アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -75 //あなたの肌にも/沙羅。いま/にじんでいくよ/白濁の帯びら//04





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





謂く、

   革命を!と

   おれが叫ぼう

   暇だろ?暇

   暇じゃん?…な?


   革命を!と

   だれが叫べど

   飽きたろ?秋?

   うつくしい秋…な?

謂く、

   革命を!と

      旗を持って

    美少年は

     銃弾に。ぶ

   おれが叫ぼう

      つぶされて。つ

    屠殺されるべきだ

     ふっとばされて

   革命を!と

      キャタピラに。ぶ

    うつくしいから

     穢くはっ

   だれが叫べど泣いているの?…と。なぜ?だから笑ってたの?いつもの容赦ない哄笑に。沙羅。うしろむきの。髪の向こう、かならずしも表情の明確をはあかさなかった沙羅。日射しの中、発光する肩。それが、頸。それが、あるいは背中。それさえもがこきざみにふるえ、しかもはっきりと。わななき。その事実に気づいたまなざしは、傷いの?まさか。…と。なぜ?それとも、と、返り見たその横顔を

   はっと

      失語

殴打した。葉子。顔面上の

   ひたいに

      絶叫

表情の事実を

   つき刺さるような

      手首が

確認し得る須臾の前に。その須臾自体を厭う間もなく十六歳のわたしは。あの代々木の部屋。窓のそとに、…なに?見やっていた突然の振り向きに、なぜ?沸き立った忿怒。その情熱。沸騰の必然などなにもなかった。だからしょせんは他人の忿怒。じぶんの手のひらに、じぶんの暴力がのこした弾ける傷みにしかし、なにも。わずかな驚きも。おののきも。忘我さえ。なぜ?たぶんもう葉子の存在自体に倦みきっていたから。知っていた。葉子の眼差し。…孔?そのどうしようもなく明晰な虹彩に見つめられた刹那わたしが壊れはじめるにちがいないと。十六歳の肉体の発熱。熱のなかの崩壊。破壊——自己破壊?その現在進行形を、——自然倒壊。たしかに

   もしも事象の地平の

      知ってる?

感じていたから。すでに

   その向こうに

      きみのせいで

知っていたから。たしかに

   目覚めていたのが宇宙なら

      花。燃えた

狂気。わたしはやがて

   わたしの完全な自己崩壊は

      きみが見たから

あるいは須臾のさき、ほんの

   そこにあたらしい

      知ってる?

ささやかなやがてにでも

   宇宙の凝縮

      きみを恨んで

とおいやがてでありえたとしても

   ないし膨張という事象を

      花。燃えた

狂気してしまうに違いないと、たとえば

   うみだすのだろうか?

      シカトしたから

葉子。彼女と

   その須臾に目覚める

      知ってる?

おなじように?引き裂く?

   原理的な永遠をはらんで

      きみを歎いて

胎を?いのちをはらむ腹。…わたしも?なぜ?赤の他人。葉子がそばにいる限り、崩壊の加速するままわたしの精神は、苛酷な狂気にふれるにきまっていた。防衛?葉子は——自己防衛?彼女は加害者だったから。殴打の瞬間、頸がそれだけ空中にのけぞり、停滞したその顎。突き出す。見た。

   やめて

      抉った

轟音?

   耳たぶだけは

      海を。ぼくは

たぶん、雨が降っていたから。

   やめて

      ちぎった

騒音?

   鼻の孔だけは

      波を。ぼくは

そのひびき同士がぶつかりあう破壊のひびき。つらなり、つなりの雑音?記憶などなにもなくとも最後の時期。葉子の、生きて在った最後の、だから八月。夏。ひややかなほどに雨ばかりだった例外的な本当に?射した。綺羅が。顎に。葉子。だからわたしのまなざしにさえも綺羅の群れがただ、その

