青空に、薔薇 ...for Jeanne Hébuterne;流波 rūpa -148 //ふれる。それ/いま、そこに/きみの瞼に/あおむけの//14





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





絨毯に伸ばした足の、そのさきに藤は、うつぶせていた。その腹ばいの、ななめにだけかたむく頸。片目が清雪を見ていた。なにか、言いたげだった。時々、藤はそんな意気地なしの色を、虹彩にそっと忍ばせた。清雪はすでに察していた。自分の出生も育ちもなにも、藤にさえも聞かせなかった。ふと、思う。例えばまた聞きの我喜屋春奈の転落を、あるいは肌の知る壬生敦子の救われない悲恋をも語って聞かせたら、あるいは共感するだろうか。軽蔑するだろうか。なにも言うつもりはなかった。言うべきことなど、なにもなく想えた。藤はまだ、道玄坂と武蔵小金井と、どちらに住むとも発言していなかった。すでに、決断の不在を思い出す程度の価値しか、清雪に見出せなかった。ふたりは、そのまま道玄坂に棲み着いた。謂く、

   ふれる。それ

   いま、そこに

   きみの瞼に

   あおむけの


   きみが。きみこそが

   きみのこころが

   かたむくほうを

   しあわせと名づけた


   空疎。染まれ

   血の色にでも

   虹色にでも

   空疎。染まれ


   わたしと名づけた

   見やったほうを

   きみのみぎ目が

   きみが。きみこそが


   あおむけの

   きみの瞼に

   いま、そこに

   ふれる。それ

ん。なに?その、

   れる。ふ。それ

   いま、そこに

   きみの瞼に

   あおむけの

ん。なに?言いかけた、その、くちびる。きみは

   れる。ふ。それ

    れ、れ、れ、れ、れ、

   いま、そこに

    れんげ。その、花

   きみの瞼に

    その眸。に、に、

   あおむけの

ん。なに?言いかけた、その、くちびる。それをさえ、きみは

   れる。れ。それ

   いま、そこに

   きみの瞼に

   あおむけの


   私語しはしない

   わたしたちは

   そのすべもない

   赤裸々。無言ら

は?その、そこに…なに?ふと、言いかけたくちびる。その、…ん?それをさえも、き——雨?突然の

   れる。れ。それ

   いま、そこに

   きみの瞼に

   あおむけの


   私語しはしない

      ん、…とね

    感じなど、わずかにも

     はっ。と、して

   わたしたちは

      え、…とね

    ほんとうは、なにも

     綺羅めき。眸に

   そのすべもない

      ね?ん、ね?

    感じなど。傷みを

     翳り。ななめに

   赤裸々。無言ら


   あおむけの

   きみの瞼に

   いま、そこに

   ふれる。それ

とまれ、わたしはただ、きみのしあわせを、ただそれだけを、だから願うことにした。なぜ?

   きみが。きみこそが

    咬みちぎる。指を

   きみのこころが

    なぜ?ぼくは

   かたむくをほうを

    むせた。傷み。執拗に

   しあわせと名づけた


   なに?きみは

    名づけた。きみの

   ゆびを咬みちぎる

    こころがかたむく、そのほうを

   なぜ?きみは

    しあわせと。なぜ?

   傷みに翳る

泣かないで。もう、

   れる。ん?それ

   いま、そこに

   きみの瞼に

   あおむけの


   私語しはしない

      ん、…とね

    ほほ笑みさえ、わずかにも

     ほっ。と、して

   わたしたちは

      え、…とね

    ほんとうは、一瞬も

     涎れ。くちびるに

   そのすべもない

      ね?ん、ね?

    ほほ笑みさえ、幸福に

     やらしく。いたずら

   赤裸々。無言ら


   あおむけの

   きみの瞼に

   いま、そこに

   れる。ん?それ

とまれ、わたしはただ、きみのしあわせを、いまだふたりが出逢いさえしていなかった過去の、だからいわば他人の過去というべき過去さえをもしあわせでありそしてしあわせでしかありえなかったのだとそんな、妄想のせつなさが、ただ、実現されてしまこと、それだけを、せめて、…ん?願うことにした。なぜ?

   きみが。きみこそが

    引き裂く。くちびるを

   きみのまなざしが

    なぜ?きみは

   見つめるをほうを

    よろこびにうつむく

   わたしと名づけた

   なに?きみは

    名づけた。きみの

   くちびるを引き裂く

    こころがかたむく、そのほうを

   なぜ?ぼくは

    よろこびと。なぜ?

