青空に、薔薇 ...for Jeanne Hébuterne;流波 rūpa -171 //爪に蛇/夢に黴/花が散り/雨。そこに//01





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





12月、その13日に、目覚めた朝の清雪は胸さわぎをおぼえた。須臾、根拠がなく想えた。だからまず、不穏をふと、咬んだ。すぐさまに、飛散した。胸さわぎのふかい葛藤が、見られていた夢のせいだったと気づいたから。夢に、全裸の敦子が色つきの水に溺れかけていた。水は極彩色だった。と、そしてその色彩がどこにも目につかないこともすでに、そのまなざしは知っていた。敦子の肉体は、だから無防備だった。赤裸々に、それはただ一度、清雪が抱いたそれを思わせた。錯覚だった。自覚されていた。あの秩父宮の末裔という男との縁談の、その結婚の成立が鼻先にせまったころにぶち壊した、夜。昏く、あくまでも昏い夜に、三十をとっくにこえた肌はほのかなきめの細かさをだけ、肌に明かした。青く、濃く、気配と肌ざわりいがいに、見られた風景はなにもなかった。とまれ直立して、敦子は水の無際限な広がりのそこ、腰まで満たされてただ、大口をひろげた。それ以外、挙動はきれいになにもない。両手はまっすぐ下におろされ、腰の彎曲に馴れて添うた。いびつなほどに、克明に。叫び?と。清雪は思った。まさか、と。しかもすぐに思いなおす。もう、叫ぶべきこころさえ水に咬みちぎられてくずれていってしまっていたのに。と、目覚め。あるいは。昏睡。とまれ、それ以上の記憶をもたなかった。かたわら、藤の眠る肩を清雪はゆすった。謂く、

   夢。ゆ。夢を

      ささやくように。そして

    そ、そ。そそぐ

     半液体状の、それを

   おなじき時が

      耳に、硫黄を

    な、そんな、ふう、ふっ。に

     網膜に、胃液を

   べつに見せていた

      とろけた、それを

    そそぐ、ぐ。ぐ

     かきまぜるように。そして

   夢。ゆ。夢を


   血をなすり

   なすりつけ

   その、だれ?

   血をなすり


   顔。たくましい

      ざっけん。ざ、ざ、

    知ってる、ぜ。おれ

     傷みってものを

   顔の直立しかけ

      ふざっけん、ざ。ざ

    振り返ったら

     共有し合える、とか

   ななめにそむけ

      ざっけん。ざ、ざ

    また、あるんだろ?

     そんな、たいぜでゅばぶーでぃんぼ

   顔。その顔に


   血をなすり

   それ、だれ?

   なすりつけ

   血をなすり


   雨だったんだ

   だから、どしゃぶりの

   雨のなか、顔も

   巨大だったんだ


   水滴、ら。飛沫

      もはや、それらは

    かがや、き、すぎ、ぎ

     あった。で、乱反、しゃっ

   飛び、飛んで散る

      鋭利な閃光の

    ぎだね。ね、ね、ねって

     光。の、閃。鋭利

   撥ね、撥ねて舞う

      氾濫であった

    ぎぎす、す、すや、がか

     な。れらそ。はっ。やもは

   水滴、ら。飛沫


   厖大だったんだ

   雨のなか、顔も

   だから、どしゃぶりの

   雨だったんだ


   あれ、だれ?

    てめぇ両耳

   だれ?の、血?

    さらしてんじゃね

   きみ?の、血?

    えーぞこら

   だれ?あれ


   あれ、だれ?

   だれ?の、血?

   かれ?の、血?

   だれ?あれ

謂く、

   あれ、だれ?

      つぶすんじゃねっ。お

    雜然としたこころに

     じゃね?マンボ

   だれ?あれ

      れおのおかを

    うるおいを、いま

     じゃね?ルンバ

   だれ?あれ

      ぶっすんねじゃっ。お

    くれたんだっ…ね?

     ぶっ。ボンバ

   あれ、だれ?


   あれ、だれ?

   だれ?の、血?

   ぼく?の、血?

   だれ?あれ


   あれ、だれ?

    えーぞこら

   だれ?の、ぼくが

    さらしてんじゃね

   きみ?に、くれた

    てめぇ両耳

   血?あれ


   夢。ゆ。夢を

     かきまぜるように。そして

    そ、そ。そそぐ

      とろけた、それを

   べつに見せていた

     胃液に、網膜を

    な、そんな、ふう、ふっ。に

      硫黄に、耳を

   おなじき俺が

     半液体状の、それを

    そそぐ、ぐ。ぐ

      ささやくように。そして

   夢。ゆ。夢を









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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