アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -103 //ふれていたのだ/あなたの目覚めに/その唐突な/沙羅。だから//02
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
謂く、
燃えちゃえよ
燃えるしかねぇなら
燃え——轟音
ひびくよ。いま
焼いちゃえよ
焼くしかねぇなら
焼き——震動
ゆれるよ。いま
謂く、
燃えちゃえよ
飛びます
夢のなか
ちびます
燃えるしかねぇなら
鼻血
きみを抱きました
血圧
焼いちゃえよ
飛びち
夢のなか
ちびち
焼くしかねぇならもがくような須臾があって、しかも、なんの苦痛もなく。その沙羅はふと、あおむけた肉体を起こした。たったいま、そこに目を醒ましたかのような、そんなありえない錯覚でわたしをまどわしながら。だから、見た。むしろ、その褐色の肌に見蕩れた恍惚におちた似にたわたしだけの数秒、わたしは、
血管のなかが
ゆれる
沙羅を。
あわだつ、と
まなざしが
沙羅が
そんな瞬間が
ゆらぐ
ベッドに、そしてあぐらをかいて、しかも両腕を伸ばし切って、だから、頸も。おおげさに、のけぞりかえるように背伸びした背中にはかすかな筋肉のいぶきが、そして残酷に見えた背すじのくぼみ。えぐるような。沙羅。なめらかに翳り、あるいは綺羅めくとまでも言えないやわらかな白濁。だからただ、流れを描く。知らせた。その色彩。形態。手ざわり。わたしに、そのまなざしに、奇妙な、恍惚に似た茫然の持続に、いつかわたしをほんとうに見蕩れさせながら。錯覚?それとも、たしかに心をうばわれて?
沙羅のその肌。ひかりのなかに褐色をさらし、あばき、あざやかな色彩のあざやかさ自体を白濁と翳りに台無しにされている沙羅。返り見た。沙羅は、そして見た。沙羅は、その虹彩。だから、まだ片方だけの沙羅。琥珀のまなざしはたしかに、わたしのあお向けている風景を見ていたにちがいない。焼けただれたケロイドの、いまだかくれたほうの反面の目にも?そに不可解な、虹彩。ブルー。もしその
見た。そして
不可解だった
異形のブルーに
見ないふりをした
その眸
まだ視野があったとして、
サイゴン。その
虹彩は
なにを?とまれ、
店舗の中で
沙羅。唐突に
まだ
殴打された
収縮と
さらされない。
同胞。そして
膨張を
わたしには。
ひんまがった
さらし
ブルー。あさい
背中。その
不可解だった
ブルー。だから
シルエット
その眸
純粋さのある
日本人の
虹彩は
ブルー。返り見た
オーナー社長に
色違いの
琥珀。そっと笑みかけ、笑みかけただけで笑みきることなく、ふいに羞恥に目を逸らす。そこに、タオは。毎日、ランの家に入り浸りはじめていたタオは、ふたつめのリビング。ひらかれたシャッターの逆光のなか。シャッターにゆびさきをそっとふれ、もたれかかりかけたタオ。翳り。綺羅にふちどられた、あくまでも翳り。タオは
卑屈。短気。そして
褐色の
昏い。十六歳の
薄顔無礼。以上が
頬に
肉体に、なにが
日本人の基本的生態
笑ってよ。いま
惑われているのかは知っている。ずっとそうだったことも。奇妙なまでに確信だけがあった。タオには。焦燥も懐疑も懊悩もむしろ排除されたのではなくて、進入できないだけ。わずかな須臾にさえも。つまり、そこにいる日本人が自分だけのものなのだという確信。たぶん、十二歳くらい?あの色めき花やいでいたランのかたわら、婚約者としてはじめてわたしを見たときからタオは、もはや迷いがなかった。知っている。タオも。日本の物流会社のアカウンターとして働き始めたランが、平日の日中にその家屋にはいるはずもないことは。かりに、なにかの都合で在宅していようが、予想外の邂逅にも惡びれない。感じさせない。あくまでも、タオは、ランに対する嫌悪も、
愛。ただ
けなげに蜂が
忌避も、
ぶしつけな
失速し
羞恥も、あるいは
愛。ただ
けなげに蕊が
惡意さえも。ふたりでときにささやきあいながら、知っている。わたしは、タオ。彼女が、ランにすでにじぶんの思いを告げていたらしいことを。気付かずにはいられなかった。タオの
ほくそ笑む
無謀なくらいに
まなざし。それに
笑む
羞じも知らずに
