ユキマヒチル、微光 ...for Arkhip Ivanovich Kuindzhi;流波 rūpa -191 //花かんざしに、花/花かんざしの、花。それを/咬もうとし、口蓋//01





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





   見なかった

   見やりさえ

   空は。その

   日。その

   眼。その


   見られなかった

   見やられさえ

   海も。その

   眼。その

   日。その

口さえもない死者さえも。孔。陥没し、だから海はささやいていたのだろう。口さえもない死者さえも。孔。陥没し、死者ら。だから空はささやいていたのだろう。口さえもない死者さえも

   見なかった

      空は。鳥

    まばたいたのだ。そして

     ざわめきを

   見やりさえ

      まだ。夜が

    息を。ふと

     波は。こころは

   見られさえ

      深く、まだ

    そして、まばたい

     もう。海は

   見やられさえ

宮島。厳島神社。その西南にあせび歩道という小路がある。その小路沿い、あくまでもゆるやかな傾斜を昇れば、そのこだかい高台に壬生の別邸があった。もと旅館だった。見晴らしはひらけ、あかるかった。かつて壬生風雅の兄、雅文が住んだ。そこで死んだ。その自死からちょうど15年ばかり、風雅は高子と名づけた娘のため、付き添いの山崎秋子に乞われるまま調えなおした。だから、その2007年。3月。壬生高子はそこに住んでいた。早朝。まだ5時。もうすぐ明けを知るはずの昏い空の下、壬生高子はひとり目を覚ました。灯油を夏の麦茶用のプラスティック・ボトルに入れた。仏壇からライターを持ち出すのを忘れたことに、家を出て数歩、気づいたときには思わずひとりで笑ってしまった。小走りに取りに帰る。顔をあげる。その仏壇よこ。顔。高明。そう、風雅が名づけた少年。その顔。そこに口蓋をひらききり、昏い孔。どうしようもなくふしだらな孔。口蓋。舌からうわくちびるに垂れる、…唾液?あるいは、失禁?孔の昏みのむこうに更なる開口を暗示させて思えた。高子には。確証はない。逸らした。思わず、高子は眼を。笑んだ。しかも、振り捨てられたまなざし。そこに、溶けるに似たその形態の辛辣な崩壊を、壬生高明が猶も見せていたままだったから。ふと、家に住み着いた三毛猫の所在が気になった。雌雄の確信はない。しかし、たぶん雄だと思う。すくなくとも秋子はそう判断した。とまれ、なかなかなつかない。また、子供も生まない。去勢?不在。家の前、歩道に交わる階段道を高子は降りた。降りきり、あるいは、多くの場合にはそこを右に折れる。今日はその沙羅樹院をは訪ねない。北へ。あくまでも資料館の裏の道を直進し、あなごめしを通り過ぎればむこうに海が見える。渡る。石の橋を。左手、清盛神社。用はない。数歩まえ。石燈篭ふたつ。その間。石垣の手前、高子は立ち止まった。息を吸った。吐いた。そして吸い込む。まだ、と。高子。生きている。思った。たしかに、ここに、この肺は。自殺。その言葉。その意味をはじめて明確に知った気がした。自死とはつまり自分殺しなのだ。わたしはわたしのこの肺を殺そうとしている。気づく。いま、と。高子。気づき、匂う。唐突な、潮。そこらじゅうに、潮の。まばたいた。まだ海は引きはじめていなかった。満潮にちかいそれ。一歩、高子は下がった。右のかかとがいまさら、すこしの傷みを。にぶいそれ。海のため、眼の前の海水の新鮮さを思うためだけのせめてもの後退。飛び散って、灯油。海水をすこしでも汚すのならそれは高子に耐えがたかった。しかし、と。高子。汚すのだ。砂をは、と。思う、だから生まれてこなければ良かった。実際、燃えて焼けただれ、もうわずかに考えかけたけで充分に穢すぎる自分の死体。その処理。いったいどれだけの人々が耐えがたい思いをするのだろう?どれだけの不快、どれだけの苦痛、どれだけの、高子。死。自分の。その容赦ない穢さのすさまじさをこころから厭うた。思わず手をあわせた。思いつかなかった。祈るべき対象をは。眼を開けたまま、空虚な、しかし、切実な祈りを、そして高子は冴えた意識のどこかしらに笑ってさえもいた。灯油を被った。揮発しないうちに住んでいた。早朝。まだ5時。もうすぐ明けを知るはずの昏い空の下、壬生高子はひとり

