アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -94 //冷酷。睫毛の/それら、すこしした/なぜ?沙羅/ふるえていた//03
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
謂く、
永遠。それは
なに?いつか
チマブーエさえ
朽ちてゆくいま
永遠それは
きみがあそんだ
ゆびにころがして
君があざけた
謂く、
永遠それは
ひかりもささない
傷い?じゃ
いじけてたやつ
きみがもてあそび
暗闇に
切るとしますか
ぶざまな顔の
もてあまし
ふてくされたやつ
ぶった切りますか
へんなやつ
君はあざけたその日の春奈は、だから数十分まえの体液をひからびさせたままに立ち上がり、ベッドのわき、これ見よがしに立つ。ふと、見せびらかしてみた。わたしに。かならずしも魅力的とは言えない肉体を。豪奢とも、可憐とも、妖艶とも、清楚とも、しょせん凡庸。女の平凡があふれかえった凡庸。売れっ子ではあった。もっとも最後はいつも本番だった。手慣れた、すてばちな手抜きとして。いいよ、と。
ぼくたちは
目。目を、目をも
「見蕩れていいよ」
明るい、そして
ただかぎりなく
綺羅きらしくて
「いいよ。そこで」
見せつけたかに
猥褻であろう
目。目を、目をも
「オナニーしても」
しあわせな春奈。淫靡?破廉恥?まさか。そこで、その須臾、春奈はだれよりも清楚で純情だった。すくなくとも、わたしの眼には。口を
きみにやさしく
ケツ振れよ
ひらく。なぜ?
やさしくなれた
能なしなんだろ?
ひらいた口蓋。…笑み。
そんな、記念日
下等なんだろ?
笑み?
きみにまともに
クソ以下なんだろ?
笑み。
まともになれた
ケツ振
笑む。沙羅。その、かたわら、あおむけのふしだらな、…いきものたち。わしたち。ついに、いかなる須臾にも、いきもののいきてある猥褻を、猥雑を、卑猥を、だからただすなおになまなましいふしだらみだらをさらしつづける、あくまで清楚ないきものたち。わたしたち。ひらかれた沙羅の口蓋が、そこに
ひらく。まるで
赦されない
清楚な
受け入れるように
鉄が、ベランダで
猥褻をさらし、たぶん
ひらく。まるで
彎曲。奇蹟的な
なんら意図もないそれらの
承諾するように
歪曲
複雑で曖昧な気配。わたしは模倣する。清楚を。猥褻を。そっと。口を、おなじようにひらいてみせ、笑み、…笑み?笑む。突然ルーフに出た。だからその部屋。笑ってしまうほどに巨大なルーフ・バルコニー。建築家のデザインなどではない。たぶん。ありふれてあることによってこそブランディングを構築したライオンズ・マンション。意匠など夾雑物にすぎない。あくまでも北側斜線の落とし子。都市景観の纏う衣装は、基本的には法規制が見せた幻にすぎない。
だから
まばたく
風。
ぼくら
知らないよ。勝手に
素肌を
いつも
まば
さらしたまま、ルーフに出た春奈はその健全で健康な春奈の朝に、歌舞伎町の風にふかれてみた。逆光に、赤裸々に昏み、光暈じみるふちどりの綺羅。流す。振り返りさえすれば口元は、笑みに崩れているにちがいないと。ゆるんでいるにちがいないと。ゆらいでいるにちがいないと、いぶき。いぶく、その、そこに
たくましく。そして
いいよ
気配。
すこやかに
きみは
息づかい。
すくすくと
存在していい
息づかうままひたいの
すべり消えた露
いいよ
突然の平坦にさえ翳りと綺羅。それらのやわらかなさ迷い。沙羅。褐色の肌は、もはや色彩をうばわれかけて、ただやさしいだけの朝のひかり。ななめの手ざわりを弾き返したそのまぶた。ふと、まばたきそうに、…なに?
殺して
あなたにひかりが
思う。
傷いから
あなたにさえも
どこ?
殺して
ふりそそいでいて
思う。
さむいから
あなたは下等
なに?
殺して
あなたにひか
どこに?なにを、いま、…と。ここに、そしてあなたはいま、なにを
なにが
まるで
見てるの?と
見えてた?
沈みながら
聞く。じぶんの
その
浮きあがるような
声に、…だれの?
翳りのない
不穏な
ささやきを、しかも
そのときの
琥珀いろ。その
なぜ?…はっきりと
まなざし
瞳孔
いつの?鮮明に、いま突然返り見て、春奈はいまだ、返り見た唐突な昏がり。そこに横たわったわたしの色彩を捉えきれない。ささや歌舞伎町、いま、…と。ささやいた。ぜんぶ、わたしのものだね。あいまいにしか捉えられなかった欠損のわたしに、「わたしたちの、もの。…だね」
かろうじて
「ちがう。ちがっ。この。…朝、」
聞き取れるくらいの、
「この朝、ぜんぶ、…が」…おれたちの?そうささやき返してやればよかったのだろうか?その、しあわせな春奈に、…知ってた。
抱きしめてやれば?
しあわせ?
