青空に、薔薇 ...for Jeanne Hébuterne;流波 rūpa -166 //雨を。つぶを/水滴を/つぶす。ゆびさきに/爪。そこ。ふいに//04
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
藤を連れてリビングに帰ったときに、風雅とその兄、息子の姿はなかった。居残った正則が、さっきまで雅秀のいた場所に座り込んでいた。前かがみに、膝に肱をついて。かたわら、楓は立った。瑞穂は入れ違いに、自室に戻った。すれ違い、清雪に明るい声をたてながら。まるで雪の下の息子を模倣したかにななめまえに、楓は、しかしサッシュの庭をは見ない。清雪は、正則に声を「雪の下、」かけた。「帰った?」
「墓地」正則が答え、思わず「…墓地?」清雪は笑う。「だれの?まさか、」
「青山。大親父の」のけぞって、背をもたれた正則を見た。「あせってるのさ。あれで、意外に」正則。「雪の下?」
「…からも、追い出されるかもしれない。…親父と、ほら。あれでしょ?」
「でも、一緒に、青山霊園?」
「見たいってさ。墓地の予定地。…雪の下から、麻布くんだりまで出てきたついでに」聞いた。清雪は、敦子から。雅秀は一時、そもそもの壬生の本拠地たる安芸の宮島周辺で、当時のいわゆる企業舎弟として立ちまわっていた。秀則はすでに見放した。見放された雅秀を、壬生の本部に呼び戻したのは風雅だった。しかも、まともに言葉さえかわさない仲だった。同席すれば、周囲は文字通り腫れものから手をひいて、とおまきに不穏がるしかなかった。…最低限、と、「媚び、いまさらうっときたいんじゃない?」
「親父に?」
「息子が…ひろむ、だっけ?あれが、もうすぐ大学を出る…」連れられていた、二十代半ばに見えた青年。年を取ってからつくったほうの、いわば嫡子だった。あるいは、彼だけは壬生の本筋に組み込ませたい意図があるのかもしれない。清雪は察しないでもない。「揉めるよ」正則は、ふと「やりそうによっては」嘆息した。謂く、
咎めるように
なぜ?あなたは
見ていたの、かな?
夫を、そこに
いたぶるように
なぜ?あなたは
見おろしたの、かな?
夫を、そこに
謂く、
咎めるように
ばればれだ、から、ね?
知ってる。ぼくは
背後に、ふと
なぜ?あなたは
あけすけで
猶も、あなたが
きみが、背伸びしたのを
いたぶるように
もはや、すけすけすぎて
執着を、彼に
ぼくは気付いた
なぜ?あなたは
糾弾を、しかも
彼のまなざしの
ふれない外の
孤立のなかで
弾劾を、しかも
彼が、気配にも
さとらない外の
孤立のなかで
あまりの至近に
よりそう距離に
ほほ笑みかけた
口もとのままに
謂く、
糾弾を、しかも
嘲笑を。思わず
やめろ。もう
あたためあおうよ
弾劾を、しかも
ぼくは。そして素直な
傷つけあうのは
やさしい、ふりを
ほほ笑みかけた
ふいの憐憫
もう、わずかに傷つく無傷もないだろ?
まだ、できるふりして
口もとのままに
さいなむように
なぜ?あなたは
見つめたの、かな?
夫を、そこに
あざけるように
なぜ?あなたは
見つづけたの、かな?
夫を、そこに
謂く、
さいなむように
かくさないで、ね?
わかってる。ぼくは
背後に、ふと
なぜ?あなたは
あなたには、ない
猶も、あなたが
きみが、深呼吸を
あざけるように
能力は、ただ、莫迦すぎて
焦燥を、日々に
過呼吸?気付いた
なぜ?あなたは
猶も、日射しは
やや翳りを知り
ふれた。ぼくらに
いぶかせ、色彩
謂く、
猶も、日射しは
轟音、だろう、ね?
さらさらさらさら
窓のむこうで
やや翳りを知り
うすばかげろうが生存してたら
庭、で。樹木、が
突然の、バーベキュー
ふれた。ぼくらに
豪雨みないな
らさらさらさらさ
とか?ど、どう?ど
いぶかせ、色彩
中傷を、しかも
彼のまなざしを
見つめない外の
孤立のなかで
誹謗を、しかも
彼を、わずかにも
直視しない外
孤立のなかで
あまりの至近に
したしい距離に
ほほ笑みかけた
ふるえのままに
謂く、
中傷を、しかも
不快を。思わず
やめろ。もう
あたためあおうよ
誹謗を、しかも
吐きそうな。猶も、ね。素直な
傷めつけあうのは
こころある、ふりを
ほほ笑みかけた
ふいの共感
もう、というか、お腹、すきません?
