アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -106 //ふれていたのだ/あなたの目覚めに/その唐突な/沙羅。だから//05
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
謂く、
ピエト・M。その
燃え上る線
いく千もの
線。ピエト・M
いつか引かれた線のように
いま、木漏れの黄変
葉のむれさえも
燃えれば良かった
謂く、
いつか引かれた線のように
しろい花弁に
ラオスに雨は
発火です
いま、木漏れの黄変
ご注意を
降りますか?その海に
霧雨にさえも
葉のむれさえも
日射しに燃えます
ラオスに雨は
唐突な発火
燃えれば良かった。燃えあがるにちがいないと思った。だから恐怖?…恐れ。わたしも。沙羅も。いまだ夏。容赦ない日射し。いまや赤裸々な直射。まだ八時をまわりかけたころだった。たぶん。関係ない。朝の灼熱。それがただみずみずしい。昼の灼熱はもはや熟れすぎ、夕方のはぶざまに燃えあがるしかない。いつ?見た。いつの灼熱?あのブーゲンビリアの稀れなしろい色葉。なぜか風のいつかにひとかたまりだけ落ちていた床のうえ、——こんなところに?
激怒。それは
とろける
なぜ?
突然の忿怒
しなだれる
御影石。寝室。複雑すぎるあわい白濁とふたしかな翳り。写真。その写真。ふるいプリント。だからいつかのフィルム写真。わたしとランが籠る部屋。ランは夢を見ていた。ベッドに、その微衰に翳る肉体をさらし、声。彼女だけのうわごとを、ときに。写真は床に、ベッドの下からはみ出していた。だから、ランが置いた段ボールから落ちて?あるいは、いつか慌てて隠されたあやうさに、なにかの偶然が、そこに?写真の少女は目のさめるほどにあざやかな利発をさらしていた。高慢にさえ見えた。いまだなににも気づかいなく、均らされないままの利発は、あるいはおさないいつかの清雪にも似た。うとましかった。華奢だった。これ以上ないほど。すでに知れていた。それが十二、三歳のランだということは。三十を越えかけ、瘠せはじめたランは
ぼくの知らない
罵倒。それは
いちど目覚めてしまえば
知らないきみを
突然の失笑
どうしてもそこに
きみの目のそとで
絶叫。それは
残置するしかない胸のふくらみと、腰の張りとをあきらかに違和させながらも、少女ランの華奢に衰微として似ていくのだろうか。そう思った。もう、胸も腰もランにはいびつだった。日本人男がひとり、少女ランのほほ笑みのとなりにいた。そのときのわたしよりも年下だった。老けて見える。利発さの狂暴な発露に容赦ない美少女の笑みはただただ鮮明で、そのかたわら、いっそう老いて凡庸に見え、…ボランティア?海外交流?男の鈍重の反対、ランを囲んだ右にわたしがいた。そう錯覚を与えた。似ていた。骨格のちがいだけ。また、鼻の頭のかたちの差異。あくまで人種的なもの。それ以外にたしかに目立ったちがいはない。レンブラントでさえかき分けに苦しむにちがいない。歌麿だったらまよわず同じ顔に描いただろう。…だれ?と、問いかけるべきランの夢をは知りながら、ふと、だれ?返り見たランが、夢のままに奇蹟的な返答をかえす必要さえない。父親。ランの。そうに決まっている。ふと「死んだ方がいい?」
「だれが?」
思い出す。レ・ハンのついた噓。いま
「あなたじゃない」
失墜。ふいに
深く、深い
「なんで?」
わたしは思い出して、だから
「死んだ方がいい?」
つばさを、じぶんで
深すぎた、深い
「いつ?」
沙羅。ハーフだと、レ・ハンは、
「明日?いつがいい?」
ちぎって、鳥
深いブルー
「昨日」笑む。そこに、そのタオは、振り向きざまに、だから庭。ランの庭のブーゲンビリアの翳りに。ふいに、ランのいない平日の午前に「死んだ方がいい?」
「だれが?」
そうなの?どこ?
