アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -116 //空。あの色を/沙羅。だからその/あなたも、まだ/まだ知らない//04
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
謂く、
あれ?
いつ死にますか?
もう死んでいます
未来がありませんから
あれ?
どこ行きますか?
もう生まれます
いま死にましたから。…じゃ
謂く、
あれ?
ぶって。ぶ
壊したかった?
いためていじめて
いつ死にますか?
ぼくぼ
ほんと?すこしも
しかって
あれ?
じゃなくてさぼくを
壊したかった?
いじって
どこ行きますか?ふりかえり、あえて立ち止まり、やがてちかづいてその耳にささやいた。「…死ねよ。お前」わたしはそこに、ただ彼のためだけに至近にせせら笑いをくれ、ふいに雅文がわれに返った。まなざしはいままで彼がふかい瞑想のなかにいたかの気配をもった。ひたりこむべき瞑想の、そんなネタなどなにもない。だから、不穏?そのまなざしは。あるいはたんに、ふいに接近し吐きかけたにちがいないわたしの口臭がいとわしかっただけかもしれない。惡意はなかった。わたしにはなにも。雅文はもう眉に皴をきざんでさえいなかった。普通だった。無表情にちかかった。しかし、見出した。無表情とはひとつの表情なのだと。雅文の顔はだから、表情がきざす手前、まるで逡巡だけが存在していたかに、謎?あるいはことさらな謎かけ?ない。逡巡も謎かけもなにも。実にはなにも。感じた。…じ?察した。雅文がこれからしでかすにちがいないことを。雅文に、わたしにかれのしでかす事柄を見せつけさせる自由をあたえるのが嫌だった。思った。雅文も犠牲者にすぎないと。あるいは葉子のように。葉子の屠殺した、片山姓の無慚な夫婦ともおなじく。腐乱臭に発見された。彼らは犠牲者にすぎない。雅文も、葉子もやがて腐乱臭に?わたしはもう、雅文の顔の至近におく停滞を解いていた。ゆっくりととおざかっていくわたしの顔貌をそこに雅文は見ていたはずだった。冴えた、曇りのないまなざしは、しかしなぜかさらさない。瞳孔がなにかを捉えているという事実をは。だからいまだ正気づいていないにも似て、「行くから」
すべる
必死に、そこに
云った。
まなざしに
これは慥かに
わたしは。その
風景が
おれが見ているおれの
雅文に。
すみやかに
風景だと、わたしは
見捨てた。
ずれる
必死に、そこに
だから、その
まなざしの
思おうと、なぜなら
雅文を。傷みは
風景が
他人事。もう
なかった。
すみやかに
奇妙なまでに
わたしには。
わずかにも
すべて、そんな、
後悔も、
傷みさえも
だから
ためらいも。
不穏ささえも
必死に、そこに
わずかにさえも、
なにも
眉間を
悲しみも、ね、と、「さがさないでね。う、」きびすを「うざいだけだから」返したそこ、いまや背後に、雅文が息をすいこんだのがわかった。ささやく?なに?その、声をかけられる予感。あせった。急ごうとした。これみよがしにも、わたしの歩みは停滞した。緩慢。ゆっくり。故意にもったいづけるように。いやらしく。ぶざまに。廊下にでたとき、だから雅文の視野にはもう存在しなくなっているときに、わたしは聞いた。本当に?…記憶。むこうに、振り返っても見えないそこに、雅文が身じろぎの衣擦れをみじかくたてたのを。拭っていた。思わず、手のひらで。わたしは。気づく間もなく溢れ返っていた涙。顔中を濡らしていた滂沱の淚を。いつから?いつからわたしが泣きじゃくっていたのかさえもうわからずだからふと。目を、目。あるいはふかい夢から醒ましたかのように、目を、そこにわたしは息を吐く。なぜ?ラン。匂った。ランが。その髪が。そして、たぶん肌が。そこらじゅう、可能なかぎりのすべての表面ににじませていた汗。…惡臭?たぶん厭うてしかるべき、しかもいま、かならずしもわたしになんら嫌惡をいだかせない、そればかりかいとおしさをのみ、見えない。もう、その
見つめないで、…と
噓だよ。きみは
ラン。すでに
花。その花が
ぼくを
さらされていたはずの
かたむいて
いちども
やつれ。翳りなど。ただやわらかな逆光。そしておおいかぶさったラン。もはや厖大な髪。ゆたかな髪。あふれかえっていとしすぎたすぎた髪の毛がむれて、かさねあう翳りのゆれに、ランはその翳りをさえもう見せられないでいる。
ほら
どしゃぶりの
庭だった。
そそぐのは
雨のように
だから
なに?