かくし、ひめる
ほくそ笑む
抱きしめあおうか
気配などなにもなかった。あけすけなまでに明示され、ことばを以てするよりもあきらかに。だから大声で耳にわめかれたかのように。挙動を以てするよるもあざやかに。だから抱きつかれてくちびるに吸いつかれたかのように。ふたりの、日影のささやきあいの種々の須臾。交互にながし目に見つめられ、わたしには、いつという瞬間の明確もなく、すでに知られきっていた。
ランはなにも告げなかった。だから、わたしにはタオが赦されているとも赦されていないともいえない、あいまいの中に、タオ。その情熱のあるまなざし。返り見た。わたしは、返り見たそこに
愛。ただ
いちども、きみを
清雪がついに、
ぶしつけな
愛さなかった
笑んだ。
愛。ただ
いちども、ぼくは
と。…そう思ったのは、なぜ?錯覚?まなざしのなかに、一度も見たこともない少年は、…清雪。かれとは似ても似つかないみすぼらしい、しかしたしかに、…清雪。だからまずしい骨格に、なぜか妙にふくらんだ顔。みにくかった。その清雪は、そこに。そう断じてしまうべきだったろう。美意識の個人的差異はともかくとして。多様性の尊重尊厳そんなことばを蹂躙する赤裸々。憐憫さえおろかしい。ただ無能な凡庸。直接まなざしに突き刺さる。顔のふくらみが、脂肪の奢りの産物とは見えない。ただみずっぽいのだった。空気以上水以下の稀薄で、どうしようもないなにかが皮膚と筋肉組織とのあいだ、ないし筋肉組織のあいだあいだにまで入り込んでしまって、だから不穏で不健康な膨張をだけ与え、だから、あの、清雪などもう思いつき得もしない凡庸な、…ん?だった。たぶん…ん?致命的な…とけそうですか?疾患の最後の時期にあるらしいかった。その顔は、しかも見まがう可能性もなく、清雪。それは清雪以外ではあり得ない。そして、
ん?
ちぢんでゆく
熱気。
ん?
そこに
なぜ?
とけそう?
波紋が
しかも、
とけそうですか?
収縮してゆく
容赦ない。なぜ?
ん?
そこに
背後になにかが
ん?
波紋が
燃えているから。だから、崩壊。…わたしも?たぶん。燃えひろがった焰は、やがてまよいなくわたしもろとも、だからわたしたちを崩壊させるにちがいない。そう思った。途端に、唐突にその、だから、——知ったことではないと。ロンを、…と。龍。ロン。その耳慣れないひびき。意味は知っている。龍。あくまでも龍。いまや片足がちぎれ、失神しかけていた。しかも、苦痛の訴えだけはやめない息子の頸の悲惨をせめての最後のいつくしみとし…ったことか。この国が
独立を
Độc lập
だれのものであろうが。
我等に
for us
知ったことか。
自由を
Tự do
フランス人の?南の
我等に
for us
アメリカンの?はたまた
幸福を
Hạnh phúc
しっぽを巻いてとうに逃げ去った日本人どもの?…と。知ったことか。おれの知ったことか、と。その、思いもよらなかったことば。禁じられた、…ていた?いつ?禁じられてさえいなかった禁忌。常識。無言の前提。だから、禁忌でさえありえなかっ、——思いつきもしなかっただけ。じゃ、新規発見?知ったことかとわたしはだれ?そのロンの頸をまさに絞めていた男。絞めころそうとすでに決断しながらも、男は
こんにちは
殺戮
知ったことか。この
うつくしい
破壊
世界がどうなろうが。
世界よ
虐殺
知ったこ脱力。…しているのではなくて。筋肉が一枚の圧倒的な断熱材のさきにあるかのように、男の灼熱を伝えないのだ。燃え立つ忿怒。絶望。そしてかぎりもない愛、…ロンへの。しかも慈愛。憐憫。それらすさまじい熱風。なぜ?なにが
燃やして。ほら
走りだせ
遮断を?すさまじい
きみの情熱を
走れ
熱量。なぜ、たかが自分の肉体にさえ無力でいられる?なぜ?痙攣するロン。その白目。その黒めのないわななき。見る。なぜ?清雪とは、だれ?——と。そのまなざし。…この?そっとくちびるをひらいた春奈の口蓋を見つめた。だから二十歳のわたしは。そこに、ただあいまいに、目。不安をかすかにきざしていた、目。凝視した。接近してゆく至近に、…だれ?清雪とは、だれ?春奈。そのまなざしの不安の意味は知っていた。理由を問えば春奈はこう答えたにちがいない。愛してるから、と。あなたをだけを、…愛しすぎたから?
