アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -64 //ひらかれた。いま/扉は、沙羅。いま/目のまえ。ふいに/沙羅。返り見た//02





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





謂く、

   さくら、好きですか?

   ええ。わたしは

   嫌いです。あれ

   ずぼらですから


   さくら、焼きますか?

   いえ。わたしは

   焼きます。あれ

   大味ですから

謂く、

   さくら、好きですか?

      らいら、ららいれっら?

    空がちかすぎて

     ひとつひとつが

   はい。嫌いです

      らい。ららいれっ

    燃えるようです

     燃える石なら

   さくら、焼きますか?

      らぁ、らいらっら?

    もう燃えました

     愛されたものを

   いいえ。焼きます

ふいにひらいた眼に、…視野。だから、まなざし。沙羅。そこに不在。まなざし。わたしのそれに、沙羅。その不在の風景。バスルームにひとり立って行ったのは知っていた。あお向けたまなざしはただ、天井から壁、あるいはまなざしの捉え得た範囲を越えたそこらじゅうにまで雪崩れた陽炎を、だからその

   見てた

      せめて

ゆらめき。あやうい、

   いきをひそめて

      わたしの肛門に

しかしかろうじて、

   見てた

      丸太、ぶちこんで

猶もたしかに

   こわさないように

      くれませんか?

形態。色彩。綺羅。翳りに似、ゆれ、ゆれてくずれ、ゆらぎつづける陽炎。それは窓のそとの、なんの反映だったのだろう。しかも、七階だったというのに。あまりにもしずかな部屋だった。音もなくくずれ、まえぶれもなく散り、ひたすらゆららぎ、ひかり。わたしはそこに綺羅。唐突な綺羅。須臾、それらに…なにに?すべてにふいに不穏を、なぜ?なんの切っ掛けもなく感じられたあざやかな

   見てた

      せめて

不穏。

   体毛をひそめて

      わたしの鼻孔に

眼の前の

   見てた

      丸太、ぶち

至近、いきなり他人の

   こわさないように

      くれませんか?

忿怒がつきつけられたかにも、ん?立ちあがっていた。わたしは。行った。バスルームに。なぜ?その理由。わたしはひとり、ん?バスルームのかたわらにまで接近しかけ、気付いた。ん。ふれた。ゆびさきは、なかば開け開かれたままのすりガラスに、戸に。バスルーム。すでにそこをさわがしてあるべき水流の、飛沫散るひびきの、不在。沙羅が用を足しているなら、たしかに飛沫のひびきが噎せ返る必然など

   見てた

      せめて

ない。なら、

   全関節をひそめて

      わたしの口蓋に

なぜ?シャワー・ノズルの不調なら

   見てた

      丸太、ぶちこ

わたしの知ったことでは

   こわさないように

      くれませんか?

ない。なら、なぜ?あるいはそこにたとえば貧血で倒れた沙羅のつんのめった肢体がわなないていたなら、そもそもその倒壊の響が盛大にたっていたはずだった。なにもなかった。そんなもの。だからなにも起こっていなかった。妄想?あるいは沙羅が口蓋をひらいて、そこに血と肉の色のをのみさらけだした剝き身の巨大な蜥蜴でも咥えているとでも?眼がなく触手だけはいきいきした翼のある蜥蜴を。あるいは沙羅が

   見てた

      虚構であった

自分の肛門から

   頸椎をひそめて

      ぼくのすべては

内臓を引きずり出して、そこで

   見てた

      虚妄であった

しずかに

   こわさないように

      きみのすべては

手入れをしているとでも?その体毛だらけのやわらかな器官を。あるいは沙羅が通風孔からふいに侵入した蛇と猨と孔雀との複雑なキメラにやさしいほほ笑みのうち餌を与えているとでも?そのまだ新鮮な自分のひだりのふとももを。見た。こちらむきの沙羅が自分の股の間を

   怪物が目覚め

      ケツにピアス

見ていた。

   目覚めた夜には

      そしておのにく

立ったまま、わたしには

   星がふり

      陰嚢にピアス

敢えて、…敢えて?気づかない。気づいていたとして、そぶりもせずに。ややあって思った。沙羅のそこが、波の満ち引きにおなじくに、周回する月の影響をさらしていたとしても、それになんの不思議が?