   きみは

      絶対的水平

風景の中に、しかも

   うつくしい

      水平的傾斜

風景を射しつらぬいてどこに?向こうに?こっちに?思った。その沙羅の頸ごしにひろがった海。見むきもしていなかった。沙羅は。海など。それしかまなざしに見え得るはずがなかったのに。ふるえる肩。頸。その根拠など、だから虹彩の正面の海?——空?綺羅。生滅。たしかに、一面にえがかれたひたすらな青。見られていた。わたしのまなざしには。空も海も。沙羅のわななきをのみ見出していた目にさえも。その風景そのものに、なに?「違和感…ある、ね?」なんで?「だから、…」そう?「もう、…」違和感しかない。

   セヨ。ココデ

      ニ神国ヤマトノ

わたしには。

   ト殺スベキハ

      ソノ神トハタダ

沙羅に。

   愚民デアル

      精神ノ

わたしに。

   ソノ

      ソレ固有ノ

わたしの

   愚劣ソノモノデアル

      美デアル。決シテ

まなざしのなかの

   故ニ

      天皇ノ如キデアリエナイ

風景に。その

   貴様ノ

      天皇ハスデニ

綺羅に。だから

   ウチナル愚民ヲモ

      死ンダ。何故ナラ

沙羅。その

   ト殺セヨ

      彼等ニモトヨリ

ふるえにも。

   シカラズンバ

      精神ナドソンザイシナカッタ

わななきにも。

   死ネ。マヨイナク

      コノ故デアル。故ニ

だから、

   自裁セヨ。ソ

      彼等ハ肉体ノ

すべてに「違和感しかない」笑った。邪気もなく。だからわたしのささやき声に十八歳の清雪は。もう充分に「なんで?」そこに「理解できない」大人だった。

「ぼくの感性?」

   あれ?いま

      見ていようぜ

あかるい、ただ

「敦子さんの、じゃない?でも」

   妖精がわらった

      とろけた月を

ひたすらあかるい

「だれだって」

   きみの頭部で

      明け方に

清雪の声はひたすら

「考えて」

   あれ?いま

      抱きしめあっ

むなしく「考えてよ」と、わたし自身にさえ聞かれていなかったわたしの声の焦燥に、故意にかさねて清雪は云った。「違和感かんじるっていうのは、つまり、勝手にあなたたちのなかで、ぼくのイメージ?そういうの勝手につくっちゃって、で、なんかずれてってる気がするから、なんかそういう、…違う?もともと見えてるものが実は、あなたたちのイメージとずれてるんなら、違和もなにもないでしょ?小学生レヴェル以下の論理学じゃない?証明もいらない…ね。というか、それ以前に」

「なに?」

「口真似やめて」

「だれ?」

「敦子さんの口真似ばっか、してみせてくれるの、そういうのもういい加減やめたら?もっと、…でもなんで?」

「口真似って、さ。おまえ」

「せめて一度くらいあなたの本当に思ってることだけ、そのまま」

「だったらやっちゃえよって?」云ったわたしに、その須臾、清雪は言葉をうしなった。そしてすぐに素直に笑った。「…すごい。はやい」

「なにが?」

「変わり身、早い」

「追い詰めただけでしょ。勝手に、おまえが」

「なにそれ」いつもの、邪気のないまなざしをむける清雪をだけ、見ていた。二度目の例外。九月。壬生の麻布台の本邸で定例化された秋のお茶会、…親族のみあつめたささやかなものだったが、わたしが敦子に…だけ、に。強制的に参加させられたときに、…お願い。

   さっきから、そこで

      ゆびさきが

なに?その、コルビュジェ様式の無機質な家屋に、…会って。

   そこで、たしかに

      あまりに

清雪に?なんで?ひとつだけつくられた和室の向こう。あくまで…早く。もう

   ゆらいでいたもの

      きれい。きれいで

あなたに?…なんで?洋風の庭に、…その様式の名前は…違います。

   なに?それは

      なよ。なよやかで

正則が?知らない。お茶会もなにも…清くん。…あの子

   なに?そこで

      思わず、ぼくは

放っとけよ。あったものではない、と、哄笑をのみわたしに…お願いです。

   さっきまでそこで

      ゆびさきが

なんで?与えて。二度目だった。ここに…まえ、に。

   そこで、たしかに

      あまりに

なに?足を踏み入れたのは。葉子とともに…え、っと。

   壊滅しか

      なまめ。めかしくて

はっきり言えよ。引取られる騒然のなかではなくて、春奈が…だから手遅れになる前に。

   ん?

