青空に、薔薇 ...for Jeanne Hébuterne;流波 rūpa -139 //ふれる。それ/いま、そこに/きみの瞼に/あおむけの//05
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
風雅が用意したのは武蔵小杉のタワーマンションの上層階だった。あくまで自社物件ではない。いつものことだった。もっとも、分譲して仕舞えば所有権など原則のこりはしないとはいえ。代々木の低層マンションも他社物件だった。敦子と清雪が住み始める前には外国人向け賃貸として運用されていた。その前は壬生雅雪がごく短い間、住んだ。追い出されたのは上下からクレームが来たからだと、清雪は敦子に聞いた。人声の騒音。毎日うるさかったから、と。そして騒音の理由はかたくなに言わない。あえて問わない。更にその前はまた外人賃貸で、その前が正則の住居だった。代々木から電車を乗り継ぎ、慣れない路線に武蔵小杉に着く。業者がすでにおおかたの荷物を運び終えているはずの頃だった。当然のようについてくる敦子を、清雪は咎めはしなかった。いやがったところで敦子が来ないわけはなく、また、いやがる必然もなかった。すでに反抗期は過ぎた。じぶんにすがるしかない敦子を清雪は赦した。28階まであがって「…ね?」荷物の処理は「こういう建物って、」ただひとり敦子が「ゆれるのよ、…ね?」仕切った。驕った部屋だった。ベッドルームが4つ。そしてLDK。バストイレがなぜかふたつ。もっとも、ひとつはマスターベッドルームの専用ではあった。しかし、清雪は独り暮らしだった。当然、風雅は清雪の自活のためだけに購入したのではないだろう。いずれにせよ、ゆくゆくは代々木や神宮前のそれらとおなじ用途にふされるのだった。各寝室の用途は基本、敦子が仕切った。清雪が云ったのはただ、北向きの部屋がアトリエ、と。それだけだった。日当たりの悪いところをなぜ、と、敦子はいぶかった。大量の荷物が運び込まれた。大半は、欲しがってもいないものを敦子が買い与えたものだった。清雪のためというよりも、敦子自身のための買い物に想えた。ベーゼンドルファーは、代々木に。それから、衣類のうち、サイズの問題として今必要ない物も代々木に。また、いま一応は袖を通せる衣服の三分の一も代々木に。あとはすべて、こちら。それが敦子の選択だった。結果、4つの部屋はすべて用途ごとに満たされた。アトリエ、音楽室、書斎、ベッドルーム。清雪は、さすがにやりすぎと、壬生に鼻白む。業者が立ち去ったころにはすでに昼を回っていた。午後には家電屋が来てなにやかにやを設置していくはずだった。それまでには時間があった。敦子を促し、食事に出た。時間は余裕があったから、店選びは自然、優柔不断で文句と嘲弄ばかりをもてあそぶ散策になった。町はあたらしく、田舎じみた。歩きながら敦子が云った。「なんか、早いな」
「大人になるのが?」
「でも、ほんと、」と、「夢のよう」笑う。清雪が。ひとり。あわてて敦子は「…違う、な。でも、」返り見る。「違うんだよ。でも、ほんと。わかんないの。清くんにはまだ、わからないんだよ。最初、ほんと、抱っこしてあげたんだもん。わたし、清くんを」と。そしてそこに、ふと、その腕に抱かれたんだ事実をいまさら気づき目線をながした清雪を捨て置く。敦子は「信じられない。だから」瞼を、そっと「もう、ほんと」ひとり翳らせた。「…夢のよう」
「寝られる?」
「ん?」
「ひとりでしょ。代々木で。…さびしくない?」敦子は、その無邪気なからかいのまなざしを「…莫迦」笑った。「清くんこそ、」
「ね?」
「なに?」
「敦子ママ、ひとりで代々木で寝てるじゃん?」