   海を!膿を!

      月かげり

と。匂う。ふと、

   感じるのだ。ぼくは

      獏がもんどりがえって

じぶんの

   ぼくの肉体に

      ケツの孔

匂い。まだ

   膿を!海を!

      いたぶっていたよ

沙羅にやや離れたそこ、だからなんのひびきも湿気もない空間。乾いたうすくらがり。ふいの至近に、わたし自身の。息づかいの音を聞いた。だれの?そんな気がした。しかも、なにも。聞こえはしなかった。そんなものなど。匂った。鼻孔に。たしかに、血。あるいは汚れたその部位。まさか。とおい。じゅうぶん以上に、口蓋。沙羅。ひと眼を知らない、無造作であいまいな開口。醜さ。

醜悪。口も、頸だけ折れた前かがみも。つきだされた下腹部。その彎曲。ひろげられた股。いじる指。明け方。

   だれ?あなた

      ぶはぁっ…って。さ、

おまえ、だれ?と、そのくちびるが

   そこでわたしに

      存在しない。破壊しうるものなど

見ないで。その、唐突に「だれ?」

   見蕩れてた?

      ぶはぁっ…って。さ、

そんな眼で、いま、ひらき、ひらかれるまま「おまえ、だれなの?」

   見ないで。あなた

      有り得ない。破壊という事象は

血走り、そこ。…吐き出された「見ないで、…おれを」

   だれ?あなた

      ぶはぁっ…って。さ、

やめて。声。見ないで、と、そこに「なんで?そんな、」

   その血走った、執拗な眼

      なにものも終に破壊の埒

ぜったい、見ないで。こぼれ落ちていた「血走った眼で、いま」

   見蕩れてた?

      ぶはぁっ…って。さ、

きたない、おれを、…と。声。切実。「お願い」ハオ・ラン。その「見ないで」集中力のためてていない切迫。ささやいていた。わたしはハオ・ランを。かたわらのハオ・ランの右腕をぶった切ったふいうちのハオ・ランを。

   ん、と、思わず

      ちいさく、そっと

眼。

   息を、つめた

      ななめに、しかも

剝き出された

   快感。そんな

      ささやかに、ずっと

眼。あからさまな眼球がもう、そのハオ・ランの眼窩に飛び出してしまう危険をあやうぶみ、その三月。だから二十度目?十九度目?…迎えてしまったわたしの春。さくらを見に、そこに。まだ夜明け前のその公園に、しかもなにも。そんな毎年の春の花になどなんの興味もないことなど、しかし丁寧にじぶん自身にさえ

   好きだ!好きだ!好きなんだ!

      月の実体ば

かくしとおした。

   噓だ!噓だ!噓なんだ!

      デス・スターでず

ハオ・ラン。壊れる春奈を、わたしたちはもはやもてあましていた。いたずらなハオ・ラン。ときにわたしたちのもてあましは虐待にも似、暴力にも似、似ただけのそれらは肉体にはただのそのものだったにすぎない。嘲弄。まなざし。ハオ・ランは、わたしに、なぜ?さらけだしたまま、なにを「さくら、」あざわらうの?「見に、いこっ」振り向きざまに笑みを、ハオ・ランがわたしにだけに

   こっ。こっ。こっにぃいむ

      ほら。いま

くれた。その

   むぃにぃこっ。こっ。こっ

      きみに、愛

足元。サッシュのガラスのいちばんひくいそこにのけぞり、頸と鎖骨だけのけぞらせ、春奈。もたれかけ、もたれきれずに頽れかけた春奈。空中に、支えのないあやうい痙攣の春奈。片臂に支えた、上半身すべての過呼吸。いつもの春奈。稀れでもない春奈。だから、なに?春奈。あえぐ声。ひたすらなぶざま。なすすべもなさ。手遅れ。まだ、なにも壊れては、——ただの過呼吸。ただの発作。ただの捨て置き——いいの?

   おれたち、いつも

      れおちた、もつい

なに?

春奈、いいの?

   どもる。そんざいが

      が。ざいそん。もどる

だれ?

死んじゃう…春奈

   どもる。血管が

      もどる。が。間歇

なんで?