      やさし。さしぎずて

清雪が?…死んだそのかたちだけの葬儀。強制的に。そのときも敦子だった。だけ、だった。涙声に、わたしに懇願したのだった。あのときは電話ではなかった。店にまで来た。その夜、いかにも不似合いな、ただ悲劇をのみ見ている悲劇的な顏。さらにことさらに悲惨を撒き散らして。店に、じぶん周囲をだけ澱み翳らせた。眼だけうわむかせ、云った。

「さすがですね」

「なにが?」

   一瞬タリトモ

      純粋精神ニ

「こんな状況になっても」

「勝手に死んだんでしょ?…あいつが」

   家畜デアルナ

      苦痛ハナイ

「冷酷。いっさい」

「違う?」

   家畜ドモヲ

      精神ヲ超克シタ

「責任感かんじられないでいられるその」

「放っといて」

   屠レ。而シテ

      肉体ニ

「感性、やばい」

「傷ついてるって、…ね?」

   精神ノ王国ニ

      苦痛ハナイ

「尊敬する」

「想わない?眼の前の男だって」

   血マミレノ

      死トハ

「もう、そこまでいくと、」

「傷つているって。だから」

   報ワレルベキ一切ノナイ

      研ギ澄マサレタ

「お願いします。せめて」

「あなたがじぶんでじぶんにそう思ってるとおなじように」

   死ニアソベ

      肉体ニ捧グ

「人間になって」

「ひとりだけ傷ついた顔してるよ」

   徒労ノミガ

      恩寵デアル

「やめて」と、その清雪は「変な説得なんか、だから」言った。だから、「やめてよ」壬生の和室の親族たちの懇談。ことさらに声をひそめたせつないばかりの微弱音のつらなり。つつましさのうえにさらにつつましさをぬりたくったそれ。おしつけがましさにまでたかめられたそれらに、おしつけがましさをかんじないでいられた彼等十数人のおしつけがましさに飽和して、…敦子。庭、案内するね?見かねたらしい清雪がやわらかな声の耳打ちに、わたしをだけそっとつれだすのを敦子は見逃さない。わたしをはかたくなに見ないまなざしの集団から、引き剥がれた敦子はただ、なんのもの思いもなくわたしたちを目に追い、…お願い、と。声。あえて冷淡なだけのまなざしがこれみよがしに、そのなまあたたかな音声を

   きみ、すてき

      翳りが、その

耳に。わたしは、

   すき。すてき

      頬に。やがて

表情のないまなざしから眼を逸らしただけだった。「雅雪さんには、似合わない」むしろ、モネの、睡蓮への憧憬を実現させようとし、すぐさまに失敗する、あの「ぼくを、…だから、」ひかりを最終的にはつねに捉え損ねつづける色彩の集積。もはや「なんだろ?」なにが描いてあるのかさえ定かではなく、しかも「引き留めようと?…だから」見せられている風景がなんなのかだけはあまりに明晰な「めんどくさい。なんか、」そんな絵への挫折。植物と水と土。現実の視野には実現不可能な、だからこそ印象、と?敗北をは充分意識していたらしい庭。そっけない、他人のたたずまい。「しがんに」

「って…」ふと、わたしはななめ背後の清雪を「いま、」返り見る。「なに?」

え?

「なにに、志願?…なに?ハオ、いま、」

しがん?

「なんか、やってるの?そういう…公募?」

「此岸。…彼岸の反対」清雪は笑うしかない。まともに日本語をはなせない愚鈍な、だからあるいは父親であるべき男。わたしもすでに彼のために笑んでいた。

「白鳥、…だっけ?」

「白雪?…革命集団」

「おまえ、あいつらとなにやるの?」わたしに、清雪はなにも答えない。向けられていた素直な笑み。きざした軽蔑…に、ちかい感情の不快。ただ、見えて赤裸々だった。「クーデターでも?」

