アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -59 //ふるえていた/なぜ?沙羅/それら、すこしした/冷酷。睫毛の//07





以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。

また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。





謂く、

   花。散る

   花。埋める

   狂人たちが

   わたしを埋める


   花。散る

   花。笑う

   狂人たちが

   わたしを笑う

謂く、

   狂人たちが

      花。散る

    みんなは口に

     散る。花

   わたしを埋めた

      埋められた

    花。咥え

     笑われた

   狂人たちが

      散る。花

    あきらかに朽ち

     花。散る

   わたしを笑って笑いはじめて明晰に感じられていたのは狂気。容赦ないそれ。開口、そこに、その事実。だからしょせん他人の。しかも回避しようと想えばたやすくできるはずのでも?窓の外へでも?開け放たれた気持ちいい窓にでも放り投げて仕舞えば?沙羅。濡れた髪。顔の全面に、もしくは頸。胸元にさえへばりつかせ、沙羅。ひっぱたかれた側頭部。その手を添えた。ようやくに。傷みに。傷み?しかしその所在の確認だにしない脱力。手首。ゆび。まがり、沙羅。顔。猶も

   轟音の中で

      水たち。水

飛び散っていた。

   ひびきわたった

      飛びかうままに

撥ねた。

   ささやかな

      綺羅をも散らし

撥ね、撥ねて飛び散り散る飛沫にノズル。だれにも放置され、床にノズれて。濡れて濡らされたまま沙羅。笑みを。沙羅はふいの暴力の須臾に、まさにじぶんがいま存在していた事実をさえ沙羅。彼女が笑んだ。わたしの目の前、そこに狂気。なぜ彼女はおののきもせずにと狂気。…狂気?なぜおびえもせずにと狂気。…狂気?なぜわずかにさえ赤裸々な驚愕をいぶかせさ狂気。…狂気?なぜただそこに笑むだなく。笑った声のたつことなく、なく。声をみだし、笑いころげたにも近く、あざやかな笑ただ、ふるえ、そこにふるえながら沙羅の、その顔はふるえていた。わたしのまなざしに、かたむいたあざやかな褐色の

   わたしたちは知らない

      ふるえたんだ

肌。いたるところに

   知らないものを

      睫毛が、ね?

飛沫。

   狂気と名づけた

      ね?

綺羅。

   わたしたちは知らない

      ゆがんでいたんだ

散乱。とめどもない須臾の

   知らないものを

      眉毛が、ね?

綺羅。

   知性と予測し

      ね?

生滅。そこに、沙羅。だから他人の狂気。と、そう呼ぶべきだったのだろうか?それを。呼び得たのだろうか?沙羅の全身にさらけ出されていたもの、それを。狂気とはなに?ただ、勝手にあり得ないと思われていた事象の、ふとその存在が見出されてしまった須臾におもわず漏らされた嘆息。狂気の語。それにはたとえばそれ以上の意味など。なら踏みしめた大地が天空のひかりのとおいちいさい開口を回るにすぎないと予測されたときに、あるいは大地は狂気をのみさらしたにちがいない。その眼の固有の風景のなかで。赦していた。すでに、わたしは沙羅。そのわななく苦痛のないあかるいくちびる。頬。まなざし。虹彩。瞳孔。白目。なにもかも、

   孤立する

      葉翳りに

ただ笑いくずれていた沙羅は

   見つめあう時に

      膿が

ただ痴呆の気配をのみさらした。微笑み。その沙羅は昏い。まなざしは。やさしく笑んでさえ昏い、狂暴のきざしをだけ見せ、だから破壊。狂暴の闇のまよいない倒壊。無慚にも。匂わなかった。沙羅の肉体。その体臭が。匂い。皮膚の極微の孔という孔、表面という表面にかおりはじめる生起その

   孤立する

      膿が肥大し

生起しかけるまえにすでに

   ささやきあう時に

      垂れかかり

放埓な水流にあらい流されて。だから未生。未生のままラン。わたしたち。あの六月。ランひらかれた口蓋のした、下半身のあやういそこに流れ壊されたいのちにも似て?流れた。流れつづけていた。もはや厖大な印象をのみわたしのまなざしに散らし、水。水たち。水。そこ。沙羅の肌。とどまるべくもない水のむれ。無数の

   なに?それは、なに?

