青空に、薔薇 ...for Jeanne Hébuterne;流波 rūpa -163 //雨を。つぶを/水滴を/つぶす。ゆびさきに/爪。そこ。ふいに//01





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





やがて八月は、その半分以上を雲に翳らせ、雨に濡らした。まだ一週間近く八月をのこして、日々は九月の終わりじみた。そのままようやくたどりついた九月は、あいかわらず翳り、濡れた。そんな頃、六月の、青たんの夜以降も、藤の無許可の外出はつづいた。ただしそれ以外、藤は清雪に同行した。清雪も、ハオ・ランを訪れるにもネオルネッサンスの事務所の顔を出すにも、藤を同行させて迷わなかった。いつか、藤は不穏な恋人として見なされ始めた自分を知った。敦子には連絡もいれないまま日々が過ぎ、自己生成ソフトは一度深刻な殲滅状態をさらし、清雪は領土限界または個数的限界のない実質無限の3D化に躍起になり、色彩の点はひたすらな増殖をかさねた。次は、時間論的方向の自由を与えるつもりだった。つまり、いわゆる過去時間への生成可能。領域は文字通り、しかも任意の仮定的な実質マルチヴァース化せざるを得ないので、もちろん観測された色点としてはいかにしても可視化できなくなる。闘争状態を以て、相互に干渉しあう以上、事象そのものがいわば原子雲化しているからだ。厖大なデータの数値上にあらわれるそれら事象の厖大を、たとえばAI管理においてあくまで比喩として図形化、色彩化させればいい。人の眼は事象の比喩的残像を見る。もちろん、事象そのものはだれにも共有され得ない。ソクラテス、と、清雪はそのプランに名づけた。そして藤に、これが、と、「…アート。もう、モナリザもレオナルドも死ぬべきだ」笑んだ。9日。朝から雨が降った。もはや、肌寒かった。八月の終わりには、藤に冬着を用意してやっていた。藤はさむがりだった。正則から、連絡があった。Lineに、来い、と、≪大親父が、もう、やばい≫清雪はそのフォントを見、そして藤を見、あわててうかべた笑顔を見、そして、笑いかけた。謂く、

   つくる。顔

   顔を。…め、に

   用意。顔

   顔を。…た、め


   ために。死にかけの

   男。そのために

   め、に。眼に

   眼にも。迷っていた

謂く、

   つくる。顔

      どのつらさげて

    ささやかれるのだろうか?

     怯える。花

   顔を。…め、に

      あなたはいまさら死んでいけるのだろう?

    猶も、偉大な

     屍のために

   ために。死にかけの

      どのつらさげて

    偉大すぎた男だったと?

     咲かされた、花々

   男。そのために


   いかなる顔

   顔を、…め、に

   逡巡。顔

   顔を。…た、め


   ために。見送りの

   ひとびと。の、ために

   め、に。眼に

   眼にも。悩んでいた

謂く、

   いかなる顔

      どのつらさげて

    つぶやかれるのだろうか?

     傷む。花

   顔を。…め、に

      あなたはいまさら弔われるのだろう?

    猶も、恥知らずな

     じぶんのために

   ために。見送りの

      どのつらさげて

    恥じも知らなかった男だったと?

     裂かれるべき、花々

   ひとびと。の、ために


   さらす。顔

   顔を。…め、に

   懊悩。顔

   顔を。…た、め


   ために。弔いの

   わたし。そのために

   め、に。眼に

   眼にも。あがいていた

謂く、

   さらす。顔

      どのつらさげて

    安堵されるのだろうか?

     泣き叫ぶ。花

   顔を。…め、に

      あなたはいまさら埋葬されるのだろう?

    猶も、困難な

     他人のために

   ために。弔いの

      どのつらさげて

    迷惑きわまる男だったと?

     燃やされる、花々

   わたし。そのために


   肉体は。たぶん

   寝台に。破綻

   すでに、細胞は

   燃えた。苦悶

謂く、

   肉体は。たぶん

      望んでは、いない

    どの花?な、な

     最後のきみが苛酷であれとは

   寝台に。破綻

      それでも、猶も

    ぶった斬ろうか?