「彼等とは関係ないよ。ぼくは、…」

「愛されてるだろ?」

「ぼくが?」あのハオ・ラン。永遠の少女。あるいは、その頃にはまだかろうじて健在だった筈の汪黃鸎と名乗る自称中国人の、そのどちらかの好みで集められた美貌の男たちの集団。彼等のなかでひときわ若く間違いなくうつくしいのは清雪だったはずだった。「興味ない」

すぐさまにつぶやく。清雪に、わたしは笑った。「でも、おまえにそれ、」

「なに?」

「おまえの右翼ごっこ。焚きつけたの、あいつらじゃないの?」

「…って、彼等、どっちかって言うと左のほうじゃなかった?」

「北一輝だって基本、左だろうよ」

「ただのニイチェかぶれじゃない?ダーウィン?仏教、とか?なんか、その時の先鋭的思想っていうのと戯れたいだけのひと…似てない?」

「じぶん?」

「じゃなくて、雅雪さんたちの世代。むかし、フランスの誰それとか?ドゥルーズ?デリダ?有難がってたひとたち。…違う?」

「どこでそんな勉強するの?お前」

「それは、白雪」

「ハオだろ。…じゃ、」

「ちがう、」

「それとなく、お前に」

「…彼女は、」

「だれ?」と。彼女、…ね、と。清雪のななめ背後、紅葉の…なに?赤い葉。…いちょうではなかった。なに?ふれそうな、あやうい至近。ゆらぎ落ちた。色葉のゆれを見た。「汪さん」ためらいもなく清雪は言った。

「あの婆…」

わたしは眉間に昏い皴がよるのを押しとどめられない。意識はふつうを装おうとしていても、そのくせ、それほどの嫌惡があったわけでもなく。もう、まともに人間の言葉も話せなくなっていたにちがいない。いまや太古の生き残り。孫文の血を引くと自称した。日本で作った娘のひとりだと。そして父を追って渡った支那、と。あえていまそう呼んでおこうか。清の滅びの混乱と占領のそこに、ハオをそのどこかで拾った。そういつか、まだ言葉を知っていた口にそう語った老女。汪が中国語を話せなかったという噂は本当だったのだろうか?わたしはやさしい憐れみしか、汪に感じたことはない。しかも

「…でも、焚きつけてはいない。汪さんは、かならずしも」

   滑走?しかも、そこ

      感じた

まなざしのそこにはまさに

「いろんな話、してくれたよ」

   停滞。雲

      こめかみが

清雪。ふと、

「日本兵。嫌いじゃない?彼女」

   見あげた。ふと

      体温。じぶんの

気づく。彼には

「嫌悪してる…でも」

   収縮?しかも、そこ

      体温を、ただ

秋が、なによりも

「焚きつけたって言える人、あえてさがせば、たしかに」

   弛緩。唐突に

      他人ごとじみて

なんとなく、実は

「彼女じゃない?でも、」

   見あげた。ふと

      感じた。なぜ?

似合っていた、と。はかなげで、しかも

「逆に言えば」

   肥大化。しかも、そこ

      いま、空は

未来を感じさせてはくれず

「むしろぼくがあの人を利用して搾り取っただけ。汪さん如き、咀嚼して、消化して、で、排泄しちゃった」

「って、思う。」わたしは「みんな、」ささやく。「洗脳状態にあるときだいたい人間てそんな言い方する…らしいよ。生まれついての自分本来の考えだって、さ。おれ自身の意志だって、さ。から、こそ、洗脳じゃないの?」

「できないじゃん?」

「汪黃鸎?」と、オウ・オウ・オウ。それぞれにそのイントネーションは差異しながらも、日本語としては同一音の三連続。その名を実名と考えている人間などいなかった。まして白雪の利発な男たちにとっては、でたらめな冗談まじりの偽名としてこそ嘲笑された。

「でも、引き合わせたの、…だからぼくに、彼等を」

「ハオだけだよ」

「いっしょ。三年前じゃない?…たしか。その時には、もう…じゃない?もう、よぼよ…ごめん。失礼だね。さすがに。でも、あんな彼女に、なにが」と、そこに「なにができたの?」清雪はやがてほくそ笑みかけ「しようもないむかしばなし以外、」猶も、そのすがたはただ「なにが?」凛として、冴えて。謂く、