「あなたじゃない」
失墜。ふいに
傷く、傷い
「なんで?」
え?…なに?ラオスと
「死んだ方がいい?」
つばさを、じぶんで
傷すぎた、傷い
「…死んで」
ミャンマーとか?…莫迦
「そ、…っか」
ひきぬいて、鳥
傷いブルー
「いま」笑む。だから、わたしも、その、まなざしの正面に、ただ微笑ましく、むしろ
「生きて、いいよ」
「だれ?」
日本。それから
「あなた」
失墜。ふいに
冴えて、冴え
「なんで?」
まじ?…ベトナム。それ
「生きててもいい、…でも」
つばさを、じぶんで
冴えすぎた、冴える
「…いや」
まじ?この女が?…って、それ
「そ、…っか」
喰いつくし、鳥
冴えまくるブルー
「いま、死んで」と、それら、ささやきあう声をすでに聞いている。だから、わたしも、そして、葉子も。そこに葉子はひとり、唐突に笑んでささやき「いま、死んで」ささやきつづけた声など、もう「いま、滅びて」
聞いてはいない。だれも、
「いま、消え去って」
ぼくらは
夢を
発語する
みんな
見ていた
「いま、…」
本人さえも。だからその、わたしの十六歳の部屋のなかにも日射し。やわらかだった「オッ…」日射し。そこに「ケー…」タオはわらった。まさに、こぼれ、はじけとぶ健全な笑顔に。なんら、邪気もなく、そこに「だれ?」
「これ?」
「だれ?」
そこに、ふと
「日本人?」
あさすぎた眠りに
ぼくらは
「だれ?…この」
まどろみにさえも
みんな
「だれ?」
あまりに自然に清雪は「ベトナム人、これ」笑んだ。そのときに、ただやさしいランは、むしろわたしに赦しを与えるまなざしに
すこしだけ頸をかしげて、決して写真を見ずに、だから「これ?」
「だれ?」
「日本人?」
わからない。なぜ、振り向きざまの
「だれ?」
「どれ?」
「だれ?」
清雪。十五歳のかれが
「ダディ」
まぶたをとじずに
夢を
「だれ?」
見ひらいたままで
みんな
「やさしいひと。そして」
いきなり、その
「ダディはいつも」
眠り落ちきれた
ぼくらは
「だれ?」
一瞬もないまま
みんな
「やさしいから。わたしは」ひびき。ひびく、なりひびく。そこに「好き」クラクションが。沙羅。湾岸道路。大通りを横断しかけた、全裸の、そして信号無視の沙羅に、巨大な貨物トラックは。もはや、沙羅をのみ、人々は見た。だから「どっち?」
「でも、」
「なに」
「選んだのはマーだけ」わからない。もう、わたしへのいく千回めかの愛の告白にしずかな陶酔と恍惚を、「…ね、」
Em
どっち?
「ありがと」
Cám ơn
ね?
「ラン」
Lan
ね?
どっち?あなたの親愛なるダディは、と、いまそう名ざされたのは、と、…ラン。その、謂く、
話して、もっと
もっと赤裸々に
話して、そっと
あなたの話を
どうでもいい
どうしようもない
ただくだらない
話し。あなたの
聞いてる。ずっと
きっと、ちかくで
聞いてる。そっと
あなたの話を
謂く、
聞いてる。ずっと
ふるふ、ふ、ふ、
雨ふるでしょう
涙でる?
きっと、ちかくで
ふふっ
あした、あさっても
抉ってあげる
聞いてる。そっと
ふらふ、る、る、
やさしいでしょう
その目、ほら
あなたの話を
あなたの声を
ふらふ、る、る、
ささやかでしょう
その目、ほら
聞いてる。そっと
ふふっ
きのう、おとといも
つぶしてあげる
ずっと、かたわらで
ふるふ、ふ、ふ、
雨ふるでしょう
涙でる?
聞いてる。きっと
謂く、
あなたの声を
聞いてる。そっと
ずっと、かたわらで
聞いてる。きっと
話し。あなたの
ただくだらない
どうしようもない
どうでもいい
あなたの話を
話して、そっと
もっと赤裸々に
話して、もっと
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