アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -67 //ひらかれた。いま/扉は、沙羅。いま/目のまえ。ふいに/沙羅。返り見た//05





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





謂く、

   大量に噓

   ついてくれ。そこ

   耳をふさいで

   聞いててやるよ


   あり得ない噓

   ついてくれ。そこ

   眸をふさいで

   見つめてやるよ

謂く、

   大量に噓

      知らないんだ

    話そうよ。もっと

     きみの愛しかた

   ついてくれ。耳に

      きみ、まだ

    いっぱい

     きみ、まだ

   あり得ない噓

      ぼくの愛しかた

    ばかばかしいくらい

     知らないんだ

   ついてくれ。眸に疑問。だから、いくつものかたちで、ただ一つの疑問がゆらめく。ゆらめき、…なぜ、傷み。くずれ、そこに壊れて…なぜ?傷み。かならずしもねじれ、…愛してなど。とろけるようにもうなんら、…なぜ、傷み。それでも猶も、ゆらめきつづけ…なぜ、傷み。原型さえも留めずに、…なぜ?疑問。春奈は、だからあるいは、ときにはあの虐殺されるべき犯罪者の葉子さえも、わたしに…なぜ、傷み。執拗にあたえた、——壊れるしかないいきものたち。ただ、精神の崩壊その現在進行形のなかにたしかにわたしたちに…だれ?ささげさせる、かみつくようなそれ。傷み。ふるえていた指さき。ちがう。それは、春奈のこころが急激に砂の山。くずれくずれるままにまかされるしかない故にこそのふるえ?…まさか。健全な春奈。彼女も、ふるえを。だからわたしのまなざしのなかに、出会いの最初と再会の数日にだけ見せたほんの短期間の三日くらい?ぜんぶで。なかにおいてすらその指さきはいつも、ときどき発作。だから発作的なそれ。疾患?理由は知らない。たぶん、

   ささやかな

      いたっ

ずっと以前から

   笑みを。ふと

      なんで?

ついてまわっていた、そんな

   きみにだけ

      舌の表面の真ん中ややみぎななめが

ささいな破綻の

   ささげたくなっていた

      傷むよ

ささやかなきざしにさえ、ななめに射しこむ

   午後の無言

      なんで?

ひかり。それら不用意な、だれにも望まれていなかった横溢のなかに、

   ささやかな

      いっ

傷みを。切実なだけの傷みを、春奈は。…なぜ?傷み。なぜ?そんな、不穏なまなざしは「いつから?」

「ぼく?」

   なにも、いつでも

      沈むような

あるいはすでに、その十六歳の

「いつやめたの?」

「絵の方?…じゃなくて」

   わたしたちは

      深い色彩を

清雪をさえも、すでにいわば

「でも、勝手に」

「必要?」

   語らないのだ

      そこに、その

確定的な壊れもの。たとえば

「だから両方」

「許可。あなたの」

   ほんとうに

      虹彩は

砂の山の如き?

「ピアノも、油絵も」

「パパしてるつもり?…」

   たいせつな、ことは

      棘、ありますか?

と、…して?

「なんで?…おれ」

「…かなって。でも」

   なにも、いつでも

      冴え切った

そこに見出されていたのだろうか?事実

「意外にさ、お前、将来」

「やめたら?そういう」

   蝶たちは

      容赦ない色彩を

清雪のすべて、それら

「なにを?」

「似合わない…ね?」

   ほのめかさないんだ

      そこに、その

わずかな挙動のわずかなそれでさえもが

「パパのふり…みたいな?」

「いっぱい、話そうよ。いまと」

   ほんとうに

      ん?

傷かった。わたしは

「だからもう、いま」

「だから、さ。いまとはぜんぜん違う」もはや。ガラスの「…未来について」向こうには、街路樹。三月はじめ。すでにもう、葉の色を撒き散らし、さびしさなどいっさい思い出させないおしつけがましでわななき、街路樹。樹木。うっとうしい綠り。しかも

   夏の匂いを

      抱きしてほしい?

ひかりの群れの

   すでに、ぼくら

      やだ。やだね

飛び散りつづける

   ぼくたちだけは

      すがってほしい?

