青空に、薔薇 ...for Jeanne Hébuterne;流波 rūpa -162 //その、唐突な/まなざし。そっと/猶も、ふいうち/まばたきあえば//14





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





敦子を残して、部屋を出た。なにも話さなかった。大気は、それでも沈鬱ではなかった。むしろ、あかるいまま、あさく色褪せて見えた。「ああいう、年増、好き?」藤が、代々木五丁目の閑静な道を先導しながら、言った。藤は、そのくせこのあたりの土地勘などない。だから「彼女は、」と、「…あのひとは、」角にさしかかるたびに振り向き「おれが、好きだった。おれのことが、」清雪を「わかる?…ね、すくなくとも、」

「オッ、ケー…」ふと、「いいよ」邪気もなく、ただ無造作に「赦してあげよう。清雪を。だから」藤は笑って、そこに「いますぐ」立ち止まり、「忘れて」返り見た。清雪がやがて追い越した時に、「忘れた?」言った。清雪はそっと、鼻に笑った。いまさら藤に、答えを返しはしなかった。謂く、

   その、唐突な

   まなざし。そっと

   猶も、ふいうち

   まばたきあえば

わたしの最後のことばを聞いていただけませんか、…どう?

   その、唐突な

    背後。翳りに

   まなざし。そっと

    伏せて。身を

   猶も、ふいうち

    ひそめて。息を

   まばたきあえば

わたしの、ようやくの最後のことばをだけ、聞いていていただけませんか、…どう?

   その、唐突な

      やりすごそうか?

    翳りに。背後

     ふるえた。爪が

   まなざし。そっと

      見逃して

    身を伏せ

     爪を咬む。砂

   猶も、ふいうち

      遁してやろうか?

    息をひそめて

     噛み締めた。前歯

   まばたきあえば

わたしの、前のめりにくずれかかったその須臾に、だからそんなようやくの最後の最後に、ようやくの、ん、ことば。ん?つまりみじかいせめてものつぶやきをだけは聞いていただ、ん?かたくなに耳をふさいだままであなたは聞いていていただ、ん?…どう?聞け。

   そこ。目には

   ななめに、まっしろ

   いまだに、霞み

   散りかいあえば

あした、太陽は朽ちてゆきます。…知ってる?

   そこ。目には

    躍り出た。ひなたに

   ななめに、まっしろ

    絶望?…に、むしろ似た

   いまだに、霞み

    微光。息を

   散りかいあえば

あした、月は飲み込まれてゆきます。…知ってる?

   そこ。目には

    躍り出た。ひなたに

     すべった。汗が

      喪失。不用意に

   ななめに、まっしろ

      見失おうか?

    絶望?…に、似

     落ちながら。渇く

   いまだに、霞み

      のけぞっていようか?

    微光。息を

     焦燥が。眉に

   散りかいあえば

肩ごしにふと、言葉をうしなわないで。お願い。

   その、唐突な

   まなざし。そっと

   猶も、ふいうち

   まばたきあえば


   そこ。目には

   ななめに、まっしろ

   いまだに、霞み

   散りかいあえば


   雨が。いまさら

   雨。風。やさしく

   さまよわせるまま

   さまよったまま

わたしへの最良の弔い方を、わたしに教えてやってください。…最後に

   雨が。いまさら

    ふりむきかけた。きみが

   雨。風。やさしく

    傷い。なぜ?

   さまよわせるまま

    風たち。その、静止

   さまよったまま

わたしへの最良の埋葬地へ、わたしを導いてやってください。…最後に

   雨が。いまさら

      その喉が、いま

    ふりむきかけ、きみが

     目舞いそうなくらい

   雨。風。やさしく

      息。辛辣な、吐息

    傷い。なぜ?

     いとしさが、ただ

   さまよわせるまま

      きざしかけたから

    風たちの静止

     ぼくだけを消した

   さまよったまま

   粒。飛沫。粒

      いま、風さえもが

    ふりむきかけた。頸が

     吐きそうなくらい

   水粒。大粒

      停滞しようと

    かたむき、ん?

     せつなさが、ただ

   小粒。飛ぶ

      たくらむのだから

    わたしたちの、過失

     きみだけを消した

   舞い、まどう

見ないで。きみの眼の前で燃えながら腐りおちてしまいたくはない。…最後に

   粒。飛沫。粒

   水粒。大粒

   小粒。飛ぶ

   舞い、まどい

見ないで。きみの眼の前で燃えってクソ。死ね。クソ。死ね。ク

   ほ、と。ん?

   ささやいただけで

   まがりそうな、ね

   まがりそう。雨


   やさしい風が

   さまよわせるまま

   さまよったまま

   粒。飛沫。粒は

まばたいたきみの、睫毛の微風に、クソ。嘲笑を。いま、

   やさしい風が

    なにも言うべきじゃ

   さまよわせるまま

    なかったのだろう。きみに

   さまよったまま

    肩に、散りおちていても

   粒。飛沫。粒は


   ん、と。え?