     ぼくは、不思議と

   すでに、細胞は

      きみの最後が悲惨であれとは

    どの、の、の、花

     望まなかった

   燃えた。苦悶


   まどう。顔

   顔を。…め、に

   不在。顔

   顔を。…た、め


   ために。最後の

   対面。の、ために

   め、に。眼に

   眼にも。倦んでいた

謂く、

   まどう。顔

      流れよ。もう

    だいじょうぶ。ぼくだけは

     埋没させ、そして

   顔を。…め、に

      流れ落ちるまま

    きみに噓の

     溺死させてしまえるくらいに

   ために。最後の

      流れよ。もう

    涙をあげよう

     見事に、ぼくは

   対面。の、ために


   さがす。顔

   顔を。…め、に

   目舞い。顔

   顔を。…た、め


   ために。足早の

   男。その死のために

   め、に。眼に

   眼にも。求めてさえいた

謂く、

   さがす。顔

      救われよ。もう

    だいじょうぶ。ぼくだけは

     蘇生させ、そして

   顔を。…め、に

      苦悩など、滅びを

    きみに噓の

     ふたたび苦闘をはじめるくらいに

   ために。足早の

      救われよ。もう

    祈りをあげよう

     辛辣に、ぼくは

   死。の、ために


   肉体は。たぶん

   寝台に。破綻

   すでに、細胞は

   燃えた。苦悶に

謂く、

   肉体は。たぶん

      望んでは、いない

    どの花?な、な

     来世のきみが線虫であれとは

   寝台に。破綻

      それでも、猶も

    屠ってやろうか?

     ぼくは、不思議と

   すでに、細胞は

      きみの来世が地獄であれとは

    どの、の、の、花

     望まなかった

   燃えた。苦悶に


   もう、ゆがめてさえいないのだろう

   顔を。…め、に

   直面。顔

   顔を。…た、め


   ために。迫った死。その

   男。そのために

   め、に。眼に

   眼にも。忘我を、ただ

謂く、

   もう、ゆがめてさえいないのだろう

      永遠を、きみに

    知ってる?きみは

     だいじょうぶ。なにも

   顔を。…め、に

      また、目覚めるんじゃない?

    死なないとおもう

     なにもこわくないんだ

   ために。迫った死。その

      きみを、永遠に

    死ねないとおもう

     心配ないんだ

   男。そのために


   恍惚。その

   尽きた、先。顔

   茫然。その

   果てた、先。顔

謂く、

   恍惚。その

      永遠を、きみに

    こと切れるたびに

     鳥たちの、その

   尽きた、先。顔

      また、絶叫するじゃない?

    あの、プロメテウスの神話のように

     燃える嘴が

   茫然。その

      きみを、永遠に

    黄泉返ればいい

     ふさわしいだろう、…ね?

   果てた、先。顔


   見せつける。顔

   顔を。…め、に

   彼等。顔

   顔を。…た、め


   ために。見送りの

   ひとびと。の、ために

   め、に。眼に

   眼にも。欠損を、ただ

謂く、

   見せつける。顔

      永遠を、きみに

    黄泉返れ!そして

     絶やさないから

   顔を。…め、に

      まだ、滅びなんかじゃない

    まばたき、なんども

     ぼくたちは、きみに

   ために。見送りの

      きみを、永遠に

    黄泉返れ!猶も

     あえて、ほほ笑みを

   ひとびと。の、ために


   知性。その

   尽きた、先。顔

   意識。その

   果てた、先。顔

謂く、

   知性。その

      永遠を、きみに

    黄泉返れ!そして

     つつみこむから

   尽きた、先。顔

      もう、気絶させさえしない

    のけぞり、なんども

     ぼくたちは、きみを

   意識。その

      きみを、永遠に

    黄泉返れ!猶も

     あえて、ほほ笑みで

   果てた、先。顔


   あなたは、いま

   どこにいますか?

   ぼくに、顔は

   準備できますか?







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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