   なぜ?あの

      豪雨。とおくに

目を覚ました。灯油を夏の

   鳥たちは猶も

      夢。見ていたのは

麦茶用の

   猶も、まだ

      豪雨。そんな、

プラスティック・ボトルに

   はばたきはじめるそぶりをすら

      とおくに、夢

入れた。仏壇からライターを

   なぜ?あの

      鳥たち。眠りからさめな

持ち出すのを忘れたことに、家を出て数歩、気づく。笑ってしまった。思わず、ひとりで。小走りに取りに帰った。顔をあげる。その

   おはよう

      醜悪な

仏壇よこ。

   お元気?

      穢らしい

顔。高明。そう、風雅が名づけた少年。その顔。そこ。口蓋をひらききり、昏い孔。どうしようもなくふしだらな孔。口蓋。舌からうわくちびるに垂れる、…唾液?あるいは、

   夢など、いちども

失禁?孔の

   夢など。あなたの

昏みのむこうに

   夢など、いちども

更なる開口を暗示させて思えた。高子には。確証はない。逸らした。思わず、高子は眼を。笑んだ。しかも、振り捨てられたまなざし。そこに、溶けるに似たその形態の辛辣な崩壊を、

   とろけるかに

      崩れた!

         そっと、あなたは

壬生高明が猶も

   とろけだすかに

      影が!

         まばたいて

見せていたままだったから。ふと、気になった。家に住み着いた三毛猫。その所在が。確信はない。しかし、たぶん雄だと思う。すくなくとも秋子はそう判断した。とまれ、なかなか狎れない。また、子供も生まない。去勢?

   豪雨。とおくに

      おびえ、て。おび

不在。家の

   夢。見ていたのは

      おびえていた。猶も

前、歩道に交わる階段道を

   そんな、豪雨

      鳥。鳥たちは

高子は降りた。降りきり、

   とおくに、夢

      眠るままに

あるいは、

   鳥たち。眠りからさめな

      まばたきかけて

多くの場合にはそこを右に折れる。今日はその沙羅樹院をは訪ねない。北へ。あくまでも資料館の裏の道を直進し、あなごめしを通り過ぎれば、むこうに海が

   ひびく

      轟音。あくまでも

         ほら。…猶も

見える。

   ひびく

      ささやかさを擬態し

         ほら。…うつくしい

渡る。石の橋を。左手、清盛神。用はない。数歩まえ。石燈篭ふたつ。その間。石垣の手前、高子は立ち止まった。息を吸った。吐いた。そして吸い込む。まだ、と。高子。生きている。そう思った。たしかに、ここに、この肺は。自殺。その言葉。その意味をはじめて明確に

   夢にさえ。あなたを

知った気がした。自死とは、

   夢にさえ。いちども

つまり自分殺しなのだ。わたしは

   夢にさえ。あなたを

わたしのこの肺を殺そうとしている。気づく。いま、と。高子。気づき。匂う。唐突な、潮。そこらじゅうに、潮の。

   目覚めたまま

      海は

まばたいた。まだ、

   目を

      翳り、かつ

海は

   醒ましきったまま

      綺羅めき

引きはじめていなかった。満潮にちかいそれ。一歩、高子は下がった。右のかかとがいまさら、すこしの傷みを。にぶいそれ。傷み。海のために、その海水の新鮮さを思うためだけに、そのせめてもの

   朝焼けに、海は

      燃えた。鳥たちは

         ないんだ

後退。飛び散って、

   残酷なほどに

      その、羽根をさえ

         おびえも、おそれも

灯油。海水を、すこしでもそこに

   海は、朝焼けに

      燃やした。鳥たちは

         なにも

汚すのならそれは高子に耐えがたかった。しかし、と。高子。汚すのだ。結局は、砂をは、と。思う、だから

   こぼれ落ちよ

      白沙よ

生まれてこなければ

   流れ去れ

      白沙よ

良かった。実際、燃えて焼けただれ、もうわずかに考えかけたけで充分に穢すぎる自分の死体。その処理。いったいどれだけの人々が耐えがたい思いをするのだろう?どれだけの不快、どれだけの苦痛、どれだけの、