せつなくて
加速しつづけた
ただ、ね?
傷いんだ
ぼくたちは
愛してるせつなさが、ただ、ね?傷いから。傷いだけだから。——おなじように。ランと。あのまなざし。ランと、気づいた。その二十歳のわたしはたしかに聞きつづけていた。こころの奥の?頭部の奥の?どこ?深いところの、すぐに手のとどきそうな浅みにうかんだノイズ。咀嚼するノイズ。歯の無数のノイズ。かすかなノイズ。だからややナイーブなノイズ。だれが?だれを?咀嚼。なぜ?ノイズ。しかもそのノイズ。聞きつづけてノイズ。いま、おれは、と、なぜ?気づいた。なぜ?だれを?だれが?咀嚼。…ね。と。その清雪がささやき、十九歳の
ちらちらと
きみいろに
清雪。道玄坂の
もうすぐ、雪が
染まれ
喫茶店で。もう、冬。春ではなかった。なんどめかの、例外。敦子に言われたからではなかった。もちろん、言われていたにしても。お願い、会って、と、あの子を「見てほしいもの、ある」…止めて。
自決セヨ
生ノ本分ハ
「なに?」…留めて。
自壊セヨ
自死デアル
そのときに、もう清雪にかけることばなどなにも残ってはいなかった。すべて無駄だった。手遅れだった。「見てくれる?」
「だから、」そこになにか言いかけて、清雪は「なんだよ」
「見て…」ささやく。彼が言いかけた言葉をじぶんで打ち消し、すぐに、沈黙さえも「見てくれれば、」打ち消して「…わかるから」だから見ていた。その沙羅。やおら起きあがり、窓際にちかづいた、その挙動。だから聞いていた。そのかすかな身じろぎのひびき。肌のこすれあう、ひびき。足のうらが御影石にこすれた、ひびき。あくまで、あるかなきか。けっして繊細ではなく。むしろ無防備。ぶしつけな、その沙羅。あわいやさしい逆光に濃くなる
壊された
生まれなきゃ
背すじ。
わたしの眼の前で
さ。いっそ
肌。あざやかな
きみは
存在しな
褐色を見た。わたしは。沙羅。そこに明確な意図もなく見せつけられているまま、ふいの茫然にひとり、沙羅。背中。隆起とも謂えない、なだらかな、しかしたしかに、…隆起?すくなくとも陥没のあやうい反対。両腋。筋肉?…そう、名づけられるべくかつあくまでもたくましさのかけらもない肉づき。いぶき。肉の。ただ、しなやかな肉体。けだものじみた?けものと呼ぶべきその一群に、もっともきわだつしなやかさを湛えたそれをだけけものと名づけるなら、まさにその意味でけもの。ふれられてもいない、そればかりか返り見さえもしていないまなざしに、匂った。暴力が、ただ、あきらかにそこに。沙羅の、そして唐突な背すじの陥没も、それをもふくめてすべて、ことごとくまったき暴力以外のなにものでもなかった。すくなくともそのときの
発情。する、よ
知れ
わたしの
めいっぱい
われわれはみんな
目には。双渺は、
やらしく
救われないんだ
そしてそこに
むさぼる、よ
われわれはみ
まばたく。ラン。かたわらに、ランの冴えた目。たぶんランもまばたく。いつ?まだランが、豊満で妖艶な肉体の満開に、翳りもやつれもきざしてさえいなかった時期。父親。
哺乳類
頂き。山に
ランの。
ときに、容赦なく
雲。衝突し
海。
忘れ去られて
雪崩れ
わたしたちは
哺乳類
すさまじい