ここで、春奈

   ぶれる。どもる

      もれる。どぶる

なに?

いいの?「見たくない?」ハオ・ラン。故意の「さくら、なんか、さっ。いま、」微笑。余裕のない「さっ。見たくな、」嘲弄の「ない?いま、さっ」笑みに、たぶん「春じゃんっ」泣き崩れる寸前のハオ・ラン。逃亡?引き攣る春奈を捨て置いたのは、逃走?意図されざる、しかもその意図のあきらかな存在に気づかれないままの。かったるいエレベーター。重力の不穏。それだけ。なんら速度を感じさせない加速。じれた。じれていた。じれて飛び出した外、そして肉体。ふたつ。エントランスのオートロックをこぼれだす肉体は、無防備に塗れたのだった。騒音に。おびただしい、だがもう聞き慣れた、しかしはじめていま聞くにはちがいない、みずみずしい、倦怠?「好きだった?」

「だれ?」

須臾、ひびきのつらなりがわたしの息をだけ「好きだったら、」

「だから、だれ?」

ひっ詰めた。なにも、と。もう、うるさすぎてなにも「でも、敦子ママは、たぶん」

「敦子?」

聞こえない。笑う。走った。たわむれた。桜ケ丘のほうには「好きですよ。ママは、眞沙夜さんが、…」

「勘違い。それは」

行かない。ハオ・ラン。空中にころがる。ハオ・ラン。撥ねころがる。ハオ・ラン。坂道を「噓。ぼくは、」

「なんで、いま?」と。そしてふと、十三歳の、夏の清雪はほほ笑んだ。走る。ハオ・ラン。クラブの前を失踪する。松濤。あの、ちいさな公園に。髪を無造作に大気に乱した。散らした。ハオ・ラン。少女の髪。あどけない髪。だからやがてたどりついた夙夜の色彩。花。静まりかえっていた。花。その公園に、花のいろさえ、池の上のほう、さくら。ゆれないみなもに反映したいろも。花。街燈の複数。だから複数の綺羅。足元には、見ればたぶん複数の翳り。立ち止まったハオ・ラン。そこに、その永遠の中に取り残されてしまった肉体が、「…ね?」

息を吐いた。そっと「さくらって、さ。なんか」返り見たわたしは右腕に、飛び散らった血の厖大を見た。だから、街燈の複数の複数のひかりの

   やさしい風

      きのう、死んださ

なかに。翳りの

   風。咬みつくように

      純情なら、さ

なかに。ハオ・ラン。

   やさしい風

      おとつい死んださ

疾風。降り下ろされた

   風。いたぶるように

      プアってやつも、さ

風。こちらがわのハオ・ランはただ迸る鮮血の存在。そしてあるべきみぎ腕の不在にしかも、いまだふと、うかべかけたままだった笑みを、くずせもせず、気づけも?

   ピュア?ピュアじゃね?

      ねじゃ?アぴゅ。ア

傷み。鮮烈にもう、そこにあったそれ。口元。開口。知性などない。剥き出しのひらき。恥じらいもなく、そして時間が限界以上に間延びしたとろけきった須臾の、唐突な炸裂に、ハオ・ランはそこにハオ・ランを見た。もう、わたしは見ていた。言葉をうしなっていた。笑んでいた。嗜虐のハオ・ラン。血走った目。あるいは血走るまでに破壊を確信し、増殖を?確信。ハオ・ラン。他人いすぎない自分じしんのあらたな、

   ビア?ビアじゃね?

      ねじゃ?ネ。けんイは

増殖。叫ばなかった。向こうのハオは。とじたまま。くちびる。叫ば、…なにも。こちらのハオも。腕のないハオ。限界を超えてひろげられた口蓋。叫ば、なぜ?