   つぶやいただけで

   ゆがみそうな、ね

   ゆがみそう。雨


   やさしい風が

   くるおわせるまま

   くるおったまま

   粒。飛沫。粒は

はきかけたきみの、口もとの微風に、クソ。失笑を。いま、

   やさしい風が

    なにも言い得は

   くるおわせるまま

    しなかっただろう。きみに

   くるおったまま

    肩に、ひろがっていても

   粒。飛沫。粒は


   え、と。あ

   咬む舌のさきで

   つぶれそうな、ね

   つぶれそう。雨


   やさしい風が

   ざわめかせるまま

   ざわめいたまま

   粒。飛沫。粒は

きみのすべてが、そこにわたしを失望させた。いま、

   やさしい風が

    なにも言わずに

   ざわめかせるまま

    見蕩れていよう。きみに

   ざわめいたまま

    肩に、いたましい

   粒。飛沫。粒は

見わたす、地表。ちっ。そのすべてさえも、そこに、ものしずかな水。ずっ。すずしげな、ずっ。水。そのみずたまりであったなら、

   見わたす、地表

    砂。ね、いま

   地表さえ、そこに

    降り、まるで降って

   ものしずかな、水

    雪。降り散ったその

   すずしげな、水


   見やぶられ、地表

    砂。ね、いま

   砂さえ、ななめに

    落ち、まるで落ちて

   ものいわぬ、水

    雪。ふまれてくだけの

   すべりおち、水

見わたす、地表。ちっ。そのすべてさえも、そこに、ものしずかな水。じゅっ。すずしげな、じゅっ。水。そのみずたまりであったなら、

   地表。すべてが

   みず。みずたまり

   みずたまりになれば

   ならばよかった


   無際限。ほら

   かげりもない

   波紋。はてもない

   ね?見てよう。きみと


   ね?ささやいてようよ

   波紋。容赦ない

   極まりのない

   流動。ほら

見上げる、空。らっ。目舞う色さえも、そこに、さかさまな水。じゃっ。さかしまな、じゃっ。水。そのみずたまりであったなら、

   見上げる、空

    空。空は

   空さえ、そこに

    降り、まるで降って

   さかさまな、水

    降り落ちるように

   さかしまな、水


   見捨てた、空

    空。空は

   空さえ、したに

    湧き、まるで湧いて

   さわやかな、水

    湧きあがったように

   よこしまな、水

見上げる、空。るぁっ。目舞う色さえも、そこに、さかさまな水。ずぁっ。さかしまな、ずぁっ。水。そのみずたまりであったなら、

   空も。すべてが

   みず。みずたまり

   みずたまりになれば

   ならばよかった


   無際限。ほら

   かげりもない

   波紋。はてもない

   ね?見てよう。きみと


   ね?ささやいてようよ

   波紋。容赦ない

   極まりのない

   流動。ほら

わたしの純情と情熱を、せめてふみじらないように、切に願って鼻をずびっ。すすった。ほら

   わたしたちは、たぶん

   呼吸さえ、もう

   息づかいさえしてなかったんじゃない?

   そう、ささやけば

違うんだ。そうじゃないんだ。…ね?

   わたしたちは、たぶん

      咬んで。…ね

    そっと。だから

     ぼくに、屈辱を

   呼吸さえ、もう

      お願い。いじめて

    いたぶるような

     ぶち、いたぶってて

   息づかいさえしてなかったんじゃない?

      せめて、ぼくを

    耳打ち。あなたが

     しゃぶって。…ね

   そう、ささやけば


   そんな悪夢は

   昏い景色は

   見上げられていた

   水。みずたまりに


   流そうか?

    血を?それとも

   ささやきあおうか?

    涙でも?きみに

   飛沫のこっちで

    すべて、ささげた

   飛び散りぎわで

ふさいで。耳を。…もう、

   流そうか?

      かざす。手を

    血を。さらに

     やめて。もう

   ささやきあおうか?

      かざす。ふさぐ

    涙さえ、きみに

     はばたかないで

   飛沫のこっちで

      蝕を。虚空に

    すべて、あげたよ

     這いまわりながら

   飛び散りぎわで

違うんだ。ぜんぜん違うんだ。…ね?

   わたしたちは、たぶん

      ちぎっ。咬んで。…ね

    そっと。だから

     ぼくに、屈辱を

   呼吸さえ、もう

      お願い。いじめて

    いたぶるような

     ぶち、いたぶってて

   見上げられていた

      せめて、ぼくを

    耳打ち。あなたが

     しゃぶって。…ね

   水。みずたまりに


   流そうか?

    唾液を?それとも

   見つめあおうか?

    体液でも?きみに

   飛沫の影で

    すべて、ささげた

   飛びかいぎわで

引きちぎって。耳を。…もう、

   流そうか?

      痙攣。指が

    唾液を。さらに

     やめて。もう

   見つめあおうか?

      つかもうと、…なに?

    体液も、きみに

     まばたかないで

   飛沫の影で

      蝕を。虚空に

    すべて、なすったよ

     くずれてしまうから。瞼が

   飛びかいぎわで

わたしの感情と激情を、せめてかきけさないように、切に願って鼻をじゅぶっ。ちぎった。がふっ










Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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