アラン・ダグラス・D、裸婦 ...for Allan Douglas Davidson;流波 rūpa -58 //ふるえていた/なぜ?沙羅/それら、すこしした/冷酷。睫毛の//06
以下、一部に暴力的あるいは露骨な描写を含みます。ご了承の上、お読みすすめください。
また、たとえ作品を構成する文章として暴力的・破壊的な表現があったとしても、そのような行為を容認ましてや称揚する意図など一切ないことを、ここにお断りしておきます。またもしそうした一部表現によってわずかにでも傷つけてしまったなら、お詫び申し下げる以外にありません。ただ、ここで試みるのはあくまでもそうした行為、事象のあり得べき可能性自体を破壊しようとするものです。
謂く、
いきいきと
息づいた情熱が
滅ぼした。だから
わたしたちを
ひとのせい?
おれのせい?
なんのせい?
だれのせい?
謂く、
いきいきと
混乱など
…たくなかった
わかい莫迦どもは
息づいた情熱が
わずかにも
須臾にさえ
さかしい
滅ぼした。だから
明晰だった
存在したく
いつでも
わたしたちを
ひとのせい?
明白さなど
…たくなかった
わかい莫迦どもは
おれのせい?
わずかにも
須臾にさえ
老いぼれ
なんのせい?
矛盾だった
消え去りたく
いつでも
だれのせい?
「結婚するらしいじゃん」
「…って、それ」
「おめでとうって、云っていい感じ?」莫迦…と、敦子は言いかけ、に、しないで、ください。と。笑った。わたしは。「いいよ。タメきいて」翳る。敦子のまなざしが。
なぜ?いま
やさしい、ささやき
「だれ情報ですか?それ、」
「お公家さんになるって?」
「清くん?」見た。やや唐突に、わたしを、だから、ふと、不用意なとまどいを、わたしが。「…しか、いない、ですよね?」ややあって、笑った息を鼻に吐く。そこに、敦子だけが。
なぜ?いま
あやうい、ささやき
「盛り上がってるでしょ?」
「親父さん?…麻布の…」
「やばいんじゃない?いま、」莫迦…と、そして「…に、してる。やっぱり」
「そんなことないよ」
「お前、何歳だよって?年かんが」
「もし、」
「え?」
「本当なら、しゅく。って、いうか、もしお前が望んでるなら、おれはもう、完全に祝福す」
「ちがうの」敦子はことばを切った。清雪が十三歳になった、だから、その四月。壬生の花見にわたしも呼ばれた。ただ、敦子だけから。いつものことのだった。敦子はわたしが断わることを知っている。だから、ためらいなく、わたしを誘える。そのヴォーダフォンの画像通話で、…2009年。わたしは35歳。だから、敦子は30歳になるか、ならないかだったろうか。年頃と言えば云えなくもない。敦子の過去を思えば、相手が誰であれ祝福以外にわたしにするべきことは「…って、」なかった。「なに?」刺戟しないように、細心の注意をはらった笑みに、わたしは。そこにこわばりもなく、しかし表情もない敦子の目を見た。ただ、沈黙だけを敦子はくれていた。遅れて、「そもそも」六秒数えた。「お公家になるって、なに?」
「聞いてないの?清くん、…」
「云ってない。おれも聞かなかったし。あえて。で、縁談って、だれ?」
「そっち系の」
「系って、なに?京都の旧家ですとか?」
「昭和天皇。…の、ご兄弟…の、だから、大正天皇の、」
「もろ、そっちじゃん」思わず笑い声を立てたわたしを、見つめたままの敦子は諫めもしない。だから、その冴えた無表情も「やばくない?」
「むかし、秩父宮さまという方がいらして、そちらの、ご血縁の、だから、お孫さん…さま」
「どうするの?」
「親父さんは、もう、勝手に、…だから美術館でお会いしたの。…です。去年。静岡で…MOA美術館。熱海の。そこに清くんと行った時に…清くん、詳しいから。日本の、なに?日本画とか?水墨画?ああいうの、…で、わたしはただ、付き添いで、」