まだ、できるふりして
ふるえのままに
猶も、日射しは
やや翳りを知り
ふれた。ぼくらに
いぶかせ、色彩
謂く、
猶も、日射しは
すさまじい、だろう、ね?
さらさらさらさら
ぼくたちだけで
やや翳りを知り
うすばかげろうが残存してたら
庭、で。葉。葉ゞ
ふいの、…なに?
ふれた。ぼくらに
洪水状態?
らさらさらさらさ
とか?ど、どう?ど
いぶかせ、色彩
なんどでも、ぼくは
眼を逸らしている
くりかえし、ぼくは
ちら見しておく
帰るとも、帰らないとも言いださないうち、清雪がふと背後の藤を返り見かければ、「敦子、取り乱さなかった?」
「この子?」問う正則に、清雪はささやく。まなざしは、ふと、楓を見やった。表情の、あえておだやかな顔に、ただ不穏ないぶきを清雪は見た。「…敦子ママは、」
「云ったんだろ?」
「なに?」
「どうせ、ぼく、彼女ができたとか、できないとか」
「見せた」
「見せた?いつ」
「…か、忘れたけど、——いつだっけ?」ふいに問われて、藤はふたたび顔をあげた。後ろから、刃もので脅されたかの不用意な俊敏を以て。笑む。清雪は、「たしか、」藤に。「二、三ヶ月まえ、だろ?」正則。懐疑が、不安に似て、清雪の耳の奧にきざした。「どうして?」…聞いたんだろ?思う。清雪は、…ママに。と。正則は声を立てて笑った。かの顔に、まるではじめて見るにも想えた素直な笑顔に、清雪はまどうた。「なんで?」
「あいつ、…いや。いま、お前が連れこんで、ようやく思いあたったっていう、それだけなんだけど、」
「なに?」
「変わったよ。あいつは。だから、」
「老け込んだ、とか?」
「逢ってないの?」声を、正則が昏く落とした。そして、上目にようやく清雪を「…不思議だったんだ」直視した。「おれは、あやしんでた。ひとりで。なんで?って。…いきなり、あいつ」
「変なことは、まだ、してないよね?」
「きれいになった」じぶんを見上げている藤に気づき、清雪はそして楓に目線をながした。楓はなんら、気配を変えない。やさしい。ここに存在しないように、あるいは、排除されてる事を容認しているかのように。だから、そのやさしさに如何なる根拠も見えなかった。もしくは、と、清雪は思う、おれたちがただ、排除されたのだ。…きれい?その、喉にしぼられた自分の声の思い詰めた昏さに、清雪は耳を疑った。「…というか、若くなった、というか。いままで老け込んでたとか、そんなこと言ってるんじゃくて、さ。…だから、妹。しょせん妹にすぎないわけなんだけど、兄貴のおれが見ても、あれ?って。そんな感じ。びっくりするくらい、あかるくなったよ。二度見するくらい…だから、こいつにもこんな顔、…笑い顔、とか?そういう、こういうの、あったんだな、と、ね?」
「消えるまえの、」…違う。おれが言いたいのは「ろうそく。的、な?」そうじゃない。清雪は、たしかにむしろ、自分が敦子のしあわせを願ってさえいた事実に、そこに気づいた。舌が、閉じかけた口蓋のうえのほうを舐めた。ふいに、楓が鼻に笑った。すでに、楓は返り見ていた。清雪を。だから、清雪は目を逸らした。やや、目を細めたあとで。「あいかわらず、だ」正則。「敦子のいとしの清くんは。…容赦ない」立ち上がりながら、「でも、頼むぜ」と、「高子の餓鬼みたいな、めんどくさい目、この期に及んで見せないで。な?」軽蔑のように、自嘲のように、なにをという正体をさらさないあざけりが一瞬だけ口もとに散って、唐突にはじけたのを清雪は見た。謂く、
ふと、思う
きみを、なにも
なつかしさも
なにもなくにも
謂く、
ふと、思う
信じて、よ。ね?
見たくない。きみを
ない。ぼくには
きみを、なにも
しん、しん、しん
歎き、かなしむ
他人の不幸を
なつかしさも
死んじゃえよ。ね?