「だね」
「でも、…さ」
「ん?」
「どう?おれ、ふたりで誰れかといっしょに寝てたら?」ちょうどその時、ならんで歩くかたわら、敦子のまなざしは前方を見やっていた。返り見なかった。虹彩は、一瞬だけこまやかに動いた。それだけだった。数秒を、清雪は数えた。そして、そのまま敦子は前方に「…いいよ」ささやいた。唐突に振り向き見た敦子は、清雪の眉にまなざしをすべらせる。「いつか、かならず、そうなるから。…ね?それはそれで、…ね?よろこぶべきだから。じゃない?…だって」と。言葉が切られた隙に目を逸らした清雪を「わたしが、さ」敦子は「よろこばないで、だれが?…ね。他のだれが、よろこんであげるの?清くんのしあわせ。それを、…さ。ね?それだけ。わたし、ね?それだけ、…ん。願ってる」謂く、
ん。慎重に
ね、踏み外さずに
ん。たしかに
ね、そこに
謂く、
ん。慎重に
雲。…が、なすられた
あやういくらいに
お願いです。もう
ね、踏み外さずに
なすりつけられていた
空は。いま
ささやかないでください
ん。たしかに
消耗。突然の
空が
もう、わたしにだけは
ね、そこに
かさねた。ぼくらは
言葉。ことばに
ことばを、言葉
弾けた、そこに
ひびきを聞かずに
ね、いとおしげに
ん。寄り添うように
ね、そこに
ん。ことさらに
ね、明るさ。笑みに
ん。返り見
ね、そこに
謂く、
ん。ことさらに
うすらいだ。雲は
きわどいばかりに
お願いです。もう
ね、明るさ。笑みに
そして、見上げられた。そこに
空は。いま
いたぶらないでください
ん。返り見
光暈。わずかの
空が
もう、わたしをだけは
ね、そこに
たしかめていた
存在。そこに
いることを、散在
稀薄に、そこに
ふれあいはせずに
ね、なつかしげに
ん。あたりまえのように
ね、そこに
いつわりなど
感ずべくもなく
傷みさえをも
さらすべくもなく
謂く、
いつわりなど
むしろ、さ
ん。やめて
疾走。あしもとの
感ずべくもなく
舌でも、いま
ね、もう、駄目だから
なに?翳り
傷みさえをも
咬みちぎってごらんよ
ん。やめ
鳥?
さらすべくもなく
大人だったから
ぼくたちは、そこで
ぼくたちの、そこに
居場所をひろげた
深みにはまって
ノイズ。町の
巣穴を、そっと
笑ってる。ぼくは
逃げだせないかに
かすめた。あぶなげなく
空隙に画策。陰湿に、そんな
きみの、ため、かな?
ひそめたのは息
耳に、鮮明に
巣穴を、そっと
ともかく、ぼくは
気づかいあって
居場所にひろげた
ぼくたちの、そこに
ぼくたちは、そこで
可能性を閉じた
厭うべくもなく
鳥?
ん。やめ
思えなかった。きみは
すれすれの距離も
なに?飛沫
ね、もう、不可能だから
過失とは、決して
恥ずべくもなく
ひとつぶ。右頬に
ん。やめて
いまも、猶
本心などもう
謂く、
厭うべくもなく
すれすれの距離も
恥ずべくもなく
本心などもう
忘れたように
気付かないように
なかったように
翳り。路上に
謂く、
忘れたように
記憶さえしなかったのだ
いいよ。あなたに
いとしい気持ちが
気付かないように
むしろ、わたしだけ
可能なら。ぼくを
ただ清潔に、そこ
なかったように
あなたを、なにも
いますぐ忘れて
きみの血を沸騰させた
翳り。路上に
聞いててあげよう
せめて、あなたが
はきかけた息を
確かめていよう
感じてあげよう
しかも、あなたが
のみこんだなにかも
知らないふりを
謂く、
聞いててあげよう
そ。そ。…え?
ん、わかってる。ね
あ。え?ん
確かめていよう
や。…んー。っと
ね、ね、ね
ん。ふ、ん
感じてあげよう
え?ん。ね
ん、知ってるよ。ね
あ。ん。は?
安心していて
0コメント