青空に、薔薇 ...for Jeanne Hébuterne;流波 rūpa -157 //その、唐突な/まなざし。そっと/猶も、ふいうち/まばたきあえば//09





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





背後、清雪は、戯れる男たちの戯れの会話を、聞くとなく耳に入れた。名前だけしらない男がつぶやく、その「沖縄独立作戦より、さ、」声には微妙なかすれがあって、それが声を「アイヌでしょ」そっとエロティックにさせる。嫌いじゃない、と、清雪は声のひびきを、ただ赦す。「出た。…九鬼くんの、」と、その「いつもの妄想」

「お前が言うな」名。九鬼というらしい彼に否定されたのは、清雪が顔もしらなかった男だった。男はふと、遅れて笑った。そして、九鬼に変わって話しつづけた。「いわゆる北方領土および北海道全土を、あるべきかたちに正す、と。でしょ?好きだよ。おれ。その発想。いわゆるアイヌ民族のかたたちにとってはいまさら迷惑なだけだろうけどね。いいじゃん。別にアイヌに同情があるわけでも共感があるわけでもない。楽しみたいわけじゃん?政治、国家、国体、それら愚鈍な戯れと、おれたちは、さ。で、ロシアにも日本にもその領土紛争という所詮いいがかりのばかばかしさを知らしめて、それはそれで結構として、その、方法論が、ね」

「モスクワの」九鬼が「ホワイトハウス。および、」つづけた。「永田町の議事堂爆破?」

「笑うしかない」玖珠本はふと、かたわらで笑い声をたてた。清雪の耳のとおくに。九鬼が言った。「そのくらいやればいい。その混乱のさなか、一気に北海道および諸島の行政機関を制圧。空港制圧。鉄道等の交通手段の破壊。そのくらいの頭数は、いま、いるぜ。白雪には。自衛隊の異端…むしろ、トップと末端、というか、ね。あいつら含めて。旅行者までぶっ込んだ全残存者の全人権一時的停止、依って諸権利全無効化、それから、」

「アイヌ自治領の独立宣言、と。…ま、アイヌのみなさんは悲嘆にくれるよ。なんてことする、俺らの平和な日常を返せって」

「関係ないじゃん?理想主義的情熱はいつも眼の前のあなたのとまどいをは見捨てる、と。って、云うか、そもそも平田が言いだしたことだけどな」

「おれ?」と。清雪は、ひだりの眉をもたげた。例の男が平田姓だということを、はじめて知った。実名かどうかは知るべくもない。かならずしも、興味もない。「じゃなくて、沖縄に関して、でしょ。あそこ、基地あるから。もっと、おもしろい」

「いざとなれば、みんな粛清しちゃえばいい。つまり、先住民族のみなさんは、ね。沖縄はむずかしいな。多すぎて。ともあれ、残存する残留者のみなさん。ロシア人も日本人も捕虜として生活していただく。国民=捕虜として、権利を与える。…どう?」

「ゲームのなかでやってくれ」

「それを現実化するから、おもしろいんじゃない?」平田の、鼻にかかった笑い声を清雪は、聞いた。…来た、と。安藤の甲高い声がして、ドアがひらかれた騒音をすでに聞いていたことに、清雪は気づく。謂く、

   ハオ・ラン

   そこ。素直

   きみが倦怠を

   ハオ、素直


   悼んだように

      見れば?