「そこで会ったの?」
「清くんです。最初、切っ掛けは。清くん、まだ、十二歳じゃないですか。…一昨年の春だから。なのに、尾形光琳とか?見蕩れたり解説したり、ほら、わたしに。だから、感銘を。こう、お受けになられたみたいで。それで、」
「何歳なの?その、…」敦子が目を伏せた。ひさしぶりに敦子の顔を見たと思った。かくしようのない羞じらいが、あからさまだったから。云った。「…ぅう、ご」
「なに?」
「二十五」双渺が遠慮なく糾弾する。あるいはわたしが笑いかけていて、それが侮辱の意味に取れたのかもしれない。かならずしも、そんな記憶はない。「いいじゃん」
「そういう、」
「いいと思うよ。年下の」
「他人事、やめていただけませんか?」
「お前は、どうなの?」
「貞秀さま?」
「って、いうのか」
「おやさしい方。すごく、すごく、すごく。年増で、粗野な、あんな家。しかも、むかし、あんな、わたしの」
「それは、言うなよ。いま」
「お伝えしたの。最初に、…だから、お気に召していただいたみたいな、そういう、…ご自分でおっしゃるから、直に…」
「でも、いま別に皇族ってわけでもないんだろ?」
「過去は、お伝えして、さすがに、ちょっと、考えられてる、そういう一瞬があって、でも、笑みを。すごく、もう、円満な。だから、お笑みになら…って、この敬語、おかしい?ほほ笑まれて。それで、…わかりました。…と。これからは、わたしがお守りしますから、と」いいじゃん。…と。わたしは素直に、敦子にそう口走った。沈黙があった。敦子の目に懊悩があった。見つめ返す、そのわたしの目の表情は、「せっかく、そんな…」わたしには「いないぜ。めったに」知れない。「…しちゃえよ」ささやく。
「決めちゃえ」
「いいの?」
敦子が云った。まばたいた。わたしだけが。ふと、敦子のくちびるがひらきかけた。とじかけた。そして、唐突に云った。「ごめん。パケ代かかる。もう、」沈黙を「切るね」それだけをしか、わたしは、その敦子にはくれてやれなかった。その、午後の代々木上原のあまたらしい事務所のなかで、窪み。孔。立ちつくしともなくそこに立っていて、しかも——なに?と、「なんですか?」そんな沙羅のひらいた「どうしましたか?」くちびる。それは、口蓋に孔。「あなたは、」そこに、「いま、なにを」言いかけてしかも「見て、なにを」なにも言いはしなかった、そんな「云いたいですか?」空白。おもわずわたしが笑ったことは知っていた。知り、そしてややおくれて気付き、そのじぶんの意識がふいをつかれたやわらかな陥穽に、ふいにさらした愚鈍の極みを嘲笑?
それは
やさしい声を
沙羅は、そこに
花。もしも
聞かせて。もう
なんのためらいもなく
それが花なら
空が燃えたから
ありえべからざる
きみはそこに
頭上。ぼくらの
ふいのわたしの
失うだろうか?
はるかなうえに
進入。隔離された彼女だけの
吐かれるべき、その
やさしい息を
孤立への
厖大なささやきをさえ
吹きかけて。もう
侵入に、…あら?「なに?」あら?「なぜ?」わたしは沙羅を、だから殴打した。手のひら。速度との同化。後頭部を。…筋肉。骨。なぜ?なかった。きざしなど。なんら。情熱。暴力の。十代、二十代、狎れしたしむほどたわむれていたそれ。破壊。破壊欲?なに?こわすこと。他人の精神。ないし肉体を、なに?だから嗜虐。自虐にも似、破壊。なら
それは
加速する
自己破壊?…すき、と?
花。そこにひらく
いとしさが
あなたが、それでも。わたしは
その開口は
加速する
猶も、
ほら孔は。だから
かなしみが
好き。春奈。二十歳のわたしが
失ったろうか?
加速する
聞く。その春奈。すでに
つぶやかれるべき、その
分子結合をだいなしにして
痙攣するまぶたに、薬?