「捨てて。投げ、…」

   永遠を

      ばくばっ

なぜ叫ばないでいられたのか。わたしも

「投げ捨てて。それ」

   ください。ぼくに

      爆発しそうな

わずかなさささやきさえもない

「僕の手。それ」

   永遠を

      イノセント・ハートに

引き攣るハオ・ラン。腕を叩き落とされた

「放り投げて」

   きみを、永遠に

      ばくばっ

血の匂うハオ・ラン。その

「逃げるよ。…あいつ」

   見つめているから

      爆裂しそうな

くずおれる肉体。つちに

「再生したら、あいつ」

   永遠を

      センシティヴ・ラブが

汚される…す?まえにあやうく抱きかかえ

「血相変えて、勝手に」

   ください。ぼくに

      ばくばっ

なにも、ささや

「いま、ぼくのほうが強いから」

   永遠を

      爆走しそうな

ささやきさえ、なぜ?せめて

「ぼくのほうが」

   きみを、永遠に

      ノーブル・アイズの

腕の中にいたましいハオ。なぜ?

「逃げるよ。勝手に」

   あたためるから

      ばくばっ

つぶやきさえ

「つよいから、再生力。はやくて」

   ほら、もう鳥が

      爆撃状態

わたしは

「足、生えたら」

   鳥たちが

      オネスティ・スカイさ

なぜ?くちびるは、腕。抱いて

「もうすぐ、ぼくは」

   旋回。頭上を

      ばくばっ

抱きしめた腕に

「生えなくても」

   永遠を

      爆死しそうな

ハオ・ラン。骨格に傷み。すでに

「壊されるから。こわされて」

   ください。ぼくに

      どうやら世界は

噎せ返っていたにちがいなく、そして

「再生するから。だから」

   永遠を

      クレージー・マイド

眼のまえに

「這って。むりやり」

   きみを、永遠に

      こわれかけ

立ち尽していたハオ・ランは

「つよいから。あいつ」

   抱きしめてるから

      走りだそうぜ

そのまなざしに

「顎にでも這って」

   永遠を

      ラン・スルー・ツモロー

まばたきさえ。声に

「こわされるから」

   ください。ぼくに

      ほら泣きたいならさ

喉をふるわせさえ

「逃げるよ。あいつ」

   永遠を

      泣いちゃっていいって

声。ひびきべき

「だから、とおくに」

   きみを、永遠に

      気づけたあの日

声。無造作に、耳は

「できるだけとおくに」

   守っているから

      ぼくらすこしだけ

聞き取り

「逃げるよ」

   ほら、もう鳥が

      おとなになったね

必要以上の至近

「投げて。あいつが」

   鳥たちが

      すこしだけよごれた

ひびき。ひびかせ

「ぼくが、いまさら」

   唾液を。頭上に

      悲しみ抱えて

見ていた。ハオ・ランが

「増え始めない前に」

   永遠を

      それでも飛

逃げてゆくのを、——うるさい!と。叫んだ。ハオ・ランは。腕の中で「黙れ!だ、いま、だ、せめてはっ。りぃ。ま黙ってろ。だ、いまだけせめて、だ、お前、だまっれの声だけ、おれだ、だ、聞け。…の、言うとお、だ、るぃっ」殴った。わたしは。ハオ・ランを。つかんだ頸。そして顔面。殴打。掌底を、投げつけるように。腕。手のひら。ゆび。爪さえ脱力の刹那、わたしに見捨てられたハオ・ランの血まみれは、つちに倒れ伏すしかない。つかんだ。ややはなれたちかく。みっつの翳りをそれぞれの長さに這わす腕をつかみ、投げた。池に。一気に揺れた、花。月。雲。その雲母。聞かなかった。水しぶきの騒音は。見なかった。ひろがる無数の波紋をは。もう、どこにも見えなかった。まよいなく立ち去った残虐のハオ・ラン。右手には青龍刀。ひきずるような。その後ろ姿は、重量に慣れないままぶらさげて、ようやく走った。見なかった。そんなハオ・ランさえ。ふと「好きだったりするの?」あざけりのある笑みをゆらがせ「意外に、雅雪さんは」

「さくら?」そう云った。

わたしは、清雪に。満開。慣例をやぶって四月のはじめ、敦子にうながされて参加した壬生の花見。当然の、清雪との邂逅。清雪はとおまきにわたしを見てさえ、おどろかなかった。敦子に聞いていたのだろう。目配せした。なにをほのめかしたのか、わたしには

「ほかに、なに?」

「おれは、」

「見るべきなにが、いま、ありますか?」すきだよ、と、そのふれそうななめ背後に隨う敦子に気づかせたくて、だからことさらに真摯な声にささやき、…って。

「噓ですよ」清雪の声に邪気はない。

笑う声にさえ笑みにふれなかったその日の、ただ冴えた声に、しかし十四歳の少年は、「ぜんぜん、」わたしを見て見やる。ややあって、ようやく「そんな感じ、ないもん」ふと

   たまには、パパっぽいことしたら?