    くらっ…と。そんな

     翳りも、綺羅も

   憐れむように

      見て、いま。そのこめかみに

    昏い空間に

     にじみあうように、しかも鮮烈な

   赦したように

      あざやかな

    濃い翳り。きみが

     きわだちを、きみに

   そそのかすように


   ハオ、素直

   きみが倦怠を

   そこ。素直

   ハオ・ラン   


   満州。過失を

   暴徒がハオを

   押しつぶした

   過失。ハオの

謂く、

   満州。過失を

      解放、と

    殺されたなら

     知ってる?もっとも価値あるもの

   暴徒がハオを

      叫ばせてくれ。クソどもが

    殺せばいいさ

     自由。ないし自己満足

   押しつぶした

      破滅、と

    殺せるときに

     知ってる?もっとも凡庸な

   過失。ハオの


   抵抗を。不能

   数が。ハオを

   鍬でちぎった

   恐怖。ハオの


   増殖するから

   繁殖するから

   屠殺のたびに

   蔓延するから

謂く、

   増殖するから

      やめて。…って

    壊れてくんだ。だ、だ

     裂くんじゃね、って

   繁殖するから

      て、て、て

    ぼくが、ね?どんどん

     で、で、で

   屠殺のたびに

      ちぎんなよ。…って

    ぶ。ふ。ぶっ壊されてく

     だべで。…っで

   蔓延するから


   殺し合うために

   ハオ・ラン。それら

   種族は生まれた

   繁殖のために


   屠殺を、じぶんに

   ハオ・ラン。それら

   不死。破壊をくれた

   かつてのじぶんに


   驚愕。異物を

   暴徒がハオを

   恐怖していた

   増殖。ハオの

謂く、

   驚愕。異物を

      見てたんだ。ふと

    殺さないなら

     声。え、え、ぼくの?

   暴徒がハオを

      声のないぼくだけの絶叫の中で

    殺せばいいさ

     とけてくよ。空へ

   恐怖していた

      茫然と、しかものたうちまわって

    殺せないから

     え、え、え。だれの?

   増殖。ハオの


   蘇生を。異常

   不死。ハオを

   見捨て叫んだ

   激痛。ハオの


   全細胞から

   全分子から

   増殖のたびに

   炸裂するから

謂く、

   全細胞から

      生きたくないんだ

    匂う。腐臭が、と

     見せたげる。いつか

   全分子から

      死にたくないんだ

    ぼくは、いつでもひとり

     屠殺されたとき。…か

   増殖のたびに

      滅びたいんだ

    嗅いでた…かな?

     ぼくが屠殺するとき

   炸裂するから


   激痛のなかに

   ハオ・ラン。それら

   種族は這った

   逃亡のために


   殺されるまえに

   ハオ・ラン。それら

   じぶんに。蘇生した

   かつてのじぶんに


   嘲笑。異端を

   英子がハオを

   拾い上げていた

   白目。ハオの

謂く、

   嘲笑。異端を

      じゃん。ね、意外

    泣いてくれた、と

     籠るんだ。鼻に

   英子がハオを

      分かり合える、じゃん。ね

    思った。引き上げの

     激痛のそこに

   拾い上げていた

      じゃん。ね、やっぱ

    船のなかで。彼女

     体臭。ジャップじゃん?

   白目。ハオの


   発狂を。絶望

   苦痛が、ハオを

   白熱させつづけていた

   鼻を、ハオの


   すすりあげていた

   笑いはじめた

   畸形の不死に

   そそられたから

謂く、

   すすりあげていた

      慣れないんだ

    ぼくは、だれをも

     発光していた

   笑いはじめた

      傷み。再生の、…ね

    憎まないから。そう決めたから

     視野。白光が

   畸形の不死に

      あれ、やばいんだ

    もう、ぼくは、だ

     猶も発光を

   そそられたから


   嘲弄にも似

   ハオ・ラン。ひとり

   囲い込まれた

   侮辱にさえ似


   庇護を、異形に

   ハオ・ラン。それは

   両性具有の怪物だから

   英子は与えた


   と、いつか語られた

   ハオ・ラン。くちびる

   どれがどれだけ

   事実だったろう?


   と、ふれあうかたわら

   ハオ・ラン。横顔

   盗み見に似せ

   ぼくは見るだろう

謂く、

   と、いつか語られた

      ぼくは、せめて

    共感も、なにも

     さわがしい。きみに

   ハオ・ラン。くちびる

      きみの消滅を

    なにもなく、きみを

     濡れた獣毛の

   と、ふれあうかたわら

      願っておくよ

    あるいは、愛した、と?

     みだらな臭気が

   ハオ・ラン。横顔


   ハオ・ラン

   そこ。素直

   きみが倦怠を

   ハオ、素直


   悼んだように

      見れば?

    ゆらっ…と。そんな

     綺羅も、翳りも

   憐れむように

      見て、いま。その鼻さきの

    ゆらぎさえして

     うち消しあって、猶、明確な

   赦したように

      ひだり。頬。やや

    翳り。濃く、きみを

     共存、…と、でも?きみに

   そそのかすように


   ハオ、素直

   きみが倦怠を

   そこ。素直

   ハオ・ラン










Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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