みを?それは

    推察など。…ね、

   慈愛。たとえば

    けっ。お願い。決して

   雨。雨は


   たとえば、雨

    ほのめかさなかったことを

   雨。破壊を?それは

    おもんばかる、など。…ね、

   冷淡。たとえば

    けっ。お願い。決して

   雨。雨は


   葉は、…花

    見られなかったことを

   花は、…葉

    覗き込もうとなど。…ね

   葉。そして

    けっ。お願い。決し

   または、花は


   見るべき?なにを

    ぶち込むがいい

   その雨。雨に

    口蓋に、砂利を。小石を

   大量に。まなざし

    ぶち込むがいい

   かたむいてさえもしてしまいながらも

ふさいで。お願い。口を、鼻孔を、毛孔を、ケツを、あなの傷みに叫びはじめてしまいそうなわたしに、教えて。まだ叫ぶべき、まだわめくべき、なにが?口は、なにを?鼻孔は、なにを?ケツはいまさらに

   なにを?

   な。な。なに?

   なにを?

   な。な。なに?

うつくしい、と。思う。ベッドの上、彼に背を向け突き出した尻。四肢を痙攣させていながら、猶も、彼、…少年。壬生高明は、「ね、だから」うつくしい「…ね?」と。声。聞く。「ち、」声。ななめ「違くない?」背後から「ちがっ」降りそそいでいたから。うつく「ち、おれじゃ、ち、ないから。おまえが、」声。ただ「…さ。お前が欲しがったんじゃん。むしろ」冷静な、その「おれを。むしろ、」声。自分が「おれをやったのが」かつて、胎内に「あんただからね?…どの、」育んでいた、あの「…どのつらさげてんの?」細胞。いまや「ね。いま」それはすでに自分を腕に抱きあげられそうなくらいに「後悔してるっしょ。ちがう?おれ、を、

   微光。…え?

      だいじょうぶ、だよ

お。生んだの。」笑っ「…違う?」た。その

   見な、…え?

      心配ない、よ

声。だから

   微光。…は?

      なでもない、よ

その「いいよ。いっぱい」高明。ひとり

   見えな、…え?

      すてきなままだ、よ









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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