      口蓋に

すじ。すじをなす無数の

   さっきから、そこで

      ふと、その

流れ。流れそのもの。濡れた

   うずくまりつづけていたもの

      あまやかな

沙羅。濡れて、濡れ、にじみ、にじみだし、ふれ、ふれられ、濡れて濡れながら濡れさせ嫌惡。愛の、と。そう呼ばれるべき行為。その通常のいとなみのなか愛してる?好き。だからただ皮膚は感じた。空虚を。空洞。その体内に、そこになにもないそこになにもない。濡れた触感など。濡れてゆく触感など愛してる?好き。濡れたそれが濡れたそこを濡らし濡らされ濡らすそれとそこ。それらに霑い。霑うもの。つきつめてしまえば

   なに?それは、なに?

      鼻孔に

水。水なす水が所詮は

   さっきまで、そこで

      ふと、その

孕み込んだにすぎない

   うずくまりつづけていたもの

      にがみさえあった

穢れ。いきもの。それらがいまさら吐き捨てた水分。液体。肉体のほとんどが水分にほかならないなら肉体の実在とは水に寄生した種々の微細な雑多がつくった仮象にすぎない。そうとも謂えたにはちがいなくとも嫌惡。赤裸々な。やがてやわらかな空洞から引き抜かれればそれに、ゆびが確認の接触をはたすまえにも赤裸々な触感。濡れ、纏わりつく濡れ、あきらかに濡れた触感。だれが?

   重力が時空のひずみなら

      ひらいた孔は

なにが?

   わたしたちも

      くちづけるため

わたしも。

   すでに無限に

      やさしい愛に

たしかに。

   陥没していた

      その恍惚を

しかも、そこにあくまでも他人のものとしてのみ感じ取られていたにすぎない

   なに?

      喰らった

霑い、そこに

   だれ?

      鳥たち、喰らっ

そこは霑う。確実に。わたしたちは。そのたびに、どこまでどちらの、どこからがどちらの、せめてもの区別さえなく、分別もできずに寄生。純粋な水に寄生した濁り。水を濁らせたかたまりがただ行為のたびに濡れ行為のたびに、行為の終わりに、ないし唐突にわれに返った須臾ないし、唐突に放棄したわたしの倦怠、中断に、いたたまれなくて。ふとひきぬかれるたび、きざし、きざす。精神。その

   あ。いま

      やめて。もう

隔絶。

   愛が

      きみは

そこに。

   失神しました

      わらってて

肉体のなかに発生し、しかも肉体を見出して猶も、故にこそ肉体に隔絶した風景を描き出していた精神。見出された風景そのものに名づけられた名?…精神。断絶。精神は肉体と絶対的に差異する。差異せざるを得ない。そもそも差異の目覚めの可能性のなかでの戯れだから嫌惡を?肉体。厖大な水たちの純粋を乱した濁りに名づけられた名。いのち。留保ない嫌惡?それともたんに葉子への嫌惡のためだけの、狂気?わたしの。どこかの女をあおむけにする。葉子、たとえばその眼。そこに眼。女の。すがる眼?乞う眼?女。訴える眼?それともあまりの悲惨に茫然とする?眼。あまりのあり得なさ自体にただ狂気とのみつぶやくしかない茫然の?眼。せめてものそんなつぶさきさえ不可能な茫然の?切実。切り裂く。葉子。その

   いとしいもの

      なすべきもの

肌。切り裂き、

   いとおしく、ただ

      我々が滅びる、その

声は?やわらかな

   いとおしすぎて、もう

      滅びの瞬間までに

ふくらみ。そのさき

   愛するしかない

      せめて、な

肌。切り裂き、

   いとしいもの

      なすべきもの

体液。…散った?

   みじめなまでに

      愛という語の精密な定義

飛び散った?

   かわいらしく、それ

      その可能性と限界

その肌

   しかもそのかたち。それに

      精巧なる定義

肌にも

   かわいらしさのかけらもなかった

      なすべきもの

体液。切り裂き、

   いとしいもの

      我々が滅び

声は?葉子。そのよろこびにふるえたかもしれないくちびるに葉子。こぼれだすべきだった、歓喜の声は?花。散る、花、そこに飛沫が飛び散り、散り、飛び、散りぢりに飛び乱れるまま花。散る、花、そこに猶も散り、散らされて散り、散りつづけたまま花。散る、花、そこにもはやふしだらなほどに肌は濡れ、濡るしかなく花。散る、花、そこに濡れぼそりしたたらせしかもその身動き。それらささらいなすべてに花。散る、花、そこに飛び散らせさえしながらも肌は、ただ赤裸々な花。散る、花、そこに綺羅をとらえ切るすべもなくながして花。散る、花、そこに流し続けてその沙羅が綺羅めく。綺羅めき

   花。散り

      こわいの?