契機をさえ
加速する
薬のせい?それとも春奈に、まさにわたしこそが与えていた苦痛と、そして絶望のせい?瞼に、眉に、春奈は赤裸々な劣化を傷みそのものとしてさらし、そこに、だから言葉。なにか言いかけ、ひらかれかけ、…すき。喉にこぼれかけ、そこ。…あなたが、
カミーユ・コロー以上の
あれ?こめかみに
それでもひらかれ、
冴えた、辛辣な
鬱っぽい
なにかが舌に
絶望が、ふと
焰
わたしは、ささやかれかけ、そこにね?猶も、ひらかれかけ、ふいのね?失語。しかもわたしはね?言葉をなにも、ただもうわたしだけはそれでもまだ言葉以前の音声をさえもすき。春奈。「莫迦?」
それは
ね?なぜ、いま
せせらわらって
花。しかも
唐突。失語
ささやくわたしのことばに
色彩もない
罵倒する、ゆび
春奈は、そこで
そのかがやきはきみに
ね?なぜ、いま
なにも、もう
見出されただろうか?
唐突。まばたき
なにも聞き取ってさえ。たぶん
吐かれるべき、その
罵詈雑言。歯
わたしにこぼれていた
ささやきをうばって
ね?なぜ、いま
それら罵声。聞く。そのささやき。聞く。あくまでやさしい音声の気配さえも。たびかさなる失禁の「くさいよ。…お前」
「やめて」
もう日常にすぎず
「みにくい」
はなさきに
ゆがむ
「やめたら?…もう」
慣れはじめた
「みにくすぎてさ」
汗。きらら
ゆびさきが
「それって、…ね?」
いつもの失態のあと
「穢い」
はなさきに
まがる
「ね、わかってる?」
ふいに、ちかづいた眼の前のわたしに
「やばい。おまえ」
鼻水。きらら
ひかる
「それって、じぶんを」
殴打。春奈は
「きたなすぎて、さ」
目じりには
爪が
「傷つけてるんだよ?…ね、」
あくまでも唐突な
「だから、さ」
なに?
にぶく
「気づいてる?」
殴打。だから、夢見るような?
「消えて。むしろ」
体液。きらら
むせる
「やめて。せめて」
そこに、ただ
「死んで。ひとりで」
口もとに
喉が
「傷つけないで。もう」
ひとりで夢をひらいていた孔に
「くさすぎるから」
な、
更に、ふと
「勝手に、そこで」
落ち込んでしまったかに?
「手遅れだから」
体液。きらら
あばらが
「せめて、」
春奈。その
「きたなすぎて」
いきものきらら
つぶれる
「ボロボロにならないで」
ひたすら懐かしげな
「みにくいだけだから」
きららぐぼくら
いきなり。その
「ぼくの前では」
瞳孔。ひらききった、
「見えないとこで、」
いのちはきらら
腹が、そこに
「他人のせいで」ささやく背後のハオ・ランをもう、返り見はしなかった。わたしは。わたしも。捨て置くともなく、そんな意識などわずかにもなくて、ハオ・ラン。声。やさしい音色。しかもいま、荒れすさんだふるえ。声に。だから波紋なす麁さ。焚きつけていた。声。わたしに。声。わたしにだけ声。暴力を、…情熱。焚く。鉄のあじのする、
突然、きみに
傷いの?
情熱。血の?
あらビュー
まだ?
血。恒星たち、それらに無限のみにふれる特異点への陥没を与えるのが鉄の、その核融合の破綻だったなら事象の地平には血のあじがただようのだろうか?それら色彩の絶対的な喪失。いろの不在をさらすそれが纏うさすまじい光りの渦にも。知っている。ハオ・ラン。わたしの背後に散らしたささやきのそこは、わたしへの気づかいなどなかった。わたしの崩壊への怯えも、不安も、恐怖も、戦慄もなにも。おののいてさえハオ・ラン、ただひたすらうつくしい少女の夢のまなざし。知っている。絶望的なうつくしさ。はなかく清純。清純ではかない、はかないほどの清純の気配。ひたすら永遠を日ごとの忘却のうちに貪るしかない畸形。いきもののいのちそのものの破綻。それとも超克?知っている。ハオ・ラン。容赦なき
突然、きみに
かゆいの?
畸形。あかの
ふぁキュー
まだ?