      なに?

笑みをこぼした。その

   さびしがってますよ。あの子

      噓。

上質な笑みを、ただ

   さびしんですよ。きっと

      そんな、

家畜たちへの恩寵の慈愛、不埒なほどに

   確認して見ればいいじゃないですか?

      あったばっかでしょ?

撒き散らし、翳りのない

   会えば、会う程…だって

      なら、逆に

あかるさ。いっさいの

   いまいちばん、さびしい頃なんじゃ

      加速させるだけじゃない、いま、その

なにものへの気づかいもない、そして

   だって、ここ何日か

      さびしさを、さ

視線をながした。清雪は、わたしから。そのときの彼しかしらないなにかに。「嫌いなの?お前」

「さくら?」

   すきなんです。あの子

      なに?

「なんで?」

「だって、さ」

   ほら、…櫻

      そうなの?

「やめてよ。なんか」

「あれ、矛盾が多すぎ…」

   私的には、ちょっと

      藤のほおうが、とか?でも

「って、矛盾もなにも」

「つまり、」

   いや。…だって

      なんで?

「なに?…いちいち矛盾してたら、花なんか」

「たとえば、儚さの象徴、みたいな?」

   なんか、不吉じゃないですか

      なにそれ

「そういう、ね?」

「逆じゃない?」

   って、桜が、じゃなく

      死体うまってる的な?

「文化的事象ってやつ?」

「毎年の豊饒とか?」

   って、ですね

      なに?…云えよ

「さくらをめぐる」

「そういうの、象徴させるべきでしょ?逆に」

   桜と、清くんとの

      清雪?…あいつ

「人々の言説ってやつの」

「だって、毎年、あんなに」

   あの、組み合わせが

      早死にしそう?

「矛盾ってやつ、ね」

「咲きこぼすんでしょ?もう」

   似合い過ぎてません?なんか

      散る感じ?

「どうでもいいよ」

「もういいよってくらい、」

   なんか、こう

      はかなくて?

「勝手にさせとけ」

「いっぱいに、しかも」

   かな?…でも

      もろい系?でも

「好きな奴は好きなんじゃない?」

「命のはかなさって」

   最近、謂う。眞沙夜さんって

      桜って、基本

「そういう、さ」

「でも、花って生物じゃないでしょ?」

   花見とか、こないね。って。…なんで?

      毎年、咲くじゃん

「…まあね、実際」

「実を付ける切っ掛けじゃない?だから」

   って、だから

      ってことは、さ

「生物学…植物学?」

「むしろ、昆虫を」

   つきあってくださいよ、どうせ

      やだよ。うざいか

「…的、には、さ」

「無造作に誘惑しまくる、めっちゃくちゃな」

   ひまなくせに

      ひどっ

「淫売だろって?」と、おもわず云ったわたしは、敦子に気づく。視線をなげた。敦子はあくまで気にしていない。不良品のわたしの不良な受け答えなど、もとから。養育に、自身がある、と?この子は自分だけが育てあげたのだ、と。だからその耳に流れこむのはただ、清雪の完成された美声。やわらかにひびき、やわらかに消える。清雪のその声だけ?ふと「さらに、色」

「いろ?」

気づいた。清雪は

「気づかない?…だって」

   花。花々

      いたずら

「なに?」

その須臾、女の

「歌。…和歌」

   色彩。それら

      ささやか

「すきなの?」

未熟な年齢に香らせる粉の

「さくらといえば、連想するのは」

   匂う。まなざしに

      ひとつの花弁

「なんか、意外じゃない?お前」

散る匂いがする、と。錯覚?