「あいつが、…ね?」
知ってたんだ。もう
たとえば、その
いいよ
「だから、ほんの、」
ぼくは、いつか
背後から、そっと
笑っても
「いつだろ?…でも」
こうなるって。…あいつ
まだわたしの色彩を
しあわせ?
「一週間…十日くらい…」
たぶん、ぼくのこと
見分けないうちに
いいよ
「ぼくを、渋谷で、」
つけ廻してた。…だって
しのびよって
大声で、留保なき
「宮益…見つけたてたこと」
匂うから。いくら
抱きしめてやれば?
赤裸々な狂人のように
「ぼくも、彼を」
息をひそめても
すくわれた?…ひょっとして
笑っても
「見つけてたから。だから」
知ってた。だから
やがて破滅する、
しあわせ?
「すれ違いざまに」だから、その時たまたま宮益坂に居合わせ人々、そのまばらは、あるいはまったくおなじ外貌の美少女のすれちがうのを見止めたことになる。おなじ坂を、逆の方向から。鼻孔はおなじ体臭を嗅いだ。あの、忘れようのない臭気。ハオ・ランの。濡れたけもの獣毛を思わせる、ハオ・ラン。あまりにも似あわない、強烈な惡臭。…春奈のまだ帰ってこない、道玄坂の部屋。だから、まだわたしたちだけのための部屋。透明な、無臭の体液をあふれだすことをもうやめた。すでに再生をはじめていた。片手で押さえつけられていた、臂。そこからさきの、腕の不在。必死な手の甲のハオ・ランを、下から突き動かすハオ・ランの細胞。増殖。ささやく。その、ハオ・ラン。永遠の十六歳。不死の美少女。あるいは、少年。地球が消し飛んで猶、真空に細胞を再生させつづけるのだろう奇蹟のいきもの。
たぶん、その繁殖のために、たがいにただ殺し合いつづけるしかないいきものたち。
その個体のひとつ。
濡れた獣毛の臭気は、本能として同族、…同一個体?への、破壊の情熱を荒れ狂わすための媚薬に似た醜悪だったのだろうか。ハオ・ランの喉は、ほとんどうごかさないくちびるにささやき、ささやきつづけとめどもない。わたしはすこしはなれた壁にもたれていた。見ていた。
うかがうように
赦した
そこに、だから
かすめとるように
あなたを。そこに
床の上、真ん中
まなざしにだけ
あなたは
昏がりに、ひとり
しのびよるように
しかも
引き攣りつづける
垣間見るように
うつくしい
肉体。稀れに見る
盗み見るように
赦した
華奢と典雅をのみさらした
そのいぶきを
あなたのすべてを
かがやく少女はいま
うばいとるように
息をふきかけないように
匂いたつ脂汗の雫に
略奪し
安全な距離に
悪臭を発し
辱めるように
身をまもりながら
しろ目をむいた。ふいのハオ・ランに、ふいに腕を切り落とされたハオ・ランはいまや、ただ激痛そのものでしかない。すさまじい傷みに、だからハオ・ランは骨髄さえも咬みくだかれた。ひらかれたままだった。わななきつづけるままだった。その口蓋。叫びはない。声にだされ得る限度をすでに越えて、傷みの氾濫。その再生しかけた腕にだけ凝縮し、肉体。切断の痛みなど蚊に刺された程度なのだろうか。くらぶべくもない再生の激痛が焰をなし、ハオ・ランは昏む。凄惨だった。目を背けたいほどの、凄惨。惡臭をのみ撒き散らし、うつくしさのかけらもない美少女の外貌。無慚な残骸。目をそらしせない。わたしは。その惨状から。腕はゆっくりと、そのかたちをとりもどし始めていた。色彩はまだ白い。不穏なまでの白。しかも筋肉と血管。色彩を浮かび上がらせ、複雑すぎたピンクの脈動。謂く、
女はささげた
じぶんで、じぶんに
その町。女は
愛さなかった
莫迦が莫迦に
莫迦と言い
莫迦が莫迦に
莫迦を見て
町。晴れた日
昼間。すがすがしい
町。しずかに
街路樹にひかり
色彩。ゆれ
ゆらぎ、風?
思わず、ゆれ
笑いかけ、風?
謂く、
女はささげた
風化してゆく
愛しようが
記憶など
じぶんで、じぶんに
すべて明けには
ないから。ないから
コンクリートは
その町。女は
残骸さえも
赦しようが
なにも、いちども
愛さなかった
女はささげた
じぶんで、じぶんに
その町。女は
愛さなかった
莫迦が莫迦に
莫迦をささやき
莫迦さえ莫迦に
莫迦を知って
はく。いきづかい
夜。さわがしい
雨。声に
水たまり。ひかり
波紋。ゆれ
ゆらぎ、風?
ふみつぶし、ゆれ
飛沫、風?
謂く、
女はささげた
倒壊してゆく
愛しようが
追憶など
じぶんで、じぶんに
すべて明けには
ないから。ないから
アスファルトは
その町。女は
瓦礫さえも
受け入れようが
須臾も、刹那にも
愛さなかった
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