沙羅は、綺羅めくままに

   花、そこに

      なぜ?…その

綺羅めきつづけて

   散り、ただ

      やさしく笑んだ、その

厖大な、…沙羅。そこに

   飛び散り

      ほほ笑みは

纏う。厖大な

   散りかうままに

      なぜ?

飛沫たち。それらの

   花。散り

      痛いの?

投げ捨るように消える

   花、そこに

      なぜ?…その

綺羅。流れおち

   散り、ただ

      やさしくふるえた、その

墜ちるまま

   飛び散り

      口蓋に

投げ捨てられていた

   恥もしらずに

      つつましい舌は

綺羅。その

   恥じらいもなくに

      なぜ?

沙羅の笑みを

   花。散り

      ちぎり、猶も

だから、沙羅の

   花、そこに

      咬み、つぶし

綺羅のむこうに

   散り、ただ

      いま猶も

さらしていた、ただ

   飛び散り

      咬みつぶし

ふしだらなまでの

   その無様を

      咬みちぎり、その

顔。痴呆の

   見、…見た?

      やわらかな

笑顔の、無防備な

   その無慚を

      歯のないくちびる

崩壊を、…なぜ?

   見、…見た?

      あたたかな

わたしはそこに

   その凄惨を

      牙のない皮膚に

眼を逸らしもせずに

   見、しかも

      花の汁。…散って

しかも

   猶もまなざしは

      なぜ?

見つめつづけて

   花、そこに

      忿怒を?

赦した。わたしは

   散り、ただ

      なぜ?…その

不用意な沙羅の

   飛び散り

      やさしくかたむく

その接近を

   散りかうままに

      その睫毛は

赦し、彼女が

   花。散りつづけて

      なぜ?

沙羅。もう

   飛びかいつづけて、花

      猶も

わたしさえその

   散りかうままに

      その睫毛は

綺羅それらの

   飛び散り

      やさしくかたむく

散乱に?…沙羅

   散り、ただ

      なぜ?…その

その顎が

   花、そこに

      忿怒を?

つきだされるままに

   猶もまなざしは

      なぜ?

飲み込まれもせず

   見、しかも

      花の汁。…散って

こぼれ落ちてゆく

   その凄惨を

      牙のない皮膚に

水。ながれ、しかも

   見、…見た?

      あたたかな

飛沫。口に

   その無慚を

      歯のないくちびる

その浅いふちに

   見、…見た?

      そのやわらかな

ふくまれかけて

   その無様を

      咬みちぎり

吐き出されてゆく

   飛び散らし

      咬みつぶし

水。垂れ、ながれ、しかも

   散らし、ただ

      いま猶も

飛沫。綺羅

   花、そこに

      咬み、つぶし

沙羅。その

   花。散り

      ちぎり、猶も

くちびるがそっと

   恥じらいもなくに

      なぜ?

おともなくしのびよるうに?

   恥もしらずに

      つつましい舌は

いぶきもさらさず

   飛び散り

      その口蓋に

気配を消して?

   散り、ただ

      やさしくふるえた

掠め取るように?

   花、そこに

      なぜ?…その

無防備に、息。ひびき

   花。散り

      痛いの?

無防備にわらい、あえて

   散りかうままに

      なぜ?その

声をださない

   飛び散り

      ほほ

笑い崩れた息の

   散り、ただ

      花、花たち、そこ

ノイズ。肌に

   花、そこに

      乱れ、花

ノイズ。それら

   花。散り

      もだえ花。花

下から飛び散る飛沫にぬれながら沙羅がわたしの顎にくちづけた。謂く、

   ふるえていた

   なぜ?沙羅

   それら、すこしした

   冷酷。睫毛の


   翳り。それ

   ごくごく微細な

   綺羅。それら

   いぶき、いぶきつづけて

行為のあとで、だからけものじみて、その行為のあとで。だれと?彼が。謂く、

   ふるえていた

      れず、いたたま

    わたしたちは

     降りそそぎます

   なぜ?沙羅

      ひかりが

    たぶん

     らら。綺羅きらと

   それら、すこしした

      降ります

    すでに残酷で

     いたましく

   冷酷。睫毛の


   翳り。それ

      せつないだけの

    もう残酷すぎて

     這いまわります

   ごくごく微細な

      翳り。翳りら

    たぶん

     ゆらゆらと

   綺羅。それら

      這います

    わたしたちは

     いじらしく

   いぶきつづけて

ぼふっ、と。まるでくぼむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞりばふっ、と。まるでへこむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞりどふっ、と。謂く、