「雲。雪。霞。つまり」

   覆う。まなざしを

      みなもにゆれた

「ヨーロッパかぶれなんだと思ってた。なんか」

すぐに醒めて、

「白。ただしろくて」

   占拠

      いたずら

「マザッチョとレオナルドで産湯をつかい、…的な」

思い直す。乳児の、と。

「しろいうえにしろい、」

   占領

      ささやか

「マネ、モネだった?」

あの、乳児固有の

「ほんとに?…あれ」

   独裁

      ひとつの花弁

「スラー、セザンヌ?」

口元の匂い。抱いた腕の中に

「純なしろじゃない。あれ」

   花。花々

      爪に落ちた

「意外。お前、」

容赦ない匂い。もう

「汚れてない?だから」

   色彩。それら

      いたずら

「莫迦?」

うざったいほど

「うすももいろに。…なんか」

   香る。まなざしに

      ささやか

「すれすぎ。なんか」

くちびると頬に、たとえば

「それが、さ」

   刺す。まなざしを

      ひとつの花弁

「そういう、さ」

粉ミルクの?

「なんか?…でも」

   暴力

      草の花にふれ

「お前の感性の方が」

ひたすらにあまく、ただ

「なんでだろ?そんなの」

   嗜虐

      いたずら

「うす汚れてたんじゃなくて?」

この存在にだけすべてを捧げろと、

「さくらの知った事じゃないよって。でも」

   殲滅

      ささやか

「お前、時々」

暴力的に強いて遠慮のない

「その不純がいや。しかも」

   滅びない。花は

      ひとつの花弁

「うざくない?自分で」

あの芳香。

「その、ずぶとさもいや」

   翳り。花翳り

      きみの鼻に、ふと

「自分の言ってる事、」

清雪。その

「なんか、あれ」

   わたしたちだけが

      いたずら

「おまえ」

十四歳の、もう

「ただおしつけがましいだけじゃない?」

   滅びていたから

      ささ

「病んでる?」

射精さえも知るはずの肌が?…猶も。謂く、

   たぶん、にあった

   少女に、血は

   なぜ?にあわない

   少年。あるいは


   うつくしすぎた

   少年にだけは

   だから?少年は

   血によごされた


   ぼく、ね?なに?

   なに?ぼく、ね?

   そこに笑む

   少年がささやく


   知ってる。ぼくは

   なに?女のひと

   だれ?もう

   知ったから


   知ってる。ぼくは

   なに?あのひと

   いつ?もう

   知ったから


   なぜ?求めてた

   あのひと。そばに

   ぼくの、そばに

   いたいから


   少年がささやく

   そこに笑む

   え?ぼく、ね?

   ぼく、…え?

謂く、

   たぶん、女に

      笑んだ。ただ

    花散る夜に

     殴れば?

   血は似合うから

      正しかった?

    うつくしかっただろう

     彼を

   よごされた。少年は

      わたしは、そこに

    少年。裸身

     いきなり

   うつくしいままに


   たぶん、にあった

   少女に、破滅は

   なぜ?にあわない

   少年。あるいは


   うつくしすぎた

   少年にだけは

   だから?少年は

   破滅にふれた


   ぼく、ね?なに?

   なに?ぼく、ね?

   そこに笑む

   少年がささやく


   壊した。ぼくは

   なに?しあわせ。普通の

   なに?もう

   奪っちゃったから


   壊した。ぼくは

   なに?逃げ道を

   いつ?もう

   あのひとから


   なぜ?求めてた

   あのひと。行き止まりに

   袋小路に

   くるしみたいから


   少年がささやく

   そこに笑む

   え?ぼく、ね?

   ぼく、…え?

謂く、

   たぶん、女に

      笑った。ただ

    花のあらしに

     すがれば?

   破滅は似合うから

      正しかった?

    冴えただろう

     彼に

   見せつけられた。少年は

      わたしは、そこに

    少年。微笑

     涙に

   うつくしいままに


   たぶん、にあった

   少女に、危機は

   なぜ?にあわない

   少年。あるいは


   うつくしすぎた

   少年にだけは

   だから?少年は

   危機に瀕した

謂く、

   たぶん、女に

      無謀?少年の

    花さえも

     赦す、と

   危機は似合うから

      自虐?破壊?

    かくせなかっただろう

     言えはしなかった。少年は

   誘惑された。少年は

      犠牲?…なに?

    少年の、…無慚?

     求めてない

   うつくしいままに


   だれも惡くない

   わたしは云った

   あのひとも?そこに

   少年が笑った








Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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