他人。滅びないひと。滅びを見つづける眼。知っていた。ハオ・ランはただ、自分たちがまさにそこに傷つけ、崩壊させ、破壊させていくわたしたちの春奈にたいする破壊の不当の赤裸々に勝手に怯えているだけと、怯え?まさか。なら傷み?じゃなくて。悲しみ?じゃ、なら、なに?ゆらぎ。こころの
あれ?いま
罅です。ひび
ゆらぎ。
なに?それ
ひび割れ
わななき。
さわぎかけた
日々です。ひび
あくまで
なに?それ
平穏な
実体を欠く空虚なことばにのみすがたをあらわしたもはや露骨な感情の切実の極みにおく感情そのものの消滅。その実有のただ赤裸々な沙羅。実在。飛沫。
ずばっ…と
花。花たち
散った。
ばずっ…と
例えば、ほら
髪。須臾のみに
ずごっ…と
ラフレシア
乱れた髪の
ごずっ…と
咬みついたの
須臾。空間に、
ずべっ…と
だれ?
咬みつくようにも。髪、
べずっ…と
花。花たち
沙羅。歯などない
ずびっ…と
例えば、ほら
髪。
びずっ…と
寒椿
髪、沙羅。歯などではない
ずぼっ…と
咬みついたの
髪。沙羅。そこに
ぼずっ…と
だれ?
沙羅。あり得ない。情熱。鉄の。陥没の。無限に落ち込みうる陥落の、その情熱にわれを忘れるなど。咬みつかれ、咬みつかれたままに身をはがさずに、あるいは意図ある明確な意識の容認と許容と赦しのかすかで強烈ないぶきのなかに壊す。情熱。わたしは、壊し、壊そうとし絞めた。情熱?そこに?煽られながら?はためく、焰なぶられながら?むしろ
ぼくらぼくらはみんな孤独で
ん?
ただ醒めたまなざしのなかに
ぼくらぼくらはみんなかなしく
ん?
本当の死の、いのちがついにふれられはしなかった決定的な絶対的な死そのものの不在の色彩のない一点に…死。落ちこませはしない最後のやさしいゆるみをなんども繰り返す手のひら。…死。ふれさせない。…死。葉子には。決して。だから、押し付けられた壁にひとり立ったまま脱力した葉子は、その妖艶なまでにゆたかな女の肉体を
ばふっ
ん?
十二歳のわたしの手首にだけあずける。なんども窒息しかけた。もう諦めていた。ついに完全な白熱にふれかけとき葉子は、唐突に溶ける白熱の拡散にわれに返った。手首がそっと、かならず最後の手前にゆるむから。半殺し?それは。殺意にのみふれ、たしかに確実に至らしめようとする慥かさの赤裸々なそこ、ふいの安堵の数秒。半殺し?半殺されつづける半殺しの反復。継続。なに?
海が邪道な
かなでていたから
ほほ笑み。
潮騒を、耳に
耳に、轟音を
わたし。
かなでていたから
違法な海が
十二歳。そのなまぬるい頬。嗜虐の、ないし、自虐の?燃えて燃えるとき、そこには嗜虐しかない。自虐と嗜虐に明確な差異など。暴力は常に、他人にしか向けられない。笑み。なぜ?流すべき涙がなかった。渇いた?まさか。ただ葉子には相応しくなかった。だから。その朝。降りて来たリビング。宮島。雅文の、中古の、そこ。存在していた葉子がふと、わたしに振り返りざまのほほ笑みをむけたときに殺意。そんなものなど、きざした瞬間さえなかった。すくなくとも記憶には。まるでそうされるべきものに、そうされるべきその固有の事象を与え、せめて実現してやろうと?