   あなたの肌にも

   沙羅。いま

   にじんでいくよ

   白濁の帯びら


   褐色のいろをも

   沙羅。いま

   にじませてしまうよ

   ふれたひかりら


   笑う。沙羅

   笑う。狂暴な

   沙羅。狂気した

   沙羅。だから


   笑う。沙羅

   笑う。わたしは

   沙羅。破廉恥な

   沙羅。その周囲


   とおまきにあなたを

   かこむ群衆を

   沙羅。無能な

   沙羅。ぶざまな


   とおまきに

      怒り。情熱が

    失語しかけ

     警戒。燃えあがった熱風。その名残りのように

   かこむ群衆

      ななめに

    その須臾

     水平に

   沙羅。無能な

      空間を裂き

    まぶたがふるえた

     情熱が

   沙羅。ぶざまな


   沙羅。ぶざまな

     情熱が

    まぶたがふるえ

      空間をいたぶり

   沙羅。無能な

     停滞

    そ。そ。須臾

      執拗に

   かこむ群衆

     煽られたいぶきがさらしたふいの窒息のよ

    叫びかけ

      怒り。情熱が

   とおまきにあなたを


   笑う。沙羅

   笑う。わたしは

   沙羅。かれらを

   沙羅。かのじょたちをも


   笑う。沙羅

   笑う。わたしは

   沙羅。笑うしかなかった

   沙羅。破綻者は、いま


   恥ずべきものなど

   なにもないと

   最初から、なにも

   もはや、すでに


   恥辱そのもの

   羞ずかしさそのものだったから?

   沙羅。あなたは

   沙羅。わたしも


   恥辱そのものでこそあった

      翳る

    かれらこそ

     一挙に

   見れば穢れた

      ぼくらは

    まさにおそるべき汚点

     底もなく

   沙羅。あなたは

      いっせいに

    彼女たちこそ

     損なわれてたんだ。もう

   沙羅。わたしも


   沙羅。かれらも

   沙羅。わたしたちは

   汚点そのもの

   過失そのもの


   沙羅。かれらも

      雲。翳った。だから

    あなたは

     光暈を

   沙羅。わたしたちは

      雲母たち

    穢い沁み。その

     横切った

   汚点そのもの

      散らしたよ。ほら

    褐色さえも

     鳥は。孤立

   過失そのもの


   過失そのもの

     鳥が

    褐色さえも

      霞を

   汚点そのもの

     翳った

    穢い沁み。その

      不確かな

   沙羅。わたしたちは

     綺羅を射し

    あなたは

      よどみを、雲

   沙羅。かれらも


   沙羅。わたしも

   沙羅。あなたは

   羞ずかしさそのものだったから?

   恥辱そのもの


   恐れるものなど

   なにもないと

   最初から、なにも

   もはや、すでに


   恐怖そのもの

   恐れそのものだったから?

   沙羅。あなたは

   沙羅。わたしも


   恐怖そのもの

      ひとびとの

    叫んでた?

     きみにだけに

   恐れそのものだったから?

      かれらの目さえ

    きみの耳。きみにだけに

     彼女たちの口さえ

   恐れそのものにちがいなかったから

      きみにだけに

    轟音が?

     わたしの頸も

   恐ろしかった


   厭うべきものも

   なにもないと

   最初から、なにも

   もはや、すでに


   沙羅。かれらも

   沙羅。わたしたちは

   破壊そのもの

   破綻そのもの


   禁忌そのもの

   穢れそのものだったから?

   沙羅。あなたは

   沙羅。わたしも


   越えてみようか?

   ふたり、閾を

   抜けてみようか?

   沙羅。つまさきのまえの境界を


   越えてみようか?

      あざけるように

    沙羅

     ゆびふれたすべて

   ふたり、閾を

      見くだすように

    あなたは。沙羅

     ののしるように

   抜けてみようか?

      目にふれたすべて

    わたしも

     近よってくるものたちを

   沙羅。境界を


   ふたり、限界を

     いたぶるように

    わたしも

      聞こえたすべてに

   抜けてみようか?