海辺にバイクをとばした。ホイ・アーンというクアン・ナム省の観光地に、なんどめかに訪れようとしていた。日曜日だった。そして、取り巻きに囲まれたランの父親のすがたを見たのだった。偶然だった。ランの家からホイ・アーンまでは、たいした距離ではなかった。たわむれ?媚び?意図のある甘え?ことさらの大げささで休憩を、わたしのためにランはせがんだ。運転する、わたしのため。ふと立ち寄ったカフェ。歩道にはみ出すテラス席。向かいの開発地。新設される外国人および国内富裕層むけのリゾート。そこから出て来た、ひとびと。…の、一群。黒。白。ここにスーツという習慣はない。ジャケットなど北の変人どもにだけ赦された仮装の如きにすぎない。男たちは皆、スラックスにワイシャツをだけ着る。だれにもネクタイはない。外されたボタン。まくられた腕。男たち。一群の中央、ひとりだけ異質な長身の男がきわだった。まるで、ホスト時代のわたしが愛好していたに似た、ノー・ジャケットのスリー・ピース。インナーのシャツ。まくりあげられないうす紫。ベストを外せばたしかに、ベトナムに来たばかりのわたしに変わらない。ランのまなざしが不穏だった。不穏に気づいたのは、話しかけたわたしの言葉に、唐突にランが沈黙をだけ
しずむ
燃え滓だった
投げつけたからだった。会話は
みなもに
カスだった
中断するしかなかった。中断に
波紋さえなく
おれは
気づいたのものも、
花。しろく
苦痛をなでた
わたし以外には
しずむ
なすすべもな
なかった。そのときには、うす紫の男が、それがだれとも想わなかった。ランのまなざしだけが、見ていた。赤裸々に、そのアジアン・ビューティのきわだちをだけを。アジアン・ダンディのうつくしい孤立をだけを。うつくしいというのと、ハンサムなというのと、その奇妙に年齢不詳なあわいを男の容姿は、ゆらいだ。ひかりの直射に。だれ?
Ai ?
おれ?
口を突いて出たわたしの
Ai ?
だれ?
言葉。ランはさとらない。意味を。そのひびきだけを聞き、ふとわれに返った可憐なランは、振り返りざまのそこ、容赦ない茫然のながい須臾のやがて、わたしにだけ独占された可憐な笑みに、まなざしを崩した。そのくせ、ほんとうにわらっている気配などなかった沙羅、その、ななめのくびすじがゆれた。そんな気が
Ai ?
愛
した。まるで彼女がそこで、ひとり
Ai ?
すきっ
笑っていた、と。そしてむしろ、唐突にそこで笑いやんでしまったのだ、と。だから、見つめるわたしに気づかれない須臾の持続。そこに沙羅は、ただあばかれていたまま、わたしにだけ見えなかった笑みにその肉体を息づかせ、ほんとうに?気のせい?迷いもなく沙羅はいきなりガラス戸を押し開けた。ベランダに出た。風。
カミーユ・コローの
やめて
熱風。
暗黒の風景
恋しちゃ
…と、そう呼ばれるべきではない。熱い風だなどと呼んでは、もはや風そのものがあざけるにちがいない。心地よい風にすぎない。だが、冷やされ切った室内にはそれさえ強烈な忿怒を撒き散らす。わたしは
やめて
ただ、耳は
目を細めた。
きみに
みだらなほどに
外気にさらされつづければ、やがて
恋しちゃうから
微風にふれて
汗ばみはじめるに違いない沙羅。その汗ばんだ肌の光澤がすきだった。そしてそのべたつく手ざわりがきらいだった。いずれにせよ、うつくしかった。まなざしのなかに、いまは不在のその沙羅は。乾ききった肌に、光りのみが綺羅と白濁を撒いた。ちいさなバルコニーの手摺りに身をなげるように——あぶないよ。
ん?…なに?
破綻です
そこは。のりだけしかけて沙羅は、気にしない。なにも、ひとの目など。路上に、砂浜に、すでに現地のあるいは観光の同国人の、むれたひとびとの目はただかぞうべくも足下に散乱しながら、けっして沙羅をは返り見ない。まばゆいだけの高みには、そうわたしは——あぶないよ。
ん?…なに?
波紋です
そこは。確信して、だから沙羅も?たとえ、振り向きざまだれかの不意の目が見たとして、しかもそれが唐突に発情し、女に飢えた男のけだものの目を知ったところで——あぶないよ。
ん?…なに?