殺意の翼が
知れっ
傷み。
おれらを生んだ
殴る方が、いたっ
のけぞりもしない
殺意の翼が
傷んだぞ
頸。あらがいさえ、
おれらを飛ばした
知れっ
押し付けられた壁。傷み。葉子に押しつぶされかける指に嘘。あくまで自重。体重をかけたのはわたしだけ。ただ葉子は無防備な笑みを、朝の幸福。その朝に唐突にわたしのすがたを見出した葉子の、あられもなく容赦もない幸福に、
「すき?」
絶望的なまで
人間は常に
「すき」
不穏。ただ、
「なんで?」
きみ。すてき
虚妄に生きた
「すき」
それら、そこに
「どこが?」
すき
なぜなら
「すきだよ」
赤裸々な
「ね?」
悲惨なまでに
いわゆる
「だって」
矛盾。半殺しの
「おしえて」
きみ。すてき
人間的知性とは
「それ以外に、なにも」
女。その眼は
「すき?…ね?」
すき
感性ふくめて
「もう、なにも」
恍惚?…に、あやうく
「なに?…なんで、」
無慚なまでに
虚妄を創造する
「感じられないくらいに」
ふれて、あくまでも醒めた
「どこが、なぜ?」
きみ。すてき
能力だからだ。故に
「すき。ただ」
幸せな陶酔。ただ
「すき?…せめて」
すき
われわれは
「あなただけが」
隙間だらけの、
「せめて噓。うそでいいから」
ふてぶてしいほど
われわれが人間でありえている限りに於て
「すき。もう」
しかもくちびる。そこに
「おしえて。お前の」
きみ。すてき
むしろ
「ゆるせないほど」
容赦ない
「ほんとうことを」
すき
全能である
「すき。…ね」
恐怖?あるいは
「いまだけ、そっと」
むごたらしいほど
そう、ふとわたしがささやきかけた一瞬、
「ごめん。もう」
忿怒?…なにに?
「…ね?」
きみ。すてき
わたしのゆびを
「いまも、たぶん」
くちびるは、そこに
「聞き取れない声で」
すき
獏が舐めた
「あしたも、未来も」
なにに?
「いま、」
耐えがたいまでに
だから、その歯は
「ずっと、ただ」
ひきつるだけの開口。その
「ぼくに」
きみ。すてき
皮膚をすべる
「すきでしかいられないおれを、ごめん」せせら笑うくちびるのささやく声に、そしてハオ・ラン。そののばされたゆびだけがふれていた。わたしのくちびるに。まばたきさえもせず、その眼は雨。ハオ・ラン。雨。十五歳?そとは、雨。十六歳?その形姿。千年も一万年もおなじ永遠の少女の、その事実をは知らなかった十九歳のわたしに、出逢ったばかりの雨の夜、葉は?
びしょぬれさ
責めないで
そとで、樹木は
まったくさ
きみはうつくしい
葉をぬらしていたの?肌。ハオ・ランの肌にはじめてふれた花も?蕾も、雨に?だから明け方には、やさしい雨に。あざやかな紅蓮。雨あがりの朝焼け。返り見られなかったひかりの横溢のなかでさえ、たしかにすこし年下の少女へのやさしいたんなる手ほどきの行為。たわむれじみた、そして倒錯を感じた。ただ、ハオ・ランのこころに。少女の肉体。そして赤裸々な少年の精神を隠さないハオ・ラン。彼…彼女?の、その時には実年齢をあざ笑って大人びた不遜を見せたに想えたハオ・ラン。その恋を知ったまなざしは、なに?同性愛?バイの愛?異性愛?なに?その肌。肌が感じていた肌ざわりよりむしろ、切実だった体温よりもむしろ、厖大なささやきとささやかれなかったささやきと、ささやかれなかったささやきの気配さえもない完全な沈黙と、ときに忘我に似た冴えたまなざしの見せた明確。ただ無造作にふたりにだけ浪費され謂く、
見ていよう。…ね?
見ていてあげよう
あなたの滅びを
猶も、失語して
晴れた日には
花。沈めようか
水底に、花
鳳仙花の花
曇る日には
花。つぶそうか
石たちに、花
すずらんの花
雨あがりには
花。燃やそうか
けずりながら、花
芍薬の花
豪雨のなかでは
花。洗おうか
顎をはずし、花
花汁の匂いを
猶も、失語して
あなたの滅びを
見ていてあげよう
見ていよう。…ね?
謂く、
見ていよう。…ね?
きみの耳を
抉りました
燃やそうか?
見ていてあげよう
よく聞くために
よく見るために
きみを、その存在まるごと
あなたの滅びを
そぎました
きみの目を
燃やそうか?
ほら、失語して
花。鳳仙花
いいよ
散り散るまえに
いいんだよ
すずらんの花
それで、きみは
半殺し
そのままで
芍薬。花
いいんだよ
朽ち朽ちまえに
いいよ
花汁。散らし
花。失語して
燃やそうか?
きみの目を
そぎました
あなたの滅びを
きみを、その存在まるごと
よく見るために
よく聞くために
見ていてあげよう
燃やそうか?
抉りました
きみの耳を
見ていよう。…ね?
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