ひかりは
夏の庭。
ほら
きみに
自由だった。わたしたちはそこに。だれにも見捨てられて。樹木の茂みにかくされた孤島。かくされ、かくされる必要はなかった。肌は。だから思いつき。寝室からふと、たわむれ。愛の唐突な中断に、ラン。逃げ出した背中はわたしを誘った。わらい、息。みだれ、もてあそぶ。逃げるたわむれのランを、もてあそびもてあそばれたわたしは笑いながら追った。馬乗りになった。やがてランは、庭の奧。沙羅の樹木の根もと。翳り。すわりこませたわたしのそこ。翳りの繁茂のなか。さがした。それを。さがしだし、くちびる。中断の再開を、くちびるは、つち。身を投げていた。わたしは、つち。そしてそれをめくりあげた根。たくましい。それ。微動だにない。それ。肌ざわり。ふみしかれ、おしつぶされ、しかも決して息絶えなかった草の群れ。その
ほら
もはや滂沱の
葉。その
そそぐのは
涙のように
茎。
なに?
ひかりは
あるいは
ほら
きみに
花さえ。感じられた。舌と口蓋。やわらかな肌ざわり。そこに。うるおい。匂いさえ。嗅ぎ得など、にじむ。唾液。匂い。もう、くちびるの端にしたたっていたかもしれない体液。汗。木漏れ日。翳り。熱気。夏。かぎとれなかった。ランの汗を。鼻は。
かぎ得たのはただ、つち。その匂い。微細な細菌たち。無数に厖大にはぐくんでいるはずの、その芳醇。臭気。なぜ?それは。細菌たちのせい?つち本来の?なにかのいつかの尿?花。稀有な、沙羅の樹木が咲かせた稀有な、沙羅のしろい花がこぼれて散った。ときに。つちにも。わたしにも。鼻先にも。だから、みだらなランにも。わたしたちの淫乱にも。わたしだけのほのかな、快感?ちがった。そんなものではなかった。わたしがもとめていたのは。だからわたしはランをひきずりあげ、みだらな
舐めてよ
走る
あらがい、
爪を、舐め
猫が
ラン。声。わらい。媚び。悲鳴のような。足首をつかまれたラン。かくされようのないラン。羞恥。かくそうとした手のうえからさえ舌は、だから、ランのためだけに。声。邪気のない、翳りさえ、わずかにさえない声にもはや、ひとしきりひとり笑って笑いたてたあとハオ・ラン。そこに、わたしたちの道玄坂の部屋に彼、——彼女は?ささやく。…ね?「不死って、なに?」ややあって、笑む。笑んだ。笑みかけ、成し得ず、ふと、そして唐突に、笑んだ。そのハオ・ランは「…不死?」
「だから、不死身。不死身って、なに?」
おもわずわたしも笑った。謎をかけてからかってるかの、しかももはや泣き出しそうなハオ・ラン。いびつな微笑。いたたまれなかった。答えようがなかった。その必然もなかった。義務も。権利も。わたしはハオ・ランのために、せめてものわらい声と、そして邪気のない笑顔をだけくれた。成功していたかどうか、わたしは
絶望なんか
炎の雨を
知らない。
ぼくは
ひらいた口に
もうひとりの
一瞬さえ
飲みこんで
ハオ・ラン。彼に屠殺されかけたハオ・ランは、欠損した腕のあるべきものの不在を、そしてもう、しろい体液を散らしてうごめきはじめているそこを必死におさえ、息をのんだ。ようやく、遅れて帰ってきた春奈。ようやくまなざしは見て、何を見ているのかわからないまま見ているものがなにか知る。壁にもたれた背後の春奈は、…やばい。なんらの切迫感もなく、——ぅやばっ。云った。「あなたたちだって、」
「やばっ」
かすかに
…と、ふと
「ね?…だから、」
「きれー。なに、いま」
かすかに
わたしはひとり
「あなたたちの了解する、…だよ、その」
「散って、飛び」