破損です
そこは。なにができる?彼に、たとえば
あぶないよ
ひろげろよ
その砂浜で立ち尽くし
そこは
口を
地上の低み、その
いつもだれかが
いっぱい、顎が
衆目に自慰でもはじめる以外に?
身を投げるところ
外れるくら
なにが?…沙羅。その無防備な沙羅はふたしかな塊りが、無数に散らばっていた。あしもとに。つぶしてしまおうと想えばたやすかった。しかも、ふみつぶしたところで無意味であることは知っていた。まだ、うまれていないから。それは清雪だった。うまれていない清雪は、わたしの抱えた記憶のためにせめても清い雪のはかなげな気配を描いて見せていたのだろうか。しかも、その
海が、空に
赤く燃える夕焼けのなかに。
強姦された
海。
空が、海に
沙羅。
強奪された
海辺に
おれはすべてに
沙羅がいた。腕にすでに未熟児を抱いていた。ランは?わたしのランは?だれ?その未熟児は、だれの?わたしの?ランは?わたしの、ランは?と、
実体。愛の
円錐形に
夢?と。醒めつづけていたまなざしは
実体は、たぶん
影が
まばたき、そこにはなんの
波動
円柱形に
おそれもない沙羅。なんのためらいもない沙羅。なんの心の用意もなくて、あやういほどに無防備で、沙羅。口をあけて笑った。バルコニーにふと、身をひるがえして声もなく。手摺りにいまや、沙羅は腰をもたれていた。手摺の、たぶんもう太陽の熱に充分にいぶされていたはずのそれに、くびれと豊満をはめてたわむれていたように。ひくすぎる手摺り。飛び降りろとでも?沙羅。まるで、海を背中にだけ見せながら飛び降りように、沙羅。笑った。容赦なく、だからもはや白痴の笑い。沙羅。無防備。暴力じみた無垢。笑った。沙羅は、せせらわらうように。謂く、
その夢。ゆ
夢の夢に夢
見、目。見る
背後に燃え
燃えさかり
燃えさかるように
ゆらいでいた花
しろい花。ひとり
謂く、
その夢見る
噓を云わない花だった
うしろ手に
だれ?だ
目。燃え
ちぢれた赤みどりの
縛られ花は
見たの、だれ?
燃えさかり
かすみ草
絞殺された
れ。だ?れ
しろい花。ひとり
気づかないよ
ささやいた。そっと
知らないよ。そこ
花があることは
その花を
鼻にふれながら、そっと
耳打ちを、そこ
花があることは
気づかなかったよ
夢見るひと。そっと
夢見られびとも。そこ
花があることは
謂く、
知らないよ。そこ
悲惨すぎます
なんで?つる
齧れ
気づかなかったよ
立ち去ってください
吊るさ、つる
花。は
夢見るひとも
かかとが火事です
吊るらさ
齧れ
夢見られびとも
燃えあがり
燃えあがるように
燃えちったように
燃えてちり
ささやかれびとも
齧れ
吊るらさ
肛門が内出血です
ささやくひとも
花。は
吊るさ、つる
立ち退いてください
気づかなかったよ
齧れ
なんで?つる
滑稽すぎます
知らないよ。そこ
謂く、
謂わなかったよ
ささやくひと。そっと
ささやかれびとも。そこ
花があることは
そのひとを
蕊にふれながら、そっと
舌打ちを、そこ
花があることは
ささやかないよ
気付かないから。そっと
謂わないよ。そこ
花があることは
しろい花。ひとり
れ。だ?れ
毒殺された
かすみ草
燃えさかり
見たの、だれ?
逆さづり花は
ちぢれ群青の
目。燃え
だれ?だ
大口を開け
しかし莫迦な花だった
その夢見る
謂く、
散りまどい
散りまどうように
ふるえていた花
しろい花。ひとり
その夢。ゆ
夢の夢に夢
見、目。見る
背後に燃えた
わたしの、…だれの?
ながれるのだった
花。自虐
なみっ
背後にはなに?
いつか、ぼくの
しかも自慰
だった。ぼくの
なにが?なに?
頬を、なみっ
自虐。花
耳に潮騒が
背後に、…だれの?
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