   よろこびにひたる

怖がらないで。もう、

   空疎な空間

   その空疎さえ

   いたたまれないきみは

   吐き捨てただろう


   染め抜こうとしてみせただろう

    救おう。あなたを

   いたたまれないきみの

    救いを、あなたに

   悼むもののない

    泣かなくていいんだ

   血の色にでも


   虹色にでも

    ぼくが守るから

   かなしみもない

    やすらぎを、あなたに

   いたたまれないきみの

    抱きしめ、あなたを

   無謀をぼくは、笑っただろう


   吐き捨てただろう

   いたたまれないきみは

   その空疎さえ

   空疎な空間

ささやくのを、やめて。あるいは喉に、鉄柱をいま、ぶちこめばいい。ぶっ。口蓋よりふとい、ふっ。…見るのを、やめて。なにも見ないで。あるいはむしろ、…って。抉って。くりぬけばいい。感じないで。もう、ぶ。なにも。汚物の雨は、ふっ。やがてやむから

   いま、それ

   ふるえ、それ

   ふるえかけていて

   るる。る。るふ


   いま、それ

   ゆらぎ、それ

   ゆらぎかけていて

   るる。る。るふ


   はじけるように

   ふるえ、それ

   ゆらぎ、それ

   散るのだろうか?

かなしみが、しかも波紋のように拡がるしかなくば猶も、しかもかなしみは、おぼれたろうか?のたうちまわっているしかなくば猶も、も。その波紋に猶も、も。いまもしかも、も。のみこまれたろうか?ん?そこに、も。波紋に。いつか

   いま、それ

   ふるえ、え。それ

   ふるえかけていて

   るる。る。るふ

やさしさが、ほしい。きみに、ただきみに、きみだけに、ただささげるために

   いま、それ

   ゆらぎ、ぎ。それ

   ゆらぎかけていて

   るる。る。るふ

つよさが、ほしい。きみを、ただきみを、まもるために

   はじけるように

   ふるえ、え。それ

   ゆらぎ、それ

   散るのだろうか?

冷酷が、ほしい。きみに、ただきみに、ささげるために

   はじけるように

    朝の、その。の

   ふるえ、え。それ

    朝に、そに。に

   ゆらぎ、ぎ。それ

    葉に、は。しずく

   散るのだろうか?


   飛び散り、り

   るる。る。るふ

   りり。り。りん

   跳ねあがる、る

見て。きみのために見捨てられた空が、燃えあがってゆく

   飛び散り、り

    まるで、すべてを

   るる。る。るふ

    うしなったように、きみは

   りり。り。りん

    ゆびで、まぶたを

   跳ねあが、る。る

見て。きみのために滅ぼされた樹木が、朽ちて翳った

   飛び散り、り

      茫然。須臾に

    まるで、すべてを

     見て。新鮮な

   るる。る。るふ

      つきることのない

    うしなったように、きみは

     水滴。陽炎

   りり。り。りん

      その須臾に

    ゆびが、くちびるを

     綺羅ら。反映

   跳ねあが、る。る

見て。きみのために破棄された海が、干上がった焦土にせめて火を放ち、ひとびとはすべて、ん?自死していったよ。だから、ぼくたちの指先は、

   れる。はっ。それ

   いま、そこに

   きみの瞼に

   あおむけの


   私語しはしない

   わたしたちは

   そのすべもない

   赤裸々な無言。ただ

それは、そこにまがっていたのだった。ひんまがっていた。とろけたように。そっと、ひとしれず

   私語しはしない

      ゆがむ。傷みに

    ふるえる喉を

     ぼくの爪さえ

   わたしたちは

      唐突に、…なぜ

    その喉を絞め、切りおとしちゃえ

     容赦なく、ほら

   だれももはや

      きみの爪さえ

    ふるえる喉を 

     ゆがむ。傷みに

   私語しはしない

ひとしれず、そっと、とろけたように、ひんまがっていた。まがっていたのだった。そこに、それは

   赤裸々な無言。ただ

   そのすべもない

   わたしたちは

   私語しはしない


   あおむけの

   きみの瞼に

   いま、そこに

   ふれる。それ

なに?…ところで、きみは代償を支払わなければならないのだ、と

   跳ねあがる、る

      茫然。須臾に

    まるで、すべてを

     見て。新鮮な

   りり。り。りん

      つきることのない

    うしなったように、きみは

     水滴。陽炎

   るる。る。るふ

      その須臾に

    ゆびが、くちびるを

     綺羅ら。反映

   飛び散り、り

なに?…とは言えきみは代償を支払わなければならないのだ、と、そこに唐突な、愛が

   跳ねあが、る。る

    まるで、すべてを

   りり。り。りん

    うしなったように、きみは

   るる。る。るふ

    ゆびで、まつげを

   飛び散り、り

愛が芽生えた。ほら、せつないほどに

   跳ねあが、る。る

   りり。り。りん

   るる。る。るふ

   飛び散り、り


   散るのだろうか?

    朝の、その。の

   ゆらぎ、れ。それ

    朝に、そに。に

   ふるえ、れ。それ

    葉に、しずく

   はじけるように

愛が芽生えた。ほら、せまりくるほどに

   散るのだろうか?

   ゆらぎ、それ

   ふるえ、それ

   はじけるように


   るる。る。るふ

   ゆらぎかけていて

   ゆらぎ、それ

   いま、それ


   るる。る。るふ

   ふるえかけていて

   ふるえ、それ

   いま、それ

かなしみがしかも波紋のように拡がるしかなくば、かなしみは波紋におぼれたろうか?のみこまれたろうか?いつか。









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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