   …ねぇ

高子。自分の

   穢い。わたしは

死。容赦ない

   例外なく

穢さのすさまじさをこころから厭うた。思わず手をあわせた。思いつかなかった。祈るべき対象をは。眼を開けたまま、

   濡らすだろうか。やがて

      燃えるがいい。鳥たち

         空に

空虚な、しかし、

   容赦なく、…いつ?

      羽根たち。またその

         延焼し

切実な祈りを、そして

   無慈悲なまでに

      色彩は、燃え

         空に

高子は冴えた意識のどこかしらに

   豪雨は。濡ら

      燃えるがいい。鳥たち

         拡がり

笑ってさえもいた。灯油を被った。揮発しないうちに、高子はライターを点火した。謂く、

   燃える、と

   ほら。それ

   いま、皮膚を

   燃やす、と

死者たちは、いまいきいきとゆがむ。だから

   燃える、と

      叫び声を

    感じるん、だ

     ほら、もうすぐ

   見ていた。それを

      あげないでいるの?さけっ

    まだ、傷みを

     夜があけるので

   いま、皮膚を

      あ。あ。られないでいたの?さけっ

    あきらか、に

     蟹たちは、いま

   燃やす、と

炎です。それは。ひとびとが、ひとびとの、それら、口と口々に炎です。それは。ひとびとが、ひとびとの、それら、口と口々に炎と名づけて、炎です。それは。ひとびとが、ひ

   燃える、と

   ほら。それ

   いま、肉を

   燃える、と

死者たちは、ささ。いまいきいきと、ささ。ゆがささ。む。だからささやき声を、聞いていた。…だれ?

   燃える、と

      絶叫を

    のけぞれるん、だ。ま

     ほら、すみやかに

   見ていた。それが

      気が。聞いた気が、

    まだ、背骨。そして

     走りぬけたのだ。ななめに

   いま、肉が

      それとも、なにも

    て、筋肉を燃やす

     蟹たち。ふたつ

   燃える、と

炎です。それは。ひとびとが、ひとびとの、そ傷み。ふいに唐突な、傷み。れら、口と口々に炎です。それは。ひ傷み。ふいに鮮明な、傷み。とびとが、ひとびとの、それら、口と口々に炎と名づ傷み。ふいに圧倒的な、傷み。けて、炎です。それは。ひとびとが、ひ

   しない。燃やしは、と

   ほら。それ

   骨をまでも

   ついに、わたしは

死者たち。わ。わ。ささ。い。もう、充分聞こえすぎているのだから、…ね?

   燃える、と

      何日も。もう

    ゆがむのだった。ほら

     空を。晴れきった

   見てい、…見?それを

      見なかった。島に

    めざましいほどに

     空を、島に。見な

   いま、皮膚を

      降る、雨を

    ゆがむのだった。ほら

     も。何日、も、もう

   燃やす、と


   燃える、と

      何日も、もう

    ゆがむのだった。ほら

     晴れ間さえ、わず

   見てい、…見?それを

      感じなど。雨の

    あざといくらいに

     わずかの。垣間見られも

   いま、肉を

      気配を、さえも

    ゆがむのだった。ほら

     もう。何日も、も。

   燃やす、と


   燃えはしない、と

      ら。わたしも、だか、ら

    ゆがむのだった。ほら

     餓えていたのに

   知っ…そう?それは

      も。樹木、も。砂、も

    恥ずかしいほどに

     ひかりに。そしてその

   骨までをは

      に。渇いて、いた、のに

    ゆがむのだった。ほら

     乾燥に。なにもかもが

   ついに、わ

炎です。そもう傷みさえ感じられない。もうれは。ひとびとが、ひとびとの、そ傷み。ふいに唐突な、傷み。れら、口と口々に炎でもう傷みなどわずかにさえ感じられ、れ。もうす。それは。ひ傷み。ふいに鮮明な、傷み。とびとが、ひもう傷みなどわたしにはいまわずかにさえ感じら、ら、…え?もうとびとの、それら、口と口々に炎と名づ傷み。ふいに圧倒的な、傷み。けて、炎です。そもう傷みなどわた、…は?れは。ひとびとが、ひ

   見て。焼け残る

   肉体は、…消滅?