拡散。散乱。あるいは

   嗅いだのだった。まだ

      やだ。やだね

帯びをはなしえない

   春の花さえ

      傷めてほしい

白濁の微細。無造作に

   蕾むさなかに

      やだ。や

「…未来?」綺羅。

「可能なかぎりの、ぼくの未来の可能性について」

「莫迦」笑ったわたしは、清雪を罵倒したのでもいさめたのでもなかった。眼の前にもう、たしかに自立しかけた少年がいた。不遜なまでの自立。特異性。シンギュリ、…ラ?…ル?…ティ。…だから、経済的にいまだ誰かしらに依存していようが知った事ではない。そこには慥かにひとりの、まぎれもない清雪がひとりで生きていた。不安も恍惚もなくただ、あくまでも孤立を素直にさらしたいきもの。いまさら諫め、叱る言葉などあり得る可能性などない。そう想われた。わたしには。たぶん、敦子には

   苛烈に、いま

      天皇制トハ

違ったのだろう。その

   木の葉。葉ゞさえ

      先ノ敗戦後ニハジメテ生ジタ

前日、愛子のゆくさきを

   こすれているよ

      或ル自虐的ナル

あやぶむばかりの執拗な危機感と、そして

   窓のむこうに

      擬態ノ

無造作な絶望に自虐する電話を

   鮮烈に、いま

      民族的事象デアル

よこした。敦子にとって、たしかに猶も清雪は、じぶんが手を離したらすぐさまに、その失落の速度に燃え尽きてしまうにちがいない、いきもの。ごく弱く、ごくごく弱く、だから弱すぎる、…と。そう見えていたのだろうか。ひとり語りの、やがて追い詰められた興奮の頂点、涙声にゆらめきつづけた声は。

「どんな可能性があるの?…おまえに」

「わからないじゃない?だって、意外に」

「早死にする意外に」と、そしてわたしは不用意に笑う。その声の下品。糞。カス。すでに見慣れた未来予想図。清雪に、しかし、わたしだけでは。ことばにしないだけ。だから敦子も、…稀薄な嘲笑。その、すぐさまにわたしを後悔とおののきが咬みちぎった。どこまでも、空虚な孔ぐらにでも落ち込んでしまったかの、そんなふとした清雪の唐突な茫然。眼のまえの

   忘レテハナラナイ

      悲しいね

沈黙。

   日本人ハ、スデニ

      晴れたお空に

須臾だった。

   敗戦ノ焦土ニ

      蠅が飛ぶ

ほんの一刹那という語をさえ満たさないみじかい、

   滅ビテイタノデア

      さび

とはいえ。茫然。…いや。むしろ冴えていた。正確には、清雪の意識は、しかもその瞳孔さえもしっかりと捉えたわたしを捉えつづけたまま、ひとり、昏んだ。明晰さを澄み切らせて。だから「ぼく、ね?」

「ごめん」

   聞いていた

      かさなりあう

「確信あるんだよね…実は」

「気に障っ」

   きみの声に

      色彩。窓の

「ちがう。…じゃな、なくてってか、確信犯的にそういう未来、ぼくに見」

「おれはべつに」

   そのひびきをだけを

      むこうに、ほら

「殺したいのかな。みんな」

「じゃないから。だから」

   今日は、なにも

      は。葉ゞ。はっ

「敦子ママとか、実際、」

「莫迦。おまえ」

   なにも特別な

      ぼくは見ないけど

「なんであの人が、あんなにうざく、ぼくを」

「言っていいことと、」

   特別な日じゃなく

      ゆらぎあう

「ちがう?」

「なにが?」

   聞いていた

      色彩。窓の

「心配?あなたは」

「ちがうでしょ。それは」

   きみの声に

      むこうに、ほ

「ぼくが心配ですか?」そのなんの神秘もないひとことの凡庸。赤裸々に、なぞとしてだけわたしの喉の奥を焼く。「…べつに?」

「噓」笑った。清雪が。そこに。

   茫然。…

      ん?

うつくしい。たしかに、

   絶句。…

      ん?