     とおまききのものらら

    あなたは。沙羅

      吹き出すように

   沙羅。閾を

     感じたすべて

    沙羅

      なじったように

   越えてみようか?


   うしなうものなど

   なにもないと

   最初から、なにも

   もはや、すでに


   喪失そのもの

   得られたものなどなにもなかったから?

   沙羅。あなたは

   沙羅。わたしも


   沙羅。かれらも

   沙羅。わたしたちは

   虚偽そのもの

   妄想そのもの


   喪失そのもの

      沙羅の睫毛に

    つぶやきかけた

     流れた

   得られたものなどなにも

      綺羅が

    喉

     肩に、髪

   虚偽そのものだった

      そして

    痙攣

     光沢が

   妄想その


   おののきさえも

   なにもないと

   最初から、なにも

   もはや、すでに


   戦慄そのもの

   わななきそのものだったから?

   沙羅。あなたは

   沙羅。その須臾さえも


   沙羅。だれも

   沙羅。わたしたちは

   無謀そのもの

   狂気そのもの


   戦慄そのもの

      腕。そこに

    立ち上がった

     無理やり跳ねたひと

   わななきそのものだった

      のばされ

    しろい肌。女

     まげた腰に

   無謀そのもの

      ふと

    逃げかけ…どこ?

     へし折ったに似た

   狂気そのもの


   肉体はいつも

   わななきそのものだったから?

   沙羅。わたしは

   沙羅。その須臾さえも


   沙羅。だれも

   沙羅。わたしたちは

   自虐そのもの

   嗜虐そのもの


   だから、そこに

   さらされた肌に

   沙羅。赤裸々に

   光りら。しろみ


   にじみ、汗ばみに

   火照らされ、肌に

   沙羅。赤裸々に

   光りら。ゆらぎ


   撒かれた匂いに

   綺羅散る肌に

   沙羅。無造作に

   光り。掻きむしり


   さらされた肌に

      散った

    撒かれた匂いら

     骨。火照り

   光りら。無防備に

      汗。肌。白濁

    いま、ただ

     無慚に

   しらみ、にじみ

      汗ばんだ

    綺羅ら

     臭気は

   沙羅。匂う


   纏う。肌が

   むしり取ったかに

   沙羅。色彩を

   その消滅さえも


   いぶく。肌が

   沙羅。破廉恥に

   そのきわだちを

   沙羅。その褐色は


   纏う。肌が

      ななめに臂が

    ばかばかしいほど

     うなだれた

   沙羅。色彩が

      だれ?

    笑う声

     老人が、顎を

   いぶかれ。肌が

      唾を吐いた、その

    背後

     灼けたひたい

   沙羅。破廉恥をさらす


   沙羅。破廉恥をあばく

      足元に

    たちどまりかけた

     ふっ。ふんだ

   いぶく。肌が

      ほら、爪

    その須臾

     貝殻。ちいさな

   沙羅。色彩が

      爪のさき

    なにを?

     しろい。砂よりもし

   纏われ、肌が


   沙羅。頽廃。沙羅

   わたしたち。すでに

   吐く息も

   吸い込む大気も


   沙羅。頽廃

      すすりあげた大気も

    みごとな頽廃

     熱気が

   吐かれた息も

      もう、すでに

    頽廃。救えない

     もう、そこに

   吸い込む大気も

      吐きすてた息も

    わたしたちの

     熱気。容赦しない

   すべて頽廃


   沙羅。頽廃。沙羅

   わたしたち。そこに

   みだれた息も

   こすられた大気も


   沙羅。頽廃

      脇にこすれた大気も

    完璧な頽廃

     臭気。潮?

   みだれた息も

      もう、すでに

    頽廃。救えない

     もう、そこに

   こすられる大気も

      あららぐ息も

    わたしたちの

     息の?だれ?肌の?

   すでに頽廃


   吸い込み、きわだち

   わたしの?いまも

   沙羅の?色彩が

   褐色の、だれの?


   沙羅。破廉恥をさらす

   いぶく。肌が

   沙羅。色彩が

   纏われ、すでに


   肉体はいつも

   もはや暴力にすぎなかったから?