   いや。猶も

   残存を、猶も


   見て。焼け残る

   肉体は、…変質?

   いや。いまも

   破壊を、猶も

とはいえど、え?大丈夫。燃え滓が、え?たぶん蘇生しえ?て、二股にわれた触手とえ?枝の荘厳を上空にえ?突き刺すだろうかえ?ら。

   いや。猶も

      いま。死者たちが、いま

    ささやきあ、

     しない。のたうちまわりは、

   残存、を

      のけぞり、そして

    ひびきあ、あ、

     しない。むしろただ

   いや。いまも

      ころんだ。ぶざまに

    ざわめきあ、あ、

     しな、しずか、…な?硬直?

   破壊、を

だから発作的な痙攣、を。生きてる?だから発作的な

   炎が。なに?

   違いは?破壊と

   変質との、な

   炎が。なに?

と、思わず絶句したに近い須臾にも死者たちは

   見る。焼け残る

    ささ。や。やきや

   肉体は、…消滅?

    え?ささやきあって

   いや。猶も

    きやや。さ。さきや

   残存を、猶も


   見る。焼け残る

    ひびき。いきっ。き

   肉体は、…変質?

    え?ひびきあって

   いや。いまも

    きいあっ。きっ。ひぃっ

   破壊を、いまも


   炎が。なに?

    ざわっ。ば。ばばざっ

   違いは?…破壊

    え?ざわめきあって

   と、変質と、…なに?

    ずぁっ。あっ。あ。ずあっ

   違いは?な、

だから発作的な痙攣、を。いっ。だから発作的な

   昏い空にも

   昏い海にも

   映えているのを

   見てい、ゆ。…ゆがむ

と、だれ?死んだのは。いまだったんだ。った。死という事象。その正確な定義もな、な、ったんだ。った。いままさに死者たちは語り、生とは?しかもそのったんだ。った。尊厳とは?などと、と、

   黙れ!

だれ?死んだのは。いま

   黙れ!

だったんだ。った。死という事象。その正確な定義もないまったんだ。った。まさに死者たちは語り、生とは?しったんだ。った。かもその尊厳とは?などと、と、だれったんだ。った。死んだのは。いまだ

   昏い空にも

      も。吸い込まれそうに、

    口蓋に、いま

     飲み込まれたの?

   昏い海にも

      も。空は、しかし

    ひらかれた、…歯。と、歯。隙間にも

     すでにして海。海が

   昏い眼たちにも

      も。吸い込ま

    炎を、咥えた。その

     み。飲み込まれたの?

   昏い口蓋にも


   炎さえ。も

   ゆがみ、ゆがみを

   なにも、…かも?いま

   炎さえ。も

その

   まぼ

3月。その

   まぼっ

23日。だから金曜日。やがてそれら生きた肌は春の本格的な到来を知った。夕方、雲を大量に散らした空に、あるいは明日のひさしぶりの

   まぼろし?

      まさか

降雨を、いまはまだ

   そこに。明瞭に

      馬鹿な。そんな

予感としてのみ

   まぼろし?

      まさか

知った気がし

   い。び、…て。て

   見なかったと同じ

   明晰な強度に

   微光。び、…て


   ん。まぼろし?

   そんな。まさか

   たしか、見たから

   そこに。たしか


   ん。まぼろし?

   そうであったら

   たしか、見たから

   この眼。たしか

背けないでください、と。眼を。死者たち。その空洞。陥没。猶も背けないでください、と。眼を。死者たち。そ

   まぼろ、え?

      ええ。覚えている。その

    見た。かたく眼を

     ね?指先は

   そんな。な、まさか

      色彩。羽根の、…ね?

    閉じていて、さえ。も、

     あたたか、…ね?舐めあげたかうに

   まぼろ、え?

      ええ。…色彩。ね、

    見えていたから。見え

     知っていた。その

   そん、…は?な。な、









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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