   ふらつきかけて

     いじらしく

    わたしたちは

      這います

   綺羅。それら

     ゆらゆらと

    たぶん

      翳り。翳りら

   ごくごく微細な

     這いまわります

    もう野蛮すぎて

      せつないだけの

   翳り。それ


   冷酷な睫毛の

     いたましく

    すでに野蛮で

      降ります

   それら、すこしした

     らら。綺羅きらと

    たぶん

      ひかりが

   なぜ?沙羅

     降りそそぎます

    わたしたちは

      れず、いたたま

   ふるえていた

彼が。だれと?その行為のあとで、けものじみて、だから行為のあとで。謂く、

   さわがせていた

   なぜ?沙羅

   それら、かたわら

   曖昧な目じりの


   翳り。それ

   たわむれるような

   綺羅。それら

   あやうく、かさなりかけて

行為のあとで、だからけものじみて、やや自虐的なその行為のあとで。だれと?彼が。謂く、

   さわがせていた

      なすすべもなく

    わたしたちは

     しなだれかかれば

   なぜ?沙羅

      ひか。ひかりが

    たぶん

     綺羅きらと

   それら、かたわら

      しなだれかかれば

    すでに残忍で

     なすすがままに

   曖昧な目じりの


   翳り。それ

      見取れないほどの

    もう残虐すぎて

     翳り。翳りら

   たわむれるような

      淡さに

    たぶん

     ゆらゆらと

   綺羅。それら

      翳り。翳りら

    わたしたちは

     いじらしく

   かさなりかけて

どふっ、と。まるでくぼむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞりばふっ、と。まるでへこむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞりぼふっ、と。謂く、

   かさなりかけて

     なすすがままに

    すでに苛烈で

      なんでもなかったんだよ

   綺羅。それら

     綺羅きらと

    たぶん

      なにも。なにもか

   たわむれるような

     しなだれかかれば

    わたしたちは

      なんでもな

   翳り。それ


   曖昧な目じりの

     いじらしく

    わたしたちは

      すべて、悲惨は

   それら、かたわら

     ゆらゆらと

    たぶん

      すべて、悲劇は

   なぜ?沙羅

     翳り。翳りら

    もう残虐すぎて

      我々をだけとおりすぎ

   さわがせていた

彼が。と、だれ?行為のあとで、その、自虐的な。ややけものじみて、だから行為のあとで。謂く、

   ゆるんでいた

   なぜ?沙羅

   それら、ややうえ

   昏い眼つきの


   翳り。それ

   容赦もなかった

   綺羅。それら

   まどい、まどわせつづけて

行為のあとで、だからけものじみて、やや自虐的で明確なおわりをむかえるべくもなかったその、行為のあとで。だれと?彼が。謂く、

   ゆるんでいた

      まえぶれもなく

    わたしたちは

     飛び散りあいます

   なぜ?沙羅

      ひかりが

    たぶん

     綺羅きらと

   それら、ややうえ

      飛び散りあいます

    すでに陰惨で

     そのきざしさえ

   昏い眼つきの


   翳り。それ

      気絶するほどの

    もう冷酷すぎて

     這いずりまわる

   容赦もなかった

      傷みが

    たぶん

     ゆらゆらと

   綺羅。それら

      唐突に

    あなたにだけに

     みぐるしく

   まどい、まどわせつづけて

ぼふっ、と。まるでくぼむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞりばふっ、と。まるでへこむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞり恥辱だから屈辱だからだいなしだから侮辱だからばふっ、と。まるでへこむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞりぼふっ、と。まるでくぼむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞり、謂く、