   例外そのもの

   稀有そのもの


   例外そのもの

      ぼくたちは

    沙羅。あなたは

     暴力

   稀有そのもの

      だれも

    その須臾

     いま

   異端そのもの

      ぼくたちは

    須臾にさえ

     肉体が傷み

   特異そのもの


   人間たちなど

   ふみにじろうか?

   沙羅。もはや

   すでに、最初から


   人間たちなど

   死んでいたから

   沙羅。もはや

   すでに、最初から


   かぞうべくもない

   むれなす顔さえ

   顔のむれ。むれ

   滅びきえされ


   人間たちなど

      笑っ

    目。ね?くりぬいてよ

     降る。る

   ふみにじろうか?

      もっと

    で、…さぁ。あ

     日射しが、ただ

   人間たちなど

      辛辣に

    のけぞってみせて

     救いようもなく

   死んでいたから


   自死していたから

     救う気もなく

    のけぞってみせて

      あくまでも不埒に

   人間たちなど

     日射しが、ん?ただ

    で、さ

      もっと

   ふみにじろうか?

     そそぐのだった

    目。ね?えぐりぬいてよ

      笑いころ、ろ、ろ

   その屍をふんで


   人間たちなど

   蹂躙しようか?

   沙羅。もはや

   すでに、最初から


   人間たちなど

   不在だったから

   沙羅。もはや

   すでに、最初から


   かぞうべくもない

   むれなすかたちさえ

   形象のむれ。むれ

   滅びきえされ


   人間たちなど

      きみの

    ね?わかる?もう

     壊されてしまえと

   蹂躙しようか?

      横向きの顎に

    ぼくたち、みんな

     きみが、むしろ

   人間たちなど

      ふと、ぼくは嫉妬した

    滅びてたんだよ

     願った?

   不在だったから


   見当たらないから

     乞い願いさえも?

    滅びてたんだよ

      侮辱にすぎなかった

   人間たちなど

     きみが、むしろ

    わたしたちは、みんな

      肩。そこにかたむき

   蹂躙しようか?

     凌辱されろ、と

    ね?わかる?もう

      毛先が、撥ねていた。繊細に

   屍を散らして


   人間たちなど

   投げ捨てようか?

   沙羅。もはや

   すでに、最初から


   人間たちなど

   欺瞞だったから

   沙羅。もはや

   すでに、最初から


   かぞうべくもない

   むれなす色さえ

   色彩のむれ。むれ

   滅びきえされ


   人間たちなど

      精神が

    きみが、傷い

     わたしたちは

   投げ捨てようか?

      肉体の翳りに

    沙羅

     見蕩れていたのだろうか?

   人間たちなど

      すでに失禁を

    きみが

     狂ったあなたに

   欺瞞だったから


   でたらめだから

      まるで瀟洒な汚物入れの口径にそっと排泄されたていたかのように

    きみに

     残酷を、きみに

   人間たちなど

      だれに?

    沙羅

     悲惨を、ただ

   投げ捨てようか?

      肉体が翳り

    骨髄が、傷い

     きみの発狂に

   その屍をわらって


   人間たち。その

   屍のうえに踊ろうか?

   沙羅。もはや

   すでに、最初から


   人間たちなど

   滅んでいたから

   沙羅。もはや

   すでに、最初から


   だから、そこに

   さらされた肌に

   沙羅。赤裸々に

   光りら。白濁


   沙羅。破廉恥な

      人間たちは

    ながれ、雪崩れ、いま

     屍のむれは

   いぶく。肌が

      ほら。ほら

    白濁。にじみ、ひかり

     ん?

   沙羅。火照り

      死滅していた

    あばかれた

     喰いあらされた

   匂い、匂い、いま


   匂い、匂い、いま

     屍の肉は

    さらされていたね、すでにしら砂をふみかけた踵

      死滅していた

   沙羅。火照り

     は?

    白濁。にじみ、ひかり

      なに?え?

   むせぶ。肌が

     喰いつくされた

    ながれ、雪崩れ、いま

      人間たちは

   沙羅。破廉恥に









Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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