もう、あるいは泣きふしてしまいたくなるほどに。だから、すべて投げ出してしまいたくなるくらいに。泣きながら笑ったに似た眉は、昏さなどかけらもない。「心配されたいんだろ」わたしが嘲弄の、これみよがしなささやきを、しかも故意に下卑たそれ。燃え上がるような嫌惡。自虐など。あくまでも、他人にむけた嫌惡。わたしは「へただよ。そういう、ひよわさの」

   ぶっ。さっ。さっ

      カップに

「充分。ぼくは」知っていた。いま

「仮面かぶって、おまえ」

   ぶっ刺してよ

      ふと

「もう、敦子さんだけで、あの」彼にささやきたいのは

「まどわせて見るの…」

   網膜に

      そっと

「うざさだけで」そんな言葉では、そんな

「知りたい?もっと」

   薔薇の茎

      波紋が

「だって」どうしようもない、くだらない

「もっと、上手な」

   ぶっ。さっ。さっ

      はっ

「わかる?めせんかんじて」戯れ言の無能などでは、だから

「甘え方…おれ」

   ぶっ刺してよ

      お冷に

「ふりかえったら、いつも」もっとせつない、すなわち

「愛されてんじゃん」

   まぶたに

      ふと

「愛?…」いたましいほど、留保なくそこに

「違う?…いや?年増の、」

   百合の茎

      そっと

「って、それ」ただ切実なだけだったわたしの懊悩。それを赤裸々に

「愛情。すっげぇ」

   ぶっ。さっ。さっ

      水滴が

「なに?」移しとった?…に、

「おしつけがましい」

   ぶっ刺してよ

      はっ

「ね。…がっかりさせないで」誠実によりそった?…そんな

「くさみばしっ」

   眉に

      だからぼくらは

「他の莫迦たちとおなじように自分でまともに定義さえできてない空っぽの言葉なんか他人にいちいち投げかけないで」どんな?もっと

   一息に

      あ。…あ

ふさわしい焦燥。ふさわしい

   言い切るにはながすぎた

      ん?…あ

言葉。そうであるはずだった。そこに、

   言葉。それを

      れ?…あれ

わたしはその

   ひと息に

      ん?…あ

わたしじしんにとってさえ、わたしはいま

   はきすてて、…なぜ?

      あ。…あ

不当だった。

   きみは、あまりにも

      ん?…ん、

赦せなかった。

   やさしく笑むの?

      れ?…あ

赦されるべきでは「…ね?なんで」声。その「ぼくたちってみんな、こんなに簡単に馬鹿になれちゃうんだろうね?」

「って、…ね?」

   ぶっ。さっ。さっ

      咬んでいたんだ。思わず、ぼくらは

やさしい、声。清雪の、「ぼく、たぶん」

「いじめたくなる」

   ぶっ刺してよ

      他人のかなしみ

たとえば春奈がいま「思うな…じぶん」

「なんでだろう?おれ」

   耳孔に

      テーブル。そのしろい表面に

聞いたら、ここでいま「意外に長生きしそう。ぼくを」

「おまえを、ときどき」

   ひまわりの茎

      ふと

清雪に、「あやぶんでたひとたちが」

「ふみにじって」

   ぶっ。さっ。さっ

      そっと

なんと?「死んだ後も、たとえば」

「九十歳まで?」その魅力的な笑み。わたしは、せめて並んで見せようと?極力おなじように、笑み、おなじようにうつくしい少年だった老いぼれの矜持?わたしは、だから抗いの笑みに、「もっと、」挑戦。しかも「百歳以上…って」むしろ「想ったりする。…ぼく」失敗をのみ、求め。「最近」…生け花?はじめた、と、その

   ありがと

      なに?

清雪はそこに、

   いまの、意外に

      おれの?

そっと、だから

   本音だよね。意外に

      ふみにじ…

むしろ秘密を

   はじめて?…

      ちがう。…じゃ、

告白するかに想わせて、…ね?

   意外に、…じゃ、

      ないから。じゃ、

好きだったりする。なんか

   ない?はじめて

      ない。そういう

…ね?と。あくまでも

   ほんとのきもち

      ちがうから。勝手に

繊細なやさしさにかすむ

   いわれた気、いま

      勘違いしな

声。その

   した

      おまっ

清雪はささやく。「禪。…瞑想と、生け花。…ちがう」

「なんで?」

「独学だけど」謂く、

   記憶されなかった女

   いちども、あなたが

   思い出すべくもなく

   女。その女


   見つめていた女

   なんども、あなたが

   見つめつづけた

   女。その女


   きれい…これ?

   かわいい…これ?

   これが?だって

   きれくて。で、かわいくて


   なぜ?なぜ?

   愛せるの、なぜ?

   いやじゃない?なぜ?