   まどい、まどわせつづけて

     みぐるしく

    あなたにだけに

      ひらかれた口に

   綺羅。それら

     ゆらゆらと

    たぶん

      だから、哄笑を、見せてよ

   容赦もなかった

     這いずりまわる

    もう冷酷すぎて

      気絶するほどの

   翳り。それ


   昏い眼つきの

     そのきざしさえ

    すでに陰惨で

      飛び散りあいます

   それら、ややうえ

     飛び散りあいます

    わたしたちは

      まえぶれもなく

   なぜ?沙羅

     綺羅きらと

    たぶん

      ひかりが

   ゆるんでいた

彼が、だれと?行為のあとで、そのおわりをむかえるべくもなかった。明確な、自虐的で、ややけものじみて、だから、行為のあとで。謂く、

   失語にあった

   その沙羅

   わたしの目のまえに

   沙羅の、その眼は


   失語にあった

   そこに沙羅

   わたしの至近に

   沙羅の、瞳孔は


   失語。ただ

   ほほ笑んだだけ。沙羅

   なにも。言葉など。いま

   失語。わたしは

なぜた。かならずしも、意味など。かならずしも、傷みなど。なにを?謂く、

   失語。ただ

      ふきかけられた

    耳たぶに、ひそか

     ほのかに、しかも

   目のまえに

      ためらう、ためらい。その

    息を。その

     散った。赤らむ

   わたしの至近に

      須臾もなく

    耳たぶに、微妙

     充血は、なぜ?

   失語。わたしは

恥辱だからぼふっ、と。まるでくぼむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞり、謂く、

   失語にあった

   その沙羅

   昏い目のまえに

   沙羅の、その眼に


   失語にあった

   そこに沙羅

   茫然の至近に

   沙羅の瞳孔に


   失語。ただ

   ほほ笑んだだけ。沙羅

   なにも。言葉など。いま

   失語。沙羅は

なぜた。かならずしも、意味など。かならずしも、傷みなど。爪を。なにを?謂く、

   失語。ただ

      ふきかけられた

    くちびるが、しかもささやくに似

     かすかな、傷

   昏い目のまえに

      ためらう、ためらい。その

    息を。その

     あやうい端

   茫然の至近に

      須臾もなく

    くちびるが、微細に

     にじみかけ、なぜ?

   失語。沙羅は

屈辱だからばふっ、と。まるでへこむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞり、謂く、

   失語。わたしは

   なぜ?だから

   ふいに咬む

   みずからの失語を

それは、くすり指。やや、不穏にかたむいてはえた、ひだりの。なぜ?謂く、

   失語。ふたりは

      もう

    傷いんだ

     だれ?

   あざわらおうか?

      神経さえ

    ぼくは

     ささやくの

   頽廃を。沙羅

      ちぎ。咬みちぎりまし

    ぼく自身さえ

     だれ?

   ほほ笑みだけ。いま

どふっ、と。まるでへこむように、恥辱だから屈辱だからだいなしだから侮辱だからどふっ、と。まるでへこむように、謂く、

   吼えてみようか?

   けもの。雄たけびに

   けもの。雌啼きに

   わめいてみようか?

まるでへこむように。と、どふっ。だから侮辱だからだいなしだから屈辱だから恥辱。へこむように、まるで、と。どふっ。謂く、

   ほほ笑みだけ

     だれ?

    傷いんだ

      はっ。破棄しちゃいまし

   頽廃を。沙羅

     つぶやくの

    ぼくは

      痛点さえ

   あざわらおうか?

     だれ?