きみを、一秒でも
願ったことなど
なにもなくにも
まるでだれにも
記憶をなにも
もたないかにも
きみにせつなく笑えるだろう
ふと、思う
きみは、いまも
苛立ちも
なにもなくにも
謂く、
ふと、思う
死んじゃえよ。ね?
見たくない。きみを
知ってた?ぼくたちは
きみは、いまも
しん、しん、しん
自虐し、カミソリを見る
幸せになるために生まれたんだよって
苛立ちも
信じて、よ。ね?
きみを、一度でも
きみが、云ったね
なにもなくにも
まるできみにも
記憶をなにも
もたないかにも
だれにもせつなく笑えただろう
あるいはだれかと
ほほ笑みあって
未来と過去でも
語りあってみて
そして唐突に
咬むのだろうか?
いつも、わたしに
見せていたように
謂く、
あるいはだれかと
なぜだろう?ぼくは
あ、は、は、は、は
あかるい、日
ほほ笑みあって
ひとりで、ふいに
声。に、わらっているよ
ひ、ひ、ひ
そして唐突に
軽蔑を感じた
は、は、は、は、あ
日射し、さえ、あか
咬むのだろうか?
ときに、わたしに
さらしたように
咬むのだろうか?
かさつききらない
したくちびるの
ひめた、あやうい
粘膜を、ふと
きみは、歯に
謂く、
咬むのだろうか?
破壊衝動?ぼくは
あ、は、は、は、は
まばたくほどに
かさつききらない
ひとりで、じぶんの
声。に、わらっているよ
ひ、ひ、ひ
粘膜を、ふと
鎖骨にふれた
は、は、は、は、あ
叩きつけちゃえよ。ふいの歴史的集中豪雨で
きみは、歯に
唾液が、ね?
そっと、痛み。ね?
ありえない、傷み
感じて、ね?
あくまでも、ななめ
すれすれ。背後に
息を、吐き
なにを?なに?
謂く、
ななめ。…に
知ってる?おまえ
いた、の?まだ
じゃっかん、ぶれて、さ
すれすれ。…に
ななめ62度の角度で
生きてた?の。まだ
やや、やや、かすんで
息を、…ん
結構かわいい
いた、の?まだ
ほぼほぼ、バグって
なに?な
きみは、ひとり
ときに、きみは
まるで、もう
唐突。激烈に
徒刑囚、とか?
まばたくん、だ、から
そんな、感じ、かな?
きみは、ひとり
なぜ?きみは
まるで、そこ
そして、強烈な
夾雑物、とか?
まばたきに、むしろ
そんな、感じ、かな?
きみは、ひとり
じぶんでびっくりした的な
まるで、猶
眼。眼に
外国人、とか?
きょとん、と。と、須臾
そんな、感じ、かな?
きみは、ひとり
きょとん、と。と、で
まるで、ふと
無防備に、ふと
不可触賤民、とか?
いちど、まばたく。深く
そんな、感じ、かな?
謂く、
徒刑囚、とか?
けものに似せて
落ちる。ぼくは
ひざまづけ
夾雑物、とか?
吼えてみせなよ
あかる日射しに
ケツまくれ
外国人、とか?
遠吠えじみて
落ちる。ぼくは
かかとを舐めろ
不可触賤民、とか?
きみが、ひとり
被差別をさらす
そのあどけなさに
不遜をきざす
きみが、ひとり
不遜をさらす
その傲慢に
強さを見せる
謂く、
きみが、ひとり
破壊衝動?ぼくは
ふ、あ、あ、あ、あ
うつむきかけて
被差別をさらす
ひとりで、じぶんの
声。に、わらいかけたりしかけて
いっ、いっ、いっ
その傲慢に
体毛でも、ただ、むしってようか?
あ、あ、あ、あ、ふ
かたむきかけて、ふいにその顎を突き上げないで
強さを見せる
きみひとりだけが
強く、だれよりも
力強く、もう
ぼくたちはきみに加虐するだろう
きみにリンチをくわえるだろう
さ、さ、さ
しゃぶれよ。さ
口の中に
きみに暴行を与えるだろう
骨。つぶす。骨
おめぇのちぎれた
異物混入、さ
きみを制裁に叫ばせるだろう
さ、さ、さ
足首、しゃぶれよ
かつ、頭部くるんでねじまげしかも
きみの鼻先に突きつけるだろう
これが、地獄。…さ
これが、きみ、…さ
きみが咥える阿鼻叫喚、さ
これが、そう、…さ、と
唾液が、ね?
そっと、痛み。ね?
ありえない、傷み
感じて、ね?
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