   やばっ。かなしいね


   きっと、そのうち

   こころがきざし

   おおきくなって、で

   なに?なに、する?


   逆光に、あわく

   笑ってた?女

   頸を傾げる

   まよいない、女

謂く、

   きっと、そのうち

      汗粒。ひたいを

    ほのめかすような

     あぶなっ

   こころがきざし

      あなたに、しかし

    笑み。その女

     ほら、いま

   おおきくなって、で

      気付かれないまま

    ほのめかすような

     あぶっ

   なに?なに、する?


   逆光に、あわく

      信じてない

    夢を見て

     わたしさえ

   笑ってた?女

      あきらかに

    夢語り

     たしかに

   頸を傾げる

      だれも

    そんな声に

     信じてさえいた

   まよいない、女


   知られなかった女

   いちども、あなたが

   知るべくもなく

   女。その女


   ふれていた女

   なんども、あなたが

   顔をうめていた

   女。その女


   やさしいの…これ?

   すっごい、…これ?

   これが?だって

   パパに似て


   だれ?だれ?

   パパ、だれ?

   おれ?だれ?

   この子、やさしくなるね


   きっと、そのうち

   かんがえられないくらい

   やさしくなって、で

   なに?なに、する?


   至近に、昏む

   笑い声。女

   ただ、なにげなく

   惡気のない、女

謂く、

   きっと、そのうち

      痙攣。目じりに

    そそのかすような

     あぶなっ

   かんがえられないくらい

      た。たしかに、しかし

    吐息。その女

     ほら、いま

   やさしくなって、で

      いちどだけ

    そそのかすような

     あぶっ

   なに?なに、する?


   至近に、昏む

      かなしくない

    まぼろしを見て

     わたしさえ

   笑い声。女

      なにも

    まぼろしに話す

     た。たしかに

   ただ、なにげなく

      すこしも

    そんな声に

     かなしみを咬み

   惡気のない、女


   ささやかれなかった女

   いちども、あなたが

   ささやくべくもなく

   女。その女


   抱かれていた女

   なんども、あなたが

   身をうずめた

   女。その女


   あたま、いい…これ?

   だってさ、…これ?

   これが?だって

   もうことばさえ


   ほら、話しそうで

   呼んで。名前

   だれ?名前

   パパの名前。ね?


   きっと、そのうち

   笑っちゃうくらい

   かしこくなって、で

   なに?なに、する?


   ふいに、かなしく

   声を、女

   かたむき、しかも

   笑いはじめ、女

謂く、

   きっと、そのうち

      見つめた。目

    確信していた

     あぶなっ

   笑っちゃうくらい

      なにを?しかも

    幸福。その女

     ほら、いま

   かしこくなって、で

      見つめていた、その

    見紛いようもない

     あぶっ

   なに?なに、する?


   ふいに、かなしく

      ばかばかしい

    未来?ある?

     話そうよ

   声を、女

      いうまでもない

    だれに?

     未来の、あるべき未来の

   かたむき、しかも

      あきらかな

    ぼくら、未来?

     話していようよ

   笑いはじめ、女


   赦されなかった女

   いちども、あなたが

   赦すべくもなく

   女。その女


   笑んだ女

   なんども、あなたが

   笑みかけていた

   女。その女


   傷い。なぜ?

   だめじゃない?…これ?

   わたしが、だって

   ママじゃ、だって


   やばくない?なぜ?

   かわいそう、なぜ?

   だめじゃない?…ね

   悩んじゃうよね


   きっと、そのうち

   生きられないくらい

   苦しくなって、で

   なに?なに、する?


   逆光に、あわく

   なにを謂うべき?

   ほほ笑みに、咬む

   怒り。と、傷み

謂く、

   きっと、そのうち

      ひらき。鼻孔を

    さとしたような

     あぶなっ

   生きられないくらい

      あなたに、しかし

    笑み。その女

     ほら、いま

   苦しくなって、で

      息を吸わない

    いさめたような

     あぶっ

   なに?なに、する?


   逆光に、あわく

      あやういね?

    傷みがもう

     だいじょうぶ。いまも

   なにを謂うべき?

      きづかないよね

    四面四維にも

     叫びそうになったの

   ほほ笑みに、咬む

      あぶないけどね

    待ち受けて

     他人じゃね?だいじょ

   怒り。と、傷み







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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