    そんなきみさえ

      もう

   失語。ふたりは

なぜ?ひだりの。はえた。かたむいて、不穏に、やや、くすり指。それは。謂く、

   およがせていた

   なぜ?沙羅

   それら、ややよこに

   窪み。側頭に


   翳り。そして

   ただただささやかな

   綺羅。それら

   ゆらぎ、ゆららぎつづけ

覚醒感。いまさらに、彼が。謂く、

   翳り。そして

      不穏だった

    とけてゆく。すでに

     すべてが。のこらず

   ただささやかな

      眼に映る、映された

    焦燥。悔恨も

     感じられ、感じられるべき

   綺羅。それら

      風景。そのすべて

    なぜ?わたしは

     不当だったから

   ゆらぎ、ゆら

だいなしだからどふっ、と。まるでへこむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞり、謂く、

   わなないていた

   なぜ?沙羅

   それら、すぐちかくに

   隆起。頬骨に


   翳り。そして

   なぶりあうような

   綺羅。それら

   あてどなく、あやぶまれつづけ

覚醒、——解放感?いまさらに、彼も。謂く、

   翳り。そして

      不穏だった

    にじんでゆく。すでに

     すべてが。のこらず

   なぶりあうような

      眼に映る、映された

    激怒。苦悩も

     孤立する。わたしが

   綺羅。それら

      風景。そのすべて

    なぜ?わたしは

     沙羅が、そこ。それぞれに

   あてどなく、ゆら

侮辱だからぼふっ、と。まるでくぼむように、死者。死者ら。死者たちがのけぞり、謂く、

   かすんでいた

   なぜ?沙羅

   それら、まなざし

   無機物。眸に


   翳り。そして

   すべもなかった

   綺羅。それら

   枯渇し、なにもかもつきはてて思われ

ときはなつ。ふと、喉にひっかっていた、痰を。謂く、

   あなたに翳り

      声。絶望の

    わたしはもう

     けずれ

   ただただささいに

      声を

    裏切った

     あなたは

   綺羅。それら

      聞かせてほしい

    あなたを

     その皮膚を

   ゆらぎつづけた

どふっ、と。まるでへこむように、死者。死者ら。死者たちが恥辱だから屈辱だからだいなしだから侮辱だからどふっ、と。まるでへこむように、死者。死者ら。死者たちが、謂く、

   枯れはてていた

     その血管を

    あなたを

      聞かせてほしい

   綺羅。それら

     あなたは

    廃棄した

      叫べば?

   なすすべないままに

     けずれ

    あなたはもう

      叫び。無慈悲な

   あなたに翳り

痰を。ひっかかっていた、喉に。ふと、はなつとき、謂く、

   失語があった

   沙羅。その眼。うるみ

   ふれあうちかくに

   沙羅。瞳孔に


   失語があった

   わたしのゆび

   のばしかけのちかくに

   沙羅の、くびすじの


   失語があった

   肌に汗。ふいに

   惡臭。みにくい

   沙羅。瞳孔は


   失語。なぜ?わたしたちは

   吹き出した

   声。咬む

   みずからに失語を

慟哭するに似た覚醒…解放?感。彼が。謂く、

   咬みつかれていた

      けものたちは

    吼えて

     落ちる。落ちた

   みづからの失語に

      すみやかな

    ほら

     失語に

   肉体は、沙羅

      狂気を

    吼えて

     沈黙の孔に

   みだれる息に


   肉体を咬んだものたちがいま

      狂気したけものの

    吼えてみて

     沈黙

   頽廃。沙羅

      声が、ふれ

    ほら

     しっ

   失語のけものは

      ふれる。ふれた

    喉をふるわせ

     失望に似た

   笑っていた。いま

ばふっ、と。まるで恥辱だから屈辱だからだいなしだから侮辱だからぼふっ、と。まるで、謂く、

   陽炎がとけた

   罵声としてでも

   嬌声としてでも

   陽炎が凍った

まるで、と。ばふっ、侮辱だからだいなしだから屈辱だから恥辱だからまるで、と。ばふっ。謂く、

   笑っていた。いま

     沈黙

    声帯をかたむけ

      ふれる。ふれた

   失語のけものは

     ん?

    ほら

      声が、ふれ

   頽廃。沙羅

     失望に似た

    啼いてみて

      狂気したけものの

   肉体を咬んだものたちがいま


   みだれる息に

     沈黙の孔に

    啼いて

      狂気を

   肉体は、沙羅

     しっ

    ほら

      迅速な

   みづからの失語に

     芽生え。芽生えた

    啼いて

      けものたちは

   咬みつかれ、むしろ

彼が。感、解放?…覚醒。慟哭するに似た。謂く、

   冴えた遠吠えを

   知性などなにもないかのように

   羞じさえなにもないかのように

   不穏な呼び声を







Lê Ma 小説、批評、音楽、アート

ベトナム在住の覆面アマチュア作家《Lê Ma》による小説と批評、 音楽およびアートに関するエッセイ、そして、時に哲学的考察。… 好きな人たちは、ブライアン・ファーニホウ、モートン・フェルドマン、 J-L ゴダール、《裁かるるジャンヌ》、ジョン・ケージ、 ドゥルーズ、フーコー、ヤニス・クセナキスなど。 Web小説のサイトです。 純文学系・恋愛小説・実験的小説・詩、または詩と小説の融合…

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