眉毛が
まばたきかけて
「そのかぎりある生。…いのち」
「飛び散って、しろい、」
ななめに
…と、ふと
「あなたたちだって、生きてある限り死には」
「きれー」
かすかに
思いあぐ
「だからぜったいにふれない」笑っていた。春奈は。ひとり声を立て、発作的に?まさか。切実さのない、まるでへたくそな演技よりもへたな、そんな、嘲弄?稀薄な、「有と無」
「しろい花、だね」
…と、ふと
飛び込んだ
「それらがいかにしても」
「飛散る、」
わたしは、そこに
47度の角度で
「決して」
「しろい、」
爪を、咬みかけ
流星が
「どうやっても」
「しろい花だね」
羞じた。すぐ
耳孔に
「有と無。かならず」
「きれー…やばっ」
きみの目を
踏み込んだ
「ふれあい得ないように。だから」
「ねー」
…と、ふと
46度の角度で
「死なんか…」
「匂う、いま」
わたしは、そこに
つま先が、きみの
「死など、つねに他人の肉体に見る」
「わたしにも、さ」
或る執拗な
禁断領域に
「なに…つまり、」
「飛び散らすから、さ」
いたたまれなさ、つまり
飛び込んだ
「事象。事象へ、すてばちに」
「まじやべー」
見つめているきみの
48度の角度で
「つけた名であるにすぎない。…なら、」
「すっげーいー」
目、そして
白色矮星が
「あなたたちだってすでに不死だった。いつかの」
「まじいーにおいー」
きみという存在への
鼻孔に
「…ね?」
「やべーきれー」
いたっ
踏み込んだ
「二千年ちかくのあなたたちの先祖が、ぼくの」
「くそきれー」
たまっ
44度の不穏な角度で
「四肢をぶっちぎって、血を」
「あますぎてさー」
…と、ふと
ゆび先が、きみの
「…信じられない。あんな、」
「でも、もーさー」
わたしは、そこに
いつかの未踏領域に
「血を、——そんな、獲得なんてできない」
「わたしさー」
せめてほほ笑もうとする、その
飛び込んだ
「いまさら、不死なんて、だって、」
「まじはきそー」
絶望的な努
49度の巨大な角で
「もう、」と。ハオ・ランはふいに口を閉じる。喉をならす。…ね?唾を吹き散らした声。「あ。…」ささやく。わたしは。あわてて、「なに?」
「痛くなり始めてきた…再生が…ね?ね、ね、」…え?「もう、」なに?「無理。叫んでいい?もう、」と、その最期の「もっ」声。迸りとともに、叫——ひらいた口。開かれ切った口。喉。そして鼻孔。たぶん見えていなかった耳孔も。眼も。毛孔も?血管も。肛門も。膣孔も。尿道も。なにもかも。だからハオ・ランは絶叫した。息をさえもらさずに。沈黙の、無音の、静寂を撒き散らしたまま、その灼熱の叫びを。謂く、
いたい?
水。そこに
波紋。ひろがれ
気絶しかけて
謂く、
いたい?
たまりたまった
なに?それは
白鳥たちが
水。そこに
体液。まるで
なに?いまかたむきかけた
ほら、ふ
波紋。ひろがれ
湖のようです
なに?それは
孵化しはじ
気絶しかけて
いたい?
いま。そこに
散った
しぶきが
いたい?
肌。そこに
撥ねた
しぶきが
かなしい?
いま。そこに
流れた
水滴が
いたい?
水。そこに
波紋。ひろがり
ほどけるように
謂く、
いたい?
よどみよどんだ
なに?それは
しら鷺たちが
水。そこに
体液。まるで
なに?いまひびわれかけた
ほら、すぃっ
波紋。ひろがり
入り江のようです
なに?それは
すぃっすぅぃんしはじ
ほどけるように
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